登壇報告| 19.12.26-28_九州大学「まちづくり実践論」

「まちづくり実践論」@九州大学教育学部 


子どもを取り巻く地域をどのように作っていくか?について、九大の学生とともに深めていく3日間の集中講義。九州大学の田北雅裕さんからご縁をいただき、PIECES代表の小澤いぶきが講師をつとめました。
 
今回の授業は、PIECESが進めてきた「子どものために孤立しやすい環境にいる子どもに新しい関係をつくる市民支援者育成事業「市民権」 (旧:コミュニティーユースワーカー)」を参考としながら、児童精神科の医療の現場から見えてきたこと、そして、世界の動きも踏まえて、九州、福岡という地域で私たち市民が、子どもたちの生きるまちに何ができるか?を受講生のみなさんとともに考える時間となりました。

2019.12.26-28

登壇報告|19.12.17_令和元年度磯子区児童虐待防止専門研修

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2019.12.17に開催された、令和元年度磯子区児童虐待防止専門研修に代表の小澤が登壇いたしました。

神奈川県横浜市磯子区で活動されている、多くの方にPIECESの活動を知っていただき、日々の地域での子どもの孤立を防ぐ活動の一助になる機会としてお話をさせていただきました。

<概要>
日時:令和元年12月17日(火曜日)18時から19時30分
会場:横浜市磯子区役所(磯子区磯子3-5-1)7階701会議室(定員100名)
対象:要保護児童対策地域協議会委員 民生委員・児童委員 主任児童委員
   保健活動推進員 保育園職員 幼稚園職員 小中学校教職員 青少年指導員
   医療関係者 児童の支援に関わる関係機関職員 地域関係者 等

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2019.12.17

登壇報告|19.12.13_京都大学経済学部「公共経営論」

2019.12.13_京都大学経済学部 加藤秀樹先生にお招きいただき、「公共経営論」に代表の小澤が登壇いたしました。

70名を超える学生のみなさんにご参加いただき、民の立場で公共経営を担うNPO法人としてPIECESの取り組むこれまでの活動や子どもたちを取り巻く課題、これからの活動についてお話しさせていただきました。

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◆京都大学寄付講義◆

経済はますます複雑化し、ダイナミックに変動しつつ発展しています。その複雑な動態を理解するためにも、原理についての知識だけでなく、各種産業や商業の経済活動の実態の理解やプラクティカルな知識がますます重要になってきています。 そこで経済学部では、寄附講義として学外の専門実務家の方々を招いて実践的な講義を開設しています。

荒井財団寄附講義「公共経営論」

https://ocw.kyoto-u.ac.jp/syllabuses2019/104/2/6396000

2019.12.13

イベントレポート|191121開催「子どもたちを守る仕事とそれを取り巻く社会の仕組み」

「子どもたちを守る仕事とそれを取り巻く社会の仕組み」認定NPO法人かものはしプロジェクトさんと合同イベントを開催しました!

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みなさん、こんにちは!

先日11月19日(火)、認定NPO法人かものはしプロジェクト(以下、かものはし)さんとPIECESで合同イベントを開催しました。

アジアで人身売買をなくす取り組みをするかものはしと、日本で子どもの孤立を防ぐ取り組みをするPIECES。活動するフィールドは違えど、子どもたちを守っていく、子どもたちが健やかでいられる社会をつくっていくことを仕事としている両団体には、共通点が多くあるように思いました。

今回はそんなイベントの様子をお届けします!

村田 早耶香さん 認定NPO法人かものはしプロジェクト 共同創業者。

村田 早耶香さん
認定NPO法人かものはしプロジェクト 共同創業者。

「だまされて売られる子どもを守りたい」

はじめに、「子どもが売られない社会をつくる」ことをミッションに掲げる、認定NPO法人かものはしプロジェクトの共同創業者の村田さんからお話を伺いました。

学生時代2人の友人と立ち上げたこの団体は、未成年の子どもたちが売春宿で無理やり働かされていることも多かったカンボジアで事業を始め、現在ではインドに事業を展開しています。

「売られない活動・買わせない活動」をこれまで行ってきて村田さんは、「子どもが売られない社会は作れる」と語ってくださいました。

小澤 いぶき 認定NPO法人PIECES 代表理事/Co-Founder 東京大学医学系研究科 客員研究員/児童精神科医

小澤 いぶき
認定NPO法人PIECES 代表理事/Co-Founder
東京大学医学系研究科 客員研究員/児童精神科医

「子どもたちが孤独の中で生き続け、社会のことを信頼できなくなる明日よりも、人の想像力から生まれる優しいつながりが溢れる社会をつくりたい。」

児童精神科医として、PIECES代表の小澤は医療の現場で様々な問題に苦しみ孤立する子どもたちに出会ってきました。その苦しみや孤立を解消するために、子どもたちの周りに寛容な社会を築いていこうと、このPIECESを立ち上げました。PIECESは「子どもにとって大事なのは、信頼できる他者の存在だ」と信じ、子どもと関わる市民の育成をしています。今回はこれまで育成してきた市民の皆さんとそしてそこで出会った子どもたちとの関わりついて紹介させていただきました。

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後半では、村田さんと小澤を登壇者として改めて迎え、参加者からの事前アンケートを基にクロストークを行いました。

Q『お互いの活動からの学びや刺激』

今回が初めての合同イベントの開催でしたが、改めてお互いの活動を聞き改めて思ったことや、日頃からどのようにお互いを見ているのか教えて欲しい、といったご質問をいただきました。

村田さん

いぶきさん(小澤)の精神科医時代から子どもたちにコミットし続け、子どもたちの声に耳を傾けてきたその一環した姿勢にとても刺激を受けています。

変わらない信念というか。それを持ち続けることってすごいなと思います。

小澤

私は、子どもたちに寄り添う大人たちがいれば子どもたちはきっと信頼できる人を見つけて、しんどい状況から脱却できるのではないかと希望を持って信じているんです。

決してこの問題は日本の子どもたちに限った話ではないと思っているので、かものはしさんのように子どもたちをエンパワメントし続ける活動がとても素敵だなと思っているところです。

小澤

村田さんとはかものはしさんがクラウドファンディングをしていたときに支援したことがきっかけでつながりました。どの国においても自分の人生が誰かによって決められてしまう状況をなんとかしたいという思いがずっとあって、村田さんを応援しています。先ほどのプレゼンも、何度もお聞きしたことがあるはずなのに、初めて聞いたように終始聞き入ってしまいました。

かものはしさんの活動からはいつも優しさを感じており、そして逆にその優しさからエンパワメントされていて、これからもご一緒できる機会があると嬉しいです。

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Q『日本にいてすぐにできること』

参加者の方から、「お二人の話を聞いていると、社会はすぐに変わっていくのではないかという感覚を覚えますが、活動の中から社会が変わっていったポイントはあったのでしょうか。また、そのために自分たち一人ひとりはどこからスタートすれば良いか教えてください。」という質問が挙げられました。

村田さん

カンボジアで活動を始めた当初は、周囲からは否定的な意見ばかりで、活動もうまく進まず本当に大変でした。

でも、誰に止められたとしても、自分がやりたいからやっているんだ、この気持ちを忘れないようずっと歩んできました。そうしていると、まるでオセロが黒から白に変わるように、カンボジア国内で売春から子どもたちを守る法律ができ、どんどんと売春宿が閉鎖されていった。

子どもが売られない社会はつくれると、諦め悪くずっとやってきたことで社会が変わったのだと思います。

村田さん

そして、今日この会場にも多くのマンスリーサポーターの方に来ていただいていますが、ご寄付で応援してくださる方がいて初めて私たちの活動は成り立っています。

多くの方に諦めの悪い私たちの挑戦を、背中を押してもらって活動できているのはとてもありがたいです。

小澤

私は小さい頃から人の手で作られたものは人の手できっと変えることができる、という風に思っています。戦争も人の手で始まったのだから、人の手でしか終わらせられない、と。でも、強いリーダーが全てを決めるのでは歪みができてしまいます。一人ひとりの力が集まれば、社会はきっとよくなるはず。

社会の歪みや傷つきにより生まれている痛みはまだまだたくさんあります。炭鉱のカナリアのように、この社会には社会の傷つきを教えてくれる声があるはずですが、まだまだ聴かれてない声があります。「聴かれていない声」を聴きにいくことで、その背景にある構造的課題をなんとかしようとしてきました。

そして、一緒に活動してくれる仲間との歩みの中で、日常に間が生まれ、それが救いとなってきました。一人ひとりにとっては、普段の日常に関心を向けることで、他者との間に優しい関係性をもたらしていくことが、社会に小さな変化をもたらしていくと信じています。


レポートはこちらで以上となりますが、村田さんと小澤の話から、活動地は国外と国内とで異なりつつも、目の前の子どもたちに真っ直ぐ向き合い、その声を聴くことを大切にしながら活動を続けている姿勢は同じだな、と感じました。これからもかものはしプロジェクトさん、そして私たちPIECESの活動に関心を持っていただけると幸いです。引き続き応援をよろしくお願いいたします!!

かものはし、PIECESスタッフでの季節感のある一枚

かものはし、PIECESスタッフでの季節感のある一枚

地域での子ども若者支援のこれから〜「Citizenship for Children in 水戸」第4回公開講座&ゼミレポート〜

PIECESが茨城県水戸市で行う、子どもと関わる市民育成プログラム「Citizenship for Children in 水戸」。

これまでPIECESは首都圏を中心に市民育成プログラム(旧名:コミュニティユースワーカー育成プログラム)を開催し、1〜4期で計約50名の子どもと関わる市民を育成してきました。

今回は全国展開に向けての第一歩目となる水戸市でのプログラムで、「セカンドリーグ茨城」さんとの協働で実施しています。

首都圏に限られていた活動範囲を全国に拡大し、各地にいるかもしれない「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡げる大人を増やしたい。

そんな想いから全国展開を目指し、まずは1拠点目、茨城県水戸市で12人、6ヶ月間の「Citizenship for Children プログラム(以下CforC)」を実施します。

これまでの3回では、子ども・若者の育ちの理解や困難を有する子どもたちへのまなざしなど、一市民として子どもに関わる上で土台となる価値観や知識について、延べ100名近い方々と一緒に学んできました。(第三回目のレポートはこちらから

今期の後半にあたる10月から12月にかけては、引き続きフィールドの異なる実務家・専門家の講師をお招きして、さらに一歩踏み込んで「市民性を大切にした子ども・若者支援」について考えていきたいと思います。


今回で第4回目となる今期の公開講座。雨模様も怪しい中、たくさんの方々に集まっていただくことができました。

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午前の公開講座は、東京都文京区にある地域連携ステーション フミコム(文京区社会福祉協議会)の社会福祉士、根本真紀さんが講師を担当。

今回のテーマは「中間支援の立場から見る“非専門職”の可能性」。社会福祉士として活動する一方、ホームレス支援など、半分を専門職、半分以上を一市民として活動している根本さん。彼女が考える、”非専門職”としての地域との関わり方を学びました。

そもそも「社会福祉協議会」とは?

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社会福祉協議会(社協)とは住民主体の理念に基づいて、地域の福祉課題の解決に取り組み、誰もが安心して暮らすことのできる、地域福祉の実現を目指す組織のことです。

根本さんが所属する文京区の社協では二つの特徴があります。まず一つ目は地域福祉コーディネーターの存在。課題を「待つ」のではなく、自ら出向き相談に応じて人を資源に繋げる。二つ目はフミコムの存在。フミコムは、文京区社協が区や地域住民・ボランティア・NPO・企業・大学等と連携して、新たなつながりを創出し、地域の活性化や地域課題の解決を図っていくための協働の拠点です。今までつながっていなかった人同士を繋げ、地域の課題解決や活性化を目標としています。この「課題の発見力」「課題の解決力」の両輪が地域との繋がりを強化すると根本さんは話します。

独自の事業を展開する文京区の社協。その背景には生活課題の複雑性・多様性が関わってきています。現在の社会変化のスピードに対応するには、従来通りのやり方ではもはや解決が難しくなってきているのです。だからこそ一人で課題解決しようとするのではなく、自分とは違う知識・スキル・価値観をもった他者と繋がり、地域課題を一つ一つ解決していく必要があるのだと根本さんは言います。

専門職と非専門職 それぞれの味

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複雑化した地域課題への取り組みは、専門職だけではなく、非専門職の関わりが大いに必要となってきます。ではどのような関わり方があるのでしょうか。

いわゆる弁護士・医師といった専門職の人は、関わりの目的が明確であるため、「支援する」立場として、与えられた枠の中で最適な解決を探そうとします。一方で、非専門職の人は明確な目的に沿ってではなく、一個人として関わりを持つため、早期に課題を発見するこし、また必要に応じて専門職へ繋げることができます。専門職のような強い繋がりではなく、あくまでもつなげて垂らすくらいのゆるい関係性が非専門職の強みだと根本さんは話します。

どちらが良い悪いのではなく、それぞれの関わり方で地域と繋がる。地域の人たちと一緒になって課題や悩みを共有し、一緒になってできることを探る関係を築いていきたいなと感じたひとときでした。

間を描く

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前回の講座を受けて、メンバーの皆さんには宿題として、間を描くために、地域に存在する地域資源(子どもに関わる人や機関、その役割)を記録していただきました。「0〜12才」「13〜18才」の二グループに別れて、それぞれが発見した資源を「情緒的・機能的」「利用ハードルが低い・利用ハードルが高い」の軸でマッピングしてもらいました。

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社会資源をマッピングを通じて、改めて自分の立ち位置を確認したり、「これも資源になるんだ」と新しい関わり方を発見したり、市民として自分が関われる得意なところを見つける良いきっかけになった、と大盛り上がりを見せました。

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社会資源マップ:0-12才

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社会資源マップ:13-18才

最後の時間は、メンバー全員でプロセスレコードのリフレクションを行いました。みんなで意見の共有や問いかけを行うことで、見方が広がり、新しい考え方や気づきが生まれる、とてもワクワクする時間でした。

新しい「気づき」や「発見」がどのようにしてCforCメンバーの実践に活かされるのでしょうか。次回もお楽しみに!

子ども期の生きづらさに心を寄せる。支援者育成プログラム 〜Citizenship for Children in 水戸 第3回公開講座&ゼミレポート〜

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PIECESの行う、子どもと関わる市民育成プログラムの全国展開第1拠点目は茨城県水戸市。「セカンドリーグ茨城」さんとの協働で実施している今回のプログラムは、7月にスタートし、9月には3回目の公開講座とゼミが行われました。

今回の公開講座のテーマは「子ども期の生きづらさに心を寄せる」

関貴教さん(児童養護施設職員/認定NPO法人いばらき子どもの虐待防止ネットワークあい理事)、小野瀬直人さん(IT企業役員)、横須賀繭子さん((み)当事者研究会主宰)の3名をゲストに、CforCメンバーと一般の方に向けた講座を開設しました。

「子どもの生きづらさとは何か」について講師のみなさんの話と対話の中で、思いを巡らせる時間となりました。

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児童養護施設職員として働く関さんは、子どもの生きづらさは「〜すべき、〜するのが普通」という価値観によって引き起こされると言います。

子どもは両親の元で育つべき、お母さんは子育てをしっかりするべき、女の子はスカートを履くべき。

そんな「べき論」の中で、心を押し殺してしまう。

べき論を極力無くした環境を関さんは施設で作ろうと尽力されています。

たくさんのルールが存在する社会の中、関さんの働く児童養護施設にあるルールはたった一つだけ。

「理由なく誰かを傷つけてはいけないよ」ということ。

愛情や安心の育まれる家庭という場所が存在しない子どもたちにとって、施設がその役割を担うこととなります。「理由なく誰かを傷つけない」このルールにさえ従えば、関さんは無理に子どもに宿題をさせることも、嫌いな食べ物を食べさせることもないのだそう。

とことん「なぜ」に寄り添って、子どもたちにとって信頼できる大人である。

日々子どもたちの生きづらさに寄り添う関さんの姿勢から沢山学ぶことがありました。

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「私の親は里親でした。私は里子です。昔私は児童養護施設というところにいたそうです。」


ご自身の幼少期の写真を投影しながら淡々とそう口にした小野瀬さん。

養子として育った小野瀬さんは、多くの子どもたちと生活を共にしてきました。

小野瀬家で養子として育てたのは小野瀬さん一人だけでしたが、常に複数人の子どもをうちで預かっていたそう。そのため、家に帰れば多くの子どもたちがいて、自分の学校の友達も、預かってきた子も、みんなごちゃまぜで遊ぶのが小野瀬さんにとっての日常でした。

「わたしは生きづらいと思ったことはありませんね」

人のためを想って、人のために泣ける。どんな子も「よその子」という認識はするな。

そんな両親の元で育った小野瀬さんは、決して自分の境遇を嘆くことなく、実の両親を恨むことなく、淡々と人生を振り返ってくださいました。

スクリーンに映し出される写真はみんな良い表情で、社会的養護の元にいる子どもたちへ向けられる勝手な「かわいそう」という視点が如何に一方的なものであるか、考えさせられました。

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自身が不登校、精神病など複数の問題の当事者だった横須賀繭子さん。

自殺を考えたり自傷行為をしたりするほどに心を病んだこともあった横須賀さんにとって、回復の足がかりとなったのは、複数のコミュニティでした。

精神の安定しない母親の元で、幼少期から目をかけてくれる大人の存在がなく、引っ越しもしていたから地域との繋がりもなかったそう。

生きづらさとは、「生きづらさに気づいてもらえないこと」だと横須賀さんは言います。

しかし、子どもの生きづらさはとても目に見えにくい。

「子どもにだってプライドがある。助けてもらったことがないから諦めている。そもそも自覚がない。」

そんなことが生きづらさを目に見えにくくしているものだと。

そんな生きづらさから抜け出すために、必要だったのは自身にとって大切な人、そして自分を大切にしてくれる人だったと語ってくださいました。


「良い子って、大人にとって都合の良い子、でしかないんだよ」

その言葉が大変胸に沁みた今回の公開講座でした。

公開講座の後には、CforCメンバーでゼミを行います。

今回は一つの事例を元に、自分だったらどう振る舞うか、背景にどんな願いや価値観があるかをみんなで確認しました。

自身の子どもと関わる際に立ち現れる自分自身の願いや価値観に気づき、自分の感情を置き去りにしないことを大切にしよう。

子どもと関わる際の「ありたい自分像」を確認し、それに対する感情を振り返りました。

負の感情が表出されたシーンも多く見受けられた今回。

その感情を「抱きしめたい?地下室に閉じ込めておきたい?誇りに思っている?」と、素直な感情を大切にしてもらいました。

多くの感情を振り返って、かなりのエネルギーを消費しながら懸命に向き合っている姿が印象的でした。

いよいよ次回は4回目、折り返しの回となります。

このプログラムを通じてどう変化し、どう深めていくのか。

参加者の顔が徐々に変わっているように思えます。

次回もお楽しみに。

アセスメントと「共に居る」を学ぶ〜「Citizenship for Children in 水戸」第2回公開講座&CforCゼミレポート〜

PIECESが茨城県水戸市で行う、子どもと関わる市民育成プログラム「Citizenship for Children in 水戸」。

これまでPIECESは首都圏を中心に市民育成プログラム(旧名:コミュニティユースワーカー育成プログラム)を開催し、1〜4期で計約50名の子どもと関わる市民を育成してきました。

今回は全国展開に向けての第一歩目となる水戸市でのプログラムで、「セカンドリーグ茨城」(http://secondleague.net/?page_id=269)さんとの協働で実施しています。

 

 

首都圏に限られていた活動範囲を全国に拡大し、各地にいるかもしれない「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡げる大人を増やしたい。

そんな想いから全国展開を目指し、まずは1拠点目、茨城県水戸市で12人、6ヶ月間の「Citizenship for Children プログラム(以下CforC)」を実施します。

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前回7月に引き続き、第2回目の公開講座とゼミを8月25日に行いました。

公開講座は、都内でのスクールソーシャルワーカー経験のある社会福祉士で、現在PIECES理事を務める斎典道が講師を担当。

日曜日の午前の開催にもかかわらず、一般の参加者も含めて約30名の方々に集まっていただくことができました。

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今回のテーマは、「子どもへの深い理解を促す『アセスメント』を学ぶ」。

「アセスメント」とは、対象者を支援する方法の根拠となる仮説(〇〇かもしれない)を考えることです。

専門的な概念ではありますが、アセスメントを理解し「ああかな、こうかな」と仮説が多く思い浮かぶようになると、実際に現場で困った子に出会った時、目に見える情報から子どもの背景を見立てることができるようになるのです。


子どもたちは大人の常識とは全く違う考え方・価値観で行動していることが多々あります。

だからこそ、目の前の子どもの行動・言動の意味付けを捉え直すことで、自分自身が持っている価値観や信念に自覚的であることが大切だと語り、公開講座は終了しました。

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午後のゼミでは、PIECESが考える市民性と市民が作る「間」の理論について理解した上で、実際に実践の現場で気になった場面の子どもの様子(行動や言動)を、観察し直してみるワークを行いました。


子どもと初めて「出会」い、「共にいる」段階で信頼関係を築く時、子どもの様子をしっかりと観察し、想像しながら接することはとても重要です。


午前の公開講座での学びを生かし、まずは一人で、子どもの目に見える情報から仮説をたくさん考えていきます。その後、3,4人のグループに分かれ、それぞれの事例について考えたことを共有してもらいました。

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活動中にはわからなかった子どもの様子を後から思い出し、自分の中の捉え方が変わったことを発表するメンバーや、他のメンバーから「その子、もしかしたらこう思ってたかもしれないね」と指摘し合い、その子との関わり方にまで話が発展していく場面もありました。

今回のゼミを通じて学んだことを踏まえたうえで、

市民として、子どもとの関係を「共にいる」から「探求する」という一段階先のステップへと進めるためには、一体どのような考え方が必要なのでしょうか。

それでは皆様、次回もお楽しみに。


育成プログラム「Citizenship for Children in 水戸」キックオフを行いました!〜公開講座&ゼミレポート〜

水戸の参加者の方々

水戸の参加者の方々

PIECESの行う、子どもと関わる市民育成プログラムの全国展開第1拠点目は茨城県水戸市。

先日7月28日に第1回目の公開講座とゼミが行われました。



これまでPIECESは首都圏を中心に市民育成プログラム(旧名:コミュニティユースワーカー育成プログラム)を開催し、1〜4期で計約50名の子どもと関わる市民を育成してきました。

今回は全国展開に向けての第一歩目となる水戸市でのプログラムで、「セカンドリーグ茨城」(http://secondleague.net/?page_id=269)さんとの協働で実施しています。



首都圏に限られていた活動範囲を全国に拡大し、各地にいるかもしれない「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡げる大人を増やしたい。

そんな想いから全国展開を目指し、まずは1拠点目、茨城県水戸市で12人、6ヶ月間の「Citizenship for Children プログラム(以下CforC)」を実施します。


公開講座の様子

公開講座の様子


PIECESの育成プログラムは
①座学
②ゼミ
③実践
の3本柱で構成されています。

座学は子どもの発達や孤立の心理メカニズム、アセスメントの方法論など、子どもと関わる際の知識を講義型で学びます。座学は公開講座として、一般の方々にも参加していただけるように開催しています。

ゼミはCforC参加者12名が日々の実践のリフレクションを核として対話型で学び合います。

日々の実践の現場でのモヤモヤなどを各自が持ち寄り、子どもとの関わりを多角的に見る、相手への想像力を働かせる訓練を行います。

座学やゼミで学んだことを活かしながら、自分にとっても子どもにとっても良い関わりを探求し続ける現場実践もこのプログラムでは欠かせないものです。

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CforC参加者のみでのゼミでは、キックオフを兼ねてチームビルディングのワークを行いました。

今期の参加者は学生から社会人、お子さんを持つママまで、幅広い人たちがいます。仕事として子どもと関わる人もいて、これまでのPIECESの育成プログラムの参加者とはまた違ったバックグラウンドを持ったメンバーが集まりました。


「専門家でも親でも先生でもない市民として自分ができること」をこの6ヶ月を通して考え、探求し続けていってほしいと思います。


12名でお互いに助け合い、学び合うコミュニティとしてCforCが参加者の中に位置づくことで、どんな学びが生まれるのか。子どもにとっても自分にとっても良い関わりを探求し続ける先にどんなことがあるのか、とてもわくわくする時間でした。


皆さんもぜひ、これからのCforC事業がどうなっていくのか、お楽しみに。

CYW育成プログラム報告会   2019年5月21日㈫

これまで1-4期まで取り組んできたコミュニティユースワーカー育成プログラム。

プログラム内容、評価方法、実際どうだったか、などの報告会を実施しました。

コミュニティユースワーカー4期生や、セカンドリーグ茨城さんも参加し、和やかな雰囲気で行われました。

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JAR 難民支援協会 コラボイベント「あなたの隣の見えない孤立」 2019年5月11日㈯

JAR (Japan Association for Refugees - )難民支援協会さんとのコラボイベントを開催しました!

会場にはasobi基地も開き、子どもたちも楽しみながら優しい空気でした。


会場とオンラインで30名近くの方にご参加いただきました。


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コラムリレー「おとなってなんだろう」#2

【よんなー1周年コラム(2)】「おとなってなんだろう」


よんなーよんなーのオープン1周年を記念して始まったコラムリレー「おとなってなんだろう」

今晩は第2弾!CYW3期生のなかじからのコラムをお届けします!


こんにちは!なかじと言います!社会人1年目で今は福岡で働いています。よんなーには最初の3〜4ヶ月だけ参加していました。

よんなーのことが大好きなので、また東京に戻ったら必ず参加したいと思っています!



「おとなってなんだろう」

僕が小学生の時に高校生の人を見たら、とても大人びて見えたことを覚えています。そして高校生の時に社会人の人を見たら、とてもカッコよく見えたことを覚えています。

彼らは悩みがなさそうで、とてもキラキラして見えました。



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今年で社会人になりました。子どもの頃と同じようにたくさん悩むし、言い訳もするし、お世辞にもあんなに憧れたカッコいい「おとな」にはなれていません。

「おとなってなんだろう」。そう改めて聞かれると悩んでしまいます。自分は「おとな」だと胸を張って答えることも、今は出来る自信がありません。

でも「子どもに戻りたいな」「子どもの頃が懐かしいな」と考えるようになったら、もう「おとな」なんだと思います。

どうせ「おとな」から逃げられないなら、「おとなでもいいや」って思える「おとな」になりたいです。

その近道が自分のやりたいことに素直になることだと思います。素直に生きていけるなら、きっといつか「おとなでもいいや」と思えるはずです。



よんなーよんなーでは、その「やりたいこと」を本気で応援してくれる人や空間があります。お節介な「おとな」があなたを待っています。

騙されたと思って遊びに来てください。そしてちょっとでも安心してくれたら嬉しいです!

次回、12月4日(火)のコラムもぜひ見てください!

よんなーよんなー!!



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子ども期の“生きづらさ”に心を寄せる~第5回PIECES公開講座&CYWゼミレポート~

こんにちは!

コミュニティユースワーカー4期生の新免です。

11月18日に、月に一度の公開講座とゼミが開催されました。
今回の公開講座のテーマは、【子ども期の“生きづらさ”に心を寄せる】
講師は、病児保育など親子問題に関わる事業を展開している、認定NPO法人フローレンス所属の菊川恵さんです。

複雑な家庭環境の中で育ち、様々な葛藤を抱きながら子供時代を生き抜いてきた菊川さん。中学・高校時代を中心に、乳幼児期から大人になるまでにご自身の身に起きたことを振り返っていただきながら、その当時感じていたこと、大人に求めていた関わり、過去を振り返っていま思うこと、についてお話しいただきました。

わたしたちコミュニティユースワーカー(CYW)はもちろんのこと、“生きづらさ”を抱える子どもとの関わり方を模索するあらゆる立場の方々にとって、「支援者」としての自分の在り方を自問自答する機会になったことと思います。

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子供時代の菊川さんが、周りに求めていた関わり、救いとなったもの。
それは、その時々の状況によって、変化していきました。

例えば、大人の発言より行動を見ていた中学時代は、近所の切手屋さんと「ただ一緒に時間を過ごす」ことに、温かくほっとする気持ちを感じていました。

母親が亡くなった後、言葉の出づらさに悩んでいた時期は、帰宅後に聴くラジオが心の支えとなっていました。パーソナリティの話を聴いて笑ったり、お悩み相談をする同世代の話を聴いたり。

この時期は、「自分が人にどう見られているかを過剰に気にしてしまうから、間接的に救われるのがちょうどよかった」「居場所支援があったとしても、元気な時しか行けなかったと思う」という菊川さんの言葉が印象に残りました。

そして高校時代。一時保護施設に身を寄せるなど、一番ハードな出来事が続いた時代でしたが、今回振り返りってみると、「スッキリした気持ち」で当時を思い出すことができたそうです。理由は、「自分自身を見てくれていた」人たちがそばにいたから。

父親の暴力で怪我をして登校した時、いつもと変わらない感じで「気になっとったんよ~」と声をかけてきた担任の先生。

保護施設で、毒舌だけれど、本当に子供たちにとって何が必要なのかを考えているのが伝わってきた職員さん。

転校後の高校で、なんにでも必死に食らいつく姿を見て、「お前おもしろいな」と興味を示し、大学進学を提案してきた担任の先生。多様な価値観を認め合えた同級生たち。

こんな風に、高校時代に、信頼できる他者がいるという実感を重ねられたことで、「信じてもらえてはじめて出せる力」を発揮できるようになり、自分の心の回復を早めることができた、とお話しされていました。

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しかし、その後も、菊川さんの苦しみは続きます。


菊川さんは、20歳当時、慢性的に生きづらさを感じていたそうです。けれど、支援者に助けてもらえるのは、問題が分かりやすく起きているときだけ。大人になって、表面上は「普通の大学生、普通の社会人」として日常を過ごすようになってからは、気軽にアクセスできる支援が見つかりませんでした。


「大人になっても戻ってこられるような支援やつながりがあればよかった」という言葉を聞いて、PIECESでの活動を通じて、子供たちにとって「いつでも戻ってこられる居場所」を少しずつ増やしていきたい、と思いました。


「支援者」として子どもたちに関われる部分は、その子の人生のごく一部に過ぎません。そして、支援者の手を離れた後も、子どもたちの人生はずっと続いていきます。


その子の人生を長い目でみて、本当に必要な関わりは何なのか?

その子に合った支援の形ではなく、「自分にとって理想的な支援の形」に囚われていないか?

自分の持っているフィルターを介して相手を眼差していることに、自覚的であるか?


今日の講演で、菊川さんから投げかけられた問いを心に留めながら、子供たちの人生に「伴走」していきたいと思います。


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午後からは、CYW4期生のみでゼミを行いました。

メディアの取材が入っていたので、少し緊張感もありつつ、各自が現場実践後に書いた「プロセスレコード」を用いながら、二人一組になって「リフレクション」の振り返りを行いました。(「プロセスレコード」について、詳細を知りたい方は第2回ゼミレポートへ)

午前中の講義で学んだことを反芻しながら、「自分自身が抱いている『相手にこうなってほしい』という願いや価値観に縛られたまま子供たちと接していないか?」「目の前の子どもを大事にできているか?」という視点で振り返りをしたのですが、1対1でお互いの「願い・価値観」を深堀りしていく中で、自分自身の認知の癖について、新しい気づきを得ることができました。


更に、今回は、自分が相手に与えている印象や態度を客観的に捉えるために、話し役(子ども)と聞き役(CYW)に分かれて会話をしている様子を動画で撮影する(!)というワークも行いました。

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自分自身の願い・価値観は、必ずしも、言動として表面化して、相手に伝わるとは限りません。このワークを通じて、自分のコミュニケーションの癖がどのようなものなのか、強みと弱みを知ることができました。


本当に、子どもにとって良いことは何なのかを考えるということ。

それを、相手にメッセージとして届けるということ。


とっても難しいことですが、これからも、子ども達、そして自分自身と向き合っていきたいと思います。


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【動画アーカイブ】「子ども虐待の背景を知り、社会全体でこの問題に取り組む」にはどうしたらいいか?

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平成29年度の児童相談所の虐待対応件数は13万件(※)と、実は、今日一日を安心して暮らせていない子どもたちが、私たちが暮らすこの街にはいます。厚生労働省では、毎年11月を「児童虐待防止推進月間」として、児童虐待防止のための広報・啓発活動などを行っています。

今年は特に、虐待に関するニュースが全国的に取り上げられたこともあり、様々な人たちから議論が巻き起こった年でもありました。そのようななか、わたしにもなにかできないだろうか?現在の制度はどうなっているのだろうか?と思われた方も多いかと思います。

私たちPIECESも、そんな思いから立ち上がった虐待防止へと取り組んでいる1つの団体です。代表の小澤は、児童精神科医として、臨床の現場で数多くの虐待を受けた子どもたち、そして養育者の方々と接してきました。

しかし、医療機関に来る前に、さまざまな人の関わりでできることもあるかもしれない、医療機関では出会えないけれど孤立している子もいるかもしれないと実感しました。そこで、小澤は、医療機関や専門家だけがこの問題に取り組むのではなく、社会全体として取り組むためにPIECESを立ち上げました。

今回は、11月の「虐待防止月間」にあわせ、「虐待予防のために、私達ができること」と題して、虐待の背景から、私達が日々できることについて考えるFacebook Liveを行いました。

Liveでは、小澤から「虐待とは?」ということから、「PIECESが生まれるまでの臨床現場で感じた虐待の背景」、そして、PIECESで活動するコミュニティユースワーカーと一緒に「実際に現在、PIECESの現場で活動に取り組んで感じたこと」について、お話させていただきました。
↓動画をぜひ御覧ください。


■プレゼンターについて
代表:小澤いぶき NPO法人PIECES代表理事/Co-Founder
東京大学先端科学技術研究センター客員研究員/児童精神科医
精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。さいたま市の子育てインクルーシブモデル立ち上げ・プログラム開発に参画。
2016年、ボストンのFish Family Foundationのプログラムの4名に推薦されリーダーシップ研修を受講。2017年3月、世界各国のリーダーが集まるザルツブルグカンファレンスに招待、子どものウェルビーイング達成に向けたザルツブルグステイトメント作成に参画。

■PIECES  コミュニティユースワーカー:大畑麻衣花
コミュニティユースワーカー2期生。
大学では心理学と保育学を学んでいて4年生になる代だが、NPOへの興味が高まり現在休学中。
PIECESでは、小中高校生とクタクタになるまで遊びまわっているが、最近体力の差を感じ始めている。PIECES外でも、虐待など複雑な家庭環境で育った経験のある子どもたちが過ごす施設でアルバイトをしている。


厚生労働省による平成29年度「児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値)」参照。


<配信内容の概要>


●虐待とは?

・身体的虐待、心理的虐待、性的虐待などがあります。
・ネグレクトとは、子どもたちの尊厳が放棄されているような状態のことを指します。

●虐待の背景

虐待の背景には、様々なレイヤーがあります。

・家庭内の状態:子どもの人数や障害の有無、養育者の精神状態など
・家庭と地域の状態:職場からの孤立、家庭の経済状況、地域からの孤立など
・社会の状態:家族の役割への社会からの重圧 

生物学的には子育ては共同体で行うものです。
1人で頑張らなければならない、しんどく感じるときに、一緒に子育てをしていけるような環境作りをしていかなければならないと考えています。

「家族だから…」やらなければならないというのではなく、核家族化、地域のかかわりがなくなっているからこそ、どのように一緒に子どもを育てるということをシェアしていくかということを考えていかなければなら無いと思います。

●虐待による子どもへの影響

①愛着形成の困難さ

アタッチメントとは、子どもと特定の母性的人物に形成される強い情緒的な結びつき。幼少期に必要不可欠な重要な関係性のことを指します。愛着形成には養育者も安心した環境作りが必要不可欠です。

愛着が育まれないと…脳の特定の部位の機能が低下し、なにかをやろうとしてもモチベーションが上がりにくくなってしまうこともあります。これはケアをすることで回復していきます。

②心理的孤立

信頼して頼るということの困難になっていきます。
たとえば、DVが会った場合。暴力があることは子どもにとって不安の要因になります。頑張っても家族の中が上手くいかないと、自分が意味がない存在ととらえるように。そうすると、自分の感情、やってみたいという気持ちが抑えられてしまい、信頼している人に頼るということが難しくなってしまうこともあります。

心理的孤立とは、頼る人がいない、頼れない状態。

困った時に相談する人がいるような「あたたかい経験」がないから頼るという選択肢自体が思い浮かばないことがあります。何に困っているかわからないほど深刻化しているとき、意欲すら奪われ、支援されることに抵抗があることがあります。頼ることは実は主体的な行為で、大切だが難しい行為でもあります。

そのため、頼りたいと思うことが出来る環境作りが重要です。

●私たちにできること

①子どもへのまなざし

迷惑をかけてはいけないという空気感を取り除く。子どもたちが頼ることができる雰囲気作りをしていくことが大切。

②養育者へのまなざし

頑張っている養育者への関わりが大切になります。養育者が頼れるということは、子どもが豊かに育つ環境が広がることでもあります。


③寛容な社会を作る

目に見える言動だけではなく、目の前にいる人の、思考、感情、願い、欲求に目を向けていくことが大切です。

たとえば、イライラ、物にあたっている人がいたとしたら。一見、行動だけを見ると単に暴力的な人にみえるかもしれません。しかし、その子の心の奥にある感情をみる必要があります。そうした寛容な関係性が、「頼ってもいいんだな」という気持ちに繋がっていきます。

※その他、質問への回答や詳細は動画をご覧ください。

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多様な人が共存できる「余白」をつくり、誰も排除しない地域福祉へ- 第6回 One P’s Night イベントレポート

こんにちは。PIECESインターンライターのエミリーです!

11月16日、地域福祉の立場から「多様なあり方を面白がる場のデザイン」を考える、One P’s Night(ワンピースナイト)が半蔵門のLIFULL HUBで開催されました。

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One P’s Night(ワンピースナイト):株式会社LIFULLの社会貢献活動支援委員会が主催するイベント。社会問題の解決にとりくむNPOや団体、人を招き、一緒になって問題解決を考える場。今回で第6回目を迎えた。

今回は、京都府京丹後市で「ごちゃまぜの福祉」をめざして複合型福祉施設のコーディネーターをされている川渕 一清(かわぶち かずきよ)さんと、兵庫県尼崎市でまちづくりのさまざまなプロジェクトをおこないながら今年11月「ミーツ・ザ・福祉」というイベントを作りあげた藤本 遼(ふじもと りょう)さん、そして認定NPO法人PIECES理事の斎 典道(さい よしみち)さんをゲストに迎え、さらにモデレーターとしてPIECES理事の青木 翔子(あおき しょうこ)さんが加わって4人でトークをおこないました。

定員40名の参加枠に対して、50名以上のお申し込みをいただき、大盛況となった今回のOne P’s Night(ワンピースナイト)。「多様なあり方を面白がる場のデザイン」というテーマから、多様なあり方を面白がるとは?という問いからお話が始まりました。排除せず多様な人と共存する新しい福祉、それを取りまく場のデザインについてのお話をレポートします。

登壇者紹介

まずは、今日お越しくださった3人に、それぞれの取り組みについて聞きました。

◆ 斎 典道(さい よしみち)さん - NPO法人PIECES理事

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さい:こんばんは。NPO法人PIECES理事のさいです。PIECESは、誰もが尊厳を持って生きられる豊かな社会をめざして「こどもの孤立」という課題に取り組んでいます。今年10月に認定NPO法人になりました。わたしたちは、虐待やネグレクト、貧困などの子どもを取り巻くさまざまな問題の背景には「子どもの孤立」があると考えています。子どもたちが孤立していく理由は、そもそも人から大事にされる経験に欠けていて、人を信用できず自分を大事にすることもできなくなってしまうからです。子どもの孤立のループを止めるために、わたしたちはコミュニティユースワーカー(以下:CYW)を育成し、CYWによる子どものサポートをおこなっています。
PIECES 公式HP



川渕 一清(かわぶち かずきよ)さん - みねやま福祉会

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川渕:京都府の京丹後市からきました。地元が京丹後市というご縁で、3年前から社会福祉法人みねやま福祉会で仕事をしています。それまでは東京で普通のサラリーマンをやっていました。みねやま福祉会は、2020年で70周年を迎える社会福祉法人で、戦災孤児の受け入れから始まった歴史ある法人です。現在わたしはそんなみねやま福祉会の複合型施設「Ma・Roots(マ・ルート)」でコーディネーターをしています。

「Ma・Roots(マ・ルート)」は、特別養護老人ホーム、障害者支援施設、保育園を全部ひとくくりにした複合型施設です。それぞれ「○○支援施設」など福祉っぽい名前をつけず、「エルダータウン」「ワンダーハーバー」「キッズランド」といった名称にしています。福祉っぽい名前にしちゃうと、支援する側とされる側の分断がおこるような気がして、地域の方やご利用者のご家族も馴染みやすくなるようにと検討を重ねました。日々、「ごちゃまぜの福祉」を目指して実践している中で、施設を日常的に利用する人以外にも門戸を開いています。「居心地がいいな」と思って、気づいたら福祉施設だったという場所になったらいいなと思っています。
みねやま福祉会 Ma・Roots(マ・ルート)公式HP



藤本 遼(ふじもと りょう)さん - 「ミーツ・ザ・福祉」仕掛け人

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藤本:兵庫県の尼崎市から来ました。尼崎を中心にまちづくりの仕事をやっています。いろんな人とプロジェクトをやるなかで、おもに企画やファシリテーションをしながら、街を面白くする活動をしています。そのひとつが「ミーツ・ザ・福祉」です。そもそも「ミーツ・ザ・福祉」は36年間続く、障害のある方とそうでない方がお互いに理解を深めようというイベントです。いろんな人と一緒に楽しめたらいんじゃないかということで、昨年から尼崎のNPOとぼくが入って一緒にやっています。

一番大事にしたのは、実行委員会をオープンにすることです。開催の半年前からワークショップを開いて、どんなイベントにしたいかみんなで話しあいました。10年以上イベントに関わっていた人も、初めての人も、福祉に関わっている人も全然関わっていない人も、あわせて80人くらいがボランティアで関わって、当日4000人が来てくれました。あるアパレル関係で働く方が「だれかのものさしを気にして、今まで生きてきたような気がする。でもこの場は、多様なあり方が肯定されるような場だと感じる」と話してくれたんです。いろんなあり方があって面白いと、新たに気づかされる場っていうのが面白いと思うんですよね。
ミーツ・ザ・福祉 公式HP

 

「目的がたくさんある場づくり」で、多様な人に場を開く

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これからの場づくりには、多様なあり方をおもしろがる場づくりが大事だと思うのですが、「多様なあり方を面白がる」って具体的にどういうことだと思いますか?


川渕:どんな人でもとりあえず受けとめてみて、どんな場が作れるか考えてみることでしょうか。場づくりでは、関わる人とのコミュニケーションがすごく大事だと思うんです。たとえば、Ma・Roots(マ・ルート)で働いていると、認知症のおばあさんが毎日事務所に入ってきて、いつも隣に座るんですよね。毎日ぼくの隣で同じ話をしてくれるんですけど、それでいいと思うんです。「こうでなければならない」なんてことはなくて、そこにいる人たちとどう場を作っていくのか、ポジティブに考える姿勢がとても大事な気がします。

藤本:「ミーツ・ザ・福祉」でも50人くらい集まって、グループごとにミーティングをするんですが、会議に疲れちゃう人がいるんですよ。最近までうつ病にだったけど、面白そうな場だから頑張って出てきたという人。でも、やっぱりちょっとしんどくなっちゃって、という話があって。なので「喋らないでもいいエリア」を作りました。ただそこにいてOKというエリアなんです。我々が思うような「貢献」をしなくていいような場の作り方って非常に大事なことなんじゃないかと思います。

さい:利用者にとって、その場に多様な選択肢があることはとても大事なことですよね。PIECESが場を設定する時、「ゲームを作る」とか「スポーツ」とか「学習」とかある程度目的を絞ります。とはいえ目的がひとつだとこどもは飽きるし、なんか違うなと思ったときに逃げ場がなくなるんです。そうなったときに、他のことに興味をもつ余白があるのは大事ですよね。福祉って、ニーズを縦割りの構造で捉えがちなんですけど、多目的的な場になっていることはそういう意味でも大事だなと子供たちの姿を見ていて思います。

 

「余白」はつくるのではなく、自然と生まれるもの

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他者が関わる余白を、具体的にどう作っていけばいんでしょうか?

さい:遼さん、余白づくり名人な気がしますが...

藤本:抜けてるだけなんですけどね~(笑)なんか…なんなんでしょうね。ダメでもいいよねっていう感じを僕が出してるんですね。一応リーダーだけど、指示も出さないしビジョンも語らない。ビジョンを語ると、みんながそこに合わせて自分自身を変えてしまうんですよ。それって大事なことかもしれないけど、多様なあり方を肯定することにはならないと思うんです。だから、コンセプトやストーリーはよく語ります。関わる人が多ければ多いほど、僕の語るコンセプトに対しての考えも違ってくる。その中でそれぞれのスタイルが生まれてきて、それが場を面白くすると思います。

さい:そういうの気持ち悪がる人もいませんか?

藤本:います。方向性を示してほしい人もいらっしゃるけど、そんなときは、みんなで喋りながら考えていこうかっていう話をします。

川渕:「ごちゃまぜ」な場では、我々が何かを提供するわけじゃなくて、気づかないうちに余白の中から関係性が生まれているケースがあります。選択肢はつくるけど、それを選んでも選ばなくてもいいよというスタンスでいますね。たとえば、Ma・Roots(マ・ルート)のカフェスペースにはけん玉が置いてあるんですが、障害者の就労支援に通っているけん玉名人がコツを教えてくれるんです。「足を斜めにこう動かせばできるよ」って。それが「入ったー!」ってなると、もう関係性が生まれちゃってるんですよね。

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藤本:非常に思うのは、恣意性みたいなものが見えたときに、途端にやる気なくなることが結構あるんですよ。全般的に、ワークショップをやって地域のプロジェクトを立ち上げて進めていくときに、「いくつ立ち上げなきゃいけない」みたいなことが意図せずとも伝わってしまうと、途端にやる気を失ってしまうんです。何が起こってもいいし何も起こらなくてもいいってスタンスを貫くのは、めちゃくちゃ大事な気がしますね。

 

共感できない他者を排除せず、関わり続けることで変化が生まれる

多目的な場づくりや場を開いていくことは、今までの福祉や場作りのあり方を変えることですよね。これまの福祉との対立はありますか?

藤本:価値観がぶつかることがあります。「ミーツ・ザ・福祉」は、35年間地域の方がやっているイベントで、そこに去年から僕らが入って、変えたという経緯があるんです。去年は今までずっと継続的に関わっていた方に「障害者のことをわかってない」と言われたりして、お互いに理解や共感をしあえなかったんですよね。でも今年は、そのコミュニケーションが少し変わって「晴れてよかったね」とか声をかけてくれたんですよ。

共感できなくても一緒にいた結果、お互い気づかぬうちにちょっとずつ変わっていたんです。障害者健常者に関わらず、理解や共感ができない他者とどう共存していくのかということは、これからの時代を生きる僕らにとって非常に大事なことだと思ってます。排除すると関係性は途絶えてしまうので、ずっと関係性をホールドし続ける強さやたくましさが、地域福祉には大事だと思うんです。

川渕:そういう意味でいうと、Ma・Roots(マ・ルート)は、これまで縦割りだった特別養護老人ホームや障害者支援施設、保育園を複合したという側面があり、これまでの分断された福祉のスタイルを大胆に変えていると思います。Ma・Roots(マ・ルート)は福祉施設なんですけど、門がなくて、24時間誰でも入れるんです。そこには認知症のおばあちゃんの鼻を拭いてるこどもがいたり、小さなこどもと一緒に動画をみている自閉症の男の子がいたりします。縦割りではないこの感じが心地いいと僕は思っていて。居心地がよくて、気づいたら福祉施設だったというのを目指してチャレンジしていきたいと思います。

さい:僕はPIECESの理事をしながら、週2日は区役所でソーシャルワーカーとして働いているのですが、区役所の人が市民と関わる時間は、穏やかな時間ばかりじゃないんですよね。怒鳴りに来たりする方もいて。そういう状況から、地域の人と関わってエンパワーされることはあまりないし、お互いエンパワーしあう場にもなっていないと思います。お互いの立場を尊重しながら排除することなく関係性を持ち続けるために、行政でできること、一般市民ができることをきちんと明確にしていくことが重要ですよね。

ありがとうございました。




まとめ

新しい地域福祉の現場で、健常者と障害者を分断したり、保育園や老人ホームを個別に作ったりするのではなく、多様な人がお互いの差異を受け入れ共存していくという新しいスタイルが生まれつつあります。多様な人たちが共存するためには、理解できなくても、共感できなくても、お互いの存在を否定せず、相手に変わることを期待せずに関係を持ち続けていくことが、とても大事なんですね。誰も排除しない多様な場が、今後どんどん周りに増えていったり、作る人が増えたりするのがとても楽しみです。

 

グラフィックレコーディング (レコーダー: あるがゆう)

登壇者のお話のエッセンスや、感情や場の温度の高まったポイントを中心に描き起こしました。よろしかったら上記の内容と照らし合わせながらご覧いただければうれしいです。

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writer

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小幡 絵美梨(おばた えみり)


法政大学経営学部の4年生。長野県塩尻市出身で寒いところが好き。
PIECESがテーマとする「子どもの孤立」が自分の問題意識とぴったり合致してPIECESにインターンとして参画。記事を書くのも好きですが、グラレコをするのも好きです。

コラムリレー 「おとなってなんだろう」#1

【よんなー1周年コラム(1)】「おとなってなんだろう」

こんにちは。CYW3期生のまなてぃです!

「よんなーよんなー」という活動に立ち上げから関わり、現在はよんなーのまとめ役となっています。

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本日、11月20日でよんなーよんなーの活動は1周年を迎えました!!

1年間、子どもたちと途切れることなく関わり続けられて、本当に良かったです。

支えてくださった皆さん、ありがとうございます。


今回は、よんなー1周年を記念して、メンバーからコラムをお届けしたいと思います。

共通のテーマに沿ってメンバーが書いたコラムが、1週間ごとに公開される予定です。

よんなーにはどんな想いを持ったメンバーがいるのか、よんなーってどんな雰囲気なのか、コラムを通してそんなことが見えてくるかもしれません。

よんなーを支えてくださっている皆さんにも、今回初めてよんなーを知ってくれた皆さんにも、楽しんでいただけたら嬉しいです。


1周年コラムのテーマは「おとなってなんだろう」

PIECES全体としては「子ども」にフォーカスを当てているけれど、今回は「おとな」に。

よんなーは高校中退予防や中退後のフォローを目的としているので、関わる子どもたちは高校生から20代前半くらいです。

歳だけで言えば、「おとな」に近い、「おとな」かもしれない年齢です。

なので、よんなーでは「子ども」だけでなく「おとな」も切っても切れないもの。

これを機会に「おとなってなんだろう」と考えてみることにしました。

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私にとってのおとなはなんだろう…

よんなーの活動では、利用者のことを「子ども」と言っています。

となると、スタッフ側の私は、おとななのかもしれません。

でも、よんなーの子どもたちは、20歳前後。大学生の私からしたら同世代です。

何か違いはあるんでしょうか…



よんなーでの私を振り返ると、おとなな瞬間もある気がします。

場の全体の雰囲気を考える時。相手の話に耳を傾ける時。

ちょっとお姉さんな存在として見守るような関わり方をしています。

もしかしたら、こういう「支える存在」っていうのが、おとななのかもしれません。



でも、お菓子を食べている時、趣味の話をする時。

楽しみながら、のびのびと過ごしています。私自身も。

子どもたちと一緒です。



私はまだまだ、おとなにはなりきれてないと思います。

コーディネーターでこんなことを言ってしまうのは頼りないかもしれません。

けれど、そんな私でいられるのは、無理に背伸びをしないで済んでいるからです。

子どもたちにゆっくりゆっくり寄り添っていくことを掲げているよんなーだけれど、私も寄り添ってもらっているんだなと改めて気づきました。



次回のコラムは、11月27日(火)に公開予定です。お楽しみに〜!




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子ども支援のこれからのカタチ~第4回PIECES公開講座&CYWゼミレポート~

こんにちは!
コミュニティユースワーカー4期生の江澤、上野です。

10月21日、月に一度の公開講座とゼミが開催されました。

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第4回目となる今回のテーマは、【子ども支援のこれからのカタチ】

講師は、文京区社会福祉協議会に所属されている浦田愛さんです。

みなさんは「社会福祉協議会」と聞いて、どのようなお仕事を想像しますか?

社会福祉協議会は、
住んでいる人たちだけでは解決できないような課題=地域のニーズと、専門的なノウハウがある団体とをつなぐ役割を担っています。

全国にある社会福祉協議会ですが、地域のニーズに基づいた活動をしているため、自治体によってその活動内容は大きく異なるそうです。

6年前、社会福祉協議会の「地域福祉コーディネーター」に配属された浦田さん。窓口を設け困っている人の来訪を待っていても、支援が必要な人とつながることが難しいと気づき、自ら課題を探しに地域へ出向いて解決に向けた支援をするようになりました。

未成年からご高齢の方までの幅広い年代の方、また、障害やひとり親家庭、生活困窮、外国籍の方など様々なニーズに対して尽力されている浦田さんですが、「もっと早くに気づけば…」と悔しくなる現場もあったそうです。


ふいなきっかけで困難な状況に陥ってしまう人々と接する中で、複合している課題をひも解くために「今1番解決すべきことは何だろう?」ということを考えるようになったそう。一人ひとりの相手に合わせた柔軟な支援をしていることがとても印象的でした。

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そのような、「1人のニーズ」や「1人の願い」を大切にしてできた居場所が文京区にはたくさんあります。

そのひとつである「こまじいのうち」

5年前にオープンしたこちらの居場所ですが、参加者数は1か月に300人~400人。
利用者分布を見てみると、老若男女問わず幅広い方々に利用されていることが分かりました。
住民主体の活動で、地域の人材や孤立した人たちがつながる場である「こまじいのうち」、
来訪者のニーズに合わせてさらに新しい活動が始まり、今では子ども食堂や子育てサークル等も行っているそうです。

そのようなお話に対し会場からは、こんな質問がありました。

  • どれくらい経ってから人が来るようになったの?

  • 住民の方へのフォローってどうしているの?

  • 長期的に関わるって難しいけど、どうしたらできるの?

今でこそ年間5000人ほどの方が利用しているこまじいのうちですが、活動場所が一軒家のため入りづらい雰囲気もあり、やはり最初はなかなか人が来なかったようです。

しかしオープンから半年、人がたくさん来るようになりました。
その陰にあるのは、年2回のバザーの存在。
イベントで一度訪れることで入りやすくなり、来訪者が増えていったそうです。


また、住民主体の活動ということで気になるのはそのフォロー。

住民の方も不安がたくさんありますが、安心してもらえるよう、話を聞いたり支えたりと、丁寧に関わっているそうです。住民の方々のもつパワーが発揮されるために、安心して活動できる環境を大切にされていることが分かりました。


私は今回の講座を受け、住民の方をはじめとする非専門職だからこそできる関わりがたくさんあることを学びました。 専門職・非専門職それぞれに得意なことも苦手なこともありますが、浦田さんのような地域福祉コーディネーターの方が色々な人たちのアイデアをかき集める役割を担っており、多くの資源を活用した支援につながっているそうです。

一緒に笑う関係から本音を話せる関係へ、ということで「笑い」を大切にされている浦田さんの笑顔は、参加者の私たちにも安心感を与えてくれる素敵な笑顔でした。

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講義後はCYW4期生のゼミを行いました。


今回のゼミ前のアイスブレイクは他己紹介でした!
他己紹介とは、相手の話をヒアリングしてそれを要約して他の人にその相手を紹介するものです。


4期のメンバーは相手の話を引き出したり、他人に伝わるようにどう表現したらよいか考えながら和気あいあいと取り組んでくれました。

他の人の魅力を紹介する他己紹介はCYWとして様々な子どもを他の大人につなぐときにも役立てそうでした!

ゼミでは毎回行うリフレクション(前回レポート参照)に加えて集団支援でのコミュニケーションについて悩みの共有とワークを行いました。

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集団支援とは、一対一で子どもとかかわる支援ではなく児童館や学習支援等の子どもの居場所において複数人の子どもと同時にかかわる支援をここではいいます。

多くの子どもとかかわれる反面、個々の子どもと深くかかわれなかったり、うまく子どもと接点を掴めなかったりします。

CYWは、集団支援から現場実践を開始し、その後個別支援を始めていきます。

集団支援として、主に現場実践を行う場として、ジャンプ東池袋とクリエイティブガレージの二つがあります。

二つの現場に行ったことあるメンバーから下記のような悩みがでました。

  • 子どもが友達同士で来ているので、割って入りにくい

  • ゲーム・本に夢中な子に話しかけにくい

  • 子どもの事前情報わからない

  • 他の子どもの眼があるから深い話ができない


それに対して4期メンバーやメンターより様々なアドバイスをいただきました。

  • 友達同士できている子たちには、話しかけそうな子からアプローチする

  • 話しかけにくてもその場でほほ笑んで存在をアピールする

  • 「コンビニ行こう!」などと言って場所を変える


次に子どもの話の琴線に触れるワークを行いました。

子ども役とCYW役に分かれて、子どもと雑談を行うロールプレイを行い、CYW役は子どもの反応や話すトーンを見て会話から子どもの情報収集しました。

CYW役がうまく話を引き出せていると思っていても、子ども役側が詰問されていると感じたり、子ども役側がトーンなど微妙に上げているものを見逃さない鋭いメンバーもいました。

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琴線には、いい意味と悪い意味があります。いかに相手の触れてほしい話に触れ、触れてほしくないところを避けるか、難しいと感じました。

集団であっても個別であっても目の前の子どもへ興味を持つこと、安心してほしいというメッセージを発することは大事だと感じました。

今後は、今日の学びを生かして集団支援の場で、関係をつくるきっかけづくりなど行っていきたいです。


次回、来月の公開講座は、11月18日(日)10時~12時 の開催です。
11月のテーマは、「子ども期の"生きづらさ”に心を寄せる」。
来月も多くの方々と一緒に学びを深められることを楽しみにしています!
https://pieces-seminar1811.peatix.com/


子どもとの関わりにおける専門性と非専門性〜PIECES公開講座第3回 & CYWゼミレポート〜

こんにちは!

コミュニティユースワーカー4期生の大越、中原です!

9月16日、月に一度の公開講座とゼミが開催されました!

公開講座はコミュニティユースワーカー(CYW)育成のためのプログラムなのですが、

今期から一般の方々にも足を運んでいただける、公開講座となっています。

第3回目の今回の講師はPIECESの副代表である荒井佑介さん。

テーマは、《専門家ではないからこそできる子どもの支援》

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非専門家として、一市民としての関わりの可能性を探る
というのが今回の研修の目的でした。

講座の中で、荒井さんが子ども達と関わる中で気づいたこととして、
一人の子の周りに多様な大人がいることが重要とあげられていました。

そのために私達コミュニティユースワーカーは
子ども達が持つ課題やリスクばかりに目を向けるのではなく、
その子の持つ “可能性”や、“興味” に焦点を当てて接することが大事だと再確認しました。

そして子ども達が興味関心を持つことから私達の身近な所にある、
社会資源(多様な大人、機会、企業、地域など)に繋げるという“つなぎの支援”という、
具体的な継続支援のかたちを紹介されていました。


また、「PIECESは親に対するケアや支援は行わないのか」という質問が上がりました。
その答えとして、私たちは非専門的に子どもの孤立や貧困に関わる中で、
“出来ることと出来ないこと”の線引きをはっきりとし、活動することが大事であると強調されていました。

フォーマルな部分、課題やリスクの解決は専門職の方に任せ、
コミュニティユースワーカーはインフォーマルに、子ども達の可能性に目を向けることで
私たちの持つ市民性を活かして活動ができるのだと感じました。

そして講座の後半、ワークとしてクリエイティブケース会議というものを実践しました。
クリエイティブケース会議とは、福祉的なアプローチだけでなく、多様な大人で多様な支援方法を創発するという、PIECES独自のもの。

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実際にやってみたところ、私の班では
落ち着きがなく集団の場ではイライラしがちな男の子の事例で、
本人がかなりの虫好きであるというところに着眼して、図鑑などを使って勉強を促す、虫に関係するイベントなどで大人の虫仲間を作る
などの案が上がりました。

この案を全体に向けて発表したとき、この講座に参加されていた方の中に、
ファーブル記念館の職員の方が知り合いという方がいて、一同驚き。(笑)
意見は発信してみるものですね!
多様な人が集まる場でのネットワークの力も感じました。



そして、お昼からは後半の部でCYWだけのゼミを行いました。
まずは、場の雰囲気をほぐすために毎回恒例のアイスブレイクからです。
今回は身体を動かして表現する「5秒フォト」というアクティビティをしました。

お題に合わせて思い思いに描いたイメージを言葉は使わず身体をフルに使って表現します。みなさんは下の写真が何のテーマか分かるでしょうか?(笑)

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正解は「ゾンビ映画」でした。皆さんさすがの表現力ですね!何より楽しそう!

アイスブレイクは大盛り上がりでした。



こうして場がほぐれたら、そのままゼミに入っていきます。
今回は、第1回目から実践している『プロセスレコード』からの学びをより深めるために、代表事例を1つ取り上げて、その内容について全員で考察を深めていきました。


『プロセスレコード』とは、主に医療現場で用いられている、自己のコミュニケーションのパターンを客観視するための方法です。(詳しくは第2回ゼミレポートを参照)


今回の事例は1人のCYWと2人の小学生の間のコミュニケーションで起きた事例を取り上げ、まずそのCYWに簡潔に事例を紹介してもらいました。

その後、他のメンバーからもっと詳細な事実を質問ベースで洗い出し、その事実を基に各登場人物のその時の心情や関係性に仮説を立てていきます。


今回最も学びとなったのは、CYWそれぞれでも職業や性格などによって観察する際の視点が異なり、そして同じ部分を見ていたとしても仮説の立て方が全然違うことでした。

ある子ども1人の言動に対して、同じCYW内でも全く正反対の対応をとると予想した事例もありました。

4期は11人のCYWですが、11通りの見方・考え方があって、その多様な視点を持って1つの場面を考察するということから、普段自分では思いもつかないような考え方があることに気づきました。

こうして、それぞれの違いから、これまで自分が想像の及ばなかった範囲に想像を膨らませることができ、大変学びになりました。


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全体での事例分析を終えたら、グループに別れて、それぞれのプロセスレコードの振り返りをグループワークとして行いました。

前回のゼミから1か月ほど間があり、皆それぞれにpiecesの居場所に参加し、子どもたちと関わってきました。その居場所で子どもたちとかかわる中でもやもやしたこと、気になったことを、プロセスレコードにまとめてきたので、各々発表し、その発表に対して質問を重ねてより深い分析を行っていく、という作業を繰り返していきました。

少しずつこのプロセスレコードの書き方や分析方法にも慣れてきて、書きながら子どもたちの言動を分析する作業もスムーズにできるようになってきた気がします。

実際に子どもたちと関わりながらも様子を伺いながら、その場その場にあった言葉や態度を示していって、子どもたちの素直な気持ちや願いを引き出せるようになりたいな、と思うところです。

次回はより精度をあげたプロセスレコードが書けるように観察力や分析力をもっともっとあげていきたいです!いよいよこの連続企画も後半戦に入りますが、まだまだ私たちのゼミは続いていきます。

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10月の公開講座は、10月21日(日)10時~12時 に開催します。

10月のテーマは、「子ども支援のこれからのカタチ~地域福祉の視点から考える”非専門職”の可能性~」です。

講座の詳細やお申し込みは追ってお知らせします!







子どもの「強み」捉え直す&子どもとの関わりを振り返る〜第2回CYW講座&ゼミレポート〜

こんにちは!
コミュニティユースワーカー4期の上野、和田です。

早速ですが、皆さんは普段周りの人をどれくらい観察していますか?

コミュニティユースワーカーとして活動する上で、子どもたちを注意深くみてコミュニケーションをとっていく必要があります。
そこで今回は、『子どもの「強み」を捉え直す~関係づくりの難しい子どもへの関わり方』というテーマで講義が行われました。

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前回はマクロの要因から子どもの孤立の構造を学びました。今回は個々の子どもとの接し方というミクロの要因から子どもの孤立を学びました。

講義では、ストレングス視点というレンズを通して観察することの大切さについての話から始まりました。
ストレングス視点とは、その人の長所、力、資源とも表現できるポジティブな資質と未開発の潜在能力を探すことに焦点を当てる概念です。

子どもは自身の意見を述べる「言語化」に加えて、体調などに変化をきたす「身体化」や暴れたりなどの「行動化」といった表現をします。
そういった子どもの表現(サイン)に対して、大人は自分の中にある当たり前の思い込みや、先入観でみてしまうことがあります。そして、その思い込みや先入観を取り外していくために「子どもの行動」、「願い」、「環境」をよく観察して問いを立てることが重要だということが強調されていました。

実際の事例を踏まえたワークでは、不登校の小学生と自傷行為を行う中学生のケースで、その子の様々なサインをストレングス視点というレンズを通して強みを見つけるワークを行いました。
前者では、学校へ行かないという選択ができること、後者では他者を傷つけないなどの意見が出ました。

その子がなぜできないのかというではなく、何ができるのか発想の転換をすることで子どもとのコミュニケーションの幅が広がると感じました。

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そして後半は、コミュニティユースワーカー4期生のみで行うゼミでした。

文京区広報課のテレビ取材が来るというサプライズもあり、最初は少し緊張気味だった空気は徐々にほぐれ、いよいよ本題へ。

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今回は、前半の講義のふり返りに加えて、各自が現場実践後に書いた『プロセスレコード』を見ながらリフレクションを行いました。

『プロセスレコード』とは、主に医療現場で用いられている、自己のコミュニケーションのパターンを客観視するための方法です。

具体的には、実際に現場で起きた子どもとの会話の中で、特に印象に残っている会話を思い出し、その状況や自分の心境を細かく思い出して書き留めていく作業です。

このプロセスレコードを書けるようになると、子どもとの関わり方の、自分の傾向を知ることができるのです。

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実は前回、4期生にはこの「『プロセスレコード』を現場実践後に書く!」という宿題が出ていました。

その宿題をもとにメンターの中島巳歌さんによって、各自が書いたプロセスレコードについてリフレクションを行いました。

コミュニティユースワーカーが実際に体験した会話の中で、気になる点をひとつひとつ丁寧に話していくと、

「私はなんでこのような対応をしたんだろう」

「もしかして、この発言をしたとき私はこのような風に感じていたのかもしれない」

など新たな自分を発見できたり、

「この状況で、このような発言をされたら、私はこのような対応じゃなくて、違う方法を取っちゃうと思う」

と、コミュニティユースワーカーの中でも個性があり、実践の多様性を改めて感じました。

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次回も、実践後に書いたプロセスレコードを元により深いリフレクションをしていきます。
実践には正解がないからこそ、このようなふり返りの時間を大切にしていきたいです。

(上野・和田)
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9月の公開講座は、9月16日(日)10時~12時 に開催します。
9月のテーマは、「専門家ではないからこそできる子どもの支援 ~子どもとのかかわりを創造的に問い直す~」です。
講座の詳細やお申し込みは下記ページをご覧ください!
https://pieces-seminar1809.peatix.com/