PIECESメイト限定オンラインスペースPiece for Peace 【1月の活動ダイジェスト】

2021年12月から、新しいプロジェクトとして、PIECESメイト(月額寄付者)が集い・つながる「Piece for Peace(PforP)」というオンラインスペースが始まりました。

PforPは、メイトの皆様が寄付をしながら、社会も自分もwell-beingになることを目指して、イベント参加、交流ができるオンラインコミュニティです(詳細はこちら)。

1月の様子をお知らせします。1月は30名弱の方に新しく参加していただきました。


【イベント紹介】

Citizenship lab 〜事務局長斎が語る市民性とは〜


イベント「Citizenship Lab」は、”市民性に触れ、市民性を探求する”をテーマに、社会にもっと市民性が広がっていくことを目指し、ゲストの方をお呼びしてそれぞれの分野での市民性について学んだり、メンバー間対話よりこれからのアクションについて考えたりするイベントです。

1月は、PIECES事務局長の斎より、”市民性”とは何か?、地域コミュニティにおいて市民性が求められている背景などを話し、みんなで思いを共有しました。

また、イベント後の感想では、”もう一度、自分が地域の一員であることを意識的に自覚しながらまわりの人と関わること、自分とか家族から少し視野を広げることが市民性の一歩なのかなと思っています” "一人ひとりの小さな勇気や行動が、じわじわと広がり、周りにいる人たちに優しい間を紡いでいくのだなぁと思います" などのコメントが寄せられ、ひとりの市民として社会に想像力を働かせて関わる在り方について考える良い機会に繋がりました。

▶開催概要

1月14日(金) 21:00-22:30@Zoom
ゲスト:斎 典道(PIECES事務局長)


【イベント紹介】


HIPA! HIPA!~対話編~「不登校・ひきこもり」をテーマに対話

HIPAHIPAは、子どもたちとの関わり方や市民性についてみなさんと考える対話イベントです。

今回のHIPAHIPA~対話編~では、「不登校・ひきこもり」をテーマに集まったメンバーと対話をしました。参加メンバーの中には、お子さんが不登校状態にあるという方、中学校の相談員として活動している方がいらっしゃいました。出会ってきた子どもたちの話を、日々の迷いや葛藤と共に話しました。

『「当事者」になる時間は大切』という親視点の葛藤の感想や『別室登校だった中学生が、学校見学で厳しい言葉を聞き現実に向き合っても、彼が揺らがなかったのは、今までのサポートがあったからではないか』といった新たな視点が参加者から出てきました。

▶開催概要
1/18(火)20:00〜21:00


【毎月お送りするPforPのラジオコンテンツ】

ふとんでまどラジオ

▶ふとんで#まどラジオとは?

PIECESメイト同士が、自分の暮らしのサイズ感で市民性について対話するラジオです。毎月第3金曜夜に20分程度配信しています。

▶今回対話するメイトは?

岡本良次さん:
「やりたいことをして生きる」「未来には夢しかない」。
PIECESメイトであり、SNSで上記のような発信をしている良次さん。
そんな発信をするきっかけとなった子どものひとことについて、聞かせてくださいました。

▶ハイライト

PIECESと関わる時、普段より優しくなれている自分がいる。そんな自分に気づいて嬉しくなる。それが継続寄付の理由にもなっている。

クラブハウスで出会った人たちは、「特別扱い」してほしいんじゃない。「普通に」話ができる関係性に心地よさを感じているんだ。そこに気づけたのは、PIECESとの関わりがあったからかもしれない。

「優しい」って、きっと気遣うとか配慮するだけじゃない。

▶開催概要

・1/21(金)@YouTube
・話し手:岡本良次・なつこ・ゆいつん


【その他、交流】

pick up①

C for C修了生でPIECESメイトのかげさん(影近卓大さん)の取り組みが、メディアに掲載されました。

誰もが地域に溶け込んで、ありのままで暮らせるように

かげさんは、昨年の4月に、多摩市で、重症児者の通所事業×駄菓子屋の「+ Laugh(アンドラフ)」を開かれました。 PIECESでは、昨年のHIPAHIPAスポット紹介で、かげさんの場づくりにかける思いを伺っています。

HIPAHIPAスポット紹介(+Laugh)

この機会に、ぜひご覧ください!

 

pick up②

1/10にNVC(非暴力コミュニケーション)の提唱者であるマーシャル・B・ローゼンバーグの新著『「わかりあえない」を越える』 オンライン読書会を開催しました。

一人の「本が届いたよ!」投稿に反応した方々が中心になって、数日で読書会企画へ。 slackでの自己紹介、本や記事のお薦めを通して、お互いが普段考えていることや悩みを共有しながら緩やかに繋がっていけるのが、P for Pならではの楽しさです。


PforPの説明についてはこちら

子ども若者の孤独・孤立を予防するために。|PIECESの政策提言に関する活動について

PIECESでは2019年より、子どもや若者の孤立に関する政策提言を行っています。

2021年度は孤独・孤立対策、子どものwellbeingに関する政策提言及び、子ども庁(現子ども家庭庁)設置に向け、子どもの心のケア(トラウマインフォームドケア)、そして子どもの権利を保障する政策の必要性について、代表の小澤いぶきが提案し、ヒアリングを受けてきました。今回はそういった政策提言に関する活動について、ご報告します。

①孤独・孤立対策について

2021年5月、孤独・孤立対策に関する連絡調整会議に向けて、孤独・孤立の定義に関する提案、考え、実態調査の必要性とその際の重要な観点についてヒアリングを受け、提案を行いました。

資料(有識者、NPO法人等のヒアリングにおける主な意見等)

②子ども庁(現子ども家庭庁)について

2021年11月、子ども庁(現子ども家庭庁)設置に向けてヒアリングを受けました。見落とされがちな「子どもの心」のケアや心の傷の予防・ケアのできる地域のエコシステム構築の必要性について提案しました。これは虐待予防等、子どもたちの心に影響することの予防やケアを行う体制を整えることにもつながります。

また、「子どもの権利」を保障するための「子ども基本法」の必要性についても、提案・要望を行ったほか、新公益連盟を通して、「子ども基本法の策定」「孤独・孤立対策」において、まだ対策に入っていない外国人や性的マイノリティ等の包摂に関する明記について、与党の予算・税制改正に関するNPO/NGOへのヒアリングについても要望しました。


誰もがその存在を尊重され、安全に生きていくことが当たり前になるプロセスの中で、制度によってその権利が保証されているかどうかということが、一つ大事な道のりとなることがあります。制度で自分の安全が保障されていないことが、その人の尊厳に関わっていることがあります。

まだ自分たちが出会っていない、さまざまな環境にいる方々も同じ地域で生きていること、この時代を共にしていること、その全ての人にとっての政策があるわけではないことを忘れずに、その方々の願いと私たちの市民性に根ざしたwellbeingという願いの重なりが、この先にバトンとして渡っていくような「市民性に根ざした政策」をこれからも考え、問い直し、提案していきたいと考えています。

制度をつくっていくのも、活用していくのも私たち市民一人一人です。一人一人の眼差しや関わりで、日常にその人が存在して大丈夫だと感じられるかどうかの文化は私たちが醸成しています。
市民性に根ざした制度を考えながら、市民性に根ざした日常を、これからも共に作っていきます。 

認定NPO法人PIECES 小澤いぶき

アニュアルレポート2020-2021ダイジェスト

PIECESの1年間の活動をご報告するアニュアルレポート2020-2021が完成しました!

PIECESの事業や関わる人の輪が大きく広がった1年の軌跡を、ぜひご覧いただけたらと思います。
pdfバージョンをダウンロードいただくことも可能です。(ダウンロードはこちら

  1. 代表ポエム:優しい間のある暮らし

  2. ISSUEとMISSION

  3. 活動① Citizenship for Children(市民性醸成プログラム)

  4. 活動② Reframe Lab(アートプロジェクト)

  5. 活動③ Cultivate Citizenship(広報啓発活動)

  6. PIECES5年の歩み

  7. PIECESからのお知らせ

  8. 活動計算書

  9. サポートいただいた企業

  10. 5周年お祝いメッセージ


1. 代表ポエム:優しい間のある暮らし

今すぐには見えないかもしれないけれど、一人ひとりの市民性野崎に誰かの暮らしがあるように、泉のように湧いた小さな豊かさの種が、芽吹いているかもしれません、

一人ひとりの手元にある温かい間が、紗あきの源になっていく、そんな「優しい間」のある暮らしを。

PIECES代表 小澤いぶき

2. ISSUEとMISSION

ISSUE

頼れない・頼る人がいないという「子どもの孤立」

  • どこにも相談できる人がいない・・・21.8% *1

  • どこにも助けてくれる人がいない・・・11.3% *1

  • どこにも居場所がない・・・5.4% *1

  • 支援期間を利用しようと思わない・・・69.7% *2

※1:内閣府「子供・若者白書」令和3年度
※2:内閣府「子供・若者の意識に関する調査」令和元年度

貧困や家族の病気、いじめなどでしんどいときや傷ついたときに、家庭・学校・地域などで誰にも頼れない、頼る人がいない「子どもの孤立」。
それにより、心の傷が悪化するまでケアされず、深刻な状態へとつながる子どもたちがいます。

MISSION

一人ひとりのマインドセットをアップデートし
社会のなかに市民性を醸成する

私たちの目指す未来は、子どもたちが孤立せず、優しいつながりが溢れる未来です。それは、小さな困りごとや、小さな心の傷が生まれた時に、身近な関係性の中でケアされ、お互いに癒しあっている世界です。

私たちPIECESは、Citizenship for Childrenなどの事業を通じて、一人ひとりのマインドセットをアップデートし、社会の中に子どもたちの困りごとや痛みを見過ごさない市民性が醸成されていくことに取り組んでいます。

専門家だけではなく、私たち一人ひとりが優しい間をつむぐ市民性を発揮していくことで、子どもの心の傷が身近な関係性の中でケアされ、子どもの孤立は解消されていくと考えているからです。

3.活動① Citizenship for Children(市民性醸成プログラム)

子どもが孤立しない地域をつくる市民性醸成プログラム
「Citizenship for Children」とは?

Citizenship for Children(以下CforC)は、子どもと自分にとってのより良いアクションやあり方を探究する「市民性」の醸成を目指す研修プログラムです。
子どもと自分と地域にとってのwell-beingを実現するために、仲間とともに心地よく迷いながら、自分なりの市民性を探究していきます。

2016年から実施しているCforCは、2019年度からは全国へ展開し、各地の協働団体と共に活動を広げています。

2020年度は3つのコースに計136名が参加しました。2021年度は「みつめるコース」「うけとるコース」「はたらきかけるコース」とコース名を刷新し、65mりが受講しています。

また、CforCのエッセンスを活用して団体向けの研修プログラムも実施しています。

4. 活動② Reframe Lab(アートプロジェクト)

一般社団法人Whole Universeとの共催のもと、2018年から活動を続けている「Reframe Lab」は、豊かな想像力を育む「あそび」や「まなび」を開発し、アート、教育、医療、福祉がつながるプラットフォームを構築していくプロジェクト。

今年度は「ミエナイモノと世界をあそぶ」をテーマに、絵本と映像を制作しました。

絵本はpdfにてダウンロードが可能です。(詳細はこちら
映像はYoutubeにてご覧いただけます。
お子さんと一緒に、みんなで、ぜひ楽しんでください。

5. 活動③ Cultivate Citizenship(広報啓発活動)

子どもを取り巻く社会をつくる一員である私たちが大切にしたい視点や、心のケア、子どもと関わる際に大事なことなどに関する情報を、PIECESでは啓発活動の一環として発信しています。

PIECESの発信するアウトプットに触れたあなたの手元から、優しい間が紡がれていくように。「耕す」という意味のCultivateを使い、PIECESの啓発・広報の取り組みを「Cultivate Citizenship」と名づけました。

①虐待防止月間

虐待を足元から予防するためにイベント・キャンペーン・記事で啓発。
記事はこちらから

②#問いを贈ろう

1日1つ贈られる問いを通じて、自分・社会・未来のwell-beingを考える1ヶ月。PIECESや著名人の皆様から様々な問いが贈られました。

全ての問いはこちらから

③HIPAHIPA

「優しい間」について考えるイベント、HIPAHIPA。CforC修了生の現場に実際に足を運んだり、話を聞いたりして、自分の関わりやまちの中のでき度とについて優しい間のメガネで見つめてみます。

6. PIECES5年の歩み

2021年6月22日に団体設立から5周年を迎えたPIECES。

5年間の歩みをダイジェストでまとめました。スタッフからの一言も必読です。

ただひたすらに大きなビジョンを掲げたPIECESは、今では約10名のスタッフに、20名のプロボノ・インターン、約450名の継続寄付者(PIECESメイト)、多くの方に関わっていただきながら育ってきました。

PIECESに関わり、共に未来を描いてくださった全ての皆様に、心から感謝申し上げます。

7. PIECESからのお知らせ

PIECESでは様々な形でご寄付を受け付けています。

【news】オンラインコミュニティPiece for Peace がスタート(詳細はこちら

企業・団体向けの講演や研修も受け付けています。

各種SNSでの発信もぜひご覧ください!

8. 活動計算書

9. サポートいただいた企業

法人や団体の皆様からご寄付や助成金をいただいたことで、CforCを全国に広げていくことができました。これからも、さまざまな形でパートナーシップを育んでいただける法人さまを募集しております。

来年度に向けて

CforCをより多くの人へ、子どもたちへ。

これまで、CforCには共感しているし学びたいがなかなか時間がないというかたや、タイミングが合わないという声もいただいてきました。そこで来年度は、CforCのエッセンスを、より手軽に感じていただけるよう、webサイトのリニューアルやプログラムに参加いただかなくても学ぶことができるコンテンツの制作などを行う予定です。

また、CforCのエッセンスを寄付者の皆さまにも共有していき、市民性の輪を広げていければと考えています。お楽しみに!

10. 5周年お祝いメッセージ

PIECESに関わる役員・スタッフ・まきば(プロボノ)メンバーから5周年に向けたメッセージを集めました。

たくさんの方に支えられ、共に歩みを進めてきた5年間。
本当にありがとうございます。そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします!


 
 

アニュアルレポートは「継続寄付者のみなさま」と「1万円以上の単発寄付をくださったみなさま」へ紙媒体でお渡しをしております。ぜひ最新のアニュアルレポートをお手元でご覧いただけたら嬉しいです。

PIECESの活動はみなさまからの継続的なご寄付によって支えられています。来年度以降も活動を共に継続・発展させていく仲間になってくださいませんか?

PIECESメイトになる
 
 

Citizenship for Children 2021 が終了しました!

イラスト:Jessie(J.)

2021年7月から始まったCitizenship for Children 2021(CforC)ですが、PIECESメイトをはじめとするたくさんの方々に支えられ、無事終了することができました。

CforCは、子どもと自分と地域にとってのwell-beingを実現するために、仲間とともに心地よく迷いながら、自分なりの市民性を探求するプログラムです。今年度は新たな体制として、みつめる・うけとる・はたらきかけるという市民性発揮の3視点に沿ったコースで開催しました。

みつめるコース 参加者64名
7月から3ヶ月間実施したみつめるコース。『同じ志を持った仲間とともに、子どもに心で応えるためのまなざしを学ぶ』ということに重きを置き、自分自身や子どもの感情、地域や社会の出来事をありのままにみつめていくためのまなざしやマインドセットを探求し、子どもと自分、地域のwell-beingを実現するためのベースとなるエッセンスを、講座とゼミで学びました。

うけとるコース 参加者4名
みつめるコース修了後、『安心できる仲間と、発見したり葛藤したりしながら、私らしい「優しい間」を問い続ける』ことを学ぶ、うけとるコース。みつめるコースの内容に加え、リフレクションを通して、目の前の子どもの感情や願いに目を向けると同時に、自分自身の感情や願い、価値観にもじっくり向き合うプロセスを体験していきました。

はたらきかけるコース 参加者30名
みつめるコース修了後、『わたしたちのうけとった違和感や想いを、形にすることで優しい間のあふれる地域へ』と目指していく、はたらきかけるコース。みつめる・うけとるコースの内容に加え、実際に自分も子どもも生きる地域で自分らしいアクションをしていくために、まちの資源の活かし方やコミュニティづくりについて探求していきました。

CforCに関する記事はこちら

参加者の声

今年の参加者から以下のような声が届いています。

“beingを受け入れてくれる“雰囲気はCforCのゼミにもあるなと感じました。うまく話せなくてもいいし、きれいにまとめられなくてもいい。モヤモヤがあっても大丈夫。自分が感じたことをありのままに聴いてくれるクラスのメンバーに、初回ゼミとは思えないくらいの安心感を感じました。(20代・大学生)

ゼミの中で行われた自己覚知ワークでは、同じグループの方の考え方の背景や価値観が分かるのが楽しく、それを共有した後の空間は何だか安心できるなと感じました。私自身も、このワークを通して「自分から生きづらさを他人に伝えるのが難しい子どもたちに寄り添える人でありたい」という大事にしていた価値観を思い出し、言語化することができました。(20代・福祉職)

回を重ねるごとに心や体の感覚が自由になるのを感じました。今まで福祉職として「心を自由にしたら頭が働かなくなる。良い支援が出来なくなる」と、必要以上に自分を戒めてきたのかも知れません。(20代・福祉職)

活動の中で子どもから重大な悩みを打ち明けられたスタッフがいた時に、そのスタッフもどう回復していくのかということも考える機会になりました。(30代 / 地域活動・任意団体)

これまでは子どもの友達の親御さんたちやご近所さんなど接点はあるけど、そこまで関わってない人たちと、もっと仲良くなりたい、「もっと次に話せるようには...」と思っていました。今はあんまり考えすぎずに、親御さんたちや小学生にも話しかけるようになりました。(30代・会社員)

子どもたちへの声かけや同じ職場の大人たちの距離の取り方を、よく見るようになりました。これまでは「自分がどうするか」意識してきていましたが、CforCを受講して、人が言っていることの背景をこれまで以上に考えるようになりました。(30代・病院・学校・福祉施設スタッフ)

参加者の変化

市民性の発揮の仕方は人それぞれです。それでもプロジェクトを立ち上げたり、何か大きい活動をしなければいけないと感じ、「自分にできることは何もない」と思ってしまう人もいます。
CforCを通じて「自分にもこんなことができるかもしれない」「自分ができることをやっていこう」という人が増え、市民性発揮のグラデーションが生まれ始めています。

今年の参加者からは、今後こんなことをやってみたい!という声が上がっていきました。

  • 不登校やまちの人たちが集まれる居場所をこれからつくりたい

  • 普段関わっている子どもたちと社会との接点をつくっていきたい

  • ボランティア活動で出会う子どもたちだけでなく、まちの子どもたちにも関わろうと思う

  • 大きいことではなくとも、プロボノやまちで自分ができることをやっていきたい

現在CforC2021の報告書を作成しています。より詳しい報告を掲載予定ですので、楽しみにお待ちください!

【イベントレポート】PIECESフォーラム「こどもがこどもでいられる社会」を開催しました

2021年12月12日にPIECESフォーラム「こどもがこどもでいられる社会をつくるには」を開催しました。

 オンラインで実施したイベントには約100名の方からの参加応募があり、子どもの未来を考える仲間と語り合う時間となりました。

テーマは「こどもがこどもでいられる社会をつくるには」

 

私たち大人は「子どもが子どもでいられる時間や空間を大切にしたい」と願いながらも、意図せず大人が生きる社会の物差しを子どもへ差し出していることがあります。その物差しは、子どもの持つ豊かさを見えづらくしているのではないでしょうか。

 

「こどもがこどもでいられる」って、どんなことでしょうか?

「こどもをこどもでなくさせてしまう社会」って、どんなものなのでしょうか?

オンラインで参加いただいた皆さまとスタッフの集合写真

 

子どもの願いを中心にして、子どもの孤立の問題に取り組んできたPIECESの、5年目の現在地を共有し、参加した人全員で「子どもの孤立」について考え、さらには「こどもがこどもでいられる社会」の紡ぎ方を一緒に考え語り合う時間になりました。

 

  1. こどもが生きる社会、PIECESが見つめる未来

  2. PIECESは3つの事業を柱にしています

  3. CforC修了生と語る「こどもがこどもでいられる社会」の紡ぎ方

 

PIECES代表 小澤いぶきよりメッセージ

子どもの中の多様性や豊かさは、私たち大人が「私で在る」ということと響き合って生まれるものではないでしょうか。「こどもがこどもでいられる社会」は、全ての人が「私が私である社会」だと考えています。

 

PIECESへの寄付はお金の意味が変わる、ということでもあります。成果で図られやすい社会の中で、成果で計りにくい「間」で流れるお金です。PIECESメイト(月額寄付者)は、お金の意味を変革させていく、新しいお金の価値を作り出している人たちです。

 

来年度のCForCプログラムの資金を集めるキャンペーンです。一緒にやさしい循環の波に巻き込んで、巻き込まれていきたい。1人でも多く、継続寄付者になってください。力をお貸しください。

  

こどもが生きる社会、PIECESが見つめる未来(代表 小澤いぶき)

 

私は児童精神科医として、医療の現場でたくさんの子どもたちに出会ってきました。こどもたちの貧困や虐待、いじめなどの背景には、子どもの心の孤立があると考えています。実際に、日本では10人に3人の子どもたちが孤独を感じているという報告もあります。

 

医療などの専門分野では、心の怪我が長く続いている子どもたちと出会うことが多いですが、そうすると、怪我が深くなるのですね。そうなる前に、子どもの暮らしを作っている大人たちが何かできるのではないか、そう思ってPIECESを立ち上げました。

 

PIECESは、こどもたちが孤立の中で生き続け、社会のことを信頼できるなくなる明日よりも、一人ひとりの想像力から生まれるやさしいつながりがあふれる社会を作りたいと考えて活動しています。

 

子どもが孤独を抱えるもっと手前で、頼り頼られる関係を作れたら。時代を超えて子どもと共に優しい「間」を紡ぎ続ける社会を作りたい。子どもも自分も安全に自分の感情や願いを出せるそんな「間」を増やしていきたい。

 

優しい「間」を紡ぐのは、親でも友人でも先生でもない「市民」としての関わりだと考えています。その市民性を醸成するために、Citizenship for Children(CforC)というプログラムを全国へ展開しています。

 

PIECESの3つの事業

 

次に、PIECESが「子どもが孤立しないために」行っている3つの事業の説明と今年度の報告を行いました。

 

・市民性醸成プログラム「Citizenship for Children(CforC)」(事務局長 斎典道)

 

PIECESが毎年夏ごろから行っている、市民性醸成のためのプログラムで、5月頃から募集を開始して、7月から開始、年明けて1月までの連続講座です。子どもとの関わりには正解がないからこそ、子どもの声に耳を傾け続け、学び続け、問い続ける必要があります。

 

それらを講座(座学)、ゼミ、実践(リフレクション)を通じて学び合います。参加者同士でエンパワメントし合い、楽しみながら学びを深めていくためのコミュニティ作りにも力を入れています。今期は全国から65名の参加があり(昨年は34名)、オンラインで行っています。

 

年々改良を加えているプログラムで、来期へも認知拡大や協働団体、修了生含む創り手担い手の拡大、そしてプログラム実施と拡大を支える資金調達が課題です。今日始まった寄付キャンペーンもこのプログラムを支えるものです。ぜひよろしくお願いします。

 

・アートプロジェクト「Reframe Lab」(代表 小澤いぶき)

 

子どもたちの「あそび」を通して、「ひらかれたwe」の未来を見つめるアートプロジェクトです。子どもにとって、泣くことを含む感情や願いの表現は大切なものですが、危機の時にはできなくなりがちです。このコロナ禍のような危機の時は、子どもたちの「あそび」がさらに意味を持つのではないかという思いがあって行っています。

 

子どもたちがその世界の中で感じていることを一緒に見つめて受け取り、はたらきかけていけるような想像力を耕すことを目指して、絵本「もるめたも」と映像作品を作りました。また、夏に高田馬場で「もるめたも展―あそびとへんしんの研究所」を開催しました。

 

広報啓発活動事業「Cultivate Citizenship」(広報FR 若林碧子)

 

PIECESがこれまでもやってきたことですが、広報や啓発活動に今年から名前をつけてみました。「cultivate」は耕す、という意味の言葉で、PIECESのアウトプットで、PIECESが目指している「市民性」を耕したい、という思いが込められています。

 

発信事例として、11月の虐待防止月間に行った一連の記事発信やイベントと、9月に行った「問いを贈ろう」キャンペーンなどを行いました。

 

CforC修了生と語る「こどもがこどもでいられる社会」の紡ぎ方

 

ここからは、今日のテーマである「こどもがこどもでいられる社会をつくるには」を、CforC修了生や受講生たちと語り合いました。

 

モデレーター:PIECES理事 青木翔子

ゲスト:

安森正実さん(CYW1期性)

糠塚あゆりさん(CforC2020)

森野純夏さん(CforC2020・駄菓子屋ふぃーか)

手塚沙也加さん(CforC2020)

高島陽子さん(CforC2021)

配信の裏側の様子

 

青木翔子)

ゲストの皆さんそれぞれの活動の紹介を通して、いろいろな市民性の発揮の仕方があることが伝わるといいなと思います。居場所活動を続ける中での子どもたちの変化にはどんなことがありましたか?

 

安森正実さん)

月に1回横浜市内で開催している「Pear Plant(梨の木)」では、お姉さんでも友達でも支援者でもないけれど「なんだか相談したくなる存在」を意識しています。スタッフが経験していないことを経験している子が多くて戸惑いますが、あまり来ていなかった子が毎月来るようになって、悩みを話してくれるようになりました。

 

また、当初は梨の木を「自分の場所」という気持ちが強くて、新しくきた子に敵対心を出していた子が、最近は態度が和らぎ、歓迎ムードを出してくれるのが嬉しいです。

 

糠塚あゆりさん)

子ども食堂と学習会を週2回開催しているのですが、自分が10代の頃に苦手だった、派手なタイプの子が多いんです。でも個別に話してみたら、派手さが気にならなくなって。自分のメガネに気付かされました。

 

何かしてあげようと思っても劇的に変化させることはできないけれど、「なんでもはできないけれど、私はあなたの味方だよ」ということは全力で伝えています。突然泣き出すなどの場面に立ち合えるようになったことを、ありがたいことだと感じています。

 

青木)

いろんな大人が社会にはいて、「こうでなくてはならない」ではないのですよね。子どものため、だけでない「わたしたちのwell-being」について考えていることを教えてください。

 

高島陽子さん)

プレイカーやプレイパークの活動は、大人もやりたいことをやり、言いたいことを言うという、合理性や論理性がないことに初めはカルチャーショックを受けました。でも「お節介」でもない、「楽しんでいる大人」って、子どもの居心地も良くしますよね。

 

手塚沙也加さん)

私は気まぐれに駅の近くや公園でシャボン玉をする、というよくわからない活動をしています。どんな子かわからない子と会うし、話しかけてくる子も無視してシャボン玉を壊してばかりの子もいるわけで、でも、とりあえず一緒にシャボン玉で遊んでいるからいいっか!という。頭で考えるのではない空間がいいなと感じています。

 

森野純夏さん)

駄菓子屋ふぃーかは、幅広い層の子が駄菓子を買いに来てくれます。ターゲットがないのが良かったなと思っています。子どもたちの行動に「あれ?」と思うことがあっても、はたらきかけるよりも、よく観察していると、関わりの中で背景が見えてくることがあります。そうはいっても毎日悩みながら迷いながら関わり続けている感じですね。

 

青木)

正解がないからこそ、PIECESやCforCのコミュニティで出来事を共有して、「どうだろうね?ああだろうね?」と学び合って迷い合いながら探究していきたいですね。

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

子どもとの関わりの事例がたくさん上がり、いろいろな市民性の発揮の仕方が具体的に伝わるトークセッションでした。肩の力を抜いて、自分の楽しいと思えることを楽しむことが、子どもの願いに近づく一番の近道なのかもしれません。

 

子どものwell-beingを望む人が多く集まるPIECESのCforCやPforPのコミュニティですが、探究すればするほど、子どものためだけではない、自分を含む社会全体の「わたしたちのwell-being」に向かっていくのが興味深いところです。

 

今回語られた言葉の中で心に響くものがあった方は、ぜひ一緒に優しい「間」を紡ぎ広げていくPIECESメイト(継続寄付者)の仲間になってくださいませんか?新しい優しい「間」を、ぜひ、あなたの手のひらから紡ぎ出してみてください。

 
 

writer:麓 加誉子

PIECESメイト限定オンラインスペースPiece for Peace がスタートしました【12月の活動ダイジェスト】

2021年12月から、新しいプロジェクトとして、PIECESメイト(月額寄付者)が集い・つながる「Piece for Peace(PforP)」というオンラインスペースが始まりました。

 「寄付という行為もPIECESの目指す「優しい間のあふれる未来」のための市民性醸成の一つの入り口にしたい。」そう考え、社会も自分もwell-beingになることを目指しながら自分なりの小さな市民性発揮の種をみつけていくようなイベントや交流を行うPforPをスタートさせました(詳細はこちら)。

12月のリリース以降、続々とメイトの皆さんに参加いただいています(現在70名超え)。
これから定期的にPforPでの出来事もご報告させていただきます。
ぜひどんなことが起こっていたか、どんなイベントがあったかチェックしてみてください。


【イベント紹介】

HIPA! HIPA!:子どもと関わる現場に行こう!語り合おう
〜ゲスト:高知の居場所「だがしやふぃーか」〜


イベント「HIPAHIPA」は、地域で子どもたちと関わる現場で起きている出来事、課題、未来などをPIECESメイトの方々と語り合い、子どもたちと関わる市民性について深めていくイベントです。
12月は、CforC修了生で、高知県で子どもたちがふらっと立ち寄れる駄菓子屋「だがしやふぃーか」を運営しているもりすみさんをゲストに迎えてイベントを行いました。
前半はふぃーかや子どもたちの様子についてお話を聞き、後半のPforP参加者との対話では、「地域の子どもは誰が「管理」するべきなのか、地域コミュニティで見守ることはできないのか」というテーマについて一緒に考えました。

対話では「自然体にいるために心がけていることは?」という話がありました。そこで、地域のおじさんが「クリスマス会をしたら?」という提案に対して、そこまで子どものためにというのは難しいから断ったというエピソードが出ました。そんなエピソードから、運営している側の自分も心地よくできることをやるというのが市民性なのかもしれないという気づきに繋がりました。

▶開催概要
12/21(火)
ゲスト:森野純夏(もりのすみか)
高知大学地域協働学部4年 静岡県出身。大学進学を機に、高知に居住。大学では地域福祉やソーシャルサポートを勉強中。昨年CforCを受講したのちに、人の生活の延長線上に福祉がつながる方法として駄菓子屋を5月に開店。保育士資格保持。


【毎月お送りするPforPのラジオコンテンツ】

ふとんでまどラジオ

音声コンテンツ「ふとんでまどラジオ」は、普段の生活のなかの些細な出来事を語り合いながら、日常のなかで発揮できる市民性や、自分や社会(他者)のwell-beingについてのきっかけをみつけていきます。

vol.01  おせっかいの処方箋vol.01  おせっかいの処方箋

 

今回は、PIECESメイトでありCforC卒業生のセカン!さんをお招きして、話し手3人が、それぞれの暮らしのなかでの実体験を元に対話を展開。

用意しきらないからこそのおせっかいの余白があり、 境界線が溶けていく。自分と対話し、自分の気持ちにまず気づく。それから、自分の機嫌を取る、など自分の暮らしのサイズ感での市民性発揮について紐解いていきました。

 
▶開催概要
・11/19(金)@YouTube
・話し手:セカン!・なつこ・ゆいつん

 

vol.02  自分のタイミングで繋がれる場所


今回の話し手は、元PIECESスタッフでPIECESメイトのさとうまいさんをお招きしてお話しました。

 さとうまいさんは、今年8月にお子さんが生まれ、日々の暮らしでの視点や周りの人々との関わり方が変化したとのこと。“ラベリングによる先入観は無くなるものでは無いけれど、ラベリングも自分から少しずつ溶かしていけたらいいな”というような話をしました。

▶開催概要
・12/17(金)@YouTube
・話し手:さとうまい・なつこ・ゆいつん


【その他、交流】

PforPでのコミュニケーションpick up!
12/12には、PIECESの忘年会を実施しました。
PIECESメイト(寄付者)の方にもご参加いただきました。
PIECESに共感するスタッフ、プロボノ、寄付者のみなさまと交流する久々の機会となりました。


 

slackでの話題pick up!
現在、メイト仲間を増やすキャンペーン中です。メイトの皆様にもnoteを書いていただいております。

▶PIECESメイトてるみねさんの寄稿
寄付するのにカッコいい理由はいらないと思う #わたしがPIECESを好きなわけ


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東京ヒルズライオンズクラブの例会で小澤が登壇しました

2021年11月18日に開催された、ライオンズクラブ国際協会 330-A地区3リジョン3ゾーン 東京ヒルズライオンズクラブさまの例会にお招きいただき、代表の小澤が子どもたちの孤立の現状とPIECESの活動をお話しさせていただきました。

東京ヒルズライオンズクラブさまは、東北の震災支援を10年間続けてこられており、最近では麻布乳児院へのご寄付も行なってらっしゃいます。

子どもが子どもでいられる社会をともに紡いでいくきっかけとなればうれしいです。

お招きいただきありがとうございました。

「どこにも相談できない」ー子どもの孤立を考える #虐待防止月間

すぐ隣にあるかもしれない危機が、大きな綻びとなってからしか目に見えない。

すぐ近くで起きている子どもの危機が見えなかったり、家が安全でない子どもたちの居場所が日常になかったり、そんな子どもを取り巻く日常の問題が顕在化しています。

今月11月は、厚生労働省が定めた児童虐待予防の啓発を行う虐待防止月間です。

年々増加する虐待相談対応件数。死に⾄らしめるリスクのある⾝体的虐待とネグレクトを合わせるとそれらは年間約7万件発⽣し、 うち56件は実際に死に⾄っています。

子どもが危機に置かれた状態が見えづらくなる一方で、ここ数年、「子ども若者の孤立」に関する議論や、 「子どもの権利」に関する議論が日本でも少しずつ活発になってきています。

子ども庁の設置に向けた様々な議論がなされたり、子どものウェルビーイングや孤立などに関して、 世間の関心が高まってもいるといえるのではないでしょうか。

書き手:

小澤 いぶき

PIECES代表理事 / 児童精神科医 / 東京大学客員研究員

子どもの環境は複層的な要素で形成される

このような議論が活発になる前から、「子どもたち」は私たちのすぐ隣で暮らしており、私たちの関わりをはじめ様々なことが、子どもたちを取り巻く環境に影響を与えてきました。関心が向けられつつある子どもたちをめぐる環境は、⻑期にわたる複層的な要素が重なって形成されています。

では現在、子どもたちを取り巻く環境はどうなっているのでしょうか。子ども庁設置に向けての動きが活発化したり、政策が動き始めたりするなかで、あらためて子どもたちの環境を「自分ごと」として捉え直していく必要があると感じます。

私はこれまで、児童精神科医として勤務しながら、PIECESの代表をしながら、「子どもの生きる環境に、直接的であれ間接的であれ、誰もが関わっている」と感じてきました。

今回は、「子どものwell beingを取り巻く多層的な環境、つまり、政策や 環境問題、そして子どもたちに直接影響する環境」についてユニセフのレポートから考え、そうした環境を育むための、誰もが欠かせない一人であることを基にした共にできるアクションについて述べたいと思います。

「精神的幸福度」が低い日本の子どもたち

日本の子どもの「精神的幸福度」は、調査国38カ国のうちの37位である ――。

2020年にユニセフ(国連児童基金)が発表したレポートの結果を、なんとなく耳にされた方もいるかと思います。

2020年9月にユニセフ・イノチェンティ研究所が発表したレポートには、日本の子どもたちの「精神的幸福度」の低さが示されています。

このレポートにある「精神的幸福度」とは、「子どもの幸福度」の項目の一つで す。調査項目として、「生活満足度の高い子どもの割合」や「自殺率」が挙げられています。

幸福度については報告当時、ニュース などでも取り上げられて話題になりましたが、さらによくみていくと、子どもを取り巻く環境がとても複雑で複層的であることが、レポートから浮かび上がってきます。

UNICEF(2021)「イノチェンティ レポートカード 16 子どもたちに影響する世界 先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か」

レポートから見える子どもの幸福度の実相

レポートでは「子どもの幸福度は、子ども自身の行動や人間関係、保護者のネットワークや資源、そして公共政策や国の状況から影響を受けることを示す、多層的なアプローチをとっている」とされています。つまり、子どもの幸福度には、 子ども自身だけでなく、子どもの周りの友人・知人、家族、政府、地域社会が影響しているということです。

またレポートには、子どもの権利条約の観点から、子どもたちの意見表明の機会及び意思決定への参加の重要性が、幸福度にも成⻑にも不可欠であることが記されています。

子どもの幸福度に影響を与えるより広い範囲の因子について、

  • オーストラリアでは若者の59%が、気候変動を自分たちの安全にとっての脅威であると考えており、4人に3人が政府による環境への対策を求めている

  • 子どもたちが将来についてどう考えるかは、現在の幸福度にも影響を及ぼす

などの記述もあり、例えば、環境問題を懸念している子どもは生活満足度が低い傾向にある、 といった詳細な記載もなされています。

このほか、社会的状況に関する「困った時に頼れる人がいるかどうか」という項目において、「日本は約20人に1人の大人が困った時に頼れる人がいないと感じており、38カ国中32番目であった」一方、殺人による死者は少ないのも特徴だと指摘しています。

ちなみに、内閣府が発表した 「子供・若者の意識」(出典:内閣府「子供・ 若者の意識に関する調査」) では、「どこにも相談できる人がいない」と答えた子ども・若者は21.6%にのぼっています。全て子ども・若者の現状の反映ではないかもしれませんが、子ども ・ 若者 の5人に1人が相談できる人がいないと感じていることがわかります。調査対象などが違うのでユニセフの調査と単純に比較はできませんが、子ども・若者の現状の一端を表している結果ではないかと考えられます。

 
 

私たち一人一人、そして全てが関わる問題

こうした現状を見ていくと、子どもの幸福度には、環境や政策、地域社会におけるネットワークや資源のあり方、企業等における保護者の働き方など、様々な要素が関わっていることが分かります。逆に言えば、子どものことを全て家族の責任や枠組みだけで捉えるのではなく、社会に生きる私たちの一人一人、そして 全てが関わる問題としてとらえ、向き合っていく必要があるのです。

子どもの幸福度に自分たちも関わっている。そう考えたとき、私たちは何をすればいいのでしょうか。

子どものことを置き去りにしたり、誰かの痛みをそのままにしたりする上に成り立つ社会ではなく、この世界を共にしている様々な人やものが共に生きていくために。

いったい何ができるのでしょうか。

ユニセフのレポートに示されている子どものwellbeingに関与する要素は複層的です。

例えば、直接的に子どもの暮らしにアプローチする支援者などの存在はとても重要である一方で、少し先にある地域資源の醸成や、子どもが暮らす地域や社会における子どもや教育を取り巻く政策へのアプローチ、人権へのアプローチ、子どもたちの未来に大きな影響をお及ぼす環境問題へのアプローチなど、さまざまな関わりが子どもの今とこの先に影響を及ぼします。だからこそ、子どものwellbeingに無関係な人は居らず、一人一人が何らかの形で関わることで、その多岐にわたるレイヤーが充実していくとも考えられます。

例えば、

  • 選挙権を持っているとしたら、選挙で子どもの暮らす環境や「生きる、遊ぶ、学ぶ、参加する」といった子どもの権利を考えた政策、子どもの暮らす環境が人権規範に根ざしたものになるような政策、フェアな選択肢とそのアクセスの可能性を広げる政策を支持するということもできます。

  • 企業での産業活動の中でも、人権の問題や環境の問題に自分たちがどう関わっているのかに目を向け、体制やビジネスのあり方を再考していく、あるいはプロダクトを通したリソースの紹介などができるかもしれません。自らが人権を大切にする企業になることで子どもの権利の土壌をつくることができるはずです。

  • 政治家ならば、このマップを捉えた上での政策を思案できます。

  • 地域に暮らす一人の人として、例えば挨拶を交わす、乳幼児を連れた保護者の方や妊娠している方に席を譲ってみるといった行動も一つのできることかもしれません。

  • それらの行動を起こしている団体などに寄付を通して資源を豊かにするのも一つの方法です。

子どもの幸福に関わっている1人の人としてできることは、意外と多くあるのではないでしょうか。

誰かだけが頑張るのではなく......

COVID-19により、当たり前にあった地域の日常が当たり前ではなくなる中、 すぐ近くで起きている様々な危機に気づきにくくなったり、自分の体験している 世界以外の世界がまるでパラレルワールドのように縁遠くなったりしています。 それでも、地域に根ざして活動している団体や行政機関など様々な人や団体が、 子どもとともにある社会をつくろうと頑張っています。

ユニセフのレポートからも垣間見えるように、子どもの生きる環境は複雑で多層的な様々なことに影響されています。だからこそ、誰かだけが頑張るのではなく、組織を通して、政策を通して、あるいは一人の市⺠として、いま起きていることを見つめ、構造を問いながら、そこに関わり、働きかけをしていくことが大切なのだと思います。

WHOの定義する虐待の社会的要因として、以下のようなことが挙げられています。

・ジェンダーや社会的な不平等
・適切な住宅の欠如や、家族や組織を支えるサービスの欠如
・失業率や貧困の割合の高さ
・容易にアルコールや薬物の入手できること
・児童虐待、児童ポルノ、児童買春、児童労働を防止するための政策やプログラムの不備
・他人への暴力を助長したり称賛する、体罰を支持する、厳格な性役割を要求する、親子関係における子どもの地位を低下させたりするような社会的・文化的規範の存在
・劣悪な生活水準、社会経済的不平等や不安定さにつながる社会、経済、保健、教育政策

これらの中には、文化的社会的規範や政策など、直接子どもの貧困や虐待にアプローチするプレイヤーだけでなく、一人一人が関わって変わっていくものがあり、子どもや保護者を取り巻く環境の質的、量的な変化を支えるために間接的に変化を促せるものもあります。

​​自分自身が子どもの暮らしに存在する一人の人であり、すでに自分の存在は子どもの暮らしに影響しているからこそ、これらのリスク要因を生み出す側にも、予防する側にもなり得るのだと私自身も自分に対して感じています。

泉が小川に、やがて大河となり、社会が子どもにとっても豊かになるようなうねりになる。そうした社会の営みが、子どもたちに危機が起きる前に生まれるように、自身もPIECESを通して、市民性の醸成に取り組んでいきたいと考えていますし、ぜひ、さまざまな人や団体とともに、その営みを広げていきたいと考えています。

 

埼玉県吉川市主催 令和3年度第2回 子ども未来応援集会に事務局長の斎が登壇しました

令和3年10月14日開催された、埼玉県吉川市主催 令和3年度第2回 子ども未来応援集会に事務局長の斎が登壇しました。

子どもの貧困対策を視点に捉え、地域で育つ子どもの未来を考える「子ども未来応援集会」。
テーマは「地域の中で子どもの未来につながる一歩へーもう一度『子どもの孤立』を考えるー」

吉川市で活動されるさまざまな方にご参加いただきました。

お声がけいただきありがとうございました。

「助けて」の声、なぜ聞こえない? 虐待を生む社会構造を問う #虐待防止月間

児童虐待の報道が出るたびに、養育者や児童相談所に対する強い声が生まれることがあります。私はその度に、その声は「果たして何をうむのだろうか」と考えてしまいます。

書き手:小澤いぶき(PIECES代表 / 児童精神科医 / 東京大学客員研究員)


今月11月は厚生労働省が定めた児童虐待の防止・啓発を行う虐待防止月間です。

今回はこの「虐待防止」という観点から、「助けて」と声を出しづらい社会や、「助けて」の声が届きづらい社会を作ってしまっている理由を紐解いていきたいと思います。


予防がなされている地域の検証や、なぜ児童虐待が起こったかの丁寧な検証と、検証を元に仕組みとして何を改善すると良いかを検討することはとても大事で必要なことです。ですが、この再発予防に向けた仕組みの改善を目的とする検証は、例えば養育者ややどこかの機関に全ての責任があるかのように非難することとは全く異なります。

「母親は」「児童相談所は」といった大きな主語によって語られる物語は、時にその背景にある、働き方やジェンダーギャップなどの人権の問題や複雑な社会構造を見えなくさせていることがあります。それは子どもたちの権利の問題にも目を向けづらくする一因にもなりえます。


「助けて」を言いづらくさせてはいないか?
困難をさらに潜在化させる可能性はないか?


私たちはどのようにしたら、マルトリートメント(大人の子どもに対する不適切な養育や関わり)をうむ社会のシステムにアプローチできるのでしょうか。そして、子どもの権利と尊厳を尊重し合える社会につなげられるのでしょうか。

目次

  1. マルトリートメントとは何か

  2. マルトリートメントをどのように捉えるか

  3. 子育て困難が起こるまでにどんなプロセスがあるか

  4. マルトリートメントが起きるシステムにどうアプローチするか

  5. 最後に

マルトリートメントとは何か

マルトリートメントとは、虐待とほぼ同義で使われる言葉ですが、日本語では「大人の子どもに対する不適切な養育や関わり」と訳されます。友田先生の著書及びインタビュー記事には以下のように書かれています。

「子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育を全て含んだ呼称」であり、大人の側に花街の意図があるか否かにかかわらず、また、子どもに目立った傷や精神疾患が見られなくても、行為そのものが不適切であれば、それはマルトリートメントと言えます。
(「子どもの脳を傷つける親たち」(NHK出版参照)/「PHPのびのび子育て」11月号より)

また、WHO(世界保健機関)にも、マルトリートメントとはあらゆる種類の児童虐待及びネグレクトが含まれ、結果として、子どもの健康、生存、発達及び尊厳に実際的/潜在的な害がもたらされることとされています。

Child maltreatment is the abuse and neglect that occurs to children und
er 18 years of age.
It includes all types of physical and/or emotional ill-treatment,
sexual abuse, neglect, negligence and commercial or other exploitation,
which results in actual or potential harm to the child’s health, survival,
development or dignity in the context of a relationship of responsibility,
trust or power.
Exposure to intimate partner violence is also sometimes included
as a form of child maltreatment.
(WHO HPより
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/child-maltreatment)

つまり、マルトリートメントとは「児童虐待及びネグレクトを含む子どもの健やかな心身の発達及び尊厳を阻害するような養育及び関わり」と捉えられます。

マルトリートメントをどのように捉えるか

以前、新潟県新潟市で行われた第115回精神神経学会に参加した際に拝見した、福井大学子どもの心の発達研究センターの友田明美先生の発表を参考に考えていきます。(第115回精神神経学会「ACE(児童期逆境体験)に精神科臨床はどう向き合うか」, 福井大学子どもの心の発達研究センター 友田明美)

友田先生は、マルトリートメントが起こる社会の構造自体を変えていく必要があると話されていました。そのために、マルトリートメントを子育て困難のサインだと捉え、育児の孤立化を防ぐ「子育てを社会で支える」ための共同子育てを提案しています。

子育て困難が起こるまでにどんなプロセスがあるか

マルトリートメントを子育て困難のサインと捉えると、その困難はどのようなプロセスをたどって起こるのでしょうか。友田先生の学会で発表された以下の研究に、そのプロセスが示されています。

共同発表:子育て中の母親ら養育者の抑うつ気分を見える化して子育て困難の予防を図る~社会脳の活動を計測し養育ストレスが深刻化する前兆を早期発見する評価法の開発~共同発表:子育て中の母親ら養育者の抑うつ気分を見える化して子育て困難の予防を図る~社会脳の活動を計測し養育ストレスが深刻化www.jst.go.jp

子育て困難や子ども虐待は急に起こるのではなく、「養育準備」、「健全養育」、「養育困難」、「養育失調」という過程を経て進行していくものと捉え、深刻な事態を招かないために、段階に応じた予防的な養育者支援を提案することを目指している。

養育失調までの過程の詳細は以下のように定義されています。

養育準備:未養育者、これから養育を行う者、養育を行って間もない者を含む。
健全養育:養育リスク要因がほとんどなく適切な養育を行う者を含む。
養育困難:養育リスク要因が少なからずあり適切な養育を行うのが難しい者を含む。
養育失調:養育リスク要因が比較的多くあり不適切な病的養育を行う者を含む。

上記の過程は、心身の疲れが蓄積されると、どんなに子ども思いの養育者にも起こり得ると記されていおり、加えて現代の社会の状況は、構造的に養育者心の疲れがより生じやすいのだといいます。

たとえどんなに子ども思いの養育者であっても、体の疲れだけでなく、目に見えない心の疲れの蓄積から子育て困難(そして最悪な事態として子ども虐待)に陥ってしまうリスクの線上にいると考えている。

少子化や核家族化の進行、地域のつながりの希薄化など、社会環境が変化する中で、身近な地域に相談できる相手がいないなど、子育てが孤立化することにより、その負担や不安が増大している。
(※1※1 内閣府『平成25年版 子ども・若者白書』)
こうした子育ての環境の変化は、養育者のメンタルヘルスの問題が生じやすい要因にもなっていると考えられるが、近年は子育て困難そして最悪な事態として子ども虐待や妊産婦の自殺等の予防という観点からも、メンタルヘルスの重要性が指摘されている。(※2厚生労働省 雇用均等・児童家庭局
総務課『子ども虐待対応の手引き(平成25年8月改正版)』)
子どもへの身体的虐待、性的虐待、暴言による心理的虐待、ネグレクトなど、子ども虐待につながりうる子育て困難を防止するためにも養育者のメンタルヘルスへの対応が望まれる。

つまり、マルトリートメント、虐待は、私にもそしてこれを読んでくださっている方にも起こりうる可能性が十分にあるということなのです。

さらに、「養育困難」段階までの過程において起こる心の疲れの深刻化は、脳機能を変化させ、対人関係における様々な困難さ(対人関係や、家族内の関係の困難さ、援助希求の難しさなど)につながる可能性もあります。つまり、心の疲れが深刻化すると、人との関わりの中で生まれる「助けを求める」、「自分や子どものストレングス(強み)に目を向ける余白を持つ」、「必要な情報を得る」などが困難になる可能性があるのです。

養育者が子育てを頑張る過程のどこかで、頑張ろうとしても難しい状況が生まれています。

そしてその困難は、心の疲れへのケアや深刻化への予防環境が少ない社会のシステムの問題である、と私は考えています。


マルトリートメントが起きるシステムにどうアプローチするか

福井大学の研究チームでは、子育ての中で、子育ての負担や不安から、ほぼすべての養育者が感じる気分の落ち込みといった心の疲れを表す抑うつ気分の程度差に注目しています。

心の疲れが深刻化し、養育困難への過程に進む中で援助希求や対人交流が難しくなることは孤立化を深めていきます。そのような状態になる前から、小さな困りごとやを共有しケアしあえたり、自分では気づかないストレングス(強み)に目を向けられるような体制が必要であるのではないでしょうか。例えば親以外の周囲の大人たちとの子どもを育てる共同子育てが、子育ての孤立化を予防し、負担や不安を低減する可能性がある、と友田先生は述べています。


最後に

福井大学の研究チームの研究及び友田先生の発表を通して見えてくる以下の三点は、メンタルヘルスのように見えづらいことを自分たちのこととして捉え直し、お互いをケアしやすい社会の寛容さを生み出す鍵でもあると感じます。

・虐待につながる要因に誰もが感じ得る心の疲れ」という普遍的なものがあるということ
疲れの深刻化を個人の責任とせず、「社会のシステムの問題」と捉え直した上での新たなシステムの提案。
・特別な人が虐待をするわけではなく、心の疲れが深刻化する環境であれば私にも起きうる、という「誰かのことから私たちのことへ」の、社会の共通認識の変容プロセスの設計。


私たちは、虐待という問題をどのように捉え、向き合っていくことができるのでしょうか。

11月は虐待防止月間。ぜひ一緒に考えてみませんか。


イベントレポート|Citizenship for Children 実施報告会 子どもの周りに優しい「間」があふれる地域をつくるーひとりひとりの中にある市民性ー

子どもたちが豊かに生きられる地域・社会における市民性とはどんなものでしょうか。子どもを取り巻く社会にはたくさんの困難があり、多くの子どもたちが安心して頼れる存在がなく孤立している現状があります。

PIECESでは、子どもたちの生きる地域に、子どもたちにとって信頼できる大人を増やし、「優しい間(ま)」を広げることを目的に、「Citizenship for Children」(以下:CforC)という市民性を醸成するプログラムを実施しています。

プログラムで行うのは、いわゆる支援職や専門職の養成ではありません。子どものためだけでも自分のためだけでもない、その両者を大切にするとはどういうことかを問う視点をもった上で、具体的なアクションを起こすこと。

そして、子どもとの関わりに答えを求めるのではなく、学び続け、問い続ける姿勢を持つこと。ひとりひとりの市民性を醸成し、市民によるアクションが子どもの生活する日常の中に生まれ続けていくことを目指しています。

2016年に始まった活動は、多くの方に支えられ、今年で5年目を迎えます。4月24日にCforCのこれまでの歩みについて発表する報告会が行われました。報告会には修了生も参加し、プログラムを受講して得た学びや気づきについて紹介しました。


PIECESの課題意識ー子どもの心の孤立

まず、PIECES理事の斎典道(以下:斎)から団体紹介を行いました。

斎:子どもたちの周りで、相対的貧困・虐待・いじめなどが起きています。これらの社会課題の背景にあるのは「子どもの心の孤立」です。この孤立感にPIECESは課題意識を持ち、どうすればこの課題を解決できるかを考えてきました。

誰かに助けてほしいけれど、信頼して相談できる人はひとりもいない。周りに大人はいても、自分のことを真剣に見つめてくれる大人がいない。そう感じている子どもたちに出会ってきました。

困ったとき周りの大人に頼る方法もあるかもしれませんが、「人に頼る」ことは実はとても主体的な行為で、たくさんのエネルギーが必要です。実際に人に頼るまでには、自分の現状を問題だと認識し、相談したい相手が思い浮かび、実際に相談しに行くという3つのハードルがあります。それを子どもたちに求めることは酷なことだと思います。私たちは「子どもの心の孤立」は社会が生み出している課題なのではないかと考えています。

私たちが活動を始めた当初は、子どもたちに出会う場づくりを行っていました。でも、活動を続ける中で、現実があまり変わっていないような気がしたんです。そして、私たちがたどり着いたのが「人」にアプローチすることでした。

目の前のひとりの子どもを、ひとりの人として見ること。目の前の子どもの痛みに気づくこと。そして、子どもに関わる人自身も健やかであること。そうでなければ、子どもが大切にされる環境はつくれないのではないかと思っています。

親や先生や支援者の存在が大切なことは言うまでもありませんが、ひとりの市民としての関わりをつくっていくこと。市民性の醸成を通じて、少しずつみんなで自分の手元から社会を変えていくことができると考えています。

PIECESがみつめる未来は「時代を超えて、子どもと共に優しい間をつむぎ続ける社会」です。子どもと共に優しい間をつくる人が増えていく。そのことが私たちのミッションです。

 

子どもが孤立しない地域をつくる市民生醸成プログラムCitizenship for Childrenとは?

続けて、PIECES理事の斎と青木翔子(以下:青木)が、CforCのプログラム内容を説明しました。

斎:CforCは市民性の醸成を通して、子どもたちにとってのウェルビーイングを探究するプログラムです。子どもにとっても大人にとっても良い関わりとはどんなものなのかを探究しています。

子どもとの関わりに正解はありません。だからこそ、CforCでは座学、ゼミ、実践・リフレクションの3つを通して、様々な人の声に耳を傾けながら、学び続け、問い続けることを大事にしています。

プログラムでは、子どもと自分両方の行動の背景にある感情、願い、価値観に目を向けていきます。子どもの願いや価値観に目を向けると同時に、自分自身の願いや価値観も丁寧に扱っていきます。

青木:2020年は新たなチャレンジを行い、CforCのコースを3つに増やし、市民性の輪を広げてきました。一つ目は、オンラインの講座を見て学ぶ「基礎知識コース」です。このコースでは月1回動画を見て、子どもと接するときの知識やマインドセットを半年間で学ぶことを実施しました。

二つ目は、基礎知識コースの内容に、月1回のゼミとリフレクションを加えた「探究コース」です。住んでいる地域の枠を超えて学び合う「一般クラス」、「水戸クラス」(協業団体:NPO法人セカンドリーグ茨城)、「奈良クラス」(協業団体:認定NPO法人Living in Peace)の3つのクラスで「探究コース」を実施しました。

三つ目は、探究クラスの修了生向けの「プロジェクトコース」です。このコースでは実際に自分のアイデアをプロジェクトにし、地域で自分のできることをはじめていきます。9つのプロジェクトが実際に立ち上がりました。重症児(者)施設の1階に駄菓子屋スペースをつくり、子どもたちが気軽に訪れることのできる居場所をつくった「+laugh(アンドラフ)」などのプロジェクトが生まれています。

CforCの目標は3つあります。一つ目は、子どもへのまなざしの獲得です。子どもの願いを大切にしながら、自分にも子どもにも尊厳を持って関わること。好奇心をもって子どもに接すること。自分の価値観のメガネに気づくこと。これらを通して、子どもへのまなざしを獲得していくことを目指します。

二つ目は、一人ひとりの市民性の探究です。自分の願いも大切にしながら、一人ひとりの市民性を追求していき、その人らしく行動できることを目標としています。三つ目は、学び続け、問い直し続けることです。関わりに正解はないからこそ、内省的な振り返りを繰り返していきます。

 

プログラムで実際に行ったワーク紹介

青木:探究コースで実際どのようなワークを行っていたかをご紹介します。例えば、「支援」と「関わり」の違いについてのワークをしました。支援は目的や終わりがあります。一方、関わりには明確な目的や終わりはなく、困っていなくても人とつながっていけるという特徴があります。ワークを通して、市民一人ひとりにできる関わりを考えました。

また、CforCではリフレクションを大切にしています。子どもとの関わりを振り返って言語化し、そこから気づきを得て、次にどうするかを考えていく。プログラムでそんな経験学習のサイクルを回していきます。

PIECESでリフレクションを行う目的は2つあります。一つは、自分の見過ごしている感情や想い、願いに目を向け、それらを受け止めていくことで、子どもと関わる自分のあり方を見つけることです。もう一つは、子どもの願いや背景に想いを馳せ、次からの関わりを探究することです。

例えば、ひとりの女の子に話しかけたとき、その子の反応があまり見られないということがあったとします。その子が興味を示してくれないというのは、私たちが持っている価値観のメガネです。ワークでは、子どもの表情や様子を観察して、客観的な情報から子どもを見ていきました。プロセスコードというツールを使い、自分の気持ちや子どもの気持ちに気づいていくワークを行いました。

 

2020年に生まれた成果ー多くの参加者が子どもの発言の背景を考えるように

プログラム内容を説明した後、参加者に行ったアンケートの調査結果についてお伝えしました。

斎:プログラムの前後で参加者にどのような変化があったかを確かめるため、アンケート調査を実施しました。多くの参加者がアンケートの中で、CforCが役に立ったと回答しています。

子どもは守ってあげる“支援対象”で、大人が弱い存在の子どもを守っていく。プログラム前はそのように捉えていた方も、「相手に合わせて話を聴く」「話を深める問いかけを行う」の項目が伸びていたことから、子どもとの関わりの質が向上したことがわかりました。プログラムを通して、子どもを支援するのではなく、子どもと共に並んで歩いていくという姿勢の変化が起きています。

アンケートでは、参加者の9割以上が「子どもの発言の背景を考えるようになった」と回答しており、子どもへの関わりに重要な想像力が培われたという結果が出ています。他にも「普段の子どもへの声かけの仕方が変化した」「知人の子やまちで見かけた子の中で、気になる子どもに気がつくようになった」といった声も聞かれました。

 

取り組みで得た新たな気づき・CforC2021に向けて

続けて、CforCで得た気づきと今後の動きについての紹介を行いました。

斎:市民性を醸成していく上で大事なものが何かをこの5年間探し続けています。その一つとして、「葛藤」というキーワードが見つかったと思っています。葛藤は市民性や子どもとの優しい間を探究していく上で大切なことだと考えています。

正解がないからこそ、子どもと関わるときには不安や迷いといった葛藤が生まれます。でも、子どもと関わる上で、葛藤という複雑さや曖昧さと共にいれることが、すごく大事なことなのかなと思っています。

わかりやすい正解がどこかにあるんじゃないか、ある方法が合理的でスピードが速いのではないかと感じることもあると思います。

でも、一見遠回りかもしれないけれど、子どもとの関わりに答えを求めるのではなく、学び続け、問い続ける姿勢を持つこと。子どもの周りの環境をつくっていくときに感じる葛藤を大事にできるといいなと思っています。

オンラインを使いながら、これからはさらにCforCの規模を拡大していきたいです。また、今よりも短期間のコースを設け、より参加しやすいプログラムを設計していきたいです。また、修了生を含めたコミュニティの醸成も行っていきたいと考えています。

 
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CforC2020 修了生インタビュー

報告会の後半に、2020年のCforC修了生から、プログラムを受講して得た学びや気づきについてお伝えしました。報告会には一般クラス・水戸クラス・奈良クラスから、5名の修了生が登壇しました。本レポートでは、奈良クラス修了生の糠塚歩里さんの声をご紹介します。

── 自己紹介をお願いします。

現在は会社員の傍ら、学生として心理学を勉強しています。その他の活動では、週に2度ほど近隣の子ども食堂でボランティアをしています。

── プログラムに参加した感想を教えてください。

CforCに参加するまでは、無意識の中で自分が子どもたちに何かをしてあげる立場だという思いがありました。でも、プログラムを通して、与える側と受け取る側というコミュニケーションはないと感じました。

また、CforCに参加して「自分のことも大切にする」ことを学びました。自分のままで子どもたちと関わり、良い関係をつくっていくこと。それがCforCで得た1番の学びです。

── CforCがきっかけとなり、子ども食堂での活動を始められたと思うのですが、ボランティア活動の中で感じていることはありますか。

プログラムの中で講師の方から、ただその場を共有することの大切さを伺いました。子どもたちのために何かを与えてあげるという視点ではなく、ありのままでただそこにいて、その時間を一緒に共有する。そんな優しい間を子ども食堂で感じています。

── プログラムの中で印象に残っていることはありますか。

自分と子どもの関わりを振り返るリフレクションのワークが印象に残りました。子どもがどういう気持ちでその反応をしたのかを紐解いていくのと同時に、自分自身の心がどう動いたかにも焦点を当てていきます。

過去に自分の中にできた価値観や、今自分が大事にしていることをリフレクションで振り返ることができました。

その中で、こうあるべきという思いが自分の中にあったと気づきました。「大人だからこうあるべき」「子どもに対してこういう関わりをするべき」といった思いが自分の中にあったんです。

リフレクションを通して「〜すべき」という価値観ができあがってきた背景に気づきました。「目の前の子どもに対して、自分がこういう感情を持ったのは、過去にこんな経験をしていたからだったんだ」と感じ、自分自身を大切にしていくきっかけにもなりました。

そして、自分が居心地良く、また子どもにとっても良い関わりをしていくために、自分がどう行動すれば良いかもCforCを通じて考えることができました。

── 糠塚さん、ありがとうございました。


一人ひとりの市民としてできることを考えていくこと。自分のことも大切にしながら、子どもの願いに思いを馳せること。学び続け、問い直し続けること。そうして市民としての関わりをつくっていくことが、子どもたちの周りに「優しい間」を広げることにつながっていきます。

CforCの修了生が自分たちの手元からアクションを起こし、新たなプロジェクトが生まれています。一人ひとりの子どもへのまなざしが、うねりとなって社会を変えていきます。

それぞれの市民によるアクションが、子どもの生活する日常の中に生まれ続けていったとき、子どもたちの周りの環境はどう変わっているでしょうか。

子どもたちが孤立の中で生き続け、社会のことを信頼できなくなる明日よりも、人の想像力から生まれる優しいつながりが溢れる未来を、PIECESはこれからもみなさんと共に創っていきたいと思います。

2021.05.17

執筆:田中 美奈

【プログラム報告書】Citizenship for Children プログラム成果報告書2020 ダイジェスト

CforC報告書-13.png

PIECESの主事業、子どもが孤立しない地域をつくる「Citizenship for Children(CforC)プログラム」の成果報告書が完成しました!

昨年2020年、たくさんの応援のおかげで飛躍的に成長したCforCの取り組みを余すことなくお伝えします!
pdfバージョンをダウンロードいただくことも可能です。(ダウンロードはこちら

  1. 代表挨拶:夢でもなく、もしもでもなく

  2. PIECES理事対談「ときに葛藤を味わいながら仲間と『市民性』の醸成に取り組む」

  3. 子どもが孤立しない地域をつくる市民性醸成プログラムCitizenship for Childrenとは?

  4. ① 基礎知識コース The BASIC Course

  5. ② 探求コース The INQUIRY Course

  6. ③ プロジェクトコース The PROJECT Course

  7. 探求コース修了生インタビュー

  8. みんなの声を集めました「CforCに参加してみてどうでしたか?」

  9. アンケート調査からみえる参加者の学び

  10. 協働パートナー団体 特別コラボ鼎談「地域で優しい”間”をはぐくみ続けるために」

  11. CforCに今期助成いただいた企業・財団 / 個人寄付者の皆さま


  1. 代表挨拶:夢でもなく、もしもでもなく

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わたしが星の毛布に包まれて眠りにつくとき
あなたは陽の光の囁きにのびをする

わたしがひんやりと水をすった大地に立ち
あなたに続く空に手を伸ばすとき

あなたは深く深く水に潜り
わたしとつながる海と一体となる

わたしの涙が大河に流れこむとき
あなたの笑い声が宇宙に溶ける

違う世界に生きる
わたしとあなたは
ときに痛み
ときに癒え
ときに闇の中で自分を守り
ときに光を求めてお互いを照らす

遠くて近いわたしとあなたの間に
地球の音色がひびく

近くて遠いわたしとあなたの間に
春の芽吹きが踊り出す

地球のひびきに鼓動を重ね
芽吹きのダンスに身を委ね

違う世界のわたしとあなたは
無数のリズムに溶け合いながら
一つになる

無数の世界の物語は
ときを越えて
空を越えて
旅をする

無数の世界の物語の芽が
ときを越えて森となる

ときを越えて
空を越えて
あなたとわたしの間に
新たな物語がうまれる

今日もまだ見ぬあなたをおもい
あなたへと続く空を見上げる

ibuki 小澤いぶき
認定NPO法人PIECES 代表理事


児童精神科医、東京大学医学系研究科 客員研究。精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。 トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。さいた ま市の子育てインクルーシブモデル立ち上げ・プログラム 開発に参画。 2016年、ボストンのFish Family Foundationのプログラムの4名に推薦されリー ダーシップ研修を受講。2017年3月、世界各国のリーダーが集まるザルツブルグカンファレンスに招待、子ども のウェルビーイング達成に向けたザルツブルグステイトメント作成に参画。


2. PIECES理事対談「ときに葛藤を味わいながら仲間と『市民性』の醸成に取り組む」

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2021年6月に5周年を迎えるPIECES。そんなPIECESを立ち上げから支え、プログラムの中核を担ってきた理事の斎と青木による対談。CforCが生まれた背景や2020年度のチャレンジ、プログラムのキーとなる「葛藤」について。

3. 子どもが孤立しない地域をつくる市民性醸成プログラムCitizenship for Childrenとは?

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Citizenship for Children(CforC)は子どもと自分にとってのよりよいアクションやあり方を探求する「市民性」の醸成を 目指すプログラムです。コース全体の流れと、各コースの特徴をご紹介。

Point

  • 「講座」「ゼミ」「リフレクション」「プロジェクト」の4つの柱

  • 2020年度初めてコースを増設(①③を増設)
    ①基礎知識コース
    ②探求コース
    ③プロジェクトコース

  • 探求コースは「一般(全国)」「水戸」「奈良」の3クラスで実施

4. ① 基礎知識コース The BASIC Course

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2020年度開設の子どもと関わる基礎を学ぶ「基礎知識コース」。2020年、eラーニングで何度でも受講が可能になりました。

児童精神科医やソーシャルワーカー、 まちづくりのプロなど、実践家や専門家による全 6 回の講座をオンデマンド形式で配信。基礎知識コースの受講者は一定期間内ならいつでも、好きな場所で学ぶことができるようになりました。

また、「コース参加者と学び合いたい」という声に応える ために月 1 回、他の参加者と同じタイミングで視聴する時間を設けました。動画を視聴した後には、Zoom上で少人数のグループに分かれて感想や疑問を共有し合い、学びを深めることができる「 感想共有会 」を実施。 オンライン上で講師とやりとりができる質問タイムも設けました。動画を視るだけでは消化できなかったことを解消する機会をつくることで、参加者からは「個人的に感じた疑問をぶつけることができて、とても勉強になった」などの感想が寄せられました。

5. ② 探求コース The INQUIRY Course

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基礎知識コースの内容に加え、月1回のゼミとリフレクションを通じて子どもたちとの関わり方をより深めていく「探求コース」

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年度はZoomやGoogle Classroomなどを駆使し、離れた場所にいても仲間と学び合える環境を整えました。

さらに、今期は水戸クラス、奈良クラス、地域横断型の一般クラスという3 つのクラスを設け、CforCの全国展開に向けた動きを加速させました。

ゼミでは「自身の価値観を深ぼる」「地域の社会資源と市民性」など、各回のテーマに沿って少人数のクラスで グループワークを実施。リフレクションでは、事前に参加者に書いてもらった「プロセスレコード」(実際にあった、自分と子どもたちなどとの関わりを客観的に振り返るためのワークシート)を使いながら、対話を通じて自分と相手にとってよりよい関わりかたを見つめるセッションを行います。

6. ③ プロジェクトコース The PROJECT Course

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「子どもの孤立」の問題を解決するときに大切なのは、信頼できる他者の存在です。それは家族や支援者との関 係といった固定的なものではなく、子どもの周りに優しい 「間」=信頼できる関係を届けることが子どもの孤立を防ぐとPIECESは考えています。そして、子どもたちの周りに優しい「間」があふれる地域をつくるには、私たち一人ひとりが優しい「間」をつくる主体になることが大切だと感じています。

そこで今期は探求コースの修了生を対象に、新たなプロジェクトを立ち上げ、自分なりのアクションを探求する「プロジェクトコース」を新設しました。このコースを通じて、水戸クラスから4つ、奈良クラスから2つ、一般クラスから3つ、計9つのプロジェクトが誕生。必要な知識や考え方を学ぶ月1回の「研修」と、対話を通じて内省と探求を深める「間の発酵所」を通じて、それぞれの地域で優しい「間」をつくろうと取り組んでいます。

7. 探求コース修了生インタビュー

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CforC受講生には様々なバックグラウンドを持ったメンバーがいます。
ここでは今期探求コースを修了したお二人にインタビューを行いました。

CforCに参加したいと思ったきっかけや、自分自身の変化得られたもの立ち上げたプロジェクトなどについてお聞きしました。

8. みんなの声を集めました「CforCに参加してみてどうでしたか?」

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CforC修了後に実施したアンケートから「参加してみてどうだったか」生の声を集めました。

①公開講座について

・「子ども」を共通項にいろんな属性の人の話を聞けたのが面白く、子どもを多角的に捉える材料になった(大学生・18-24歳)
・オンラインで自由な時間に見ることができるので参加しやすかった。講座の流れが、次第に実践に向かうように作り込まれており、具体性が高まっていく感じがよかった(経営者・25-34歳)

②ゼミについて

・初回のゼミの導入で、みんながあれほどすぐに自己開示を始められたのは魔法を見るようだった。あれがあったこらこそ、全体の深い学びにつながったという気がしています。来年も再来年も、あの魔法の時間が生まれてほしい。(会社員55-64歳)
効果的なメゾットを使って、体験しながら理解できるように工夫がされていました。自分のような未経験者でも楽しく参加でき、たくさんの気づきが得られてよかったです。(自営業・65歳以上)

③リフレクションについて

優しくみんなが受け止めてくれる空間だからこそできることだと感じます。いろんな問いを投げかけてくださることで、すごい気づきがあるのでよかったです。(大学生18-24歳)
・質問して気づくこと、質問されて気づくころ。一つの場面をいろんな方向から見ることで、子どもに対する見方が変わったように感じるのは、リフレクションのおかげだと思っています。(自営業・35-44歳)

④プログラム全体について

自分史上、最高の学びでした。出会うべくして出会った。自分の回り道はここに来るためだったのか、と思えるぐらい。このプログラムをよくしていくために。今後も引き続き関わっていくことが私の希望ですし、感謝の証しだと思っています。(会社員・55-64歳)
・スタッフの方々がとても丁寧な関わりをしてくださるなと感じました。人を大切に、優しい「間」が生まれるような関わりをしてくださっているんだなと感じる6ヶ月でした。(大学生・18-24歳)

9. アンケート調査からみえる参加者の学び

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実際にCforC のプログラムを受ける前と受けたあとで、参加者にどのような変化があったのかを確かめるためにアンケート調査を実施。ここでは、その分析結果をご紹介しています。

Point

子どもへの関わり方自分の生き方に変化が生まれている
「知識」「関わり方」「自己理解」「マインドセット」全てのカテゴリで有意差。質も向上している
自分自身の行動の変容関わる子どもの変化が実感されている

10. 協働パートナー団体 特別コラボ鼎談「地域で優しい”間”をはぐくみ続けるために」

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CforC2020「探求コース」の水戸クラスと奈良クラスは、地域で取り組みを続けるNPOとともに展開しました。ここでは2020年12月に行っ たFacebookライブ鼎談の内容を基に、各団体の活動内容やPIECESとの協業に込めた想いなどをお伝え。

NPO法人セカンドリーグ茨城 理事長 横須賀聡子さん 、認定NPO法人Living in Peace 理事 伊勢巧馬さん 、PIECES事務局長 斎 典道 の鼎談です。

11. CforCに今期助成いただいた企業・財団 / 個人寄付者の皆さま

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CforCは本当に多くの企業・財団・個人支援者の方々に支えられ、実施することができています。

改めてご支援を本当にありがとうございます。

2020年、事業規模は前年比約3倍に。全国展開へ大きく飛躍した1年間を支えてくださり、本当にありがとうございました!

Special Thanks

株式会社大和証券グループ本社 様
公益財団法人パブリックリソース財団 様
Water Dragon Foundation 様
継続寄付339名のみなさま
単発寄付317名のみなさま

プログラムを寄付で応援する
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制作協力

ディレクション:瀬戸久美子
デザイン:長谷川真澄
写真:吉澤健太、古立康三
イラスト:細野由季恵


CforC実施報告会を開催!

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CforC報告会では、こちらの報告書の内容に加え、生の声やプログラムの雰囲気がわかる時間にします。CforCプログラムが目指していることと昨年までの成果をお伝えし、プログラムを受講された方だけでなく、関心を寄せてくださるお一人お一人と子どもの周りに優しい「間」があふれる地域を共に育んでいくための一歩を見つけられたらと思います。

◆当日のコンテンツ(予定)

  • PIECESとCitizenship for Childrenの歩み

  • Citizenship for Children2020(水戸・奈良・全国横断)の活動報告

  • 市民として、PIECESメイト(寄付者)として共にできること

当日はCforC運営メンバーはもちろん、修了生も参加し、実際受講してみての感想や得た学び、変化したことなどありのままの言葉でお伝えします。

いつもPIECESを応援してくださっている方も、初めてPIECESを知る方も、CforCに興味がある方も、ぜひご参加いただけたら嬉しいです。スタッフ一同、皆様のご参加を心よりお待ちしております!

日 時:2021年4月24日(土)14:00-15:30
(アフタートーク 15:30-16:00を予定しています)
参加費:無料 / 寄付付きチケット(3,000円、5,000円、10,000円)
開 催:オンライン(zoom)
主 催:認定NPO法人PIECES
問い合わせ:event@pieces.tokyo
申し込み:https://cforc0424.peatix.com/

 
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イベントレポート|わたしの暮らす社会に対してできること〜市民性とソーシャルアクション

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SDGsの広まりなどを受け、社会課題解決に対する世の中の関心が高まりつつあります。「私にも何かできることがあるのだろうか」と考えたことのある方も多いのではないでしょうか。

子どもが孤立しない地域をつくるための市民性醸成を行う認定NPO法人PIECESと、「すべての人にチャンスを」をビジョンに、児童福祉をはじめ、様々な社会課題解決に取り組む認定NPO法人Living in Peaceの両代表による、オンライン対談が3月24日行われました。

2団体に共通するのは、社会を「特定の個人や団体ではなく、社会に暮らすわたしたち皆で変えていくもの」と考えていることです。そんな両代表が「社会をよりよい場所にしていくために大切なことは何か」についてお話しました。


団体紹介

まず、PIECES代表の小澤いぶき(以下:小澤)から、団体紹介がありました。

小澤:私は、心のケアを専門とする児童精神科医です。現場で出会う子どもたちを通して、この日本でも私たちのすぐ隣に痛みを抱えている子どもたちがたくさんいることを知りました。

子どもたちの周りには子どもの育つ環境があるけれど、その環境にいる人も痛みを抱えていたり、ひっ迫していたりして孤立していることがある。家族の相談を受ける機関もひっ迫しているという状況をたくさん見てきました。

子どもを取り巻く社会構造のひずみが、子どもたちにしわ寄せられています。その構造に対して、誰もが関わっているからこそ、一人ひとりの手から社会にはたらきかけていけるような土壌を耕していく必要があると思い、PIECESを立ち上げました。

相対的貧困は7人に1人、虐待相談対応件数約19万件(2019年度)、いじめの認知件数約54万件。貧困や虐待、不登校などの社会課題の背景にあるのは、子どもたちの心の孤立です。10人に3人の子どもが孤独を感じているとの報告もあります。孤立は、社会が生み出しているループです。

PIECESが目指し見つめているのは、時代を超えて子どもと共に優しい間を紡ぎ続ける社会です。優しい間というのは、互いに安全に頼り頼られる関係や、安全に自分の感情や欲求、願いを出せること。子ども自身やその子の背景に敬意を持ち、知ろうとし、想像力を持って尊重すること、関わりを問い直し続けていくことが優しい間には必要だと考えています。

社会に起こるさまざまなことを見つめ、受け取り、その上でさまざまにはたらきかけていく優しい間を紡ぐ力を私たちは市民性と呼び、市民性醸成プログラム(Citizenship for Children)という講座を全国へ広げています。皆さんがPIECESの想いに共感してくださり、何か自分にできることはないかと考えた時に、思い出していただけたら嬉しいです。

この講座は、子どもの環境を作っていくひとりの市民としてできることを考え深めていくプログラムです。座学にゼミと実践を加えて学び、子どものことはもちろんのこと、自分自身も大切にする方法を学んでいきます。

この講座から、例えば豊島区の若年妊婦支援プロジェクトである、project HOMEの前身となった「もえかんち」や、水戸市のコンビニオーナーさんが地域の子どもと話し合いながら、イートインコーナーをフリースペースとして開放し、地域の子どもたちの居場所にするなどの実践例が生まれています。現在、水戸市と奈良に続き、オンラインでの全国コースも開講しています。奈良のコースは今日登壇しているLIPさんと一緒に行っているものでもあります。

 私たちは子どもたちが孤立の中で生き続け、社会のことを信頼できなくなる明日よりも、人の想像力から生まれる優しい間のあふれる社会を創りたいと願っています。マンスリーサポートなどでのご支援もよろしくお願いします。

毎月の寄付で優しい間を育むPIECESメイト(マンスリーサポーター)になる

続けて、認定NPO法人Living in Peace(以下:LIP)の代表理事、中里晋三(以下:中里)と龔 軼群(キョウイグン・以下:キョウ)が団体紹介を行いました。

中里:2007年にLIPは、主に途上国の貧困層、金融サービスにアクセスできず銀行口座を持てずにいる人へ、小口融資を行うマイクロファイナンス領域でのプロジェクトからスタートした団体です。

キョウ:村で小さなお店などをしていて、事業のためにお金が必要な一方、親類や高利貸しという選択肢しかなかった人たちに、日本の投資家から融資を募り、ミャンマーやカンボジアなど東南アジア諸国でこれまでに約2億3000万円規模のファンドを立ち上げてきました。

その後、2009年には、社会的養護の下で育つ子どもたちへ支援を行う、こどもプロジェクトを始めました。国内の児童養護施設や里親の元で生活する子どもたちの支援、子ども食堂などを行ってきました。2018年には難民プロジェクトという、日本国内の移民難民の支援をする活動を立ち上げています。

中里:LIPのビジョンは「すべての人にチャンスを」というものです。そして活動におけるモットーが「働きながら社会を変える」。LIPは現在150人ほどのメンバーで運営していますが、全員が他に本業を持ち、平日夜や土日を使ってパートタイムで活動しています。僕自身、普段は大学院で哲学を使いながら福祉を研究しています。

キョウ:私は株式会社LIFULLの社員ですが、住宅弱者の住まい探しをサポートするLIFULL FRIENDRY DOORという事業を通じてソーシャルアクションを起こしており、現在はその事業責任者も務めています。

もともと、上海から5歳で来日した移民なので、日本社会での外国人という異物感や不平等を肌で感じてきました。そんな経歴も手伝って、LIPでマイクロファイナンスプロジェクトや難民プロジェクトに関わっています。

ソーシャルアクションは、企業の中でもNPOでも、どちらでもやろうと思えばできることです。LIFULLでは最初ひとりでソーシャルアクションを始めましたが、徐々に仲間が集まって来て、いつの間にかキャリアにもなっていました。社会に対してできることを探している人へ、一例として参考にしてもらえればと思います。

中里:ちょうど今年に入って、「移民・難民の子どもたちのいのちを守る基金」という、生活保護利用の困難な外国籍子育て世帯向けの緊急支援を始めました。第一弾を終え、第二弾の実施に向けたクラウドファンディングを行っています。寄付という行動も社会を変えるアクションの一つです。ぜひご支援をご検討ください。

クラウドファンディングページを見る

ひとりの市民としてできるソーシャルアクションとは?
ークロストークセッション

今の活動に至った背景

キョウ:会社に入ったとき、フィリピンのスモーキー・マウンテンを支援するNPOで、ボランティアをしていました。そのNPOのスタディーツアーでフィリピンに行ったとき、LIPの理事もそのツアーに参加していて。そのときにLIPのことや、NPOの一員として事業を創ることのできる場所があると知り、2015年にLIPに入りました。

また、自分自身が当事者として「入居差別をなくしたい」とずっと思っていたので、LIFULLに入って社会課題解決の新規事業を2016年に立案しました。それが今LIFULL HOME’SのSDGs事業として成り立っています。

小澤:山梨の田舎出身で、人よりも虫や動物や木の方が多い中で育ったことが背景にあります。森ではそれぞれが存在しながら補い合っています。でも、その中で毛虫という理由だけで、人に毛虫が踏みつぶされることに衝撃を受けました。

その後、戦争関係のアニメや映画を見て、自然に対してしていることが、人の世界でも起こっていると知り、「どうしてこんなことが起こるのか」と思うようになりました。「どうして同じ地球に生きていて、たまたま生まれた場所が違うだけで、こんなにも環境が変わってしまうのだろう」と子どもの頃から感じていました。

中里:LIPに入った経緯は、本当に偶然ですね。「少し社会科見学をしてみようかな」くらいの気持ちで、NPOのミーティングに入ったら、深夜になってもメール上での熱い議論が延々と続いて終わらないということがあって。「その雰囲気って何だろう」と思ったのが、最初のきっかけです。

それと、今もそうですが、LIPはフラットでした。僕自身、何らスキルを持っていない中で、対等に扱ってもらえた経験がすごく大きかったです。対等に扱ってもらえる場所に出会えたことが、自分を次のステップに押し上げてくれる力になったのだろうなと思いますね。

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活動する中で感じた市民の力

キョウ:アクティボ(activo)というボランティアサイトで、1年前くらいからLIPの掲載を始めたら、ボランティアをする人がすごく増えました。いろんな人がフラットにLIPの見学に来てくれるようになったんです。見学者も2倍以上になったのではないかと思います。

それは、活動に興味関心があって「自分も何かやってみよう」と思う方々が増えているということだと思います。ボランティアの皆さんのおかげで、LIPの事業も広がってきていると感じます。

中里:コロナの影響で、全てのミーティングをオンラインでするようになったことで、今までだとオフィスに来るのが難しかった方が、LIPに入ってきてくださって。子育てをしていて、その経験や思いを行動に移したいという方も随分増えました。議論の豊かさが変わり、とても大きな変化を感じています。

また、子どもに関わるお兄さん、お姉さんの関係は、仕事として関わるという文脈では、できないことの一つだと思っていて。でも、すごく大事なことですよね。同じことを子どもに言うとしても、伝わり方が全然違う。それは市民の力の一つなのだろうなと思います。

小澤:PIECESでは「この地球をともにしていて、何かが起こったときに、それを見つめて受け取り、働きかける人たち」を市民と言っています。私はひとりの市民でもあり、専門職としてもトラウマケアに従事しています。心に傷がついて、専門的なケアが必要になったとき、日常の安全がすごく大事です。

その安全を作っているのは、地域に暮らす人々です。専門機関の関わりは、どうしても終わりがありますが、地域の人との関わりは終わりがなく、自分でどうしたいかを関わりの中で選んでいけるのではないかと思うのです。

また、間接的な関わりも含め、誰が制度を必要としているかに気付いたり、実際に制度が地域の中で実践されていったりするのにも、市民の力が必要です。

ソーシャルアクションの一歩目

キョウ:生活の中で当たり前になっているものに、誰かが困っていないかと考えてみる。それがソーシャルアクションの一歩目ではないかと思います。そのことが、次にどうしたら良いかにつながっていくと思います。

小澤:他者のことを想像する力でもあるのだろうなと思いました。知らないことがあることを知りながら、人と出会うことが、さらに想像力を耕すのだろうなと。

キョウ:「出会いに行く」ことも大事だと思います。実際に出会いに行くことで、その人の困りごとについての想像がどんどん広がって、何が必要かを考えることができると思います。フィリピンのスモーキー・マウンテンに行かなければ、LIPを知ることはなかったと思います。


小澤:子どもたちは時に出会いに行かないと出会えないことがあるなと思いました。小さければ小さいほど、子どもたちは周りの大人を介して社会につながっています。出会いに行って初めて、解像度高く、その子の生活の実態を知ることができると思いました。

中里:第一歩はおそらくそれぞれ違うものとして、全ての人の身近なところにあるはずですよね。

LIPではいろんなメンバーとの出会いが、「こういうことができるな」と気づいたり、自分になかった視点を与えてもらったりするきっかけになります。その中で、チームで問題解決の方法を考える循環が生まれてくると思います。

だから、出会いがおそらく出発点だと思います。そしてその出会いに、心地良さと感じたり、ワクワクしたりすることが、一歩目を踏み出す大事なサインじゃないかと思います。

小澤:出会いによる面白さの中に、自分が持っていないメガネを知れることがあると思います。それで、気づきのポイントが増えていくことはありそうだなと思いました。

周りで起こっている出来事に関心を向けて、私の範囲がどんどん広がっていくと、自分の日常や、海外などの遠くだと思っていた日常にも、アクセスできるようになるのかなと感じました。

ソーシャルアクションの一歩目のかけらは、日常の中にたくさん見つかると思います。寄付をすること、周りの出来事に関心を持って発信をすることなども、できることの一つです。

中里:それぞれの立場から、問題をマクロの視点で捉える、また身近なところからミクロの視点で捉えるという仕方があって。ソーシャルアクションの起こし方は、ひとりの人の中でも固定したものではないですよね。

小澤:大きな制度にはたらきかけていくアクションから、日常をつくっていくアクションまで、どれもが必要で。ミクロとマクロを行き来できることが、すごく大事なことだと思います。

キョウ:自分の中で生まれた問題意識に目を向けるだけでも、それはソーシャルアクションだと私は思っています。

一方で、日常ではカバーしきれない、制度からこぼれ落ちてしまう人たちがいます。そのことを知っても、自分とのつながりを感じづらいこと、その人たちの立場に立って想像してみることの難しさは、往々にしてあるなと思って。

社会から取り残されている人たちがいることをちゃんと認識して、そこに対してアクションを起こすために、価値観を変えていくことも、もしかしたら必要なのかなと思っています。


ソーシャルアクションの一歩目は、私たちの日常の中にあります。

困っている人がいないか想像してみること、自分から人に出会いに行くこと、寄付をしてみること、周りの出来事に関心を持って発信すること、社会問題に目を向けることなど、私たちができることはたくさんあります。

ひとりの市民として、自分にできることを探してみること。そのことが、日常の安全を紡ぎ、子どもたちの暮らす社会が、より良い場所になることへつながっていきます。あなたの小さな一歩が、社会にとって大きな一歩になります。


今回の対談が、あなたの背中をそっと押し、新たな一歩を応援するきっかけになることを願っています。

2021.04.12
執筆:麓 加誉子・田中 美奈

アニュアルレポート2019-2020ダイジェスト

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アニュアルレポート2019-2020が完成しました!

PIECESの事業や関わる人の輪が大きく広がった1年の軌跡を、ぜひご覧いただけたらと思います。
pdfバージョンをダウンロードいただくことも可能です。(ダウンロードはこちら

  1. 代表挨拶:ことばに「優しい間」を宿す

  2. 新型コロナウイルス流行を受けての発信と取り組み

  3. 2020年役員体制を刷新

  4. 活動① Citizenship for Children 2019水戸

  5. 活動② Citizenship for Children 2020

  6. 活動③ 若年妊婦のための居場所project HOME

  7. 活動④ Reframe Lab

  8. 活動⑤ 広報ファンドレイズ

  9. PIECESメイトの輪

  10. 応援メッセージ #ひろがれPIECES

  11. メンバー紹介・採用情報

  12. 活動計算書


1. 代表挨拶:ことばに「優しい間」を宿す

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わたしが行動を起こす時、その背景にはどんな感情があって、どんな経験が影響しているのでしょうか。わたしが生きてきた社会の規範がどう影響しているのでしょうか。

そう問うことは、難しく、終わりはないけれど、今までかけてきたメガネをかけたくなった感情や、経験に気づき、そっと自分に問うてみる。そのメガネを外したら目の前のことはどんな風に自分に映るのか。

そんな営みを繰り返しながら紡ぐ言葉と、その言葉を受け取る人との間には優しい間が宿るのではないでしょうか。

PIECES代表 小澤いぶき

2. 新型コロナウイルス流行を受けての発信と取り組み

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2020年、新型コロナウイルスが猛威を振るい、子どもたちにも大きな影響がありました。
PIECESでは、子どもたちやその周りにいる大人たち、困りごとを抱えた人たちに広く届くよう、様々な発信を行いました。

新型コロナウイルスに関してのこころとからだのケア 〜過程や子どもの居場所などでできるケア〜

新型コロナウイルス「からだとこころのワークブック」

とどけるプロジェクト
新型コロナウイルス感染症に関する情報を、様々な不安や困りごとのある方、情報が届きづらい方にとどけるために立ち上げたプロジェクト

3. 2020年役員体制を刷新

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時代を超えて、子どもを取り巻く環境に働きかけ、市民性を発揮し続けて行くためには、グローバルな視点や歴史的な視点を踏まえた上で、現在起きている現象を見渡していく広い視野が必要であると私たちは考えています。局所的な判断に捉われるのではなく、今見えていない誰かへの想像力を養う必要があるからです。

PIECESの行う市民性醸成の活動は、短期的にわかりやすい成果が出るわけではなく、継続的に行っていくことが重要です。そこで、そのような視点を補い共に歩みを進めてくださる新たな理事・監事の4名をお迎えし、新たな役員体制へと体制を変更いたしました。これまで設立から役員を務めてきてくださった7名の役員のみなさまへ心からの感謝をすると共に、新生PIECESとしての歩みを進めていきたいと思います。

新理事
・小野田峻 氏
小野田高砂法律事務所 / 弁護士
・荻原国啓 氏
ゼロトゥワン株式会社 代表取締役社長 / ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション(SEA)代表理事 / ピースマインド共同創業者

新監事
・佐藤暁子 氏
ことのは総合法律事務所 / 弁護士
・長田和弘 氏
長田和弘税理士事務所

4. Citizenship for Children 2019水戸

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近年、子どもの貧困や虐待、いじめなどの問題が顕在化する中で、子どもや家族の「心の孤立」をいかに防ぐかが、重要な課題となっています。ここでいう「心の孤立」とは、生きづらさや困難を抱えていても、大人や社会に助けを求めることができない、頼れない状態のことです。子どもの育ちにとって大切な、信頼できる他者の存在。

たとえ心に小さなケガをしたとしても、その傷口が広がる前に癒しあえる仲間の存在。そんな存在が地域や社会の中に生まれ続けていくための仕組みや文化を築いていくことが必要ではないか。そんな課題意識を受けてPIECESは2016年から市民性醸成のプログラムを実施してきました。約3年間4期にわたり、東京都内でプログラムを実施したのち、2019年より「Citizenship for Children(CforC)」と名称を変更し、茨城県水戸地域でのプログラムを皮切りに全国展開が始まりました。

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プログラムは、①専門知識を学ぶ座学講座、②子どもと関わる現場実践、③リフレクションとコミュニケーションを扱うゼミ、という3つの取り組みから構成されています。この3つのプロセスを通じて、約6ヶ月間、12名程度のチームで対話と内省を繰り返しながら「自分だからこそできるアクション」を問うていき、プログラム修了後の主体的な社会への参画を促していきます。

5. Citizenship for Children 2020

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2020年度のCforCは従来のプログラムを「探求コース」と位置付けた上で、「基礎知識コース」や「プロジェクトコース」を新設し、「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡ぐことのできる大人を増やすための活動を一気に加速させました。

昨年に引き続き、水戸ではNPO法人セカンドリーグ茨城さんと協働。また、今年新設した奈良のコースではLiving in Peaceさんとの協働がスタートしました。CforCでは今後も、各地のパートナーと連携しながら優しい間を紡ぐ市民を増やす活動を丁寧に手がけていきます。

6. 若年妊婦のための居場所project HOME

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NPO法人ピッコラーレさんと協働で、東京都豊島区にある一軒家で最初の「HOME」が始まりました。

ネットカフェなどの不安定な居場所を転々としている孤立した妊婦さんたちが「いつでもおいで」と受け入れられる、いつでも立ち寄って相談できる。そんな安心で安全な「HOME」をつくるプロジェクトです。

HOMEを開始するにあたって実施したクラウドファンディングでは640名の方から7,750,000円のご支援をいただきました!本当にありがとうございました。

ピッコラーレさんと共に、活動を通して温かいまなざしを持った地域をつくっていきます。

7. Reframe Lab

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時間や空間を超えて、この世界にいるさまざまな存在・生命と共に在ることへの想像力を広げていくプロジェクト「Reframe Lab」。こども研究員と共に体験型で進めていくアートプログラムで、あらゆる存在への想像力を拡張させ、問いを広げ、未来のかけらを見つめていきます。

2020年のテーマは「ミエナイモノとあそぶ Immersive Experience」。「目に映るもの」だけで考えるのではなく、かつて存在していた生命や非生命、そして人の痛みや優しさといった”ミエナイモノ”への想像力を育むプログラムを実施しました。

8. 広報ファンドレイズ

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PIECESが大切にしている「情報発信ポリシー」を公開しました。広報ファンドレイズとグラフィックデザインに関して、私たちが何かをアウトプットする際に大切にしていることを言葉にした発信ポリシー。日々の発信から「優しい間」を紡いでいけるよう大切にしている価値観です。

イベントは1年の間に主催、共催、登壇、ライブ配信などを含め計46回実施しました。(2019年11月~2020年10月)多くの方にPIECESを知ってもらうことのできた1年でした。
ご参加くださったみなさま、ありがとうございました!

9. PIECESメイトの輪

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継続寄付者は1年間で約3倍の339名となり、単発でのご寄付も300名以上の方から頂戴しました。企業や団体様からの寄付・助成も前年度を超えるものとなり、温かなサポートに支えられ活動を発展させることのできた1年間でした。PIECESを寄付で支えてくださる寄付者「PIECESメイト」のみなさんとこれからも共に歩んでいきたいと思っています。

2018年のプログラム修了生・PIECESメイト(継続寄付者)である江澤萌さんにお話を伺ったインタビューもぜひご覧ください。

私たちは、寄付者の皆さんと「寄付するー寄付される」という関係を越えて、共にありたいと願っています。これからも「優しい間」を共にひろげる仲間として、どうぞよろしくお願いいたします。温かなご寄付を本当にありがとうございます!

10. 応援メッセージ #ひろがれPIECES

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PIECESをさまざまな形で応援してくださっているみなさんから応援メッセージをいただきました。

いただいた応援メッセージはnoteに掲載しています。(note「PIECES magazine」はこちら

アニュアルレポートで紹介しきれなかった温かく優しいメッセージを、ぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

また、SNSを通じて #ひろがれPIECES でシェアいただいたたくさんのメッセージもとても心強いものでした。ありがとうございました!

11. メンバー紹介・採用情報

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2020年、PIECESは4名の新たなスタッフを迎えました。CforCの各クラスを担当する運営スタッフと、経理などのバックオフィス業務を担当するスタッフを迎え体制を強化し、活動を展開することができました。

採用情報

プログラム拡大の基盤をつくるファンドレイズ担当スタッフを募集しています!

企業や団体など法人向けにPIECESの活動を広く広めていただきながらファンドレイジング活動をになっていただける方を募集します。

詳細についてはこちらにお問い合わせくださいstaff@pieces.tokyo

12. 活動計算書

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アニュアルレポートは「継続寄付者のみなさま」と「1万円以上の単発寄付をくださったみなさま」へ紙媒体でお渡しをしております。ぜひ最新のアニュアルレポートをお手元でご覧いただけたら嬉しいです。

PIECESの活動はみなさまからの継続的なご寄付によって支えられています。来年度以降も活動を共に継続・発展させていく仲間になってくださいませんか?

PIECESメイトになる
 

Special Thanks

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第4回目のリフレクションを開催!問いの裏にある願いにも想いをはせてみよう

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自己覚知につながる「問い」を立てて、みんなでリフレクションをつくっていこう! 12月6日(日)と10日(木)に、第4回目の「リフレクション」が開催されました。今回の目的は、「リフレクション」で大切にしたいことを確認ながら、みんなでリフレクションをつくっていくこと。合計25人の参加者と一緒に、グループリフレクションを通じて通り過ぎていく日々を振り返り、意味を紡ぎ直しました。


【当日の流れ】

最近の出来事や気持ちをグループで共有したあと、①リフレクションの基本と学びを復習 ②グループでリフレクション ③セルフジャーナルと感想のシェアの3つのセクションに分けてプログラムを進めました。

・セクション1 リフレクションの基本と学びを復習

リフレクションにおける観察と仮説や自己覚知についておさらいしたのち、CforCのプログラムにおけるリフレクションの意味と大切さを確認しながら問いの立て方のポイントを学びました。

・セクション2 グループでリフレクション

プロセスレコードを書いてくれた人に「リフレクションを通じてどんなモヤモヤが晴れるといいと思いますか」などを確認したうえで、「このとき、男の子はどんな気持ちだったと思いますか」「次に同じような場面に出合ったら、どんなふうに行動したいですか」など、問いの裏側にある願いや意味を意識しながらリフレクションを進めていきました。最後は質問をした人が、その問いを選んだ理由などを伝え、質問された人には感想や気づきをシェアしてもらいました。

・セクション3 セルフジャーナルと感想のシェア

質問をすることで感じたことや、問われてみて気がついたことなどを言葉やイラスト、ドローイングでまとめてもらいました。その後、各グループでプロセスレコードを発表してくれた人から、全員に向けて気づきや感想を共有してもらいました。

【当日のハイライト】

今回は「ティーチング・クエスチョン」や「コーチング・クエスチョン」など問いの種類や意図について説明し、参加者に問いを立ててもらうことを大切にしました。自分がその問いを立てた理由にも目を向けることで、参加者全員がリフレクションや対話の意味を紡ぎ直す機会にもなりました。開催後は「リフレクションを受ける側はもちろん、問いかける側にとっても有意義な回になった」といった感想が聞かれました。

【参加者の声】

・今回は「問い」の種類を認識し、問いをかける意図を意識しながらリフレクションを行っていきました。私は問いをかける側で、相手がもやもやした際に守りたいものは何だったのか、子どもが激しい行動をした際の子どもの願いは何だったのかを意識しました。リフレクションを通じて、子どもが激しい発言をした際に注意しないという選択をしたのは、子どもとの信頼関係を壊したくないという願いからだと認識できました。そして、「子どもに好かれたいのか、嫌われたくないのかどっち?」という問いからは「嫌われたくないわけではないけど、嫌われることをしずらい」という答えが出て、さらにその願いに関する問いが出て…と、思考が止まらないリフレクションになったと感じました。

・リフレクションを重ねるたびに、皆さんとともにいることの安心感や連帯感も育ってきたように思う。リフレクションをしたMさんの「子どもに気をつかわせてしまって申し訳ない、大人の都合で包んであげられないもどかしさ」は、Mさん自身の優しさの裏返しなのかもしれない。ティーチングやコーチング視点での問いをする余裕も経験もまだないけれど、講座での学びも生かしながら、時折感想を述べながら問いを生み出していった。リフレクションは、自分が問われる側のときはハラハラするけれど、みんなの問いから自分の心の隅々、奥底まで心のカケラを拾いに行くことで、多様な考えかたや新しい課題が見え、自己と他己とがリンクして柔らかな優しさで包まれる場だと改めて感じている。

セミナーレポート|子どもの孤立を防ぐ、コミュニティのつくり方 〜なぜそこには「つながり」が生まれるのか?〜

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1月17日(日)、「子どもの孤立を防ぐ、コミュニティのつくり方 〜なぜそこには「つながり」が生まれるのか?〜」として、NPO法人ハンズオン埼玉理事であり、コミュニティワーカーの西川正さんをお招きして公開講座を行いました。

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講師:西川正

NPO法人ハンズオン埼玉理事
学童指導員、出版社、NPO支援センター事務局長などを経て、2005年、特定非営利活動法人ハンズオン埼玉を設立。毎年数千人が参加する「おとうさんのヤキイモタイム」キャンペーンや、コロナ禍中では「翔んでさいたマスクプロジェクト」など、市民参加型のまちづくりのプロデュースに関わる一方で、まちづくりや子育て支援にかかわる研修などで講師やファシリテーターとして活動。朝日新聞『天声人語』、NHK『課題解決ふるさとグングン』などでとりあげられる。

◆講座内容

講座は以下4つのセクションに分けて進められていきました。


・まちづくりの取り組み

最初のパートでまず話していただいたのは、これまで西川さんが行ってきた活動についてです。これまで西川さんが実際に行ってきた場づくりの事例から、遊ぶと学ぶの場づくり(人がつながり動き出すのはどんなとき?どんな場所?、何かをしてみようと思える環境とは?)についてお話しいただきました。

・取り組みの背景にある課題意識

ここでは、西川さんが活動を始めたきっかけであるお子さんの保育所時代の話から、西川さんの課題意識について話されました。保育サービスが産業化したことにより、利用する保護者は「トラブルはごめんだ」「先生、きちんと監視して」という態度になり、保育士側もサービスを提供する側として振る舞って緊張感が常にあります。その結果、保育士と保護者、保護者同士も孤立していくのではという話をしてくださいました。その上で、「応える」ということを大事にして場をつくっているという話がありました。場の作り方次第で、そこに来た人はお客さんにも、当事者にもなる。そこにいる人たちで何か一緒にできることはないかという視点を持つことの重要性が語られていました。

・対談①~あそびとつながり~

講師の西川さんとPIECESの斎、そしてNPO法人セカンドリーグ茨城の横須賀さんの3人で「あそびとつながり」について対談をしました。

「つながりは関係性のことであり、関係性は作るものではなく、生まれるもの」と西川さんは話されていました。そして、関係性が生まれるためには「一緒に」何かをするということがポイントであり、「一緒に」何かすることで試行錯誤し、その結果として関係性が生まれてくる。その試行錯誤やトラブルが起きることが大切だと話されていました。その他にも、苦情に対する姿勢や日頃出会えない人との出会い方についても話されていました。

・対談②~共に育つ、共にある~

前のセクションに続き、3人で対談をしました。

ここでは「共にある」ということをテーマに、「お客さん」から当事者に変えていくということについて話されました。当事者に変えていくためには、その人自身が工夫をするということが必要になってきます。そこで、場やプログラム自体に工夫する余地があるかということ、そしてその人自身に工夫する力があるかという2軸から、参加のデザインについて西川さんから話されました。

また、子どもたちとの関わりについてもお話をされました。

木登りの例が出て、「左足をそこにおいて、そしたら右手はここ!」とたくさんサポートをされながら登っても、ハラハラドキドキするような楽しみはあるのかという話が紹介されました。そのように、何かする人の横にいる人はどう振る舞うのか。それによって「共に」なのか、一方通行の「ために」なのかということが変わっていくという話もありました。

<公開講座当日の様子>

◆当日の質疑応答の様子

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当日は講義動画をそれぞれで視聴した後に、数人ごとで感想共有を行い、全体で質疑応答を行いました。

質疑応答では「中学生と大人で話す機会を作っていた、トークフォークダンストークで、大人側への質問、子どもへの質問で意識していることはありますか」「失敗例や砕けてしまった例はありますか?」「西川さんが、人と人が会うデザイン(七輪とか焼き芋とか)を思いつく時って、誰の顔が思い浮かんだり、もしくは何を思ったりしていますか。」「参加をデザインすることについて、そのデザイン力は、学んで得られるものなのか?センスか?遊び心か? 何かいい方法がありますか。」といった多くの質問が参加者から寄せられました。


質疑応答の中で、「活動を広げていくときに、人を巻き込むときにどのような工夫をしていますか」という質問に対し、西川さんは以下のように答えてくださいました。

「やっている人がとにかく面白いというか、楽しいと思えるかどうかということを気にかけてやっています。そうすると、その人が大事にしている人に声をかけてくれる。でも、やっている人がつまらないなとか、しんどいなと思ってやっていたりすると、友達を誘えない。自然に(友達を)誘ってもいいかなと思えるようにするというのが一番。それをやっていると、例えばPTAをやっていても、今の人たちが楽しいということをやっていれば、翌年の役員がすぐ決まる。今年は面白そうと噂が人がって、手をあげる人が出てくる。そういうことだけを気にしている」

まずは楽しんでいくこと、そして「共に」何かをするということから、つながりが生まれていく。西川さんの事例や話は、どれも参加してみたいというあそび心があり、余白があります。その余白は、工夫する余地ということであり、ゆるやかに人と人とが結びついていく地域になるのだと思いました。

◆感想

以下、参加者からの感想です。

・「ボランティアコーディネーション」ということを初めて知りました。「ピンチはチャンス」「for子どもではなく、with子ども」「保育も福祉もサービス化している印象」「苦情=寂しいという想い」「子どもは準備されすぎ、大人は準備し過ぎ」というワードが印象に残りました。

・ゆるい糸をはっておく、何か緊急なことが起きたら、糸を張る、というのが印象的だった。最近、自分の中で、コミュニティ作りは「人の日常生活の延長線上で」という意識が強くある。西川さんの取り組みは、まさにそれに当てはまるのだけど、「日常生活の延長線上のデザイン」の解像度をあげてくれる話だった。サービスを受けるところは受ける。受けない、もしくは受けられないところは、自分でなんとかする。そこのはっきりしている境界線をぼやかしていくことがコミュニティ作りかなと思った。

・つながりは作るものではなくて生まれるものであり、つながりが生まれる場をどうやって一緒につくっていくのかという考えがとても深く残っています。また、苦情が来たら仲良くなれるチャンスととらえていたり、苦情を苦情のまま捉えてそれが来ないように活動するのではなく、その背景にある「仲間に入れて」というメッセージを感じ取って、一からその人と関係性を作っていくということにとても納得しました。どのような形でも興味を持ってくれていることに変わりはないので、そういった人を巻き込んで一緒に取り組むことでつながりが生まれるのかなと感じます。


セミナーレポート|まちの風景から眺める、子どもの暮らしと市民性

まちの風景から眺める、子どもの暮らしと市民性

12月6日(日)、「まちの風景から眺める、子どもの暮らしと市民性」、九州大学大学院人間環境学研究院専任講師の田北雅裕さんをお招きして公開講座を開催しました。

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講師:田北雅裕

九州大学大学院人間環境学研究院 専任講師

 

◆講座内容

講座は以下4つのセクションに分けて進められていきました。

・まちの風景から眺める

最初のパートでまず話していただいたのは、田北さんのこれまでの経歴やまちづくりの姿勢についてです。これまで田北さんが実際に行ってきたまちづくりの事例の紹介を踏まえながら、まちづくりに取組む姿勢として、一人ひとりの市民が役割を越えて困難な状況を乗りこえる「つながり」についてお話いただきました。

・まちの広がりの中で

ここでは、「ひとりの市民となる」、「グレーゾーンの子どもたち」というタイトルで、「一市民」によるまちづくりの可能性について話されました。特に印象的だったのは、ショートステイ里親についてのお話です。平成29年のデータでは、児童虐待相談対応件数のうちの約96%の子どもたちが、親子分離をせずに在宅で過ごしているということが示されていました。つまり、多様で幅のあるリスクを抱えた子どもたちはそのまま「まち」で暮らしているということです。田北さんは、その子どもたちのリスクがエスカレートしないよう予防するとともに、代替養育と在宅支援のスムーズな連続性も必要とされるとお話ししてくださいました。そこで、一時預かりとして、ショートステイ里親という制度を紹介してくださいました。

・対談①~まちづくり×子ども~

講師の田北さんとPIECESの斎、そしてNPO法人セカンドリーグ茨城の横須賀さんの3人で「まちづくりの視点から見る、子どもへの関わり」について対談をしました。

子どもを守るという意思、「子どものため」とされているからこそ、社会の中に切実な子どもの情報が出てこない構造があると田北さんは話されていました。

例えば、虐待がある子ども達を地域で守る組織があるとき、その組織では守秘義務があり、子どもや家庭情報が外に出ないようにしているとします。情報が漏れることで、子どもが危険な目にあったり、不都合が起きたりするかもしれないからです。そうして、組織外の人、つまり地域の人には「困りごとを抱える子どもたち」が非常に見えづらい状況が作られていきます。

そのような状況があるなかで、同じ地域に住む私たちはどのように子どもたちに関われば良いのかという話題になりました。そこで田北さんは、時々会うような人がいる、キャッチボールをする、ただそれだけの関係がその子にとってはかけがえのないということもあるとお話しされていました。長い時間をかけていく中で、ある面では自分の専門性が発揮されたり、ある面では違う側面が出てくる。些細に思える関係性や関わり方でも継続して関わっていくことで変化していくこともお話しされていました。

・対談②~まちづくりで大切にしていること~

前のセクションに続き、3人で対談をしました。まちづくりや関わり方について考えたとき、良い/悪い・正しい/正しくないといった価値基準だけではなく、その人やまち、コミュニティにとって必要な「ふさわしさ」があるのではないかという観点についての話題が出ました。田北さんは、「例えば、デザインであれば、新しいものやインパクトがあるものが良いとされがちです。そういう観点はこちら側の価値基準であることが多く、リスクが高い」と言います。新しくなくても、古びた関わり方であっても、その人が救われるなら、それが「ふさわしい」関わりなのではないかと言葉を続けてくださいました。

<公開講座当日の様子>

◆当日の質疑応答の様子

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当日は講義動画をそれぞれで視聴した後に、数人ごとで感想共有を行い、全体で質疑応答を行いました。

質疑応答では、「何か子どもたちと関われないかと養護施設の方に相談した時に、その方の言葉で躊躇してしまったことがある。里親へのケア、行政はどこまで対応してくれるのか」、「福岡市の「みんなの里親プロジェクト」は、子どもたちからはどんな反応があるか。また、それをうまくいかせるために、どんな工夫をしているか」、「親が困り感がない(けど親御さんがおそらく困っている様子は子どもも感じていて、実際に養育にも影響が出ているように感じる。)場合、介入方法によっては有難迷惑になったり、家族を傷つけることになりそうですが、どんなことを気を付けて介入しているか」といった多くの質問が参加者から寄せられました。


質疑応答の中で、「デザインの視点を、わたしたちひとりひとり(デザイナーではない市民)が、実践の中に取り入れていくには、まず最初にどんなことに気をつけたら良いか。またどんなポイントがありますか?デザインや、ランドスケープデザインの両方の観点から知りたい。」という質問に対し、田北さんは以下のように答えてくださいました。

「みんな人を見過ぎている。人の問題に向き合うからだと思いますが。僕は川の流れを見るだけで穏やかになれた。そういうことから対人関係が柔らかくなったり。風景やランドスケープを考えた時に、人以外のものと向き合いながら、人との関係を変えていくということがある。実際皆さんもそうしていると思う、音楽聴いたり。でも、人と人との関係になった時に、人にばかり向いてしまっている。対人援助という言葉に引っ張られて、ちょっと人に向き過ぎな感じがある。その時に風景とか、人以外のことに向き合うことで、別の関係性が見えてきたりとか。そういうことは風景的視点なのかなと思います。」

人と人との関係性という言葉には、向き合い過ぎてしまうがために難しさがあったり、硬直してしまうことがあるのかもしれません。そういうときに相手にばかり目を向けるのではなく、一緒に何かするという形で視点をずらしてみる。そうすることで、相手も自分も心地よい関係性が生まれていくのかもしれません。

◆感想

以下、参加者からの感想です。

・まちづくりという言葉やまちの定義が、元来自分が思い込んでいたのは、社会的な規範があってそれに沿った公共的なもの、と言うイメージだったが、田北さんは、そもそも公共とは零れ落ちる人が出ないように、そこで生きている多様な人や価値観みんなが存在して良いのだと肯定して、全ての人を受け入れる余白や余裕=優しい間があることがふさわしい、と考えてまちの課題解決→里親を増やすことで、零れ落ちる子どもにまちのみんなで手を差し伸べようとされていること。そんな優しいまちが理想の風景のあるまちだと思うし、現在申し込んでいる、プロジェクトコースでも学ばせていただく点が沢山あると感じました。

・今現在、子育て以外で主に子どもと関わるような活動はしていないのですが、CforCがはじまって以来、子どもと関わることとは?自分にできることとは?なにかやりたい!という気持ちの中にチラ見えする「はじめるべき」と思っている部分……

そんな自分がすごく気持ち悪いなぁと思い始めていたので、田北さんの仰っていた「子どもに出会いにいくっていうのは不自然」というお話が印象的でした。これを伝えたところ、「そこの違和感に気づいただけでオールオッケー。これからも何か判断していく時の糧になる。ただその「子どもに出会いにいくっていうのは不自然」という言葉に囚われすぎないように」という言葉をいただきました。なんかCforCをせっかく受講したのに、という気持ちと自分自身の何もできてなさに(ネガティブになっているわけではないですが)少しモヤモヤしてたので、嬉しい言葉をいただいたなと、、

・私も、辛い時やしんどい時は海に行って無心で波音を聞いていました。これも風景に助けられてたんだなと感じます。話さなくても一緒に山に登った、海を見た、星を見た、そういう経験から寄り添えることもあると実体験から感じました。もっと風景について聞いてみたいと思いました。ありがとうございました!

Facebookライブレポート~共にいることで紡ぐ優しい間を考える~ CforCプログラム受講生対談

PIECESは、子どもたちの生きる地域に「優しい間(ま)」を増やすことを目的に、Citizenship for Childrenという市民性を醸成するプログラムの全国展開を目指しています。

12月7日(月)夜にFacebookライブを開催しました。テーマは「~共にいることで紡ぐ優しい間を考える~」
子どもが孤立しない地域をつくる「Citizenship for Children」プログラム2020の現役受講生にプログラムの意義や実際に受けてみての実感を話していただく初めての機会。その配信の様子をレポートにしましたので、ぜひご覧ください。

登壇者紹介
●松友萌 さん(めぐ)/Citizenship for Children2020探究コース 奈良クラス
●山端聡 さん(やまちゃん)/Citizenship for Children2020探究コース 奈良クラス
●榎本八千代 さん(やちさん)/Citizenship for Children2020探究コース 一般クラス
●瀬戸久美子/PIECESスタッフ Citizenship for Children2020 奈良クラス担当

~共にいることで紡ぐ優しい間を考える~

Citizenship for Childrenプログラム受講生の声

私たちPIECESは、子どもと寄り添う大人の市民性を醸成する「Citizenship for Children(CforC)」プログラムを実施しています。
専門職でなくても、日常の大人たちが「信頼できる他者」として子どもたちと出会い、孤立した子どもたちの日常に寄り添うことができるように、子ども関わる基礎を学んだり、子どもとの関わりを見つめなおしたりするプログラムです。

「孤立」という問題を抱える子ども達にどのよう寄り添い、どのようなプログラムを届けているのか。
どのように様々な地域、機関、人と連携しながら活動を広げているのか。
なかなか文章ではお伝えしきれない、一つ一つのストーリーを紐解きながらPIECESが大切にしている想いをお話し、改めて「いま、私たちにできること」を見つけ、深めていきました。

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プログラムに参加したきっかけを教えてください

ヤチさん

PIECESは1年くらい前から知っていました。今まで私が知っていたNPOなどは、子どもを直接支援しているような活動をしていたのですが、その周りにいる大人や場づくりをメインに取り組んでいる団体に会うのが初めてでした。

活動報告会に参加したときに、実際話を聞いている間もきちんとお話をしてくれたり、一人一人に「お名前を教えてください」と代表のいぶきさんが言ってくださったりして、人間的に好きだなという印象がありました。そう思っていた頃に、このプログラムの募集があり、一歩踏み出そうと思い申し込みました。

 

めぐさん

PIECESは2,3年前からSNSなどで拝見していて。当時勤めていた会社に、18才の男の子でもうすぐ卒業になるけど、この後どう支援しようということでいき詰まっていました。彼がつながる居場所があったらいいんじゃないかなと思ったときに、優しい「間」という場づくりをしているPIECESさんがすごく素敵だなと思って。

講座を受けていく中で、もっと願いを叶えてあげたかったけど、叶えられなかったと私が思っている子達が、居場所を作って待っていたら、もしかしたら会えるかもしれないと。関わることで、何か彼らのお手伝いをしたいというのが私の願いで、だからCforCに参加したんだろうなと思っています。

やまちゃん

知り合いから、CforCという講座があるよと教えてもらったのですが、僕が関わっている分野というのは、高齢者の分野で。そこを中心に「どうやったらより健康的になっていけるか」とかを考えて活動している中で、子どもへの関わりというのは自分の子どもしかなくて。

地域福祉という分野に関わる中で、孤立した子どもと関わりを持ったり、(そのような子どもたちに出会った時に)どのような対応をしたらいいのか、地域全体の課題として捉えたいなと思って参加しました。

 

受講した4ヶ月で変化したことはありますか?

ヤチさん

印象に残っていることでいうと、リフレクションからお伝えできれば。自分の行動を振り返るリフレクションをしていくとき、1人でまず(ワークシートに記入)して、その後いろんな人からフィードバックや質問をもらって進めていくんです。

その中で考え方が一人一人違うこともわかるし、自分自身でも気づかなかったことを気づけたのはとっても印象的でした。例えば、今の自分の価値観ではなく、昔の価値観に基づいて「私はこういうふうに考えていたんだ」と気づく時があり、結構衝撃的でした。

具体的には、今は自分を大切にしてくれない人や苦手な人とは距離をおくという価値観に基づいていますが、リフレクションをしてみると、子どもと関わっているときにはその考えが飛んでしまっていることに気づくとか。昔の価値観に基づいていたんだということに気づいて、それがすごく印象的でした。

 やまちゃん

僕の場合、リフレクションをするときに、普段は同じ専門職ですることが多いのですが、CforCは年代や仕事が異なっている人とリフレクションをするのが新鮮というか。専門職ではない視点に気づけるというのは印象に残っています。

あと、直接の対話の方が深みというのはありますが、今回はCforCでzoomを使って対話をしていてもあまり違和感がなかったというか。すぐに馴染めるという不思議な感覚というのもありました。

 

周りにいる子どもや地域の人とのかかりや「間」で気づきはありますか?

めぐさん

今までの価値観として、子どもを傷つけたくないから、危険な行動をしていたら止めたり、守らなきゃという気持ちが先行していました。でも、「守らなきゃ」というのは私の願いで、こどもは本当は何がしたかったんだろうと。

見て欲しかったのかな、体を動かしたかったのかなとか、間を置いて考えることができるようになりました。危険な遊びをしていて、体を動かしたい子だったら、「じゃあこれ飛んでごらんよ」と関わり方も変容してきました。

具体的には、机から飛び降りる子がいたときに、「バランスボールの上で飛んだらどうかな?」と提案して、私が必死にバランスボールを抑えながら、その子がぴょんぴょんはねるみたいな。そしたら、体を動かせて楽しそうだし、その後も落ち着いて授業を受けていて、(優しい「間」というのは)そういうことなのかなと関わっています。

 

やまちゃん

このプログラムに関わりを持ち始めてから、どうやったら関われるかなという視点で見ているからか、障害を抱えた子の親のから、子どもの将来の不安とか相談も受けるようにもなって。

実際にその方も看護師なんですけど、将来の就労支援とか、離職しないような働き方とかを話すようになったりとか。子どもを担当してる、行政の保健師さんとか福祉担当の方とかとも、やっぱり僕らの村の現状みたいなことを話しようにもなりました。子どもとの間を作るみたいな心の変化というのは感じています

 

講座で印象的だったことを教えてください

やちさん

「待つ」という姿勢については、プレーパークを運営しているかんぺーさんから学んだことです。私が(かんぺーさんと)同じような立場だったら、絶対先回りして行動しちゃう。例えば、「これこのままやったら、ちょっと二者間の間が悪くなるんじゃないか」というときでも、かんぺーさんは子どもたちの能力とかを信じて待ってらっしゃると思うんですよね。そういった姿とかお話を聞いて、そこがすごい学びになりました。

あとは最近だと田北さんの講座で「人ばかり見ているんじゃないか」っていう言葉があって。人ばかりにフォーカスを当てるのではなく、場というものにフォーカスを当てたら(いいかもしれない)、と思った。

例えばでいうと、自分の家に柿の木があって、秋になるごとに柿を100個くらいおじいちゃんおばあちゃんがもいでいるのですが、その姿もまちに溶け込んでいると思うんですよね。もいだ柿をご近所に配るのですが、これもまちづくりの1つだし、優しい間の一つでもあるのかなあなんて思って。自分的には新しい見方だなと思ってかなり衝撃的でした。

 

 めぐ

一番印象に残っているのが山下さんの講座。講座の最後の方で、「心で応えた答えは、たとえ間違っていても優しい答えになるよ」っていう言葉をくださって。それに対して、「優しい答えってどういうことですか」と私が聞いて。

半年間不登校だった子が「学校行きたい」と伝えてくれた時に、山下さんが「本当は半年間も、もしかしたら言いたかったのかもしれないのに、私が余計な事言っちゃって、本当の気持ちを聞けなくてごめんね、とまず思う」ということだったり、「これを言うまできっと、心配だったり、緊張したよね」と答えているという言葉を聞いて。「心で答えていいんだ」って気づきになりました。

子どもが何か SOS とか助けてって言った時に、私はすぐに支援をしようとか、どうすればいいんだろうと思考していたんです。でも、まずは気持ちで応えて「言ってくれたんだね、きっと緊張したよね」という関わり、あり方でいいんだなというのが気づきだったし、それが今の子ども達の関わりに生きてる気がしてます。

 

CforCでいろんな価値観やバックグランドを持った人と関わることで、面白さや価値観が広がる感じはありますか

ヤチさん

違う意見を聞いても否定されたように感じなくなった。CforCで、本当にいろんな人の意見を聞くんです。私も自分の意見を言うんですけど、基本的に否定されないんですよね。その考え方いいね、と一旦受け止めてくれる、みんなそういう心づもりができている方なんですよね。

初回にzoomを通して皆さんと会った時も、「自分の居場所だ」って思っちゃって。講座とかゼミとかリフレクションに参加するのが、生きがいみたいな感じなんですけど。それぐらい多様性があるけれど、みんなその多様性を受け入れることができる土盤がある人たちなんだなと思います。

山ちゃん

僕の場合、CforCに関われない時もあったんですけど。同じ目的を持った集まりというか、将来的なビジョン的も共通する点がある。そういった点で参加できない時でも、自然とフォローアップしてくれたりとか。それが参加できないことに対する罪悪感が解消するような感じもあり、すごく助かってます。

 

CforCでの学びや経験を、どんなふうに生かしていきたいですか

めぐ

二つあって。気持ちの面で言うと、自分のことも大事にして、目の前の人も大事にしたい。子どもに対しても、他の人に対しても、「なんとかしなきゃ」、「質問してくれたんだから期待に応えなきゃ」とか。子どもに対しても、「SOSを出してくれたんだから頑張って応えなきゃ」みたいなところがあって。 

自分の願いと相手の願いがごちゃごちゃになってしまうのが今までだったんですけど、CforCを通して、その両方の観点を大事にして、結局どうしたいのか、と。子どもに対しても、周りの大人に対しても、誠実にどっちも大切にしたい。

もう一つは私自身がどうしたいのかという時に、誰かをつなぐような仕事ができたらいいなということに気付けて。社会資源に繋ぐというお話を聞いて、勉強したいと思い、大学にもう1回行きなおす決断ができたので、それも頑張っていきたいです。

 

山ちゃん

僕は村という人間関係の強い地域で活動しているので、孤立に当たるような、虐待とかいじめとかいうのは、あまり聞かなくて。ただちょっと気になるのが、障害があるかもしれない方っていうのは目につくのですが、例えば保護者にとってもやっぱりなかなかの表に出してこない。 

弱った姿を他人に見せたくない、みたいなことが多かったりするので、それってやっぱり生きづらいというか。「もっと他の人に頼ればいいのにな」とか思っちゃうので。これからどうやっていくかみたいなところも含めて考えていきたい。

 

ヤチさん

親子とか兄弟とか親戚とかそういった血の繋がりとか関係なく、子どもの居場所を作りたいと昔から思っていたんですね。どのようにやるかはまだ模索中なんですが、CforCで学んだことだと、自分のウェルビーイングと目の前の相手のウェルビーイングどっちも大切に生きていきたいなっていうのもあります。

もう一点は、自分の考えとか行動を俯瞰的に見るというか、それもウェルビーイングに繋がると思ってるので。そういったことを振り返りながら、過去これやったなって事を相対的に俯瞰的に見ることに繋げて、また将来やりたいことに繋がってきたらいいなと思ってます。




12月20日までに100人の新たなPIECESメイト(マンスリーサポーター)を募る寄付キャンペーンを実施中

来年以降も子どもたちの周りに信頼できる他者を増やす取り組みを継続・発展させていくために、ぜひPIECESメイトになって共に歩みを進めてくださいませんか?

目標:100名
12/19 現在:34名(単発でのご寄付33名)

PIECESメイトになる


Facebookライブレポート~子どもが孤立しない地域をつくる「市民性」を紐解く~

PIECESが考える「市民性」。
それは、子どもが孤立しない地域をつくる、誰も孤立させない社会をつくる一つのキーだと考えています。

11月30日(月)夜にFacebookライブを開催しました。テーマは「子どもが孤立しない地域をつくる「市民性」を紐解く」。夜遅い時間ではありましたが、多くの方に視聴していただきました。
「Citizenship for Children」プログラム2020の企画運営を担う、PIECESスタッフによる「市民性」をテーマにしたトーク。その配信の様子をレポートにしましたので、ぜひご覧ください。

登壇者紹介
●青木翔子/PIECES理事・リサーチャー、ファシリテーター
●若林碧子/広報ファンドレイズ・旧コニュニティユースワーカー(現CforC)4期生
●佐藤麻衣/CforC運営スタッフ(探究コース、基礎知識コース)
●栗野紗也華/CforC運営スタッフ(探究コース、プロジェクトコース)

~子どもが孤立しない地域をつくる「市民性」を紐解く~

▶︎ PIECESが考える「市民性」とは 

まずトークセッションに入る前にPIECESが考える市民性について青木より説明しました。

何のためにPIECESは市民性を醸成するか

PIECESでは、わたしたち人と人との間に、「優しい間」を生むことを大切に、頼り頼られることを大切にしています。相手への思いやり、想像力、相手を尊重しあうコミュニケーションをしていった先に、優しい間が人と人との間に生まれて、頼り頼られることができて心が孤立しにくくなるのではと思っています。

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心の孤立という問題が起きている社会は、誰かに頼ることができないということがあると、自分を大切にする経験ができず、自分のことを大切にされたことがないと、自分のことも大切にできず、相手のことも大切に想うことができなかったりします。

そうすると心の孤立も負のループのようなものが出来ますが、優しい間を経験することによって何かあった時に誰かに頼ったり、お互いに助け合える経験をすると自分を大切にしていいんだ、自分を大切にするってこういうことなんだ、という経験をすると、自分も相手も大事に出来ていく、そんな優しい間が溢れていく良い循環が生まれていくのではと思っています。

孤立した子どもたちの周りに優しい間があふれていくと、子どもたちが育つ社会、未来が変わっていく、孤立しなくてもすむ社会になるんじゃないかな。と思っています。


「子どもと関わる市民」の専門性とは、目の前の子どものプロになること

そこで優しい間が紡ぐのが市民性ですが、いろんな角度から説明してみます。

例えば専門性と対比してみると、どうか。市民が出来ることって専門家ではないけれども、ある種の市民としてのスキル、専門性というプロフェッショナルみたいなものはある。また、専門家ができないところを担っていくっていうところがあるのではないか。

市民の専門性ってなんだろう。

PIECESでは、「子どもと関わる市民」の専門性とは、目の前の子どものプロになることで、専門家は専門家としての役割の中で子どもと関わったりすることがあります。

私たち市民は、自分の名前で自分として関わっていくことがある、だからこそ専門家は役割の範囲も決まっている、市民は役割の範囲が不明確。専門家は子どもたちの抱えている困りごとや課題、リスク、そしてそれが起きている背景というものに目を向けて解決していくプロフェッショナル。市民はそういった専門性はないけれどもその子を見つめていく、その子のキャパシティやストレングスに目を向けていくプロになっていくことができる。市民としての関わり方は、楽しさ・遊びを大事にできるのではないかと思います。


子どもと関わる市民の役割

地域の中で見ていったときに、「余白」が地域の中に生まれている、足りない部分を柔軟に埋めていく役割、資源と資源を繋げたりする役割だったり、余白を作っていく、というようなことが出来るんじゃないか。そういった市民に求められるものは何かというと、人と人との関わりなので、もちろんスキルみたいなものもありますが、わたしたちが持っている価値観やまなざしというところがそのまま活動に出ていく、出ていっていい、本当に色んな人がいて、正しい市民性があるわけではない。私自身でいることが市民性で、私自身の価値観、まなざし自体が大事なんじゃないか。と思っています。

PIECESが子どもと関わるときに大事にしたい市民性というのは、子ども自身にとって市民というものがどういう役割を果たしていくのか、子ども視点のものと、自分視点で自分として何がしたいか、何が出来るか、何が楽しいと思うか、両方を大事にする。自分のやりたいことを子どもに押し付けても良くないですし、課題を解決しなきゃとそこにフォーカスしすぎて自分をないがしろにするというわけでもない。その間をちゃんと作っていける、それはすごく難しいこととは思うので、そこを市民性醸成プログラムの中で考えていくことをしています。

 

優しい間のための市民性とは

優しい間のための市民性について3つの大事なステップをお伝えします。

みつめる・・・自分自身の感情や、目の前にいる相手の言葉や表情、自分の暮らす地域、社会が起きている事件や紛争、気候変動だったり、そういったところにもみつめていく、自分として生きていくことが市民性でもあると思うので、そういうところを見つめていきます。 

うけとる・・・みつめて、見過ごすのではなく、その現実の中に今までは見過ごしていたメッセージがあるかもしれないので、そういうところをきちんと受け取っていく。例えば子どもの話で言うと、目の前にいる子どものふとしたときに見せる表情や行動、些細な部分も受け取っていきます。

 はたらきかける・・・新しいメッセージを受け取った一人ひとり私たちがどうしていこうか、社会の中でどうしていくのか、どうしたいのか、社会がどうなっていったらいいのか、一人ひとり考えて、身近な人とのコミュニケーションも、地域コミュニティに参加していくこと、職業、消費活動、政治参加など、いろいろなレイヤーで活動していく。


▶市民性について4人でトークセッションtime

ここからは4名のトークセッションに入っていきます。

・PIECESにジョインした理由やPIECEに共感した点を教えてください

栗野:2020年7月からジョインしました。今までPIECESへの接点が何かしたらあったわけではないので今、市民性醸成プログラムを運営しながら自分も考えながらやっているところです。市民性という言葉を最初に見た時に、すごいな、って単純に思った。今までNPOに関わってきたけど、PIECESのやっていることは直接子どもに関わる支援ではない。直接関わる支援は時にはしんどさにも繋がるな、と実体験や実施に見てきて感じていて、ボランティアの人が疲弊していく姿も見てきた。そこだけだと持続可能ではないな、といつも思っていた。自分が他のNPOとかでもインターン生、ボランティアが来た時はどうやったら持続可能になるかを考えていた。PIECESの市民性という言葉に惹かれた理由として「優しい間」も含めて、私とあなたの関係性というのがあるんだろうな、と思っています。その支援をする、されるではない、私とあなたどちらも心地良い空間でいましょうというこは、支援してあげる、支援してあげようという専門職らしい関わり方もあるけれど、それではたぶん持続可能じゃないなと思ったときに、自分も楽しい、楽しさでつながることを大事にする、相手と一緒にそこの空間を作っていくことにすごくひかれたし、そこが市民性だったり、PIECESらしさの間なのではないかとここ数か月で思うようになった。

 

佐藤:私も同じく2020年7月からジョインしました。PIECESを知ったきっかけとしては数年前からFacebookをフォローしていて記事を見ていたけれど、活動に参加したことはなかった。タイミング良く説明会を聞いたのをきっかけにジョインし、現在市民性醸成プログラムのスタッフをしています。自分として生きていくこと、私自身として生きていくことの大切さをプログラムから感じているところです。プログラム参加者も私自身でいられるように、自分と目の前に子どもとどう向き合っていくかという話もたくさん聞いていて、このプログラムを体感しないとわからないこともあるなと思っています。運営側ではあるけれども日々学びながら私自身もどうしたいんだろうと考えています。

 

・理事の青木自身が思う「市民性」はありますか。

青木:PIECESと自分が混ざっているので、難しい。私自身と問われると、まだまだ発揮できてないところもたくさんあるな、と悩むところです。やれることいっぱいあるけど、だからこそ何していいんだろう、どこまで忙しい日々の中でどこやっていこう、なにをしていこうというのは私自身も考えます。

市民性醸成プログラムの卒業生の立場から現在PIECESスタッフをしていますが、なにか日々実践していることなど具体的にありますか。

若林:先ほど青木から話があった「みつめる、うけとる、はたらきかける」のはたらきかけるにはたくさんのレイヤーがあって、自分ができないことへのしんどさも感じるし、自分ができないことが目についていたけど、見過ごしてしまったこと、アクションできなかったことが日々起きた時にすごくモヤっとすることがあります。その先を考える視点というのはPIECESで得られたなと思っています。

・市民性醸成プログラムを通じて見えた市民性の発揮とは

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青木:市民性醸成はいくつかのレイヤーがあるという話が出ていて、4象限で整理してみました(図を参照)。縦が継続的か断続的か、横が組織(仕事)または個人(プライベート/地域)で活動に分けた時に組織で継続的にすることは仕事や、社会に対して働きかけるなどの色んな仕事が含まれています。組織で断続的に行うことは、単発のプロジェクトのようなものや、さらには組織での人間関係の向上、これは優しい間を表している。個人で継続的に行うことは子ども食堂などをライフワークとして活動することやボランティアとして参加することが入るが、この部分を市民性やボランティアということが多いが、実は個人で断続的に行うことが大切だと思っていて、これは勇気がいる市民性の発揮になると思っています。

・個人で断続的に行うこととは

青木:例えば公園で子どもに叩いている保護者をみたときに「どうしたんですか」、「一緒に遊びましょう」と声をかけてみる、ということはなかなか出来なかったりする。子どもが万引きしているところを見たり、動物をいじめているところを見つけたら、危ない子として子どもを怒るのではなく、その子の背景にはなにか逆境体験があったりするかもしれないと考え「どうしたの?」と声をかけて、その子の安全を確保することを考える。そのような突発的に起こった時の市民性発揮やその場で生まれた何かに対してアクションするということはそのメッセージをうけとめてはたらきかけることを行う。とても難しいことだけど、大事で、それを一人ひとりにゆだねるのもゆだねるですごく難しいからこそ、PIECESというフィルターを通して知り合った皆さんと共有し合ったりして、「こういう行動してみたよ」、「こんなことあったんだ、どう思う?」ということをみんなでシェアしていく。そのような市民性を発揮していくようなことができたらいいなと思っています。

栗野:市民性の発揮の仕方は人それぞれだけど、なにかすごく大きいことに見えてしまう人もいるんだろうなと思っていて、みこりんが書いたnoteがすごく好きで、市民性っぽいなと思っている。

若林:補足をすると、見過ごしてしまうとか、見て見ぬふりしてしまうとかあるけれど、見て見ぬふりが出来なかったことの話をnoteに書きました。

- みこりんのnote 山手線で500円玉を手渡したあの日のこと

青木:PIECESの市民性醸成プログラムでは、すごく感情やその場で感じたことをすごく大事にする、今どう感じているか何をしたいと思うか、みたいなことを大事にする。今のみこりんの話って通ずると思っていて、最近「後ろめたさの人類学」という本を読んだのですが、途上国の物乞いの人たちにお金を渡す場面って、私たちは何を渡すに対して、物乞いの人に対して後ろめたさを感じることがあるかもしれないけど、資本主義経済においてはお金を渡すことは違うので見なかったことにする、論理でその感情を見ないフリをすることが起こっているんじゃないかと書かれていた。それはそうだなと思っていて、活動したり、日々生きている感情に素直になってみるということがみつめて、うけとっていくになるのではないか、と個人的に思っている。ただそれに行動できるかというのはまた別なので、みんなでエンパワメントしながらやっていけたらいいんじゃないかと思いますね。


・市民性が広がった世界とは

青木:市民性って誰かの話じゃない、子どもや虐待などそういう子に関わることっていうのは私自身、私が関わっていいんだろうか、難しいなとか、上手い下手があるんじゃないかとか思っていた。今のPIECESのメンバーとか、色んな人と話していくなかで子どものことを考える、トラウマなど心をケアする部分は専門性が必要だし、大事で、専門家の方々と一緒にやっていきたいし、その部分も大事だけど、私もやりたいと思った想いや考えたことは無駄じゃないし、そう思ったことを共有してじゃあ何かやれることをやってみようと言って重ねていった先に、私自身の幸せもあるし、社会と私が分断しているわけではなくて、きっと同じものだから、私が良いと思う社会を私が実行していくことできっとその社会も良くなっていくんじゃないかと思ってこのプログラムをはじめてみると、色んな方が賛同してくれて、集まってくれて、こんな心強いことはないと本当に思っていて、毎年キャパの問題で市民性醸成プログラムの参加人数を少なくしていて、本来はたくさんの人とシェアしたいし、個人的にはこのプログラム以外にも、先ほど話していた日常で市民性を突発的に断続的に発揮していくというのをシェアし合う、増やしていく何かしらの仕掛けをPIECESでできたらなと思っています。

みなさん、PIECESメイトになるということはその第一歩な気がしていて、PIECESメイトになってシェア会みたいなもので最近感じていることとか、お互いにシェアしたり、話したりするんですけど、その時に普段話せなかったのにPIECESメイトの会だと話せたという話があって、そういうことを良いと思っている、こういうことをしたいと思っている人たちが集まって話したら、心地が良いしゃべりも出来るなと思ってまずそういうところに参加して、考えて何かやってみる、そういう小さな積み重ねにきっと意味があると思っています。もしよければキャンペーンの機会にPIECESメイトになっていただけたら嬉しいです。


12月20日までに100人の新たなPIECESメイト(マンスリーサポーター)を募る寄付キャンペーンを実施中

来年以降も子どもたちの周りに信頼できる他者を増やす取り組みを継続・発展させていくために、ぜひPIECESメイトになって共に歩みを進めてくださいませんか?

目標:100名
12/7 現在:11名(単発でのご寄付16名)

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