言葉にできない、子どもたちの「しんどさ」に目を向ける #虐待防止月間

環境が大きく変化する現代、今も続くコロナ禍においては、時として身体やこころの調子が変化することがあります。(変化しないこともあります。人それぞれです)例えば、ニュースなどで発信される、さまざまな情報を受け止め、環境の変化に対応するご自身や子どもたちが、ちょっとしんどいなと感じることもあるのかもしれません。

時として大人自身も自分で気づきづらい、からだやこころの変化。子どもたちの変化にどうやって気づいていくとよいのでしょうか。

今月11月は、厚生労働省が定めた児童虐待予防の啓発を行う虐待防止月間です。

認定NPO法人PIECESではこの虐待防止月間に関連して、様々な情報を更新していきます。


第二回目の記事となる今回は、子どもの状態に目を向けるをテーマに「子どもたちのサイン」と「気付いた時にできること」をお伝えします。


からだやこころのサインとは?

子どもたちに限らず大人も、たくさんの情報があって、いろんなことが変化するとき、からだやこころがいろんなサインを教えてくれることがあります。これは自然なことで、とても

大切なサインです。からだやこころのサインとはどんなものでしょう?
NPO法人ぷるすあると認定NPO法人PIECESが協働で作成した、『からだとこころのワークブック』からご紹介します。

からだとこころのワークブック -アルハから大切なあなたへ-

【からだのサイン】

こころが疲れたとき、自分では気がついていなくてもからだのサインがあらわれることがあります。

  • ごはんを食べたくない 

  • 頭がいたい 

  • おなかがいたい

  • いつもよりイヤな夢をみる など

また、ほんの少しの変化かもしれませんが、いつもと違う変化がサインとなることもあります。

  • からだがちぢこまる

  • 息をすったりはいたりするのが早い

  • からだにちからが入らない など

『からだとこころのワークブック』より

『からだとこころのワークブック』より

【こころのサイン】

日常のちょっとしたことに対する気持ちや行動に、こころのサインがあらわれることがあります。

  • 外にでるのが不安になる

  • なんだかイライラする

  • 自分が今どんな気持ちか わからなくなる

  • だれかをたよる、相談する ことがむずかしくなる

  • スキなことを やる気も起きない

  • いつもよりだれかにあまえたくなる

  • 人のことがこわい … など

『からだとこころのワークブック』より

『からだとこころのワークブック』より

ご自身やお子さんにいつもと違う、ちょっとした変化のサインはあるか、丁寧に見てみてください。


不安になった時は子どもにどんな変化があるの?

特に、子どもたちは、、言葉で伝えてくれる以外に、様々な形でサインを出してくれていることがあります。まわりの大人が、「困ったな」と感じている時、子ども自身、何かも、例えば何かに困っているなど、いつもとは違うことが起こっているのかもしれません。そしてそのサインを教えてくれているかもしれません。

以下は子どもの年齢によりますが、時として見られるサインです。

・おねしょが増える、頻尿になるなど
・ご飯の量が減る/寝つきが悪い、途中で目が覚めるなど
・いつもより甘える、一人でいるのを怖がる
・会話が減った、なにか言いかけてやめるなど
・いつもよりこだわりが強くなる、なんども同じことを聞く、やる
・いつもより落ち着きがなくなる、そわそわする、イライラしやすい
・兄弟などとの揉め事や喧嘩が増えた
・勉強に集中できない など

子どもたちの「いつもと違う何か」のサインを知っていることで、起きていることだけ目を向けず、その背景にある「困りごと」や「環境の変化」に目を向けることができるかもしれません。

参考)

① 新型コロナウイルスに関してのこころとからだのケアvol1~家庭や子どもの居場所などでできるケア~|Ibuki Ozawa|note

② 名もなき痛みが教えてくれたこと〜見えないことへの想像力〜|Ibuki Ozawa|note



子どもや保護者からの「助けて」のサインの見つけ方

たとえば以下のような普段と違う様子が見られた場合は、その子どもや保護者が、困りごとやしんどさを抱えている可能性があります。

(1)子ども

  • 普段は見られない不自然な傷やアザなどの身体的な変化がある

  • 普段より活気がない、ぼーっとしている、おびえた様子であるなど、表情や様子の変化がある

(2)保護者

  • ひどく疲れている、精神的に不安定な様子である

  • 子どもに対する関わり方が普段より厳しくなっていたり、イライラした様子である

子どもや保護者の様子を見ていて、「大丈夫かな」「心配だな」と感じたときは、以下の章を参考に、直接・間接のコミュニケーションやサポートを試みましょう。

サインに気づいたあと、サポートするためにできること

子どもたちが安全に過ごすために周囲の大人たちができるサポート方法をご紹介しているので、ぜひご覧ください。

① 子どもたちのサインに気づき、サポートするためにできること — とどけるプロジェクト 

② 新型コロナウイルスに関してのこころとからだのケアvol1~家庭や子どもの居場所などでできるケア~|Ibuki Ozawa|note


厚生労働省では毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と定め、家庭や学校、地域等の社会全般にわたり、児童虐待問題に対する深い関心と理解を得ることができるよう、期間中に児童虐待防止のための広報・啓発活動など種々な取組を集中的に実施しています。1ヶ月の間に様々な啓発活動が行われ、さまざまなニュースに触れると、いつもよりも周りの変化に気づきやすくなっているかもしれません。もしも、虐待の可能性や危険を感じた場合は、ひとりで抱え込まず、児童相談所に連絡してください。

虐待の可能性や危険を感じた場合

児童相談所は決して懲罰的な機関ではなく、子育て全般の相談ができる場所です。心配な様子の家庭が児童相談所とつながることで、必要なサポートにつながったり、困りごとが解消されたりする可能性があります。

●まずは「189」に電話相談●

「189」に電話をかけると24時間365日無料で、最寄りの児童相談所につながります。相談者の氏名や相談内容に関する秘密に関しては口外されないよう定められているため、相談者にとって安心して相談しやすい環境が整えられています。もし児童相談所の担当者に対して氏名を明かしたくない場合は、匿名での相談も可能です。

この他にも、「子どもの人権110番」では、電話相談に加えてメール相談も受け付けていますので、ご都合に応じてご利用ください。

児童相談所虐待対応ダイヤル
・電話:189 (無料)

子どもの人権110番
・電話:0120-007-110 (無料)(受付時間 平日午前8時30分~午後5時15分)
・メール相談:https://www.jinken.go.jp/

***

悲しい事件を目にすると、誰かのせいにしたり、正しさをかざしたくなります。
でも、それは、私たちの日常と地続きで起きていて、決して他人事ではありません。
地続きである、その背景を想像してみることができると思います。

気がかりをそのままにしないで、何かできるアクションを考えてみませんか。
子どもたちが安心して過ごせる未来は、私たちひとりひとりがつくっていけると信じています。

文:藤田奈津子


PIECESでは虐待防止月間の11月、児童虐待防止のために大切な情報をシェアしていきます。これから記事やイベントなどで皆さんと共に考えていく時間をつくっていきますので、ぜひシェアなどしていただけると嬉しいです。

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イベントレポート|PeaceDay2020~4団体合同企画~私たちそれぞれの「Piece for Peace」を見つけるために

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9月21日はPeace Day。国連で定められた平和を祈念し推進する記念日、国際平和デー。非暴力と停戦の日です。

この日、私たち一人ひとりが平和に向けた大切な存在であることを考えるきっかけになればと、国内外で子どもたち、若者たちの課題に向き合う4団体、NPO法人JIM-NET、認定NPO法人国境なき子どもたち、認定NPO法人REALs(旧:日本紛争予防センター)、認定NPO法人PIECESの合同オンラインイベントを開催しました。

後半のクロストークでは、ファシリテーターにNPO法人Dialog for Peopleの佐藤慧さんを迎えて、世界で起こる出来事や課題を自分事として手繰り寄せ、自分にできることを見つけて、深めていきました。

 —-
・オープニング
・団体紹介と子どもたちの声の紹介
・4団体によるクロストーク
・クロージング
—-

#こどもとピース

クロストークに先立ち、各団体が活動の中で出会った子どもたちの声を紹介しました。

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◆イラクにおける小児がん患者の子どもたち、シリア避難民に対し医療支援などを行っている、NPO法人JIM-NETの牧野アンドレさんより

「すべての子どもたちが平和に暮らせる場所を作って」

ハルウェストくん。14歳。イラク・エルビル出身。小児がんサバイバー

「大切なもの:シリアで暮らしていた時にお兄さんが買ってプレゼントしてくれたお人形。ボロボロになってしまったけれど、服も髪も自分で直したんだ。これからもずっと一緒にいるよ」

ロウディクちゃん。13歳。シリア・ハサカ出身。現在イラク・ダラシャクラン難民キャンプ在住


◆日本の子どもたちや社会のWell-beingのために市民性醸成を行う、認定NPO法人PIECESの小澤いぶきさんより

「学校の大人がルールを決めるんじゃなくて、ほんとうはみんなで話し合って決めたい」

なつ。6歳。日本

「大切なもの:いろんなノート。ノートがあれば絵を描いたり、大切なことを書いておけるから」

すみれ。10歳。東京


◆アジア、アフリカ、中東地域でテロや紛争を予防し、人と人が共存できる社会作りを行う、認定NPO法人REALs(Reach Alternatives)(旧:日本紛争予防センター/JCCP)の瀬谷ルミ子さん

「好きなこと:音楽、楽器演奏、サッカー、将来はサッカーコーチになりたい。
大人にいいたいこと:子どもたちの考えをわかっていると決めつけて話を聞いてくれないことがある。でもぼくのお母さんは話を聞いてくれて苦しい時に助けてくれた。他の親たちも自分の子どもにそうしてあげたらいいと思う」

イーサン。14歳。ケニア

 

◆途上国のストリートチルドレン支援や紛争の被害にあった子どもたちへの教育事業などを行う、認定NPO法人国境なき子どもたちの松永晴子さんより

「大切なもの:遊ぶこと、笑うこと、学校、私の家族。
 大人に言いたいこと:学校の先生に私が先生のことが好きだと。家族に私が家族のことを好きだと。シリアの親族に私がヨルダンを好きだと」

マルワ。8年生。ザアタリ難民キャンプ


あなたの手の中のPieceはなに?思いと気づきを深めるクロストーク

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~コロナ禍の活動の困難と壁

佐藤さん:どこの現場に行っても感じるのは、そこの子どもたちが社会の尺度や鏡になっているなあということです。子どもたちがどういう状況に置かれているのか、どういう目をしているのか、どういう夢を持っているのか、どういう夢を描けないのか。そういったことに社会が映し出されると思っています。

子どもは「未完成な大人」ではないのですよね。子どもたちは独立した人格と尊重されるべき立場です。国や地域、文化を超えてそれぞれの素晴らしさを持っています。大人たちが見逃してしまう疑問や世界の美しさに気づくことができて、それを遊びとして表現できるのが子どもたちです。

日本国内外でそれぞれの土地の子どもたちと関わり続けてきた皆さんですが、このコロナ禍で、皆さんの活動にも壁を感じられることはあったでしょうか。どんな難しさがあるのでしょうか。

 

いぶきさん:みんな同じ状況にいるように見えて、生活環境などを要因に実は全く違う体験が生まれているなと感じます。家や家庭が安全でない若者たちがいます。ネットカフェが居場所だったのに、コロナで閉鎖されたり利用制限がかかったりして、居場所がなくなってしまうなど、ステイホームという言葉がとてもしんどい子どもたちがたくさんいます。

また、学校が休校になっている中でオンライン学習が広がっていますまた、、タブレットが家にない、Wi-Fi環境がない、そもそも保護者がそういう情報にアクセスするのが難しいなど、一定数の子どもたちが取り残されやすくなっています。

児童養護施設の中では、外部からのボランティアさんが入ることで、ひととの関わりが生まれていたのですが、コロナ禍でボランティアの受け入れができなくなり、これまであった人と人としてのリアルな関わりが断たれるということも起こっています。

普段からあった生活のほころびや、社会の歪みが顕在化したなと感じます。

 

瀬谷さん:私たちの活動で感じる壁は大きく2つですね。1つ目がテロ組織の勧誘のリスクが高まっていること。このコロナ禍はもともと弱い立場のひとたちがさらに弱っている状態で心にすき間ができやすくなっています。

そこに、このコロナ禍は政府の陰謀だとか、このままでは君たちは救われないとか、我々と一緒に活動すれば救われるとかのテロ組織のうたい文句で勧誘されてしまう。勧誘されやすくなっています。

2つ目が児童婚。生活が困窮してしまう貧困層に多いのですが、女の子を嫁がせる代わりに、富裕層から金銭を受け取れるのでこのコロナ禍の困窮で増えています。小さい子で10歳とか10代半ばの女の子が、ときには60歳などのはるかに年上の男性と結婚させられてしまう。私たちの活動地域の多くで見られるほんとうに深刻な問題です。

児童婚を苦にして自殺してしまう女の子も出てきています。南スーダンなどの日々の食べるものにすら事欠くような地域でも、それよりも自殺を選ぶという女の子がいて、その深刻さが分かると思います。

 

牧野さん:私たちの活動は、小児がんに対するものとシリア難民に対するものと2つあるので、まず小児がんの方ですが、政府が移動制限を敷いたので、遠方から治療を受けに来ていた子どもたちが県境を越えられなくなる、受診できない、という問題が起きています。

なので、受診の特別許可を取ることができた患者さんに、自宅近くの地域の受診できない患者さんへ薬を託す、地域の病院でも治療を受けられるようにする、などの緊急対応を取っています。

シリア難民の問題では、失業が特に目立ちます。シリア難民のひとたちはイラクで働くことができるのですが、工事現場やレストランなどで働くひとが多く、コロナの影響でそういう現場や店が全部しまってしまい、職を失ってしまっています。

生活ができないので、まだまだ安定しないけれどシリアに戻る、と言うひとたちが特に5月や6月はよく見聞きしました。あるいはトルコを経由してヨーロッパを目指すという話もかなり見聞きします。

 

松永さん:アンマン市内はイラクでも日本でも同じだと思いますが、職を失うひとが多いです。ヨルダン人もそうなのですが、難民の方たちは日雇いの率も高く、工場やレストランが軒並み閉まっていく中で、ほんとうにお金が手に入らないという状況で過ごさねばならない家族の話をたくさん聞いています。

ヨルダンは徹底的なロックダウンを行ったので、文化的に男性が家の中で力を持っている地域なので、DVなどに直面した女性がSOSを出せない状況が発生しています。この期間中に自死される方のニュースがちらほら見られます。ヨルダンはもともと自死が多くない地域なので、状況の深刻さがわかります。

一方で、難民キャンプは、支援団体のキャンプ入構に制限がかかっていた時期もありました。入れない間に連絡を取ったら「いや、僕たちの生活、大して変わらないよ」なんて皮肉を込めて言われました。彼らはこういう不自由さを7年も8年も続けてきていたんだなあと改めて体感しました。

 

佐藤さん:こういう世界的に大きな出来事があって始めて自分事として考えられるということなのかなとお聞きして思いました。僕自身、ガザ地区の女の子と話をしていて、「Black Lives Matterとか世界中で人権のことが叫ばれているけど、そもそも私たちの人権には誰か目を向けてくれたの?」と聞かれたことがあります。 

そういう話を聞くたびに、僕らが日頃目にしているニュースは非常に偏っているのかもしれないなと思いますし、もっともっと現地のひとの声に耳を傾けていかないといけないなと痛感します。

 

~困難な環境と孤立、そしてケアの効力

佐藤さん:難民として暮らす子どもたちはなかなか難しい環境にあると思うのですが、孤立しがちな環境にいるということは、助け合いの意識が育っていくものなのか、孤立が進み、深まってしまうものなのか、どうお考えでしょうか?

 

牧野さん:一概には言えませんが、難民のひとたちはやはり故郷に戻りたい方が多いので、ここは自分の家ではないという言葉はよく聞きます。故郷を離れている状態が長期間に及ぶと、将来を見据える力や描くビジョンに強く影響するんだなあと感じることはよくあります。未来を希望と一緒に思い描くことが難しくなりますね。

 

瀬谷さん:最近の世界的な傾向ですが、一般的に想像するテントを張った難民キャンプが存在せず、都市に流入して廃墟や違法な住居などに暮らいわゆる都市難民が増えています。難民キャンプを作っても生活苦や治安の悪化やテロ組織の勧誘場所になってしまって外に出る人もいれば、そもそもキャンプの収容数が足りず入り切れなかったひとたちが知人などをを頼って都市へ流れ込む。

難民は一般的に、女性の世帯主が多い。トルコでは、お父さんがシリアの戦闘で亡くなってしまった、あるいはお父さんは本国に残してお母さんが多い時は10人の子どもを連れて難民として避難してきている。お母さんは忙しくて難民同士でもつながれない、トルコのコミュニティとは言葉の壁があって情報を得られない。

トルコ政府は、登録さえしていればシリア難民も支援してくれるのですが、言葉の壁で行政の難民登録手続きもままならない。私たちは手続きの通訳や翻訳、交通手段の提供などの支援で、これ以上孤立が深まらないように活動しています。

 

松永さん:子どもたちは良くも悪くも慣れてきますよね。彼らの日常はキャンプでの生活になってしまっています。ヨルダンとシリアの国境は2018年に開いているのですが、親がやっぱり帰れないという選択をして残っている子どもたちがたくさんいます。外への憧れがありつつ、故郷に帰りたいと言い続けているのに帰れない。子どもたちにとっては結構大きいショックであると私たちは感じています。

その中で、シリアに戻る選択をする家族もいて、学校でシリアに帰る子のお別れ会が開かれる時があります。そんな時、すごく羨ましそうな顔をする子がいたり、「うちのお母さん帰れないって言ってたもん」という子がいたり、帰る、帰らない、どちらの選択にも葛藤の重みや壁を感じます。

 

佐藤さん:結局、国って何だろう、故郷って何だろうという問いが余りにも置き去りにされたまま、ただニュースとしてだけ難民の方々が消費されていっているように思います。孤立の長期化という点で、子どもたちの孤独に親以外で最初に気づいてあげられるひとは誰だとお考えでしょうか?

いぶきさん:保育・教育機関や医療機関、地域のNPOや任意団体等の様々な場や人、コンビニやネットカフェなどの店員さんといったインフラになりつつある場、行政機関ですでにその家族に関わる人でしょうか?

まず、家族ごと孤立する場合、そこに接点がなくなる、あっても関わることが難しくなっている場合があります。特に、外部との接点が少なくなり、親密圏に誰も関わらず、かつ困難な状況が続くと、もともと親密圏にあった関係性の勾配や、潜んでいた暴力性が顕在化することがあります。また、困難を親密圏の中だけでなんとかすることは難しいことも多く、親密圏の中で疲弊していくけれど、誰かに頼るのが難しいことも起こることがあります。そのような中で例えば親密圏の中の暴力があっても、そこに誰も介入できなくなるということが起こります。 

このような状況の前に、何かあったら関われるような関係性が育まれていることも大事なのではないかと思います。

子どもが学校に通っているなら、学校の先生との良好なつながり。一方で、学校に通っていない子たちがとても取りこぼされやすくなります。

また、医療機関も家族と出会える場ですし、行政機関と繋がっている場合もあります。地域のNPOや団体が運営する場が大事な家以外の場所になっていることも少なくありません。

一人ひとりの地域に住んでいる市民という意味で、コンビニの店員さん、訪れたひと、それこそ電車で乗り合わせたひと、私たちですね。すれ違っているのに見ないことにしていないかとか、自分の目に映らないだけで、ほんとうはすぐ隣に孤独を抱えた子どもがいるのかもしれないということを意識し続けたいと思います。

松永さん:私たちは公立学校で授業をしています。学校には教育省の管轄でソーシャルアドバイザーなどカウンセラーのようなひとたちがいるのですが、私たちの授業を担当している先生のところに話に来てくれる子どもが結構います。子どもたちが打ち明けたいと思うには、絶妙な距離感が必要なのかなと思っています。

キャンプの中でも、20~23%の割合で働くなどして学校に来られない子どもたちがいます。そんな子と道端でばったり出会って、「なんかもう、家でも仕事場でもほんとうにたいへんなんだよ」という話を聞かせてもらったりもしています。

 

~活動の中で子どもたちからもらった宝物

佐藤さん:このメンバーで話しているとあっという間に時間が飛び去ってしまいますね。子どもたちというのは、僕ら自身がかつて見えていたけれど、今は見えなくなってしまったものを教えてくれる大切な存在で、僕らの誤りを気づかせてくれる存在ではないかなと思っています。現場での活動を通して、子どもたちからいただいた宝物を教えてください。

 

牧野さん:すべての活動を通して、人間って誰もが尊厳が大切なんだなということです。子どもたちのシリアに帰りたいという願いも、普段の会話に出てこない心の奥に持っているもので、それを共有してくれたということをとても大切に思います。おとな一人ひとりがもっと気づいてあげられるようになることも必要だなと気づかされました。

 

松永さん:子どもの時分にしなくても良いことをたくさん経験している子どもたちがいて、その気持ちを私も周りのおとなもどこまで理解できるんだろうと考えることがよくあります。でもこれって、子どもの頃の自分の想いとか記憶とかをきちんと心の引き出しにしまっておくのが大切なんだなと。

自分の気持ちとちゃんと向き合ってゆくことが、子どもたちの気持ちにも丁寧に向き合うことなんだなと改めて思いました。


瀬谷さん:紛争地には生きるか死ぬかの選択肢すらない人たちがいる。人生を自由に生きる権利を、紛争地のひとたちに増やしていきたいと願って活動しています。そして、自分の手の中にある人生の選択肢にも目を向けるようになりました。その時にしかできないことを、やるかやらないか。やらないのなら、選ばなかった選択肢は自分の決断であることを意識して、自分の人生にも社会の行く末にも責任を持つということを、日々教えてもらっています。

 

いぶきさん:3つあります。1つ目は、まだ見えてない人の、そして社会の痛みも可能性もあるということ。自分の価値観や経験で作られた「めがね」をわたしも持っています。それはとても大切なメガネでもあるけれど、自分のめがねで見たいように見たいものだけ見ていると、どもたちの感じていることや願いにはたどり着けないんだろうなと。そして、もしかしたら、見えない願いが気づかれず、見えていないことの痛みの上に、社会が成り立っていく可能性があるのだろうなと。子自分が見えている範囲に限界があり、見えていないけれど共に生きている、過ごしているという人が、ことが、ものがあるということを自覚して、人を一人の人として尊重していきたいと思っています。

2つ目が、子どもたちは環境に左右されるということです。だからその環境を作っている私たち大人一人ひとりがそのことをちゃんと意識する必要があります。子どもたちの環境にどう関わっていくのか、その環境にある、大きな危機の前の小さな小さな兆しをどう感受するのか。その関わりには正解はないから、わたしは生涯ずっと問い、学び、働きかけ続けていくのだということを学びました。無自覚に加担している社会に起こる様々なことについても同様です。、 最後に、目の前の子の、出会う人の、そして社会にあるレジリエンスにも目を向けるということ。今起こっていることは、歴史的・文化的に内在化されてきた暴力性やバイアスといった様々なことが影響しています。同時に、その中で育まれてきたレジリエンスも存在し、それが新たな可能性を生み出してきてもいます。だから、困難な状況でも回復や癒えを育んできたレジリエンスやwellbeingを受け取っていきたいと思います。

佐藤さん:皆さん、今日はどうもありがとうございました!


参加いただいたみなさんからはたくさんの質問が寄せられました。「活動を支援するためにできることは?」というものがあり、登壇者が「少額のマンスリーサポートや食らうドファンディング、商品の購入も大きな力になる」「困難にある子どもにとって、見ず知らずの誰かが自分のために行動してくれたという事実こそが、人生をよりよく生きようという変化を起こす」と答える場面がありました。

 

香港の若者に「関心を持ってくれることこそがサポート」と聞いたとの話もあり、知ることが関わりやサポートの一歩だと、改めて登壇者たちは語りかけます。知ったことの発信もサポートの輪を広げる大切なひとつの活動。

 

ひとりの市民として、隣にいる子ども、すれ違う子どものサインに気づくことが、子どもたちにとっても大人にとっても安全な地域、やさしい地域を作る一歩になっていきます。みんなで共に、暖かい未来を育んでいくことを願いながら、「Piece for Peace」はクローズしました。

セミナーレポート|子ども・若者にとっての“支援”を紐解く ~公的支援の立場から見る“非専門職”の可能性~

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11月1日(日)、「子ども支援のこれからのカタチ ~公的支援の立場から見る“非専門職”の可能性~」として、弁護士法人ソーシャルワーカーズの安井飛鳥さんをお招きして公開講座を行いました。

オンラインで、29名の方々に参加いただきました。

講師:安井 飛鳥 氏
弁護士法人ソーシャルワーカーズ 副代表
社会福祉士・精神保健福祉士・弁護士/児童相談所勤務弁護士

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◆講座内容
講座は以下4つのセクションに分けて進められていきました。

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・講師紹介/ソーシャルワーカーズの活動紹介

最初のパートでまず話していただいたのは、弁護士法人ソーシャルワーカーズの業務内容、安井さんのこれまでの経歴についてです。安井さんが弁護士、ソーシャルワーカーを目指した背景や専門職の可能性と限界について、お話いただきました。


・公的機関・専門職として出会う子どもたち

ここでは、安井さんが専門職として出会ってきた子どもたちについて話されました。特に印象的だったのは、「福祉・医療・司法をさまよう子ども」という話です。例えば、情緒的な理由から暴れてしまうお子さんがいて、家庭内での養育が難しくなり、児童相談所に連絡が入ったとします。ですが、福祉というのは強制的に行動を制限するような場ではないため、暴れてしまう子を本人の意思に反して保護し続けることは難しくなります。では、医療ならどうかということで、病院への受診を進めたとしても、病気というよりも情緒面からくる行動であり、医療で入院治療による解決が期待できる子ではないといわれます。それでは、司法で対応するのかというと、意図的に暴力行動を起こしているわけではなく、他者への被害も軽微であるので司法による矯正教育にも馴染まないという判断から司法の枠からもこぼれてしまう。そうして、どこの分野の支援からも漏れてしまう子がいるというお話をしていただきました。その他にも、「引きこもれない子ども」「少年院からでられない子ども」など、その背景にどんな課題があるのかをお話いただきました。

・対談①~専門家と市民、それぞれの特徴と役割~

講師の安井さんとPIECESの斎で、専門職と市民の役割について対談をしました。

専門職の得意なこと、不得意なことの話、そして実際に専門職以外の人との関わりから容体が変化した子どもの事例もお聞きしました。トラウマを抱え、医者、心理士、ソーシャルワーカーなどが関わっていても、ずっと苦しい状態が続いていた女の子が変化したきっかけは、アイドルオタクのファンコミュニティ。専門職からすれば、少し不安があるような交流ですが、結果的にその子はそのコミュニティの中で支えられ、見違えるように変わったそうです。課題や問題にばかり目が行きがちですが、その子が持っている興味や関心に繋がることで、子どもが持っている力が発揮されるということがわかる事例でした。

・対談②~市民性を発揮するうえで大切にしたいこと~

前のセクションに続き、市民性を発揮して地域の中で活動していく時に大切にしたい視点について対談しました。

地域という視点を持った時に、気をつけたいこととして、「子どもを特別な対象としてみない」というお話がありました。それまでの話の中で、専門職の得手不得手の話がでてきていましたが、専門職だからこその限界があるのにも関わらず、そこで市民まで同じような関わりをしてしまうと、苦しいということでした。だからこそ、1人の人として普通に接して欲しいというお話がありました。

また、育ちの課題を抱えていながらも、いろんな支援をかいくぐって、様々な地域を放浪するような子もいます。そのような子が、どこの地域に流れ着いたとしても、心が落ち着けるような出会いがある地域があちこちに増えて欲しいと安井さんはお話してくださいました。


◆当日の質疑応答の様子

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当日は講義動画をそれぞれで見た後に、数人ごとで感想共有を行い、全体で質疑応答を行いました。

質疑応答では、「関わる上で自分も心地よく関わっていける範囲を掴むのは時間をかけて磨いてきたと思うが、どういうところで自分のバロメーターを測ったり、意識していたりしているのか。」「福祉・医療・司法の連携が難しくて取り残される子どもの事例を知りたい。」といった多くの質問が参加者から寄せられました。

質疑応答の中で、「子どもの状態に合わせてほほえみ返しを繰り返すと、子どもに振り回されて自分というものがなくなるのでは?自分の感情などを大切にできないのでは?という恐れがある。自分も大切にしながら子どもと関わる上で意識していることがあれば、教えてほしい。」という質問に対し、安井さんは以下のように答えてくださいました。

「ほほみがえしや振り回されるというのは、ある種専門家として意識的やっている。振り回されるというのは、それを見越してやっているのであり、意図していないことで、振り回されているというのは違う。そうしていくためにはそれなりの見立てが必要になる。その上でほほえみ返しというのは、アタッチメントにも関わってくることで、絶対的な安心感を与えるということ、。この役割をするためには、自分が本気で大丈夫だよと思える状態じゃないといけない。だからまずは自分のメンテナンスをする。自分が本気でほほえみがえしをできないようならその役割を担えないし、その子とは若干距離を置かなくてはいけないと思っている。僕もプライベートがあるし、フル稼働してその子に尽くすことはできない。なので、プライベートはしっかり切り分けていて、子どもにも伝えている。その枠を子どもは理解してくれる。緊急対応の初動など例外もあるが、基本としては自分を保てる枠を作るというのが必要だと思います。」

子どもに関わりたいという想いが強いほど、どうしても力が入り過ぎてしまったり、子どもを特別な対象として支援をしようとしてしまいます。ですが、「支援してあげている」という関わりは、もしかしたら、「子どもの持っている力を奪ってしまっている」かもしれないと感じました。そんな関わりだけでは、子どもたちは辛くなってしまったり、関わっている大人も息切れを起こしてしまったりするかもしれません。だからこそ、1人の市民として関わること、そして、自分と相手の心地よい間を探すことが大切なのかもしれないと講座全体を通して感じました。

◆感想
以下、参加者からの感想です

・私自身は専門職でもなく、安井さんや前回の山下さんが対応されている様なかなりハードな事例に登場するような子どもに出会う事は今までありませんでした。しかし実は見えていないだけでハードな状況になるまでの段階では、自身の周りに当たり前にいる子ども達なのだと感じました。今回、講座を受け市民として地域や社会で「自然に」見守ると言う「自然に」と言う事が反対にとても難しく感じられましたが、今後も市民としての自然な関わり方への模索を続けたいと思います。

・私自身社会福祉士の専門職のために学びつつ、できないことや制度の隙間からこぼれ落ちてしまう子どもがいることにモヤモヤを感じて、このプログラムに応募しました。そのため今回安井さんが専門職・公的機関としての強みと難しさの両面からお話ししていただいて、自分の中にあったモヤモヤが少し明確になった気がしました。専門家の存在は大切だけど、ずっと専門家がついているわけにも、ずっと制度の中で生きていくわけにもいかないから、やっぱり地域が大切になるし、そこで発揮されることが市民性なのかなと感じました。好きなことで繋がれる人がいるって、本当に楽しいし、何にもとらわれない空間だから、自分のそういった面を活かしていきたいと感じます。


第5回目は、12月6日(日)10時~の開催です。

講師に、九州大学大学院人間環境学研究院専任講師である田北雅裕さんをお招きし、まちづくりやコミュニケーション・デザインの視点を切り口に、子どもを支える環境や市民性についてお話しいただく予定です。単発でのご参加も受付が開始していますので、ご関心のある方は是非イベントページをご覧ください。

第3回目のリフレクションを開催!子どもとの出来事を振り返り、見えてきた「願い」とは?

自分が見過ごしている感情や思い、子どもの願いはどこにあるーー? 11月1日(日)と5日(木)に、第3回目の「リフレクション」が開催されました。今回の目的は、前回のゼミでの自己覚知を踏まえて、自分の価値観や考え方のクセに気づくこと。合計25人の参加者と一緒に、プロセスレコードを使ったグループリフレクションを通じて子どもとの関わり方を探求していきました。



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◆当日の流れ

自己紹介で最近のハイライトについて共有したあと、①前回の復習 ②グループでリフレクション ③感想のシェアと学びポイント の3つのセクションに分けてプログラムを進めました。


・セクション1 前回の復習

「リフレクションとは何か」や「リフレクションにおける観察と仮説」をおさらいしたあと、自己覚知をすることで自分の価値観を自覚したり、他の人の価値観との違いに気づいて受け入れたりすることの大切さを学びました。


・セクション2 グループでリフレクション

まずは宿題として、最近の子どもとの出来事の中で心に残っている場面を振り返り、プロセスレコードを書いてきてもらいました。グループワークでは、代表者のプロセスレコードを使って「このときのAちゃんの目線や声のトーンはどのようなものでしたか?」「このときの気持ちを形容詞で表現すると、どんな言葉が浮かびますか」といった問いを投げかけたり、仮説を立てたりすることで、参加者同士で価値観や考え方のクセへの理解を深めていきました。ワークの最後には、問いを投げかけた人とグループの代表者が感想を伝え合いました。


・セクション3 感想のシェアと学びポイント

各グループでプロセスレコードを発表してくれた人から、全員に向けて気づきや感想をシェアしてもらいました。その後、今回のリフレクションの学びポイントを共有しました。具体的には、①自分のメガネ(価値観やモノの見方のクセ)に気づくこと②リフレクション時に抱きやすい「不全感」に気がつくこと③一歩踏み込むことへの「ためらい」に気がつくことについて共有し、子どもとのより良い関わり方についての考察を深めました。




◆当日のハイライト

プロセスレコードを用いたリフレクションは2回目でしたが、前回よりも参加者の方からの問いかけが増え、1つの事例を基にさまざまな可能性や仮説に思いを巡らせ合う様子が見られました。ワーク終了後は「自分の考え方のクセが見えてきた」「自分とは違う視点を持つことができた」などの声が上がりました。


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◆感想

以下、参加者からの感想です。

・プロセスコードと質疑応答によって、自分とは異なった視点を認識することができました。リフレクションの時間というのは質疑応答しつつ、プロセスコード上の「その時」を冷静に分析し、さらに深いところにある見えない理由や意味を明らかにするもの。副次的には提供者の行動・感情に皆で肉付けする時間なのではと感じました。良い・悪いをはっきりさせるものではないので、それぞれの尺度でお互いの価値観を認め合え、伝えることができれば更にリフレクションを楽しく有意義に行える。それは同じような方向を向いている相手としかできないので、CforCは本当に貴重だなという感情を抱きました。前回はただただ、難しいという感情で一杯だった中、今回はリフレクションの楽しさを少し感じることができました。



・前回のリフレクションでは、問いを受ける側をさせていただき、今回のリフレクションでは、問いかける側をさせていただきました。受ける側の時は、ぐーっと自分の中に入り、感情を呼び起こす作業をすることで新たな気づきをたくさんいただきましたが、今回は、プロセスレコードを書いた方が感じていたことや行動にフォーカスし、その心の動きを聞き出せるように、グループで丁寧に聞いていきました。「『距離』『距離感』というワードから、自分が思う理想があるのでは、本当はこうしたいという自分がいるのでは」という質問から、その方の生い立ちの話が引き出される場面では、問いの持つパワーを感じました。実践する中では、自分の気持ちがメインになってしまって、何気なく通り過ぎていってしまう場面も、その時の行動や感情を振り返り、書き出すことで深まることが知れ、リフレクションの大事さを改めて感じることができました。

想像力や優しさを広げるために。私たちが心がけたい、虐待のニュースの受け止めかた #虐待防止月間

小さな命が奪われた事件を耳にすると、やるせなさや憤りを感じたり、ぎゅっと胸が苦しくなって、その悲惨な現実から目を背けたくなってしまうことがあります。

ニュースを目にすると、私たちには児童虐待に関するセンセーショナルな事件が舞い込んできます。そんな時、社会では事前に防ぐことのできなかった虐待を、その保護者や、児童保護に関わる機関の失敗だと批判する声が聞かれますが、非難をするだけでは子どもたちを守ることには繋がりません。

では、どうしたら子どもたちは安心できる環境で子どもらしく生きられるのでしょうか。


今月11月は、厚生労働省が定めた児童虐待予防の啓発を行う虐待防止月間です。
認定NPO法人PIECESではこの虐待防止月間に関連して、様々な情報を更新していきます。

第一回目の記事となる今回は、世の中に溢れる情報をシェアする前に、あなたに知っておいてほしい大切なことをお伝えします。PIECES代表理事 児童精神科医の小澤いぶきが紡ぐ、「虐待を予防するために知っておいてほしい、センセーショナルなニュースの受け止めかた」とは。

  1.  知っておきたいニュースの受け止め方とあなたにできること

  2. 【付録】日本における児童虐待の現状

今この瞬間にも、安全な頼り先がない中で一人で頑張って生きている子どもたちがいるということ。その子たちが置かれている環境やそれが起こった背景を知るために私たちに必要なまなざしとは何か、一緒に考えていきましょう。


知っておきたいニュースの受け止め方とあなたにできること

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小澤 いぶき Ibuki Ozawa

PIECES 代表理事 / Founder
東京大学医学系研究科 客員研究員 / 児童精神科医

11月は虐待防止月間です。1ヶ月の間に様々な啓発活動が行われると思いますが、今回はそもそも私たちが虐待のニュースを知った時にできること、そのニュースの受け止め方についてお伝えできたらと思います。

例えばアメリカには、メディアが家庭内における暴力を報道するにあたってこんなガイドラインがあります。


― Often, news coverage about child abuse and neglect focuses on the shocking and brutal results of individual cases of abuse—a perspective that can reinforce misperceptions that “bad parenting” or a failure of child protective services is the main cause of child maltreatment. 

Journalists can help audiences understand that child abuse and neglect is not simply the result of individual failures or family dynamics, but a public health issue that affects communities and society in significant ways. 

By working with prevention researchers, practitioners, and other experts, journalists can craft news stories about child maltreatment that convey not only the problem but also possible solutions. ―

ーー虐待やネグレクトに関するニュースの多くは、個々の虐待のケースがもたらす衝撃的で残忍な結果に焦点を当てています。そういった視点は、単に個人の“悪い子育て”や、児童保護に携わる機関の失敗が、子どもへのマルトリートメント(不適切な養育)の主な原因であるという誤解を強めてしまいます。

そこで、ジャーナリストができることは、児童虐待やネグレクトが、単に個人の失敗や、家族の関係・動態によるものではなく、コミュニティや社会に重大な影響を及ぼす公衆衛生の課題だと、受け手に理解を促す報道をすることです。

ジャーナリストは、予防に携わる研究者や専門家とともに取り組み、子どものマルトリートメントに関して、問題だけではなく、可能な解決策を伝えることができます。

アメリカ・疾病対策予防センター「児童虐待・ネグレクトに関する報道での推奨例」より一部抜粋

私は、ここでいうジャーナリストを単にマスメディアのことだけだとは考えていません。簡単に誰もが世界に向けて発信することができるようになった今、一人一人が情報を媒介しうること、それによる影響があることを知っておくことが重要なのではないかと考えています。

センセーショナルなニュースは目に止まりやすく、拡散力があります。そのときに知っておいてほしいことは、私たち一人一人のシェアしたその情報が、虐待が起こる社会の綻びを大きくしてしまっていないかということです。

例えば、

・ニーズに合わせた情報や困りごとの解決・虐待の予防につながる情報をシェアする

「この地域にはこんな遊び場があるよ」

「私も困ったときにここに相談しました」

「**の地域にはこんな団体があって、こんなことをしているようです」

・今できることやグッドプラクティスを紹介する

「子育て世代を応援する取り組みが今始まっているみたい。 #** で投稿しているみたいだよ」

「以前こんな風に解決したこともあるみたいです」

・虐待が公衆衛生の問題だということを伝える

「この問題をつくりだしている社会の構造は何だろう?」

「すでにあるグッドプラクティスや、資源を伝えることが必要だね」


といったように、不安や悲しみ煽るのではなく、心を落ち着かせて今ある良い選択肢を提示するという方法もあります。このように伝えれば、情報を受け取った人が過度に不安を高めるのではなく、安心して誰かに頼ったり、相談したりしやすくなるかもしれません。


そして同時に、虐待のニュースを見たときの自分自身の感情も大切にしてみてください。怒りや悲しみ、無力感、自分が責められているように感じる。そんな様々な感情は、自分自身のことを知り、虐待を予防する大切な感情です。

もし少し余白があれば、こうした感情が起こった背景にご自身のどんな願いや経験が影響しているのか、社会に起こってきたことがどう影響しているのか、そっと見つめてみてください。

「私はなぜ、悲しいと感じたのだろう」

「憤りを感じたのには、こうあるべきという私の理想があったのかも」

「悲しさの感情のわけは、自分の過去の経験が思い起こされたからかもしれない」

そんな風に自分に起こった感情の背景を想像してみると、時にその感情の背景には自分自身の願いや価値観、経験してきたことが存在する場合があります。

しかし決して自分の感情を否定的に捉える必要はありません。起こったどの感情も大切な感情で、それを感じられるのは自分の力でもあります。だから、その感情をゆっくり丁寧に受け止めてみてください。

また、その感情を感じることで自分が疲れるという時には、感情を喚起するニュースから離れてみてください。

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自分の感情をそっと丁寧に受け止めたあとに余裕があれば、ニュースが伝えていない複雑な背景を調べ、想像してみていただけたらと思います。

「虐待ってそもそも家族だけの問題なの?」

「育児環境の困難さや、困窮した状況はどんな社会の構造から生み出されているのだろう?」

「私はそこにどんな風に関わっているのだろう?」

「誰かに相談することができなかったのは、親の責任?」

「他の地域ではどんな取り組みがあるのだろう?」

ひとつ一つの疑問を考えて、「こんな社会だったら予防ができたかもしれない」と想像してみてください。安心して相談できる環境が近くにあったら、こんな制度があったら、こんな文化が醸成されていたら。どんな社会だったらその子も保護者も安全で、予防がなされていたのでしょうか。

そして改めて考えてみてください。ニュースを見たあとに、親や保護に関わる機関を非難することはかえって、子どもたちの周りにいる人たちが誰かに頼ることを躊躇わせたり、児童保護の機関で働く人たちを疲弊させたりしてしまわないでしょうか。

残念ながら、日本にはまだ冒頭で示したアメリカのような報道ガイドラインがありません。そんな中、私たちにできることの一つは出来事の一部を切り取り、センセーショナルに伝えたり、誰かやどこかの機関をスケープゴートにするような発信ではなく、子どもの生きる環境の安全を育み虐待が生まれにくくする社会をつくるために言葉を紡ぎ直して発信をすることなのではないかと思います。

また、繰り返しになりますが、報道により自分の状態がいつもと違うなと感じる時、報道から離れ、自分が少しだけケアされる時間を作ることもとても大切なことです。

一人の子どもが虐待を受けることは、その家庭だけでなく社会の問題です。子どもに起きていることが社会を映す鏡だとしたら、その出来事は遠くの誰かのことではなく、私たち自身のことでもあります。

裏を返せば、それは私たち一人ひとりが、より良い社会に向けてできることがあるということです。だからこそ、虐待というテーマの中で、不安や怒りを煽るような情報ではなく、想像力や優しさを広げていくような、一人ひとりの行動を促すような発信が広がっていったらと思います。


【付録】日本における児童虐待の現状

正しく情報を理解するためには、児童虐待の現状を知っておくことも必要です。
「児童虐待は毎年増えている」「虐待問題は世代間で連鎖する」など、巷でよく耳にすることは果たして本当なのでしょうか。

死に⾄らしめるリスクのある⾝体的虐待とネグレクトは年間約7万件発⽣し、 うち52件は実際に死に⾄っている。

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児童虐待には身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待、そして心理的虐待の4種類があります。その中でも年々増加傾向にあるのは心理的虐待です。


虐待相談対応件数は年々増加し、平成30年度は約16万件までのぼっています。この中には「子どもに手を上げてしまった」「子どもを激しく叱ってしまった」といった親自身からの相談も含まれており、数が増えたことを単に問題が増えたからだと受け止めるのは誤解を生む可能性があります。また、2020年の新型コロナウイルス禍において虐待相談対応件数が増加したと言われていますが、COVID-19との関連は今のところ不明のままです。

児童相談所に寄せられた相談のうち、身体的虐待とネグレクトを合わせると約7万件。児童養護施設に一時保護される子どもの数は年間約2万件、社会的養護の環境に置かれた子どもは年間約4500件です。

心中を除く虐待死は平成29年で49件、平成30年は52件。その件数は、この数年間横ばいで推移しています。

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虐待の発生要因を探ってみると、様々な社会の綻びが見えてきます。

ひとり親家庭や貧困などの家庭環境的要因、親自身の鬱傾向など精神的健康が保たれていないなどの養育者の要因。家庭が地域で孤立をしていたり、職場からの理解が得られず育児に過度なストレスがある環境も虐待が起きる一つの要因となります。

こうしてみてみると、親や保護に関わる機関を非難することは問題を解決しうるのか、という問いへの答えは自明のことと思います。

そもそも虐待などの危機の手前には、何かしらの社会の綻びがあるはずです。その社会の綻びを編み直すことで、子どもの周りの不条理や危機が起きづらい社会にしていくことを考える必要があるのではないでしょうか。

文・写真:若林碧子


PIECESでは虐待防止月間の11月、児童虐待防止のために大切な情報をシェアしていきます。これから記事やイベントなどで皆さんと共に考えていく時間をつくっていきますので、ぜひシェアなどしていただけると嬉しいです。

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第2回目のリフレクションを開催! 「観察し、仮説を立てる」練習をスタートしました

子どもとのやり取りを振り返った先に見えてくる、自分のほんとうの「願い」とはーー?10月4日(日)、第2回目の「リフレクション」が開催されました。今回の目的は、リフレクションにおける観察と仮説の観点を学ぶことと、プロセスレコードを使ったリフレクションを体験すること。オンラインで、15名の方々にご参加いただきました。

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◆当日の流れ

簡単な自己紹介のあと、①観察と仮説のワーク ②代表者の事例を基にリフレクション ③グループでリフレクション体験 の3つのセクションに分けてプログラムを進めました。


・セクション1 観察と仮説のワーク

リフレクションの目的を振り返ったのち、観察するときのポイントをお伝えし、架空の小学生6年生の子どもについて書かれた3行の文章を読んで仮説を立てる練習をしました。


・セクション2 代表者の事例を基にリフレクション

自己理解や対象への理解を深めるツールである「プロセスレコード」を使って、代表者に自分が経験した子どもとの「場面」を振り返ってもらいました。相手の言動と自分の言動、その背景にある思いを書き出し、それらを客観視して考察を深めたり仮説を立てたりすることで、参加者全員で観察眼や想像力を深めました。
たとえば、「この子がこう話しているときの表情や声色はどのようなものでしたか?」「この発言をしたとき、あなたはどんな気持ちでしたか?」などの問いから、深めていきました。


・セクション3 グループでリフレクション体験

参加者同士、3〜4人のグループに分かれてリフレクションをしました。グループの代表者が発表した事例について他のメンバーが問いかけることで、自分だけでは持ち得なかった視点や気づきを得る時間になりました。ワークの最後には、質問をした人とグループの代表者が感想を伝え合い、思いを共有しました。



◆当日のハイライト

プロセスレコードを用いたリフレクションを体験するのは初めてという人が大半だったため、緊張感を覚えた人も多かったようです。ご自身の経験を話してくださった方からは、他の人からの問いに答えるなかで自分自身の内面に気づき、「心がザワザワした」「見ないようにしていた感情に向き合う機会になった」といったコメントが寄せられました。リフレクション終了後も、気づきをSNSやnoteなどで発信したり、Slack上でお互いに感想をシェアし合う様子が見られました。


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◆感想

以下、参加者からの感想です。


・リフレクションを通じて、目の前の現象を言葉にするときには主観の解釈が入っていることを常に意識しながら様々な角度から観察し、多面的な見方ができるように心がけたいと思った。自分の解釈は、自分の経験や価値観、想い、願い、環境等が多分に影響する。だからこそ、少しでも感じられる、見えることを増やしたい。そのためには、いろんなことに興味関心を持ち、たくさんの経験、研鑽を積んでいかないと…と思った。


・モヤモヤした事例を振り返り、みんなに頭を抱えていただいたリフレクション。「あの時なんであんな風に言ってしまったのか」「目の前のあの子をもしかしたら傷つけてしまったのでは」など(良い悪いを判断するものではないとわかっていつつも)、思っていた以上に心がチクチクしました。それでも、その気持ちは気持ちで自分の中でグッと受け入れ留めておき、新たな視点に気がつけたのは結果的に大収穫です。実は、こう思えるまではなかなかしんどく、丸一日くらい時間がかかってしまったけれど(笑)、CforCの場であったおかげで安心して味わえたなぁと思います。ひとりでは味わえない、とっても豊かな経験でした。


・今まで私が経験した子どもや社会の事を学ぶ場では、参加者それぞれの思いを共有することはあっても、その思いの裏にある感情を共有することなどありませんでした。私には、自分の感情を出し他のメンバーと共有することは少し戸惑いの残ることですが、このCforCで出会ったメンバーやスタッフの方々とそれぞれの思いや感情を共有し合い、自分の感情を大切に見つめ、共有した新しい感情として生まれ変わらせ、これからその心で子どもの心に寄り添い見守る事ができれば幸せだと思います。



セミナーレポート|子どもたちの"いきづらさ"に心を寄せる 〜孤立する子どもたちが本当に求めているものとは?〜

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10月4日(日)、「子どもたちの“生きづらさ”に心を寄せる ~孤立する子どもたちが本当に求めているものとは?~」として、NPO法人ビーンズふくしまの山下仁子さんをお招きして公開講座を行いました。

オンラインでの開催で、35名の方々に参加いただきました。


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講師:山下 仁子

NPO法人ビーンズふくしまアウトリーチ事業 事業長

福島県ひきこもり支援センター ひきこもり支援コーディネーター


◆講座内容

講座は以下4つのセクションに分けて進められていきました。


・講師紹介/ビーンズふくしまの活動紹介

最初のパートでまず話していただいたのは、ビーンズふくしまの事業概要、支援の内容についてです。山下さんたちが行うアウトリーチ型支援がなぜ必要なのか、どのように有効なのかを説明いただいたうえで、「支援は必ず子どものエンパワメントを中心に置く」ということをお話いただきました。

・貧困の中を生きる子どもたち

日本の貧困情勢を数字や定義でみた後に、貧困の中で生きる子どもたちの実情について話されました。これまでに出会ってきた子どもたちからは「生きているとみんなに迷惑かけるから今から死のうと思う。でも、母親を1人にはできないから母親も殺すしかない。」「今まで頑張ってきたけど、これ以上何をどう頑張ればいいかわからない。生まれてきたのが間違いだったんだよ。」と言った発言があったそうです。その発言が生まれてくる背景には、複雑な家庭事情があること、貧困の中で生きることで、その環境が当たり前になり、違和感を持つことができず、生きる力が低下していることなどをお話いただきました。

・対談①~信じ続け、関わり続ける~

講師の山下さんとPIECESの斎で、子どもの人権について、ある女の子の事例を交えながら対談しました。母親の精神疾患などを背景に施設入所につなげていった10代半ばの女の子。ですが、そこが本人にとっては安心できる居場所にならなかった中で、自力での生活に向かっていったそのプロセスで、一人の支援者として本人の声を尊重すること、本人の力を信じること、本人の周りにいる関係者にも敬意をもって環境づくりをしていくことについて、山下さんの飾らずに温かい人柄やまなざしそのままにお話しいただきました。

・対談②~子どもと関わる上での姿勢~

前のセクションに続き、山下さんが出会った子どもたちとの話から、「子どもと関わる姿勢」について対談しました。しんどさを抱えている子どもたちに向き合うときに、どこかで真面目にやらなきゃということがあるが、山下さんの関わり方の中にはユーモアがあるという斎の言葉に対し、「困難な子であればあるほど、楽しい大人でいようという思いがある」と山下さんは語ってくださいました。また、子どもの発した言葉に対し、「心で聞いて心でこたえると、たとえそれが正解じゃなかったとしても、間違っていても優しい答えになるんじゃないか」ということも話してくださいました。


<公開講座当日の様子>

◆当日の質疑応答の様子

当日は講義動画をそれぞれで見た後に、数人ごとで感想共有を行い、全体で質疑応答を行いました。質疑応答では、「問題のある子どもに接するとき、どうしても慎重になりすぎたり、はれ物に触れるような接し方をしてしまうことがあるが、山下さんがそういった子どもたちと対等な人間として関わるために心掛けていることはありますか?」「どういうモチベーションでご活動を始めて、その後ご活動を続けているモチベーションや背景にある思いを教えていただけますか?」といった多くの質問が参加者から寄せられました。

質疑応答の中で、「その子を信じ、信じて進んで裏切られて、ということはありましたか?」という質問に対し、山下さんは以下のように答えてくださいました。

「今まで子どもと関わってきた中で、裏切られたというふうには思っていなくて。例えば約束したことを守らなかった子どもはたくさんいる。子どもが、”裏切る”という感覚で大人と関わっているのかというと、(意見が)変わったり、ちょっと嘘つきたくなったりする時もあるよなと。私は、子どもがどうやったら約束を守ることができるのか、また一緒に考えていこうというのが強いので、裏切られたから困ったということは考えていなくて。このやり方だと本人はやりにくいのかなとか。本人がやれなかったとか嘘ついてしまったとかで自信をなくしてしまうよりは、本人が約束を守れるためにはどんなやり方が良いのかと考えていくようにしています。」

また、「山下さんが、優しいこたえが子どもを包んでくれるように工夫していること、意識していることはありますか?」という質問に対しては、以下のように答えてくださいました。

「全てにおいて正解はなく、自分に何かできるとも思っていないということがまず前提にあって。こちら側も子どもの言葉で傷つくこともあれば、こちらが良かれと思って言った言葉で子どもを傷つけてしまうことがある。例えば『学校行きたいんだよね』と子どもが言ってくれたときに、どうしたら行けるようになるかというよりも、この言葉を発してくれるようになるまでに半年かかってしまった、こっちが学校の話題に触れていたらもっと早いタイミングで学校に行けてたんじゃないかと感じる。そこで私の中で出てくる言葉は、『早く気づいてあげられなくてごめんね』ということ。まず気持ちに対しての言葉をかける。発してくれた言葉だけをとるのではなく、その言葉の裏側に何があったのかを一回受け止めて、その気持ちの動きにまず応えるということをやっているかなと思います。」

寄せられた質問に対する山下さんの回答を聞くと、無理に前に進めようということではなく、発してくれた言葉に対する気持ちや発するまでの過程をまず大事にするということが、優しい答えなのではないかと思います。「子どもの声を大切にする」とはよく耳にしますが、それは頭で考えるのではなく、心で聞いて答えるということなのかもしれないと思いました。


◆感想

以下、参加者からの感想です。

・山下さんはものごとを切り取らず、複雑なものを複雑なままに受け取られているような感覚がして、まさに心で生きているんだなと思いました。「ありのままを受け止める」とか「対等な関係性」とかいろいろ語られるけれど、そういうことではなくて(もちろんそれも大事なんですが)「言葉」にならない、ただそこに存るこれまでを含む「今」そのものを見る感覚があるような感じがしました。表象されている「言葉」を見るのではなく、その「言葉」が付けられた奥にある景色はきっと「言葉」だけでは語れず、丁寧に見つめて受け取るしかないのだろうと思います。

・訴えることもない子どもや裏切られた時にはどうなのかという質問で、山下さんの心で聞いて心で答えるを理解できた気がします。子どもの状況や過去に寄り添い、その子の気持ちが出てくるまで待ちながら、心で丁寧にその気持ちを受け止める。そして、否定するのではなく、やり方が合わなかったのかな、じゃあ次にはどうしていこうかと、頭ではなく心から考えられるところが、子供が信頼して話そうと思える理由なのかなと思いました。

・「何も話さない・しない時間を成立させる」という言葉と前回の講座の「待つ」ことがリンクしたように思う。すべての子どもに対して「手を差し伸べればいい」「待てばいい」ということではなく、その子が今どのくらい自分の力を発揮できる状況であるか見極めて、そのうえで子どもの力を信じていくということが大切なのだなととても勉強になった。


第4回目は、11月1日(日)10時~12時30分で開催します。

講師に、ソーシャルワーカー・弁護士である安井飛鳥さんをお招きし、公的支援や専門職の立場からみた市民の可能性についてお話しいただく予定です。単発でのご参加も受付が開始していますので、ご関心のある方は是非イベントページをご覧ください。

第1回目のリフレクションを開催! 対話で見えた「子どもと自分の願い」とは…?

PIECESが運営している「Citizenship for Children2020」探究コースの特徴の一つが、「講座」「ゼミ」そして「リフレクション」がセットになっていること。9月10日(木)、ついに第1回目の「リフレクション」が開催されました。今回の目的は、リフレクションの大切さを知ると同時に、リフレクションとは何かを体感すること。オンラインで、24名の方々にご参加いただきました。

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◆当日の流れ

簡単な自己紹介を行ったのち、「知る」「体験」「共有」の3つのセクションに分けてリフレクションを進めました。

・セクション1 リフレクションについて知る

ある子どもの例を参考に、目に見える言動の背景にある子どもの願いや価値観はもちろん、自分自身の要求や願いを理解しようとし続けることの大切さを共有しました。そのうえで、PIECESがリフレクションにどのような目的を置いているのかをお伝えし、具体的な方法や注意点をシェアしました。


・セクション2 ペアになってリフレクションを体験

参加者同士、2人組のペアになってリフレクションを体験してもらいました。「個人ワーク」の宿題を基に、最近あった子どもとの出来事のなかで心に残っている場面について「相手は何を考えていたのでしょうか?」「あなたはどんな感覚・気持ちでしたか?」など11の問いを投げかけ、子どもと自分の願いに気づくための振り返りを行いました。


・セクション3 みんなで感想を共有

リフレクションを通じて感じたこと、気づいたことなどを全員で簡単に共有しました。

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◆リフレクション中の様子など

リフレクションを行うのは初めてという方が大半でしたが、参加者からは「リフレクションの意味や価値がわかった」というコメントが複数寄せられました。また、ペアになって問いかけ合うことで新たな発見や気づきがあったという声も目立ち、終了後もオンライン上で参加者同士が活発に感想共有をする様子が見られました。日直をお願いした参加者の方からは、「対話によってステップバイステップで、着目観点をずらしながら振り返る手法によって、深い気づきに到達できたり自分の思考パターンに気付いたメンバーが多かったようです」とのコメントが寄せられました。

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◆感想
以下、参加者からの感想です。

・ペアワークをした人とともに、もっともっと素の、裸の自分でいなくちゃ、というベクトルが一致したのが面白かった。少し時間が経ってジワジワ上がってきたのが、自分の中では価値が低いと思っていた活動が、実はひとりの子どもにとっては大切な機会になったかもしれない、という気づきでした。場の空気、考え、フレームがどうだろうと、そこに来る子どもがいる以上、貴重な場になりうること。そこに与えうる自分のbeingに自信を持て、という言葉が降ってきました。また、もっと子どもと共にいる場での自分の一挙手一投足を観察しなければ、と思いました。感情の現れを、体感する。しかも不安定さをちゃんとキャッチする。言語化されない揺らぎを感じ、あるがままに抱きしめる。楽しみます!

・初めてのリフレクションでしたが、とても新鮮な体験でした。反省会はよくあったのですが、それとは全く違っていて興味深かったです。感情や願いについてまで想像することが、相手を思いやることにつながるのでしょう。自分のことについても、話をすることで「そうか、自分はこういうことを感じて、願っていたのだ」と気づいたのはとても新鮮な感覚でした。最後の質問の「もう一度同じ場面に遭遇したらあなたはどうしたいですか?」で自分のしたいことが発見できたので、同じような機会に会えるのが楽しみです。

CforC第2回ゼミレポート|市民性、アセスメントについて理解を深める

Citizenship for Children2020探求コースでは、「講座」「ゼミ」「リフレクション」と授業が分かれています。今回は「ゼミ」2回目を開催しました。市民性とアセスメントについて理解することを目標に、講義やワークを通して考えていきました。

初回のゼミから約1ヵ月経ちました。「講座」「リフレクション」に参加し、コミュニケーションツールSlackを使用してそれぞれのクラスごとに交流をしていたのもあり、和やかな雰囲気で始まりました。

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当日は以下のような流れで進められました。

・チェックイン
3,4人のグループに分かれて、最近のハイライト、課題となっていた講座の動画の答えを共有し、和やかな雰囲気でスタートしました。

・市民性とは
市民性と「間」について理解を深めるために、自分と子どもの両方にとって良い「間」を探求することをこの探求コースでは目指していきます。自分自身と、子どもの両者の願いが成立した自分なりの「関わり方」を見つけていきます。

・子どもの理解を深めるためのアセスメント
アセスメントとは、子どもや家庭への関わるうえでの根拠となる「〜かもしれない(仮説)」を考えることです。「〜かもしれない(仮説)」が数多く思い浮かぶことは、子どもの行動の背景理解につながります。行動の背景を深く探るには、本人や環境に目を向けてみることに加え、ストレングス視点を持つことが大切です。目に見える行動・言動の意味付けを捉え直してみることが重要で、そのためにも自分が持っている価値観や信念などに自覚的であることが大切だと伝えました。

・対話のセッション
市民としての関わりについての新しい意味や未来を探っていくため、ワールドカフェという手法を使いました。個々の価値観の違いを尊重しながら、意見を述べ合うことを重視し、その違いはみんなの気付きになっていきました。

動画や講義の感想をシェアしたり、動画に出てきたプレーパークに子どもたちはどんなコミュニケーションがあるから来ているのかを考えたり、そのコミュニケーション(心地よい関わり)を体験したことがあるかを考え、深めていきました。




<各クラスの感想>

◆一般クラス

9月13日(日)、オンラインで15名が参加しました。

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第1回目からは少し日が経っていましたが、直前の10日に開催されたリフレクションに多くのメンバーが参加していたこともあり、当初から穏やかな雰囲気の中で活発なコミュニケーションが繰り広げられていました。


今回は運営の方々もチャレンジだという、オンラインでのワールドカフェ。

オフラインでのワールドカフェ同様に、対話を通してそれぞれが気づきや学びを得ていく事が出来た様に感じます。ただ、オンラインでは参加者同士が対面しているため、何となく「喋らなきゃ」という焦りが生じてしまう印象も受けました。むしろ少し斜めにカメラをセットする方が良いのかもしれません。さて、まだまだ始まったばかり・出会ったばかりのメンバーですが、少しずつ心理的安全性が担保された会になってきており、深い内容の話も出始めています。オンラインでのコミュニケーションが当たり前になってきている世の中ですが、オフラインで出会えたら、もっと仲間意識が生まれ、心地よくも熱いコミュニケーションが行えるはず。そんな日を心待ちにしつつ、オンラインだからこそ出会えた仲間との時間を楽しみたいと思います。



第二回のゼミでしたが、それまでのSlackのやりとりや、リフレクションなどの他の顔合わせで、かなり開始から、顔なじみと言う感じで安心してできたように思います。

今回のCforCのプロジェクト名でもありキーポイントでもあろう「市民」についてのインプット。専門家ではなく「市民」という立場だからこそできるそのことの関わりストレングスの扱い方を学ぶことができました。その後の受講者同士での意見交換=ワールドカフェでは、様々な方の意見聞けるなか、「『市民性』と『専門性』こんなに単純明快に区切れるわけではなく融合しているのではないか」と言う意見を聞け、さらに受講者同士での深い学びができたように感じます。早くも次回が待ち遠しいです…!


◆奈良クラス 

9月20日(日)の午後、オンラインで9名が参加しました。受講者同士が対話する「ワールドカフェ」では、約1時間でたくさんの人たちと話をすることで、チームごとにさまざまな気づきが生まれました。

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以下は参加者の感想です。

・今回、自分の課題として残ったことは「程よい距離」について。今までの講義などでもこのワードは何度も出てきて、そのたびに自分の中で「程よい距離」は何かと考えてきましたが、今回は具体的により深くまで考えることができました。と同時に、謎も深まりました。みなさんのお話を聞きながら考えが膨らみ、自分の中で整理しているんだろうなと、今までにない感覚で面白くも感じました。

「市民性とは?」というところでは、自分が正しいと思っていることが相手にとって必ずしもそうではなく、ひとりひとりの目線をもって考えていくことの大切さを改めて考えました。そのためにも、まずは自分を知ること、客観的にみてみることに目を向け、その上で自分の強みを生かした関係性を見つけていきたいです。

ゼミでは、時間内に答えを見つけるのではなく、生まれた疑問を次の課題にし、それをみんなで探り続けていくことができます。ひとりではできないからこそ考え続けられる、このプログラムを通して今までの自分との変化を実感しながら、頼もしい仲間と一緒に引き続き学んでいきたいです。

・ワールドカフェの中では、互いの考える市民性や良い関係性について思いを述べあったけれど、「相手の話を受け止めなければ!」というプレッシャーも、「相手に私を受け入れてもらわなければ!」という妙な緊張感もない。「伝え合う」ことはあっても、押し付けあったり決めつけたりすることはなく、互いの話に大きくうなずき、共感を表情で示し、「なるほど~」「そうだよね~」という言葉で相槌を打っている。「そうか、私の言葉届いているんだ」「今一緒に考えているんだ」という実感が、この温かい空気感を生んでいるのだなと気がついた。

ゼミ中の講義にあった「他者やその背景への想像力を持ち、”~かもしれない”をたくさん考えられるようになることが大切」という学びも含め、「多くの可能性を念頭におきながらもまっさらな気持ちで向き合っていく」という姿勢が市民性の一つのポイントなのかなと感じた。正解の枠組みを自分の中に作ってしまうのではなく、「あなたの気持ち、伝わっているよ」と示しながら、子どもの目線から見えるものを一緒に受け取っていく。そして新しく見えた何かをもとに、一緒にリフレーミングしていく。

そんな風に関わっていけたら優しい間は生まれてくるのかなと考えつつ、引き続きこの温かい空間の中で、皆さんと考えや思いをほわほわ膨らませていけたらと感じている。

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◆水戸クラス

9月20日(日)、オンラインで5名が参加しました。水戸クラスのメンバーは初回のゼミ後、子どもの居場所づくりをしているメンバーのところへクラスのメンバーが見学行くなど、オフラインの交流も始まっています。

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以下、参加者の感想です。

ゼミではメンバー間で感想を共有することで、違った視点での気づきもいただきながら内容を振り返り学びとして厚みが増したと感じました。オンラインでのワールドカフェというのも初めての体験で新鮮でした。

子どもたちの「居場所・拠り所」をつくるために必要な視点、そこでの他者への関わり方について改めて考える機会となりました。また、対話を通じて自分の経験や強みを確認し、それを生かしていくことにも目を向けられたのも良かったです。

動画や講義の感想で、茶髪金髪の子たちは、おちゃっこババたちに邪険にされても、あそびーばーに来るのはなぜだろうという問いがありました。もしかしたら、関心を向けてくれるから、という理由があるからかもしれないという話があり、また、家にいずらいから来てる子もいるのかも、とも思いました。

待つという姿勢でいることの大事さはわかるが、待つ姿勢でいても向こうから来ることができないような子にはどうしたらいいか(置き去りにしちゃうのではないか?)との問いが出たのも、心に残りました。

屋根から飛び降りる子たちを見ていて、自分が子どもの頃はこういう危ないこともやってたけれど、自分の子には危険だからと止めてしまっているという感想を話しました。危険をおかす権利を取り上げてしまっているのではないか。

ブランコや滑り台などの遊び方が決まっているものより、土管とか砂場とかのが楽しかった、自分たちで創造していく楽しみが遊びなのでは、との私の感想には共感が集まりました。

大人はお茶っこでいいとの部分にも、「ただ お茶飲んでたら、周りから何やってるんだ、あいつらサボってるんじゃないか、みたいに言われてしまうかも」という意見もあり、そういうこともあるかもなぁとも思いました。そこは、丁寧に「こういうやり方を敢えてしてるんですよ」と話していったらいいのでは、でもなかなか難しい、などのお話がでました。

ワールドカフェスタイルのゼミ、とても面白かったです。時間が足りないと思うくらい、話が多岐にわたり、とても勉強になりました。

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セミナーレポート|子どもへの“支援”を問い直す ~プレーパークでの実践に学ぶ「子どもとともにいる」関わり~

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9月6日(日)、「子どもへの“支援”を問い直す ~プレーパークでの実践に学ぶ「子どもとともにいる」関わり~」というテーマで一般社団法人プレーワーカーズ理事の神林俊一さんをお招きして公開講座を行いました。

残暑が残る蒸し暑い日でしたが、オンラインで、26名の方々に参加いただきました。
※本講座は、今期の「Citizenship for Children」(CforC)第2回目の講座です。2021年1月にかけて全6回の講座を実施します。今後の講座について、ご興味のある方は以下Peatixページのフォローをお願いします。


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◆講師プロフィール

神林俊一(一般社団法人プレーワーカーズ理事/一般社団法人TOKYOPLAY/そとあそびプロジェクト・せたがや/フリースペースつなぎ理事/NPO法人日本冒険遊び場づくり協会宮城地域運営委員)

いじめ・不登校の最中、プレーパークに出会う。2010年、東京都次世代育成支援行動計画にて、チャイルドファシリテーターとして子ども300人大人100人 をヒアリング、心の貧困を抱える多くの子ども達と出会う。2011年4月、東日本大震災直後に子どもの心のケアを旗印に、住民協働による遊び場「あそびーばー」を立ち上げ、その後2年間常駐し、住民による運営体制を確立。NPO法人日本冒険遊び場づくり協会宮城県北部長として日本ユニセフ協会との協働し東北各県の仮設住宅、復興公営住宅付近にて遊び場を開催しつつ、住民主体の遊び場づくり支援を行う。2015年、子どもが関わる全ての場所へプレイワーク(子どもの遊びに関わる専門職)の視点を伝えていくために一般社団法人プレーワーカーズを設立。(一般社団法人プレイワーカーズHPより)http://playworkers.org/member/


◆講座内容

講座は4つのセクションに分けて進められていきました。

①講師紹介/子どもたちにとっての遊び

最初のパートでまず話していただいたのは、プレーパーク・冒険遊び場の事例や現在の子どもたちの状況について。遊び場を子どもたち自身が手を加えていく様子や実際の映像で子どもたちの様子をみたうえで、少子化や子どもたちにとっての遊びがどのように変化しているのかを、「遊びのさんま」「子どもたちの遊びは創造から消費へ」といった言葉をもとにお話しいただきました。

②遊びと居場所~あそびーばーでの実践~

東日本大震災から、気仙沼で子どもたちの遊び場がどのように作られたか、その状況について話されました。実際に子どもたちと一緒に作ることで、子どもたちから「自分たちが作った」という発言や「子どもたちにノコギリを使うという体験をさせたことがなかった」という地域の方の発言があったそうです。また、あそびーばーを運営している地元の方たちにも触れ、大人にとっての居場所にもなることの重要性や、無理のない関わり方について実際のエピソードも交えて紹介いただきました。

③対談①~子どもへのまなざし~

講師の神林さん、NPO法人セカンドリーグ 茨城理事長の横須賀さん、そしてPIECESの斎の三人で、気仙沼で神林さんが出会った子どもたちについて対談しました。それまでなかなか出会うことのなかったヤンチャな子どもたちとあそびーばーを通して繋がったこと、その子たちが地元のおじいちゃんおばあちゃんとはじめは衝突しながらも、少しずつ関わり方に変化が生じていったこと、その時双方に対してどんな関わりを行っていたのかなどについてお話しをいただきました。

④対談②~支援のカタチ~

前のセクションに続き、三人で神林さんが出会ったある女の子の話から、「待つ」ということについて対談しました。半径数mのところで話をしたそうにしている子に対して、あえてこちらから声をかけずに待ってみた時にどんなことが起きたのかというエピソードをもとに、「待つことを仕掛ける」という奥深い子どもへの関わり方について紹介いただきました。


◆当日の質疑応答の様子

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当日は講義動画をそれぞれで見た後に、数人ごとで感想共有を行い、全体で質疑応答を行いました。質疑応答では、「あそびーばーは自由な世界だと思うのですが、学校は自由ではない。子ども達はその世界になじめない場合、その世界からエスケープした方が良いと思いますか?」、「あそび場運営している中で、あれは失敗だったなという経験、そこからどうカバーしていったかなど、あれば教えてほしい」、「活動を通じて、大人側・多数派の人達の変容はあったか」、「怪我や安全性はどうなのかという批判や意見への対応はどうしているのか。また、かんぺーさん自身が危険だと思うことにはどう対応しているか」といった多くの質問が参加者から寄せられました。


◆参加者のみなさんからの感想

・子どもを信じること、待つことの大切さ。子どもが自分で遊びや人と関わる方法、危険を感じとれるということを信じて、待つことで応援できる人になりたいなと思いました。

・力を持っている子ども達(大人もだが)のモチベーションを下げ、支援慣れするようなサポートは本来の目的ではない、と改めて思った。子ども達が自発的に考えられるよう、サポートしていける立場になるために、現場での実践が大変重要だと思う。学ぶべきものは現場。失敗を恐れずチャレンジしていきたいです。

・少子化はすなわち大人の多大化でもある、というお話が非常に印象的だった。確かに子どもの遊びを「危ない、見守らなくちゃ」という視点で見ていることが多く、でも自分の子ども時代を振り返ると、大人の目の届かないような場所でも自由に飛んだり跳ねたりして過ごしていた。それが当たり前だったし、ケガも含めて私を大きく育ててくれたと思う。そのあとでも「支援慣れ」という言葉が出てきたが、何かをしてあげなくちゃいけない、というスタンスを取りすぎているなと思った。


◆次回公開講座のご案内

第3回目は、10月4日(日)10時~12時半で開催します。

講師に、NPO法人ビーンズふくしまの山下仁子さんをお招きし、「子どもたちの“生きづらさ”に心を寄せる ~孤立する子どもたちが本当に求めているものとは?~」というテーマで行います。単発でのご参加も受付ていますので、ご関心のある方は是非イベントページをご覧ください。

公開講座申込み

CforC探求コーススタート!子どもが孤立しない地域をつくる仲間があつまり、3クラスでキックオフを開催

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Citizenship for Children2020(以下、CforC)が8月からスタートしました!今年は探求コースが3つあり、昨年に引き続き水戸クラス、そして新たに今年から一般(全国)クラス、奈良クラスがスタートしました。水戸クラスはNPO法人セカンドリーグ茨城、奈良クラスは認定NPO法人Living in Peaceに協働パートナーとして一緒にプログラムをサポートして頂いています。

探求コース参加者は、社会福祉士や養護教諭、教員を目指す学生、地域おこし協力隊、子どもとの関わりを持っているけど、さらに一歩何かしたい方、既に子どもの居場所などのプロジェクトを始めている方など、年齢層もバックグラウンドも幅広く、様々な地域から参加してくださっています!

今回探求コースでは、「キックオフゼミ」として第1回ゼミを一般(全国)クラス、奈良クラス、水戸クラスに分かれて、オンラインで行いました。

ゼミに参加するメンバーの顔合わせは今日が初めて。これから6ヵ月間一緒に過ごすメンバーを互いに知ること、優しい間について深める「手がかり」を知る時間として自己紹介やCforCの目的の共有、ペアワークなどを行いました。

ゼミでは主に4つのワークを行いました。

①チェックインの時間

グループに分かれて、①名前(よばれたい名前)、②参加している場所、③今の体調/感じていること、④動画の感想、⑤今日の意気込みを一言ずつ共有しました。最初は緊張した面持ちでスタートしましたが、少しずつ話すことに慣れていきました。


②CforCの目的を共有

CforC探求コースで学んでいく内容を説明しました。CforC探求コースでは、PIECESで伝えている、優しい間を生むための市民性を醸成するために6か月通して学んでいきます。子どもの願いだを考えるだけでなく、参加するメンバー一人ひとりの願いも大切に両者の願いが成立した自分なりの関わり方を見つけていきます。

③自己紹介の時間

これからこのクラスが活動の基盤になっていきます。まずは活動するわたしたちが安心して信頼できる関係性を築いていくため、初めて会うメンバー同士、自己紹介を行いました。自己紹介では、これまで取り組んできたこと、そして、これから一緒に学び合うメンバーだからこそ話しておきたい今考えていることや感じていること、今後の目標などを各々が話しました。

④ペアセッション(対話)
これからの活動をどうしていきたいか、6か月の目標を考えるきっかけとなるペアセッションを行いました。ペアに分かれて、交互に問いを聞き、答えていきます。じっくり考えるのではなく、話しながら考えていきます。問われてみて、話しながら出てくる自分の声を聞きながら手がかりを見つけていきました。

<各クラスの感想>

◆一般クラス

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8月9日(日)関東近郊から九州に在住する12名が参加しました。一般クラスは、参加者の他に昨年度参加者もチューターとして参加しています。

最初は全員初めましてということで、硬い雰囲気がありましたが、自己紹介やペアワークを通して、繋がりたいという雰囲気に変わっていきました。休憩時間も誰かがヨガを始めるとみんなで同じ動きをしてみたり、ゼミ後もFacebookでつながったり、その日あったことなどが雑談用のslackチャンネルで飛び交うようになりました。初回ゼミを通して、オンラインではあったものの、一つのコミュニティとしてのまとまりが出てきたように思います。

◆奈良クラス

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8月16日(日)、奈良県近郊に在住する12名が参加しました。奈良クラスは、協働パートナーのLiving of Peaceも一緒に参加してくださっています。

初対面の方ばかりで初めは緊張した雰囲気もありましたが、自己紹介タイムで皆さんが積極的に思いを言葉にしてくれたことで、クラス全体の距離感が一気に縮まった感じがしました。ペアワークでは学生さんと社会人経験豊富な方など、普段なかなか関わることがない人たちと対話をする機会を通じて「視野が広がった」「自分自身に対する気づきにもつながった」といった声が挙がりました。ゼミ終了後には、「いつかクラスメイトと一緒に、子どもに関わるプロジェクトをしてみたい!」との声も。コミュニティとしての、これからの広がりがますます楽しみです。

◆水戸クラス

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8月23日(日)、茨城県内に在住する8名が参加しました。水戸クラスは協働パートナーのセカンドリーグ茨城、昨年度参加者にも参加していただいています。

最初は皆さん緊張していましたが、チェックイン、自己紹介と一人ひとりのお話をじっくり聞くにつれてメンバーの想いも開示され、とても素敵な時間になりました。お昼休憩後にヨガインストラクターの参加者から簡単なヨガ講座があり、とてもリラックスした気持ちになったこともプラスになりました。最後の感想共有では、「ゼミのメンバーが連携してなにかムーブメントになればいいな」「色んな方の話を聞いてヒントやアイデア、アドバイスをもらえた」「このプログラムが持っている可能性を今日実感することが出来た」など、このコースに参加できて嬉しいと言った声をもらいました。

セミナーレポート|子どものこころの発達への理解を深める 〜児童精神科医の視点からみえる、子どもたちの今〜

8月9日(日)、「子どものこころの発達への理解を深める 〜児童精神科医の視点からみえる、子どもたちの今〜」というテーマで公開講座を行いました。

目もくらむような日差しがある日でしたが、オンラインで、61名の方々に参加いただきました。

※本講座は、今期の「Citizenship for Children」(CforC)第1回目の講座です。2021年1月にかけて全6回の講座を実施します。全6回がセットになった「基礎知識コース」の受講はこちらで申込受付中。申込期限は8/31まで。第1回目の動画も8月末まで視聴可能!


◆講師プロフィール

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小澤いぶき(認定NPO法人PIECES代表理事/児童精神科医/東京大学医学系研究科客員研究員)

新潟大学医学部医学科卒業後、精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に従事し、さいたま市の「子育てインクルーシブモデル」立ち上げにも携わる。

医療職として従事する傍ら、2013年頃から地域活動を始め、2016年6月にNPO法人PIECESを設立。現在も代表理事を務める。2017年には、世界各国のリーダーが集まるザルツブルグカンファレンスに招待を受け、子どものウェルビーイング達成に向けたザルツブルグステイトメント作成に参画。Japan women 's leadership initiative 10期フェロー。


◆講座内容

講座は4つのセクションに分けて進められていきました。

①子どもの認知
子どもの心や認知は、どのように発達するのかについて話されました。例えば、子どもは、言葉で表現することが難しいこと、自分と世界の出来事との切り分けが難しいことなどが挙げられていました。

②子どもの情緒・自尊感情
精神の発達について、主に情緒発達の基盤や愛着、自尊感情を中心に話されました。子どもたちがどのような段階を踏んで情緒を育むのか、また、愛着形成のためにどんな環境・関わりが必要かについて話がありました。自尊感情については、「そこにいることへの評価(being)」と「能力としての評価(doing)」の二つについてを中心に、自尊感情を育むための関わり方について具体例が挙げられていました。

③逆境体験による影響
逆境体験による影響について、機能不全家庭に育つ子ども・若者の特徴や思春期に起こりやすいトキシック・ストレスについて話されました。具体例としては、貧困や虐待といった機能不全家庭では、「ヒーロー」や「スケープゴート」といった役割が挙げられていました。また、それらの逆境体験は、PTSDという心への影響や脳への影響があることについてもお話されていました。

④心の孤立のメカニズム
子どもたちが実際に語った言葉を入り口に、心の孤立が深刻な問題になるまでのフェーズや具体的状況について話されました。具体例としては、「あなたがすべて」「あなたがいなきゃだめ」などとコントロールされる、保護者を過度に不安がっている、自分が保護者を支えないとと思う、などが挙げられました。そのうえで、「人に頼る」ことはとても主体的な行為であるということが話されました。

◆当日の質疑応答の様子

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当日は講義動画をそれぞれで見た後に、数人ごとで感想共有を行い、全体で質疑応答を行いました。質疑応答では、「子どもは感じたものを言語化するのが未発達ということがあったが、それは大人になるにつれ誰もが自然にできるようになるのか」、「逆境環境の話が公衆衛生上の問題として捉えられてきているとは、具体的にどういうことか」といった質問など多くの疑問・質問が参加者から寄せられました。


◆参加者の感想

・日ごろこうした分野の専門家の知見に触れることがないので、すべてが勉強になりました。目指すのは実際の活動ですが、その点でも、大いに示唆を受けました。ありがとうございました。

・子どもをみつめるベースになるような知識に触れることができた。

・子どもの言動には実は様々な背景があることや、こんな時はこういう対応をしてみましょうなど、これまでの自身の反省もしつつ学びがとても多かったです。

・もしかしたら自分の発言や態度が子どもを傷つけたこともあるかもしれない、と感じました。またあの時のあの子の発言には、何か背景があったのかも…と思い出す事があり、これまでの経験と照らし合わせながら受講していました。あの時に本当はどんな対応ができればよかったのか、これから学んでいきたいです。

・短い時間ではあったが、他のコースの方々と意見交流ができたことが楽しかった。また、以前からもやもやしていた疑問を回答してもらえてすっきりしたとともに、もっと学んでいきたいという意欲が湧いた。


次回公開講座のご案内

第2回目は、9月6日(日)10時~12時半で開催します。講師に、一般社団法人プレーワーカーズの神林俊一さんをお招きし、「子どもへの“支援”を問い直す~プレーパークでの実践に学ぶ「子どもとともにいる」関わり~」というテーマで行います。

基礎知識コースのお申し込みはもちろん、単発でのご参加も受付を開始していますので、ご関心のある方は是非イベントページをご覧ください。

イベントレポート|8/9開催 未来をつくるPIECESメイト★Welcome Party!メイトと語る #わたしとPIECES

\未来をつくる PIECESメイト/

7月に実施した寄付キャンペーンでご登録いただいた方々に「ようこそ、PIECESへ」。そして以前からPIECESを応援してくださっているPIECESメイトの方々に「いつもありがとう」の気持ちを込めて、オンラインでWelcome & Thanks Party!を開催しました。

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今回のキャンペーン期間中に、新たにPIECESメイト(継続寄付)にご登録いただいた方は128名、単発の寄付の方が73名となり、改めてPIECESを応援くださる方がたくさんいらっしゃることを実感することができました。

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おひとりお一人の願い、託してくださる想いが本当に嬉しく、共に同じ未来を願って歩んでいけること本当に心強く思います。


会の後半では、それぞれの #わたしとPIECES をことばにしていただくワークを実施。
お一人お一人から聞かせてもらった想いには、本当に温かく、優しく、強いものがありました。
 
生活の中で、過去の経験の中で、想いを馳せるようにPIECESに願いを託し、共に歩むことを決めてくださった皆さんに改めて感謝の思いでいっぱいです。
 
直接お会いすることは叶いませんでしたが、皆さんと共にこれから歩んでいけること本当に心強く思います
 
「またね」「これからよろしくお願いします」で終われるイベント。これからともに未来をつくるPIECESメイトのみなさんとの一歩に感謝とわくわくの気持ちが溢れました。
 
ご参加頂いた皆様、ありがとうございました!

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PIECESメイトのみなさまからのご寄付は、様々な背景によって子どもたちが社会的に孤立することを防ぐ活動や、PIECESが行っている市民性醸成プログラムにかかる費用に活用させていただきます。いただいたご寄付とお気持ちが、私たちの活動を通して、子どもたちにきちんと届いていくように努めてまいります。

#ひろがれPIECES

イベントレポート|6/21開催4th Anniversary 子どもとの優しい間にあふれるひらかれたweの社会にむけて

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4th Anniversary Event 「子どもとの優しい間にあふれるひらかれたWeの社会にむけて」を開催しました

6月22日で4周年を迎えたPIECES。代表の小澤、理事の斎・青木のほか新たに就任した理事・監事の4名も加え総勢7名でANB TOKYO_東京アートアクセラレーションにてトークセッションを行いました。

昨今の社会情勢を受けて、オンラインでの開催。登壇者は一箇所から、ご参加の皆さんにはオンラインで配信に参加していただきました。※トーク中はマスクを着用し、細心の注意を払い実施いたしました。

理事・監事メンバー(左から、青木・小野田・荻原・小澤・長田・佐藤・斎)

理事・監事メンバー(左から、青木・小野田・荻原・小澤・長田・佐藤・斎)

当日のタイムライン 

①about PIECES
②新理事・監事のご紹介
③トークセッション「ひらかれたweの社会に向けて」

(イベントレポートをぎゅっとまとめたスケッチノートが最下部にあります)

多くの人と歩んできたPIECESの4年間

6月22日に法人設立4周年を迎えたPIECES。2018年には東京都から認定を受け、認定NPO法人になりました。「about PIECES」のコーナーでは、代表の小澤、理事の斎と青木がこの4年間を振り返りました。

まずは事務局長の斎より孤立の現状の話から。

人が孤立してしまう背景にあるのは、人に頼ることはとても難しく、それは自分の現状を認識し、具体的に相談する相手の顔が浮かぶ、そういったハードルを乗り越えて初めて人に頼ることができるからです。

PIECESは設立以来、孤立の解消も含め取り組むべき課題に対し複数の拠点で活動を行ってきました。古民家や体育館、シェアオフィスなどさまざまな場所で子どもたち、社会人いろんな人たちと活動してきました。それは子どもにとって親でも先生でもない大人たち=市民との関わりというのを意識してきたからです。PIECESの活動から生まれた育成プログラムを終えたメンバーが地域の中で活動するようになったりもしました。

Citizenship for Childrenプログラム(旧:コミュニティユースワーカー育成プログラム)では4年間で60名のプログラム修了者が出ました。昨年より水戸地域で実施し、今後は全国に展開していく計画です。

この4年間、多くの寄付者の存在に支えられてきました。今では毎月の寄付者が約180名。企業・法人からの寄付が25社といった状況まで来ることができました。引き続きご支援のほどよろしくお願いします。


続いて代表の小澤より、これまでの活動を通じて思いいたった「間(ま)」、市民性の醸成について。

それぞれが良い関係で共存できる状態、例えばしんどくなっても誰かと支え合える、よい循環が生まれていく関係。それこそがわたしたちの描くひらかれたweの社会と言えるものです。

ひらかれたweの社会が生まれるために、すでに私たちは相互に影響しあい、働きかけあっている事を見つめ、受け取って、自分の手元から社会を生み出していくプロセスが必要だと思っています。わたしはわたしだけで存在しているのではありません。ひらかれたweの感覚を大事にできる社会にしていきたいのです。

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この社会で起きていること、例えば貧困や虐待、いじめなど様々な問題はわたしたちと無関係ではありません。問題の要因は、特定の何か一つに起因するものではありません。だから、社会が育まれていくためには、わたしたち一人一人が手元から社会に関わっていくことが大切です。

今回新しく理事・監事をお迎えしたのは、思い描いている未来を実現するため、これからのPIECESをつくるためです。

ひらかれたweの社会をつくる私たちに必要な視点が3つあります。

・みつめる    ― 私たちが生きる世界をありのままに見ること。

・うけとる    ― わたしたちの周りでおこっていることをありのままに受け取ること。

・はたらきかける ― 自分たちの手で社会に対して働きかけていくこと。

このような考え方を持つことが、やさしい間の生む世界をつくることや市民性の醸成に繋がっていきます。それぞれが自分の手元から社会に働きかけることができるのです。

PIECESが願っている世界観をつくってくれる人たちを”まきば”と総称しています。生態系のようにいろんな人たちそれぞれが大事にするものを起点に、ひらかれたweの社会をつくるために取組んでいる。そんなイメージを持っています。


次は、そんなひらかれたweの社会を目指しPIECESが行う事業について、理事の青木からご説明しました。

学びと実践とリフレクションのコースについて今年はオンラインで実施するものを新たに設けました。また、地域の中で新しいことを始めたいという方のために、プロジェクトを立ち上げるコースもつくりました。さらに今年は茨城県の水戸や、奈良の大和高田の各地域のNPOと協働して展開することが決定しています。

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その他にも、5月にクラウドファンディングを実施した、頼れる先のない妊婦さんのための project HOMEや、地域の子どもたちと関わる市民性醸成プログラムCitizenship for Children をより発展させたプロジェクトを都内で実施する取組みも行うことが決まっています。この2つはどちらも他の団体と協働して展開していきます。

さらに子ども研究員、一般社団法人Whole Universe 、Refram Labメンバーとともに代表の小澤が取り組むアートプロジェクト「イマーシブプロジェクト」も始動しています。これは時間も空間も超えた様々なものと共にあるひらかれたweの社会とは何かを考え、体験していくものです。今年は「ミエナイモノとあそぶ」をテーマに、アーティスト菅野創さんの開発したLasermice(レーザーマイス)という群ロボットを通して新しい生命を体験するなどの取り組みをはじめています。そしてPEACE for PIECE、寄付者と共に始める取組みの準備を進めています。


後半は、新しく理事・監事に就任された4名の方の自己紹介とお話がありました。

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まずは監事の長田さんから(長田さんの紹介noteはこちら)

長田:本業を通じて中小企業の支援をする中で、過剰な利益追求の姿勢に疑問を抱くことが何度もありました。GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)の存在が特徴的なように企業セクターが過度に富や情報を占有する事態に対しては、ソーシャル領域の発展が大事だとも考えるようになりました。ですから、その領域のプレイヤーが育つことが大事だと思っていますし、そういう気持ちで支援をしています。

 

続いては、新理事に就任された荻原さんから(荻原さんの紹介noteはこちら

荻原:以前お話しした際に聞いた “やさしい間” というキーワードが腑に落ちたことをよく覚えています。子どもの支援をする団体は多くありますが、PIECESはその課題に”間”というキーワードでアプローチしているのがとてもいいなと。また“すばらしいわかりづらさ”があるのもPIECESの特色と言えるでしょう。社会は複雑であり、わかりづらい。そこを敢えて単純化してしまうと、こぼれ落ちてしまうこともたくさんあります。単純化することで影響力を及ぼそうとする例も見られるのですが、それは好ましくないんじゃないかと。ですから、わたしはPIECESの“すばらしいわかりづらさ“を高く評価しています。

 

3番目は、新監事 佐藤暁子さん(佐藤さんの紹介noteはこちら

 佐藤:何でも問題があるとわかりやすくしなければならない風潮に違和感を持っています。社会は複雑で簡単にできない部分があるので、それをありのままに見ることが大切ですね。わたしの専門であるビジネスと人権の文脈で感じた違和感についてお話しすると、企業の担当者も一市民であり、一消費者である。けれども、ビジネスの場で話をするときは、なぜかその側面がなくなって ”企業の人” になってしまい、「自分と社会とのつながりがなくなってしまう。このつながりを取り戻すために」、ひらかれたweの考え方が生きてくるんです。ひらかれたweの考え方が自然に広がると良い社会になっていくんじゃないかという期待があり、そのアプローチにワクワクしています。

  

最後は理事に就任された小野田さんから(小野田さんの紹介noteはこちら

小野田:今日を迎えるにあたって、全てが互いの内外で影響し合い、変化し続けているというPIECESの世界観を、皆さんにわかりやすく伝えられる言葉はないかなと考えていて、そこで思い浮かんだのが、“包みつつ、包まれている” という言葉。

年輪気候学という学問領域があるんですが、樹は外の環境を年輪という形で自分の内に閉じ込めながら大きくなっていく。樹にとって環境は外のものであり、同時に内のものでもある。そこには、包みつつ、包まれているという一見矛盾しているようで実は一体の関係があって、同じように、いわゆる支援者と被支援者と言われるような関係性においても、実はお互いに包み包まれという関係にある。

社会的事業の役割について、課題解決なのか、価値創造なのかといった二項対立の世界観だけで語ることは必ずしも適切ではなくて、「私」と「社会」は密接不可分、「私」の意識、手元から今この瞬間「社会」が生まれている、同時に、「社会」からの影響が「私」に内在化されていく、年輪のように。そこにわたしたちが気が付くことで、少しずつ一人ひとりの所作が変わり、誰かにやさしくするといった変化が社会の可能性をひらくことにつながっていくのではないか。そう思っています。

各人とも駆け足でのトークでしたが、この4年間の取組み、そしてこれからの取組みについてのここまでの話で、すでに予定時間を使い切ってしまいました。まだまだ話し足りない理事や監事の様子を見て、これからのPIECESはますます目が離せない、そんな思いを抱きました。

参加者のみなさんで、PIECESの「P」をつくった集合写真

参加者のみなさんで、PIECESの「P」をつくった集合写真

オンラインではありましたが、共に4周年という節目の時間をつくってくださりありがとうございました。
日本各地、世界中から参加いただいた皆さん、本当にありがとうございました!

みなさまからいただいたPIECESへの応援メッセージ

みなさまからいただいたPIECESへの応援メッセージ

スケッチノート by 坂本紫織 (PIECESプロボノメンバー)

スケッチノート by 坂本紫織 (PIECESプロボノメンバー)


7/31まで!
あなたも子どもが孤立しない未来をつくるピースに
PIECESメイト100人募集寄付キャンペーン2020|#ひろがれPIECES

このアニバーサリーイベントをキックオフに月額寄付者(PIECESメイト)+100人を目指すキャンペーンを行なっています。
▶︎ https://www.pieces.tokyo/campaign2020

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この機会に共に優しい間を紡ぐ仲間「PIECESメイト」になっていただけると嬉しく思います。

5年目を迎えたPIECES。これからも引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。

セミナーレポート「子どものあそびや行動から紐解く、こころのケア ~傷や痛みが深まる前に、わたしたちにできること~」

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去る6月7日、公開セミナー「子どものあそびや行動から紐解く、こころのケア~痛みや傷が深まる前に、わたしたちにできること~」がオンライン開催され、代表の小澤いぶきが講師を務めました。

今年に入って初めての開催となった本セミナーは、「日常のさまざまな場面で子どもたちが発するサイン」を入り口として、子どもたちが不安定な環境の中でこころの傷や痛みを深めてしまう前に、私たち大人ができることについて考えることを目的として行われました。

-公開講座中のスクリーンショット-

-公開講座中のスクリーンショット-

本セミナーは「子どもが孤立する社会的背景」、「子どもが発するサインを紐解く」(ストレス下における「遊び」)、「子どもたちと関わるうえで大切にしたいこと」の3つのパートから構成されています。オンラインでの開催ということもあり、それぞれのパートが終了後、スケッチノートを用いて内容の振り返りを行いながら進行していきました。(スケッチノートは記事の最後に掲載しています、ぜひご覧ください!)

簡単ではありますが、本セミナーの内容を紹介していきたいと思います。

子どもが孤立する社会的背景

日本の子どもを取り巻く環境について、約7人に1人が相対的貧困、虐待相談対応件数は約16万件にのぼるといった報告がなされています(※1)。米国疾病予防センターとカリフォルニア州の民間健康組合の共同研究(ACEs Study: 子ども期の逆境的体験についての研究)によると、こうした子ども期の逆境体験は、身近な人達によってケアされるか否かによって成人後の状態に変化が現れるといいます(※2)。

逆境体験のひとつである虐待。その発生リスクとなり得る要因としては、子どもの人数や発達特性、養育者自身の精神的健康状態や年齢、家庭環境、地域での孤立や職場からのサポートのなさといった家庭の周囲環境、社会環境などが挙げられています(※3)。

現在日本で行われている虐待の防止支援策には、予防段階・早期発見段階共に構造的な課題が見られるといいます。具体的には、”自ら援助を求めに行く”ことのハードルの高さ、情報へのアクセシビリティ、行政や専門機関の逼迫によるきめ細やかな対応の難しさなどがあります。

子どもが発するサインを紐解く

まず、逆境体験の中で育つ子どもについての例として、DVや親同士の喧嘩が絶えない環境、保護者による干渉が過度に強い環境、貧困やネグレクトの環境といった特徴ごとに説明がありました。

そのような環境の下で「自分は意味のない存在だ」 「気持ちを伝えたところで誰も助けてくれない」といったような、自己否定や自分の感情や欲求に気づけない、人に頼れない状態が生じてしまうといいます。

逆境体験を通してこころがケガをすると、子どもは自分を守るために身体や行動、こころのサインを発することがあります。具体的には、不眠、身体のどこかに痛みを感じる、なぜだかわからないけれどいらいらする、そわそわしてじっとしていられない、などです。

また、逆境体験の中で育つ子どもがその中で生き抜いていくために担っている特徴的な役割についても子どもの発するサインのひとつとして併せて紹介されました。

・ヒーロー:いい子でいよう、と頑張る
・スケープゴート:自らがトラブルを起こすことによって、問題から目をそらしてもらおうとする
・ピエロ:わざとおどけて場を和ませようとする
・お世話役:家の中の問題をなんとかしようとして、調整役を担う
・人形:周りの人の思うとおりにしなければいけない、と思う

困難な状況の中で懸命に頑張っていても、周りの目がなくケアがされないと「頑張ったところで意味がない、どうせこれからもこの状態が続いていくんだ」と思うようになる学習性無力感という状態についても解説がありました。一見やる気がないように見える子どもの中には、この学習性無力感を持っている場合があるといいます。

〜ストレス下における「遊び」〜

子どもの発するサインに関連して、負荷がかかった時に見られる子どもの遊びについても触れられました。

遊びは子どもの表現方法のひとつであり、危機を乗り越えていくための対処法でもあります。周りにいる大人は、遊びを通して子どもが表現していることをしっかり受け止めることが大切であるといいます。

遊びの結末があまりにも破壊的・悲劇的であったり、子どもが遊びながら険しい表情をしている場合は、その遊びに関わりつつ違う結末を一緒に考えていくなどの対処について紹介がありました。


子どもたちと関わるうえで大切にしたいこと

子どもたちと関わるにあたり持っておくべき3つの視点についての説明がありました。

<ストレス・コーピング>
子どもの気になる行動はなんらかのストレスに対する本人なりの対処法であるという視点を持つ。そこに価値判断を入れないように心がける。

<トラウマインフォームドケア>
子どもの言動や行動の背景に、こころのケガの影響や、こころのケガを受けた時の恐怖・不安があるかもしれないという前提をもって接する。

  1. 不器用な対処―言動や行動の背景を考える

  2. 困った行動や言動の捉え直し

  3. 子どもの持つ興味関心を次の一手につなげる

<ストレングス>
その子どもが自分なりに担ってきた役割に対して敬意を持ちながら、その子が安全に生きられるようにサポートしていく。

参加者の方々の感想

  • 子どもの(一見)好ましくない行動に対して頭ごなしに怒らず立ち止まって考えることができそう。

  • 学術的なエビデンスのあるお話で概要を話してくださり、ご経験に基づく具体例も教えていただけて、理解が深まった。

  • こどものケアに関することの全体感を知ることができた。さらに興味が湧いて、もっと深く知りたくなった。

内容盛りだくさんの90分間でしたが、本セミナーで扱った内容をより深く、より詳しく学びたいと思われた方は、今期の市民性醸成プログラム “Citizenship for Children” の募集告知が6月16日からスタートしましたので、是非こちらをご覧になってみてください。 

C for C 説明会に参加する

※1:相対的貧困については、厚生労働省「平成28年度 国民生活基礎調査」、虐待相談対応件数については、厚生労働省「平成30年度 児童相談所での児童虐待対応件数等(速報値)」より
※2:Felitti, Anda, Nordenberg, Williamson, Spitz, Edwards, Koss & Marks, 1998
※3:福丸由佳(2012)「家庭におけるハイリスクの親への支援」日本発達心理学会(シリーズ編)武藤隆・長崎勤(編)『発達科学ハンドブック第6巻 発達と支援』新曜社


スケッチノート by 坂本紫織 (PIECESプロボノメンバー)

スケッチノート by 坂本紫織 (PIECESプロボノメンバー)

6月のメールマガジン

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認定NPO法人PIECESのメールマガジン
メールマガジンを登録いただいた方へ、PIECESが厳選する情報をお届けしています。

みなさんこんにちは。認定NPO法人PIECESの藤田です。
いつもPIECESを応援くださりありがとうございます。

おかげさまで PIECESは 2020年6月に4周年を迎えます。
私たちは子どもの孤立が解消された「ひらかれたweの社会」の実現のために、歩みを強めていくことを決めました。また、新しい理事・監事の方に就任いただき、新体制となりました。6月7月の活動についてお知らせいたします。

  1. 6/21オンライン開催アニバーサリーイベント

  2. 新理事就任のお知らせ

  3. PIECESメイト100人募集寄付キャンペーン2020

  4. 活動報告_5/31Lasermice研究所ワークショップ

今回のメールマガジンも最後までご覧いただけると嬉しいです。


6/21 新しい経営体制でアニバーサリーイベントを開催

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「ひらかれた we 」へ
今回、4周年アニバーサリーを記念して、これまでお世話になった皆さまへの感謝と、これからさらにお世話になりたい皆さまへご挨拶をするため、「PIECESアニバーサリーイベント2020|子どもとの優しい間があふれる「ひらかれたweの社会」を目指して」を開催します!

■日 時:2020年6月21日(日)開始 14:00~16:00終了
■会 場:オンライン(zoomで配信いたします)
■申込み:Peatixサイトからお申し込みください
     https://anniversaryevent2020.peatix.com/

当日は
・PIECESのこれまでの歩み
・これから始まる新しい活動
・ひらかれたweの社会について
・新理事との対談セッション など
アニバーサリーにふさわしい特別な時間にするべく、たくさんのコンテンツをご用意しています。

子どもたちが孤立の中で生き続け
社会のことを信頼できなくなる明日より
人の想像力から生まれる
優しいつながりに溢れる社会をつくりたい


あらためて、マンスリーサポーターのみなさまをはじめ多くの方と一緒に、子どもの孤立という問題を起点に社会について考え、共に社会を描いていく時間にできたらと思います。ぜひ、お知り合いの方もお誘いいただき、ご参加ください。

アニバーサリーイベントに参加する


新理事・監事を迎え経営体制を刷新

認定NPO法人PIECESでは、「ひらかれたweの社会」の実現に向けた活動を拡充させるため、経営体制を刷新し、新しく4名の理事・監事をお迎えいたしました。

PIECESが子供の孤立の解消に向けて、取り組んでいる「市民性醸成」は、短期的にわかりやすい成果が出るわけではなく、幅広い視野と想像力を持ちながら、継続的に行っていくことが重要です。

そのため、理事には、幅広い知見を持ち、多くの社会起業家が紡ぐ「いまこの瞬間」に関わる小野田峻弁護士、メンタルヘルス領域で起業し、現在は幅広い領域での起業家支援を行う荻原国啓氏を迎え、市民性醸成のための広い視点をもちながら持続的な事業展開を目指します。
また、監事には、市民性の醸成において土台となる「人権」を軸にビジネス支援を行う佐藤暁子弁護士と、数多くの非営利団体の経営を会計・税務面から支えてきた長田和弘税理士を迎え、健全な経営を目指すことにいたしました。
詳しくはこちら ▶︎ https://www.pieces.tokyo/news/2020/6/8/we-npopieces

新理事・監事のご紹介は、PIECESのnoteでも配信しておりますので、ぜひご一読ください!


【新理事紹介】
メンタルヘルスを支援してきたなかで腑に落ちた「間」へのアプローチ -荻原国啓さん #ひろがれPIECES
触れた個人から変容していく 社会的事業の新たな役割 -小野田峻さん #ひろがれPIECES


PIECESメイト100人募集寄付キャンペーン2020
#ひろがれPIECES

2020/6/21〜7/31までで100名のPIECESメイト(寄付者)を増やすためにキャンペーンを行います。
今、このタイミングで一緒に全国展開を実現させていくPIECESメイトになってくれませんか?
あなたも子どもが孤立しない未来をつくる「ピース」に。

PIECESメイトになる


活動報告_5/31Lasermice研究所ワークショップ 

PIECESの新たな取り組みとして始まった「アートプロジェクト」
アーティスト・菅野創(かんのそう)さんが開発した群ロボット《Lasermice(レーザーマイス)》と、様々な世界に生きる子ども研究員たちとのコラボレーションによる遠隔ワークショップを開催しました。

5/23-24に開催した「Lasermiceの毛皮をつくろう!」で子ども研究員の手元で、様々な姿かたちになったLasermice。

本イベントで生き物の群れのように演奏し、自由にふるまうLasermiceを見ながら、どんな音を奏で、動くのかをじっくり観察し、終演後は、感じたことや気になったこと、ライブから受け取ったことを共有しました。
これからの展開をお楽しみにお待ちください。


アニバーサリーイベントに参加する

6/21開催のアニバーサリーイベントでお会いできると嬉しいです。
これからもPIECESをどうぞよろしくお願いいたします。

Citizenship for Children プログラム 水戸地域での成果報告書が完成しました!

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Citizenship for Childrenプログラムの初の地方展開が無事終了し、水戸地域での成果報告書が完成しましたので、ぜひご一読いただけましたら嬉しいです。

C for C 水戸 成果報告書 PDF を見る

報告書ではCforCプログラムの評価、参加者に与えた影響をアンケートとインタビュー調査を通して考察しています。プログラム評価においては、多様性とそこから生まれる対話の中に新たな気づきが溢れていたこと、またその対話の基礎となる関係を構築することができた点にプログラムを評価する声が集まりました。改善点としてはその関係構築をより深く、早い段階で行うことに更なる改善が見込めることが示唆され、これは今後の課題といえます。

そうした学びを通じて、自己意識や市民性の獲得、及びそこから生まれたプロジェクトが具体的な成果として短期的にも見え始めた。専門的な知見がないから関わらない、といった態度ではなく、自身と他者の価値観を丁寧に理解し、様々な人と協力しながら自分なりのやり方で「優しい間」を紡いでいこうとする姿勢がこのプログラムを通じて確かに、小さいながらも生み出されたと言えます。

今年2020年には、さらに複数の地域でのプログラム実施も予定しています。現在オンラインでの開催を想定し、準備を進めているところです。
みなさまからいただいたあたたかいご支援・応援によって実現した育成プログラムの他地域展開。一つ一つの取組を大切にしながら、これからもたくさんの「優しい間」を広げていきたいと思っています。

この、水戸でのプログラムは、2019年4月・5月に実施したA-portでのクラウドファンディングのご支援を元に実施することができました。

この場を借りて再度、ご支援いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
これからもPIECES、そしてCitizenship for Childrenの全国展開に向けて共に歩みを進めていけたら嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

● Special Thanks ●

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報告書の作成を担当した、PIECESプロボノの大野友です。

CforCプログラムを企画運営した人、参加した人、支えた人それぞれの声が集まり、2019年度プログラムの報告書が完成しました。プログラムの目的、実施内容、参加者の変化と周囲への影響を分析した成果報告がまとめられています。CforCプログラムを通じて、各地に優しい間を届ける種がまかれた様子、またその種から芽が出始めている様子をぜひご覧頂けたらと思います。

最後になりますが、この報告書の作成にご協力いただいた各関係者の皆様に、深く御礼を申しあげます。ありがとうございました。

大野友
慶應義塾大学大学院
システムデザイン・マネジメント研究科博士課程1年

子ども支援の原点を問い直す  ~子どもの声を大切にする実践とは?~ 「Citizenship for Children in 水戸」第6回公開講座 & CforCゼミレポート

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PIECESが茨城県水戸市で行う、子どもと関わる市民育成プログラム「Citizenship for Children in 水戸」。

これまでPIECESは首都圏を中心に市民育成プログラム(旧名:コミュニティユースワーカー育成プログラム)を開催し、1〜4期で計約50名の子どもと関わる市民を育成してきました。

今回は全国展開に向けての第一歩目となる水戸市でのプログラムで、「セカンドリーグ茨城」さんとの協働で実施しています。

首都圏に限られていた活動範囲を全国に拡大し、各地にいるかもしれない「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡げる大人を増やしたい。

そんな想いから全国展開を目指し、まずは1拠点目、茨城県水戸市で12人、6ヶ月間の「Citizenship for Children プログラム(以下CforC)」を実施します。

これまでの5回では、子ども・若者の育ちの理解や困難を有する子どもたちへのまなざしなど、一市民として子どもに関わる上で土台となる価値観や知識について、延べ100名近い方々と一緒に学んできました。(第五回目のレポートはこちらから

今期の後半にあたる10月から12月にかけては、引き続きフィールドの異なる実務家・専門家の講師をお招きして、さらに一歩踏み込んで「市民性を大切にした子ども・若者支援」について考えていきたいと思います。


今期最後となる第6回目の公開講座では、NPO法人ビーンズふくしまの山下仁子さんを福島からお招きしました。子どもたちに関わっていく過程では、誰しも無意識に自分の願いを押し付けてしまったり、短期的な成長や変化を求めてしまったりすることがあるものです。何より、子どもたちとの関わり方には、明確なお作法や正解・不正解があるわけではありません。子どもと育む間は千差万別。日々の自分の実践や他者の経験を通じて学び、振り返り、更新して行くことが大切なのです。今回の講座では、今一度原点に返って「子どもの声を大切にする実践」について山下さんにお話いただきました。

貧困の中で生きる子供たち

2015年の厚生労働省の調査によると、日本の18歳未満の子どもの実に7人に1人が貧困状態の中にあるといいます。日本における貧困は「相対的貧困」という形で現れており、これは食事や住居など生活の基礎となる部分はある程度確保されているが、経済的など様々な要因により、教育・雇用・福祉に滞りが発生してしまっている状態のことだといいます。ただ相対的貧困がもたらす影響は物が買えない、と言った経済的なことだけではありません。例えば保護者がアルコール依存症で子どもに暴力を振るう、金銭管理ができずライフラインが停止されてしまうなど、様々な状況が挙げられます。このような過酷な家庭環境は、子どもたちの困りごとを認識する力や周りに助けを求める力、他者と交流をし学ぶ機会、自分の将来を自らの手で切り拓いて生きることなど、人が生きていく上で不可欠なものを奪ってしまっているのです。

ではどのようにすれば、子どもたちの自己肯定感を醸成できるのでしょうか。

アウトリーチ型支援(直接支援)

貧困の中で生きる子どもたちはその家族の多くは、現状に対する違和感を持つことが難しいため、支援が必要な状態であっても自ら支援を求めてくることはほとんどありません。生きる力が低下している子どもたちが「助けて!」と声をあげることは、ものすごくエネルギーが必要となります。このような実態は外側からは見えません。そのため、山下さんは支援を提供する側が出向いていくアウトリーチ型支援(訪問による直接支援)が有効と言います。

子どもと関わる中で山下さんが一番に大切にしていること。それは子どもの人権擁護、つまりエンパワメントです。エンパワメントとは、子どもの力が引き出せるような関わりをすること、つまり子どもたち自身で自分のことが決められるようになることだと話します。

直接支援の内容は以下の通りです。

  • 家庭背景・環境を考慮し、子ども本人と一緒に支援プログラムを計画立案する。

  • 子どもの変化も鑑みて、3ヶ月に1回はアセスメントを実施し、適切な関わりが行えているか評価する。

  • この段階では、時間をかけて子どもたちとの関係性を構築していく。(一緒に散歩をしたり、好きな漫画を読んだり等関わり方は様々)。子どもとの関係性が構築でき、子ども自身がどうしたいか確認できたら、間接支援(ソーシャルワーク)を開始する。

関係構築は家庭により様々。場合によっては家庭環境の整備にたどり着くまで3年かかると話します。山下さんのお話で最も印象的だったのが、「ケースが動いているように見えなくても、一緒の空間を共有する。子どもたちとの関係性を作っていく上でとても大事な時間」というお言葉です。子どもの声を大切にするということは、子どもが声を出すまでの時間を共有することなのだと学びました。

この後の質疑応答の時間では、山下さんがご自身の活動や市民の役目について更に詳しくお話してくださいました。

山下さんへのQ&A

Q: ご自身の自己肯定感はどう保っているのでしょうか?

「私は過去に医療現場など、人が命を落としていってしまう現場を数々と見てきました。その経験から「生きていればいい」と考えるようになりました。目的があるかどうかではなく、生きていれば良い、この考えに自分の自己肯定感はあるんだと思います。あともう一つ大事にしていることは「相手を嫌いにならない程度に関わる」ことです。全て自分でやろうとするのではなく。

子どもは本能のままに生きています。ある意味で子どもは大人よりも完成体なんじゃないかと思います。もっといろんな経験をして子どもの完成体に向き合いたいです。

Q: 山下さんのような活動を、自分が行えるか自信がありません...。

大切なのは時間と仲間を作っていくことです。あとは自分が必要だと思うことをやり続けること。これは一見簡単なことのようですが、実はとても難しいことです。自分自身、自分がやっていることが正しいか・間違っているかは分かりません。そもそも大人だけで考えていてもわからないことです。それは子どもたちにしかわからないので、悩んだら子どものところに行って話を聞くことが大事なんじゃないかと思います。自分は正しいことをやっているんだと、自信を持って言えるのは、子どもたちが教えてくれたからです。

Q: 子どもと保護者の意見をどうバランス良く聞いていますか?

子どもに聞いても、親が答える場合があります。親が自分の子どもを思う気持ちに間違いはない。例え攻撃的な言葉でも話をよく聞いていくと、意図が鮮明になっていきます。お母さんは本質的に子どもを愛しているのは間違いないので、それを聞き入れることは必要なんじゃないかと思います。

そして大事なことは待つことです。支援活動を行う中で、介入した方がいいのか、これは待った方がいいのか、スタッフと議論をします。例えば子どもに受験勉強をしてもらいたいと理由で、こちらで勝手に環境を整えようと片付けをしてしまうと、片付けの大変さやメンテナンスの大変さを実感しないままになってしまいます。大切なのは、時間をかけてでも家庭環境を整えることの重要性を本人が気付き、行えるようにすることです。なぜなら環境が整備されているところはちゃんと家庭の声を拾っているからです。そしていかに日常会話の中で、子どもたちの声を拾っていけるかということです。

Q: スタッフ間のコミュニケーションはどのように行っていますか?

スタッフの不安がどこなのか、しっかりと聞くようにしています。スタッフ面談も頻繁に行っています。やはり「待つ」ことも活動の大事な部分なので、待っていることはサボっていることでは無いこと、ケースが動かないのは当たり前だということを、常に毎日の振り返りの中で伝えています。

Q: 会議に子どもや親が参加することについて:子どもがしたいことと、周りのしたいことにギャップが生じたことはありますか?

子どもが出席したくなければそれで良いのです。ただ、会議のような意思決定の場に子どもを誘うことはエンパワメント、つまり自己肯定感を高めることにつながります。自己肯定感とはいかに自分の実情を受け止め自分のことを自分で決められるか、ということです。同じく、私たちもその場では、いかに内容が厳しいと思っても、ごまかさず、すべてを正直に伝えていくことを大事にしています。「子どもの声を尊重しよう」とよく言われますが、「尊重」とは具体的にどうすれば良いのでしょうか。私はちゃんと伝えて、ちゃんと支えることだと思います。時間はかかりますが、やるべきことだと信じています。

何より、子ども支援のことであれば、子どもに聞いた方が一番良いです。まずは聞くことが大事だと思います。そこに正解・不正解はありません。大切なのは、子どもが伝えてくれた言葉を頭で捉えるのではなく、気持ちで捉え、気持ちで動くことです。頭で考えて行動しようとすると、答えを探してしまいがちですが、気持ちで受け止めようとすると、自分の気持ちが動くからです。「その言葉にどんな気持ちを馳せているんだろう」「今なぜこのタイミングで言うのだろう」そう捉えることで、自然と自分の第一声が変わるし、それに伴う行動も変わってきます。放った言葉そのものより、そのタイミングで発した理由や真意が見えてくるようになります。気持ちで捉えられれば、それがたとえ正しい答えでなくても、優しい答えになるのではないかと思います。

Q: 市民に求めることはなんですか?

そのままでいて欲しいです。結局、子どもは日常で生活をしていきます。資格を持って子どもに対してこうしなきゃ、と言う人たちで溢れて欲しくないです。ただ元気で生きていてくださいと、普通にしてくださいと思っています。


初めての水戸での開催、2019年7月から始まった6ヶ月間のプログラム。ご参加いただいた皆さま、関心をお寄せいただいた皆さまありがとうございます。

九州大学集中講義「まちづくり実践論」レポート_19.12.26-28

2019.12.26~28日の3日間、九州大学教育学部で集中講義が行われ、代表の小澤いぶきが講師を務めました。「まちづくり実践論」という授業科目で、PIECESが進めてきた「孤立しやすい環境にいる子どもに新しい関係をつくる市民育成事業『Citizenship for Children 』(旧:コミュニティーユースワーカー)」を参考としながら、児童精神科の医療の現場から見えてきたこと、そして、世界の動きも踏まえて、九州、福岡という地域で私たち市民が、子どもたちの生きるまちに何ができるか?を考えるきっかけとして講義を展開していきました。講義は3日間とも公開講座でもあり九州大学の学生だけではなく、福岡県内の学生や社会人の方など様々な立場の方が参加されました。

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◆1日目

 1日目は、濃い3日間を過ごしていくために初めにチームビルディングを行いました。トランプを使用しグループを作り即興物語を作ったり、自己紹介シートを使って受講の目的等をグループで話したりを通して、緊張でいっぱいだった教室もあちこちで笑顔や笑い声が聞こえ和やかな雰囲気になっていきました。和やかな雰囲気になったところで講義を展開していき、「子どもを取り巻く現状と課題」では、小澤の医療現場での子どもとの経験を踏まえながら児童虐待の現状や子どもに及ぼす影響等、「子どもの発達の基礎」では、発達段階や愛着について講義を行いました。①言語化せずに相手に『嫌な気持ち』を伝える体験、②話しているのに全部無視される体験をペアになって実際に実践してもらい、言動の背景にどんな気持ちが潜んでいるのか、愛着を育むには何が大切なのかを考えました。

 講義を踏まえ、映画『少年と自転車』を見てもらい、児童養護施設に入所している主人公や纏わる人たちの言動の背景にはどういった気持ちがあったのかを4~5人のグループを作り考えていきワールドカフェ形式で共有していきました。次に、自分が子ども時代を振り返ってもらい、モヤモヤしたこと、こういうサポートが欲しかったなども共有していき、「30年後子どもも自分も幸せになる未来のまちとは?」を考えもらいました。地域視点では老若男女関係なくいろんな人が関われる場所が欲しい、学校教育視点ではフリースクールを多くの学校に設置したらいいのでは、などなど各グループ時間が足りないぐらい盛り上がっていました。

◆2日目

 2日目は、福岡で活動されているNPO法人まちづくりLABの代表永田充さんをゲストに呼んで、「訪問支援から見えてきた子どもの支援のあり方」をテーマに不登校・ひきこもりの現状や訪問支援について話をしていただきました。「“良い支援”をしようとすると見失うものがある」とフレーズから講義スタートし、序盤から考えさせられる内容です。なぜ訪問支援が必要なのか、支援をするうえ子どもだけはなく家族への支援の大切さなどをご自身の体験を踏まえて話していただきました。不登校になっている自分の身近な人への今までの対応はよかったのかを振り返ったり、今後、不登校の子たちと出会ったときにどう関わっていけばいいのか考えたりするきっかけになりました。

 2限目からは「社会的処方と市民性」「アセスメントとストレングス」「コミュニケーション」の3つをテーマに小澤が講義を展開していきました。子どもに限らず人は疲弊しきるとSOSを出せなくなり、孤立にもなっていく。疲弊や孤立やする前に、原因を取り除くコミュニティの存在が重要になるということで、社会的処方の存在の大切さ。そのためには、「市民性」の関わりも重要なり、市民性とは何か、人と人の「間」とは、何かを実践を踏まえ考えていきました。また、人は自分の価値観等で物事を判断しそうになりますが、判断する前に、子どもの言動にどう思いがあるのか「ああかな、こうかな」と仮説を立てていくことで、子ども理解にも繋がっていくなどを理解してきました。

◆3日目

 3日目は、福岡市こども総合相談センターの藤林武史さんをゲストに呼んで、「子どもと家庭を支えるコミュニティケア」をテーマに児童虐待の現状や福岡市での現状や取り組みなどについてお話をいただきました。法制度は整えられているがニーズに応えることができないサポート体制の現状など、ニュースでは知ることができないことに触れることができていました。児童虐待が起きたとき児童相談所は最後の砦。児童相談所だけが頑張るのではなく、地域コミュニティ、市区町村、里親など様々な立場が連携していくことで、虐待による死亡はゼロになっていく。福岡市のこどもの現状を知るだけでなく、まちづくりを考える上で必要なことを学ぶ機会になっていました。

 「福岡における課題に対しての社会的処方の可能性」では、受講者の方から自分の経験を話していただきました。『家を開放しておやつを提供している』『子ども会に行くことが楽しかったが、今は少子化で少なくなってきている』『子育てに手厚い様子はあっても情報が広まっていない』など福岡で暮らしているからこそ気づくこともあり、また、中心部を離れれば行政と家庭の間に入るNPOなどの団体がない現状などにも触れることができました。

 今までの講義内容を踏まえて、福岡における子どもたちが利用できる地域資源マップを「0~12歳」「13~18歳」「18歳以上」のグループに分かれて作成しました。受講者それぞれが発見した社会的資源を横軸『情緒的or機能的』縦軸『利用ハードルが低いor利用ハードルが高い』に沿って、マッピングしてもらいました。「○○がこの位置なら、○○はこっちじゃない」「○○も資源になるのかな」など各グループ盛り上がりながら作っていきました。また、想像力を発揮するための実践として「クリエイティブケースワークショップ」を行いました。取り扱う事例も受講者の方から気になる子どものケースを出してもらいました。情報がしっかりあるケースもあれば、情報がないに等しいケースもあり、限られた情報の中で、その子が持つストレングスや願いを探っていきました。そのあとは、その子の願いに沿う関わり方は何かを地域資源マップを参考にしつつ考えていきました。学生だからこその視点や福岡ならではの意見も出るなどして、自分たちが住んでいる福岡・九州で何ができるのか考えるきっかけにもなったと思います。

 3日間の講義を通して、「自分を振り返ることができた」「自分がしていることに自信が持て」「有意義な時間でした」など様々な感想を聞くことができました。

 今回の講義を踏まえて、受講者の方それぞれが地域で暮らしていく一人の市民として何ができるのかを考え、実践していかれることで、福岡がどう発展し盛り上がっていくのか楽しみです。

子どもにとっての「遊び」を紐解く 「Citizenship for Children in 水戸」第5回公開講座 & CforCゼミレポート

PIECESが茨城県水戸市で行う、子どもと関わる市民育成プログラム「Citizenship for Children in 水戸」

これまでPIECESは首都圏を中心に市民育成プログラム(旧名:コミュニティユースワーカー育成プログラム)を開催し、1〜4期で計約50名の子どもと関わる市民を育成してきました。

今回は全国展開に向けての第一歩目となる水戸市でのプログラムで、「セカンドリーグ茨城」さんとの協働で実施しています。

首都圏に限られていた活動範囲を全国に拡大し、各地にいるかもしれない「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡げる大人を増やしたい。

そんな想いから全国展開を目指し、まずは1拠点目、茨城県水戸市で12人、6ヶ月間の「Citizenship for Children プログラム(以下CforC)」を実施します。

これまでの4回では、子ども・若者の育ちの理解や困難を有する子どもたちへのまなざしなど、一市民として子どもに関わる上で土台となる価値観や知識について、延べ100名近い方々と一緒に学んできました。(第四回目のレポートはこちらから

今期の後半にあたる10月から12月にかけては、引き続きフィールドの異なる実務家・専門家の講師をお招きして、さらに一歩踏み込んで「市民性を大切にした子ども・若者支援」について考えていきたいと思います。


今回で第5回目となる今期の公開講座。晴天の中、たくさんの方々に集まっていただくことができました。

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午前の公開講座は、一般社団法人プレイワーカーズの神林俊一さんが講師を担当。被災直後から気仙沼に入り、復興までの混乱の中、プレーパークの運営を通して子どもたちやその家族に寄り添い続けた。3.11の被災直後から気仙沼に入り、復興までの混乱の中、プレーパークの運営を通して子どもたちやその家族に寄り添い続けた神林さんから、子どもにとっての遊びや、子ども・若者にとっての居場所の意味を学びました。

プレイワークと遊びの背景

プレイワークとは「子どもがいきいきと遊ぶことのできる環境をつくる」こと。子どもが自発的にいきいきと遊べるよう、時間・空間・環境づくりなど、多くの子どもと関わる専門職に共通する概念です。1980年代にヨーロッパで生まれた専門分野であり、今ではデンマークやイギリスを始め、多くの国で子どもが関わる場所で、専門知識を備えたプレイワーカーが活躍しています。

そもそも日本における子どもの「遊び」はどのようなものなのでしょうか。まず背景には「遊び」という概念自体の変化があると神林さんは話します。現在、子どもの遊びの9割を占めているのが電子ゲームとのこと。子どもの遊び方はどんどん「創造するもの」から「消費するもの」に変化してきていると言うのです。遊びにはお金がかかる・時間がかかる・場所がかかる。一方で、公園などの公共施設でも、大人が設定したルールにより子どもが思う存分遊べずにいるのが日本の遊び場の現状だと話します。

少子高齢化が加速する日本では、それこそ「少子化」(子どもが少なくなる)ならぬ「多大化」(大人が多くなる)ことが問題視されてきています。このような現象が加速すれば、今まで以上に子どものための遊びの空間が減少してしまう。神林さんはこの現象に大きな危機感を感じていると話します。

「遊び」は追体験の整理になる

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子どもの「遊び」はどれほど重要なのか。震災等によるトラウマを抱える子ども達にとって、「遊び」は追体験の整理になると神林さんは話します。例えば、1995年の阪神淡路大震災後、「地震ごっこ」「津波ごっこ」と言い遊びを行う子どもを目の当たりにしたと神林さんは言います。大人からすると不謹慎な行為も、子どもからするとそれは一種の心のケアだったのです。

2011年に起きた東日本大震災。震災1ヶ月後、被害を受けた宮城県の気仙沼に神林さんは訪れます。被害を受けた現地の子ども達と何かできないか。そこで神林さんは「気仙沼で何か一緒に作ってみないか」と子どもたちに提案をします。別に物資を提供するわけでもなく、ただ何か作ってみようと言う神林さんに、最初は警戒を示す子どもたち。しかし子どもたちとの会話の中で生まれた「すべり台を作ろう」というアイデアを機に打ち解け始めます。みんなで資材を持ち集め、すべり台を作り出したその場所は、のちに「気仙沼あそびーばー」と言う遊びの空間として運営開始したのです。

遊び場を創る上で、神林さんが大事にしていること。それは、そこに住んでいる子どもたちが自ら作りたい、と思っているものを応援することだと言います。

遊ぶことは生きること

食べ物を食べないと体が死んでしまう。睡眠をとらないと体が死んでしまう。しかし遊ぶことをやめると心が死んでしまう。子どもたちにとって遊ぶことは生きるために必要不可欠なのです。少子高齢化社会の日本だからこそ、大人の都合だけで空間の使い方を決めるのではなく、きちんと子どもたちと向き合い、目に見えない心のケアにしっかりと寄り添える大人になりたい、そう強く思った午前のひとときでした。

【ゼミ】

午後のゼミ開始前に、「キャット&チョコレート」というカードゲームでウォームアップ。日常・非日常的な問題に対して、与えられた手札の中から指定された枚数のカードを使って解決策を導き出すゲームです。アウトプットが中心の午後セッションに入る前に、創造性を刺激しました。

五回目となる今回は、「子どもたちと自分たちが楽しい関わりをデザインする」ことをテーマに行いました。支援者―被支援者という従来の枠組みから外れて創造的に考える実践をするため、「クリエイティブケースワークショップ」と題して新しいケース会議をシミュレーションしました。

実際のケースを3つ選び、「その人の持つ強み」に着目するストレングス視点からその子どもと伴走していくために何が可能かを考えました。その子の周りにある社会資源(世話好きな近所の大学生など)と参加者の持つ資源を持ち寄って、その子の願いや思いに沿った関わり方を創っていきました。

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この日のワークの成果物

その後グループリフレクションを行い、プロセスレコードと今日の学びを振り返りました。実際のケースに深くかかわる経験をしたこともあり、内側から浮かび上がってくる感情や思いと向き合う姿がとても印象的でした。「どんな時も絶対正しい答え」がない子どもとの接し方を振り返る中で内面の葛藤と向き合いながら答えを模索していく時間となり、優しい間はこういう対話の中から生まれてくるのではないか、と思わされます。

7月から続く本プログラムも、いよいよ次回で最終回となります。6回のゼミ活動と公開講座を経験して、CforC参加者はどのような学びや気づきを得て次のアクションへとつながっていくのでしょうか。最後まで、お楽しみに!