1.子どもは、どんな時に社会の危機を受け取るの?
・自分の生活がいつもと変わる
・戦争のニュースで生々しい映像、強く印象に残るいつもと違うニュースが流れる。そのことに対して大人の様子もいつもと違う
・過去に怖かったことを思い出すようなニュースや話題が身近で話される、流れている
・見通しがつかない
・ルーティンでやっていたことが変わる
・突然イベントがなくなる
・いつも行っていた場所に行けなくなる
・周りの雰囲気がいつもと違う
今回はウクライナ・ロシアの影響を念頭に記載していますが、一般的に不安を感じる時は、ここに書いているものだけではありません。
今回のような状況で、お子さんが「何かいつもと違うことが起きている」と感じるのはとても自然なことです。
2.危機を知ったり、体験した時は子どもにどんな変化があるの?
子どもたちは、言葉で伝えてくれる以外に、行動や身体、心を通して様々な形でサインを出してくれることがあります。これらはその子なりに、今起こっていることに対処しようとしているその子の力でもあります。
・いつもできていたことをやらなくなる
・ぼーっとする
・おねしょが増える、頻尿になる
・ご飯の量が減る
・寝つきが悪い、途中で目が覚める
・腹痛などの身体の症状
・いつもより甘える、一人でいるのを怖がる
・会話が減った、なにか言いかけてやめる
・いつもよりこだわりが強くなる、なんども同じことを聞く、やる
・いつもより落ち着きがなくなる、そわそわする、イライラしやすい
・兄弟などとの揉め事や喧嘩が増えた、何かや誰かに当たる
・勉強に集中できない
ここに書かれているものだけではなく、様々な形でサインを出しています。ぜひ子どもの様子がいつもと比べてどうかを丁寧にみてみてください
危機に対応するために過覚醒になることもあります。低年齢であればあるほど、言葉以外で表現する頻度が多いかもしれません。
周りの状況を繊細に見て、自分の不安や悲しさ、恐怖、疑問などを表に出せず我慢しているお子さんもいます。一見何もないように見えるからといって、何も感じていないというわけではないこともあります。
また、子どもは遊びの中で様々なことを表現します。見たニュースを「爆弾ごっこ」「ミサイルごっこ」のようにあそびで再現することもあります。
保護者も戦争のニュースを気にしながらも、新型コロナウイルスに関する対応、新年度への準備など、日々さまざまなことに対応しており、お子さんに気を配るのは物理的にハードルがあるかもしれません。
保護者だけが頑張るのではなく、複数の大人の目でお子さんに関心を向けていける環境を周囲が一緒につくっていくことも大事なことの一つです。
3.子どもにどんな風に関わったらいいの?
①心と身体の変化に目を向ける
・いつもと違う状態や行動に気を配る
・子ども自身、自分でもどうして良いかわからないと感じていることもあります。いつもよりできないことが増えたように見えても、急かさず、子どもが何に困っているのか丁寧に観察する
・子どもなりに対応していること、やっていること(子どものレジリエンス)にも目を向ける
②子どもに対する声がけ
・子どもの感情を言葉にして受け止めてみる
例:「悲しかったんだね」「嫌だったね」「嬉しかったね」「楽しかったね」など
・自分の感情に自分で気づくことが難しいこともあります。子どもの身体の状態を手がかりに、気持ちを探ってみるのも一つの方法です
例:「顔があついね」「いつもよりドキドキしてるんだね」「いつもより身体がかたくなってるかな」など。「怖かったね。心配になったね」など感情を共有する。
・できるだけ肯定的な言葉がけを心がける。大人からみたら当たり前だと思うことでも、子どもにとってはとても頑張ってやっていることも。
例:「歯を磨いたんだね」「着替えたんだね」と当たり前に目を向けて言葉にして伝える。
③生活の工夫
・可能な範囲で子ども自身が選択できる余地を作り、選択をまずは受け止める。もしその選択が叶わない場合は、違う方法を提案したり一緒に考えたりする。
※子どもにとって自分の意思ではどうにもならないことが続く時は、子どもが小さくても自身で決められることをつくってみるのも大切なことの一つです。
・日々の中に、小さな楽しみやほっとできる時間をつくってみる
・身体をケアし、リラックスする時間をつくる
例:深呼吸をする、手をぎゅっと握って開く、触られるのが嫌でなければ背中をマッサージするなど
・大人と一緒に情報から離れて、違うことをする時間をつくる。好きなことを大事にする。
・普段と変わらずにできることは、無理がない範囲で続ける
※規則正しい生活(いつもと同じ時間に寝る、ご飯を食べるなど)は安心感につながります。
・遊ぶことや身体を動かすことはとても大切なので、可能な範囲で取り入れる
④遊びに対して
・まずは無理に止めずに見守りましょう。苦しそうに同じ遊びを何度も何度も繰り返す場合、遊びが何度も悲しい結果に帰結する場合、良い形で遊びを終えられるように一サポートしてみてください。
いつもより保護者に「見て見て」と共有することが多かったりするかもしれません。体験を共有し、感情を受け止めてもらえることは、子どもが危機を乗り越える上でとても大事な体験です。
ただ、「見て見て」に対して、その体験や感情を受け止め共有することがすぐに叶わないこともあります。そんな時は「見せてくれて嬉しいな。ありがとう。〇〇時になったら見るね。」と声をかけて、一緒に体験や感情を共有し受け止める時間をつくったり、子どもと一緒に「見て欲しいもの」を置いておく宝箱や、秘密の場所などを考えて、その箱を開ける時間を決める、なども一つの方法です。
4.起こっていることについて子どもに伝える時
大人にとっても予測が難しいことも多いかと思いますが、今起こっている事実を子どもの年齢に合わせた言葉で丁寧に伝えてみてください。
わからないことがあった場合もごまかしたり、嘘をついたりせずに「自分もわからないこと」を伝え、「わかったら伝えること」を丁寧に伝えてください。見通しがつかないと、何度も同じことを聞いてくるかもしれません。そんな時は、できる限りで同じことを繰り返し丁寧に、穏やかに伝えてください。
繰り返し聞かれることに対応する時間や気持ちの余裕がないことがあるのも自然なことです。そんな時は「聞いてくれてありがとう。」と伝えた上で、気になることを聞く時間を決めるといいかもしれません。
文字が書けるお子さんであれば、「気になることノート」や、「気になることボックス」を作って、気になることを書いた紙を入れるなどして、書いたものに答える時間や書いたものに言葉で返信するなどをしてみてください。
子どもへの対応や関わり、話の伝え方については、セーブザチルドレンが出されている「専門家がすすめる、子どもと戦争について話すときの5つのポイント」も参考にしてみてください。
5.最後に
子どもに関わる大人自身も、気づかないうちに疲れていることが少なくありません。
過去の体験をニュースの映像で思い出し、苦しくなったり涙が出たり、呼吸が浅くなることもあるかもしれません。それもとても自然なことです。ぜひ情報から離れて、深呼吸したりストレッチをしたりとリラックスする時間をつくってみてください(できる範囲で、無理をせず)。
また、子どもも子どもに関わる大人も、このような状況でもできていることがたくさんあります。当たり前にやっていることやできていることに目を向けてください。そして、自分の中にある感情を大切に受け取ってください。