【イベントレポート】PIECESフォーラム「こどもがこどもでいられる社会」を開催しました

2021年12月12日にPIECESフォーラム「こどもがこどもでいられる社会をつくるには」を開催しました。

 オンラインで実施したイベントには約100名の方からの参加応募があり、子どもの未来を考える仲間と語り合う時間となりました。

テーマは「こどもがこどもでいられる社会をつくるには」

 

私たち大人は「子どもが子どもでいられる時間や空間を大切にしたい」と願いながらも、意図せず大人が生きる社会の物差しを子どもへ差し出していることがあります。その物差しは、子どもの持つ豊かさを見えづらくしているのではないでしょうか。

 

「こどもがこどもでいられる」って、どんなことでしょうか?

「こどもをこどもでなくさせてしまう社会」って、どんなものなのでしょうか?

オンラインで参加いただいた皆さまとスタッフの集合写真

 

子どもの願いを中心にして、子どもの孤立の問題に取り組んできたPIECESの、5年目の現在地を共有し、参加した人全員で「子どもの孤立」について考え、さらには「こどもがこどもでいられる社会」の紡ぎ方を一緒に考え語り合う時間になりました。

 

  1. こどもが生きる社会、PIECESが見つめる未来

  2. PIECESは3つの事業を柱にしています

  3. CforC修了生と語る「こどもがこどもでいられる社会」の紡ぎ方

 

PIECES代表 小澤いぶきよりメッセージ

子どもの中の多様性や豊かさは、私たち大人が「私で在る」ということと響き合って生まれるものではないでしょうか。「こどもがこどもでいられる社会」は、全ての人が「私が私である社会」だと考えています。

 

PIECESへの寄付はお金の意味が変わる、ということでもあります。成果で図られやすい社会の中で、成果で計りにくい「間」で流れるお金です。PIECESメイト(月額寄付者)は、お金の意味を変革させていく、新しいお金の価値を作り出している人たちです。

 

来年度のCForCプログラムの資金を集めるキャンペーンです。一緒にやさしい循環の波に巻き込んで、巻き込まれていきたい。1人でも多く、継続寄付者になってください。力をお貸しください。

  

こどもが生きる社会、PIECESが見つめる未来(代表 小澤いぶき)

 

私は児童精神科医として、医療の現場でたくさんの子どもたちに出会ってきました。こどもたちの貧困や虐待、いじめなどの背景には、子どもの心の孤立があると考えています。実際に、日本では10人に3人の子どもたちが孤独を感じているという報告もあります。

 

医療などの専門分野では、心の怪我が長く続いている子どもたちと出会うことが多いですが、そうすると、怪我が深くなるのですね。そうなる前に、子どもの暮らしを作っている大人たちが何かできるのではないか、そう思ってPIECESを立ち上げました。

 

PIECESは、こどもたちが孤立の中で生き続け、社会のことを信頼できるなくなる明日よりも、一人ひとりの想像力から生まれるやさしいつながりがあふれる社会を作りたいと考えて活動しています。

 

子どもが孤独を抱えるもっと手前で、頼り頼られる関係を作れたら。時代を超えて子どもと共に優しい「間」を紡ぎ続ける社会を作りたい。子どもも自分も安全に自分の感情や願いを出せるそんな「間」を増やしていきたい。

 

優しい「間」を紡ぐのは、親でも友人でも先生でもない「市民」としての関わりだと考えています。その市民性を醸成するために、Citizenship for Children(CforC)というプログラムを全国へ展開しています。

 

PIECESの3つの事業

 

次に、PIECESが「子どもが孤立しないために」行っている3つの事業の説明と今年度の報告を行いました。

 

・市民性醸成プログラム「Citizenship for Children(CforC)」(事務局長 斎典道)

 

PIECESが毎年夏ごろから行っている、市民性醸成のためのプログラムで、5月頃から募集を開始して、7月から開始、年明けて1月までの連続講座です。子どもとの関わりには正解がないからこそ、子どもの声に耳を傾け続け、学び続け、問い続ける必要があります。

 

それらを講座(座学)、ゼミ、実践(リフレクション)を通じて学び合います。参加者同士でエンパワメントし合い、楽しみながら学びを深めていくためのコミュニティ作りにも力を入れています。今期は全国から65名の参加があり(昨年は34名)、オンラインで行っています。

 

年々改良を加えているプログラムで、来期へも認知拡大や協働団体、修了生含む創り手担い手の拡大、そしてプログラム実施と拡大を支える資金調達が課題です。今日始まった寄付キャンペーンもこのプログラムを支えるものです。ぜひよろしくお願いします。

 

・アートプロジェクト「Reframe Lab」(代表 小澤いぶき)

 

子どもたちの「あそび」を通して、「ひらかれたwe」の未来を見つめるアートプロジェクトです。子どもにとって、泣くことを含む感情や願いの表現は大切なものですが、危機の時にはできなくなりがちです。このコロナ禍のような危機の時は、子どもたちの「あそび」がさらに意味を持つのではないかという思いがあって行っています。

 

子どもたちがその世界の中で感じていることを一緒に見つめて受け取り、はたらきかけていけるような想像力を耕すことを目指して、絵本「もるめたも」と映像作品を作りました。また、夏に高田馬場で「もるめたも展―あそびとへんしんの研究所」を開催しました。

 

広報啓発活動事業「Cultivate Citizenship」(広報FR 若林碧子)

 

PIECESがこれまでもやってきたことですが、広報や啓発活動に今年から名前をつけてみました。「cultivate」は耕す、という意味の言葉で、PIECESのアウトプットで、PIECESが目指している「市民性」を耕したい、という思いが込められています。

 

発信事例として、11月の虐待防止月間に行った一連の記事発信やイベントと、9月に行った「問いを贈ろう」キャンペーンなどを行いました。

 

CforC修了生と語る「こどもがこどもでいられる社会」の紡ぎ方

 

ここからは、今日のテーマである「こどもがこどもでいられる社会をつくるには」を、CforC修了生や受講生たちと語り合いました。

 

モデレーター:PIECES理事 青木翔子

ゲスト:

安森正実さん(CYW1期性)

糠塚あゆりさん(CforC2020)

森野純夏さん(CforC2020・駄菓子屋ふぃーか)

手塚沙也加さん(CforC2020)

高島陽子さん(CforC2021)

配信の裏側の様子

 

青木翔子)

ゲストの皆さんそれぞれの活動の紹介を通して、いろいろな市民性の発揮の仕方があることが伝わるといいなと思います。居場所活動を続ける中での子どもたちの変化にはどんなことがありましたか?

 

安森正実さん)

月に1回横浜市内で開催している「Pear Plant(梨の木)」では、お姉さんでも友達でも支援者でもないけれど「なんだか相談したくなる存在」を意識しています。スタッフが経験していないことを経験している子が多くて戸惑いますが、あまり来ていなかった子が毎月来るようになって、悩みを話してくれるようになりました。

 

また、当初は梨の木を「自分の場所」という気持ちが強くて、新しくきた子に敵対心を出していた子が、最近は態度が和らぎ、歓迎ムードを出してくれるのが嬉しいです。

 

糠塚あゆりさん)

子ども食堂と学習会を週2回開催しているのですが、自分が10代の頃に苦手だった、派手なタイプの子が多いんです。でも個別に話してみたら、派手さが気にならなくなって。自分のメガネに気付かされました。

 

何かしてあげようと思っても劇的に変化させることはできないけれど、「なんでもはできないけれど、私はあなたの味方だよ」ということは全力で伝えています。突然泣き出すなどの場面に立ち合えるようになったことを、ありがたいことだと感じています。

 

青木)

いろんな大人が社会にはいて、「こうでなくてはならない」ではないのですよね。子どものため、だけでない「わたしたちのwell-being」について考えていることを教えてください。

 

高島陽子さん)

プレイカーやプレイパークの活動は、大人もやりたいことをやり、言いたいことを言うという、合理性や論理性がないことに初めはカルチャーショックを受けました。でも「お節介」でもない、「楽しんでいる大人」って、子どもの居心地も良くしますよね。

 

手塚沙也加さん)

私は気まぐれに駅の近くや公園でシャボン玉をする、というよくわからない活動をしています。どんな子かわからない子と会うし、話しかけてくる子も無視してシャボン玉を壊してばかりの子もいるわけで、でも、とりあえず一緒にシャボン玉で遊んでいるからいいっか!という。頭で考えるのではない空間がいいなと感じています。

 

森野純夏さん)

駄菓子屋ふぃーかは、幅広い層の子が駄菓子を買いに来てくれます。ターゲットがないのが良かったなと思っています。子どもたちの行動に「あれ?」と思うことがあっても、はたらきかけるよりも、よく観察していると、関わりの中で背景が見えてくることがあります。そうはいっても毎日悩みながら迷いながら関わり続けている感じですね。

 

青木)

正解がないからこそ、PIECESやCforCのコミュニティで出来事を共有して、「どうだろうね?ああだろうね?」と学び合って迷い合いながら探究していきたいですね。

 

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子どもとの関わりの事例がたくさん上がり、いろいろな市民性の発揮の仕方が具体的に伝わるトークセッションでした。肩の力を抜いて、自分の楽しいと思えることを楽しむことが、子どもの願いに近づく一番の近道なのかもしれません。

 

子どものwell-beingを望む人が多く集まるPIECESのCforCやPforPのコミュニティですが、探究すればするほど、子どものためだけではない、自分を含む社会全体の「わたしたちのwell-being」に向かっていくのが興味深いところです。

 

今回語られた言葉の中で心に響くものがあった方は、ぜひ一緒に優しい「間」を紡ぎ広げていくPIECESメイト(継続寄付者)の仲間になってくださいませんか?新しい優しい「間」を、ぜひ、あなたの手のひらから紡ぎ出してみてください。

 
 

writer:麓 加誉子