【PIECES活動報告会レポート】子どもが子どもでいられる社会のつくり方

 2022年7月22日にPIECESの活動説明会を開催しました。スピーカーはPIECES理事の斎が行いました。
子どもを取り巻く「孤立」の現状やPIECESが考える「市民性」など、活動説明会の内容をご紹介します。

斎とPIECES  

 児童養護施設にて施設で生活する子どもたちの息苦しさに直面したときたとき、子どもたちのケアと同時に、地域に信頼できる大人を増やすことが必要ではないかと考えました。そのようなことを考えていた時期に、現PIECES代表である児童精神科医の小澤いぶきと出会ったことがPIECESを始めるきっかけとなりました。

 最前線で子どもと関わっていた二人が、「子どもたちが安心できる社会をつくる」という大きな目的を持っていたことがPIECESの始まりです。私自身も子どもと関わる現場で働く中で、地域の大人の力が必要であると感じる場面がいくつもありました。そのような経験を通して私自身も、子どもと大人が優しい関係性を持つ重要性に共感しています。

  

子どもを取り巻く「孤立」の現状

 ユニセフの調査によると、日本では29.8%、10人に約3人の子どもが孤独を感じています。この数字はOECD諸国で最も高く、我が国において子どもの「孤立」は大変懸念すべき問題です。そもそも子どもの孤立とは具体的にどのような状態なのでしょうか。PIECESは、困ったことやしんどいことがあったときに、頼ったり助けてもらえる環境が子どもの周りにないことを、子どもの孤立と考えています。適切なケアを受けられなかった子どもは、人への信頼感がなくなる・自分を大切にできなくなるなどの悪循環に陥ってしまい、心の孤立が深まってしまいます。そして人に頼ることができずに、苦しみを自分一人で抱え込んでしまいます。

PIECESの取り組み

 PIECESは、自分を大事にしながら相手を尊重する「優しい”間”」を大事にしています。専門職でなくても「子どものために何かしたい人」が多くいること、そして彼らが悩みながらも子どもの心に寄り添いながら自分自身と対話することで、PIECESにて優しい間が生まれました。親でも先生でもない「市民」による関わり、そして各々の「市民性」を醸成することが、自分を大切にし相手を尊重できる優しい間を増やすとともに、少しづつ社会を良くするパワーに変わっていくと考えます。

 私も苦しい時に気兼ねなく相談できる人がいたおかげで、安心できるとともに前向きな気持ちになった経験があります。そして、相談できるという安心感は、子どもたちにとっても同じものであると思いました。私も地域に生きる市民として、優しい間作りに参加していきたいと思っています。

市民性を醸成するプログラム「Citizenship for Children」

  PIECESでは、子どもに何かできることをしたいと考えている人、地域・社会との関わりを探している人に向けたプログラム「Citizenship for Children」(以下「CforC」)を提供しています。CforCは、子どもの心に寄り添うだけでなく、自分たちの心地よい関わりを探求し、自分にできるアクションを考えることを経て、市民性の醸成を達成することを目指しています。言い換えれば自分も社会もwell-beingになるためのプログラムです。

 CforCでは、専門家の講座で知識を得る、仲間と思考を深める、そしてアイデアを形にするなど多様な学びのプロセスを体験する中で、自分にできることを探求していきます。子どもとのかかわりには正解がないからこそ、様々な人の声に耳を傾けながら、学び続け、問い続けることが重要であると考えます。また修了生は各地で独自のプロジェクトに取り組むことで、地域での暮らしを豊かにし、子どもたちと共に優しい間を作り上げています。

 CforC参加者の中には、同じ志をもった仲間と出会えたことで自分にも子どものために何かできると思えるようになったという声がありました。優しい間から生まれる市民性は、子どもの孤立を防ぐだけでなく、大人にとっても人との繋がりを感じることができる機会となるのではないでしょうか。

 そして参加者は累計で166名、2021年は64名と過去最大規模となりました。
これからはCforCのノウハウを広げていくことで、市民性の醸成をさらに進めていき、全国各地に子どもが孤立しにくいコミュニティが生まれるように働きかけていきます。

PIECESの組織について

 PIECESへの関わり方はCforCだけではありません。運営活動にコミットしていただいている方や寄付という形で応援していただいている方、多様な関わりがこの団体を支えています。

 またPIECESでは以下の4つのことを大切にしています。

①自己と他者を尊重するコミュニケーションを心がける
②多様な価値観に耳を傾ける
③心から動く
④ひらかれたweのマインドを持つ

私たち自身が日々価値観をアップデートしていき、自分たちの市民性を育んでいく。そうして作られる優しい間を社会に還元していくことを目指す団体です。

最後に

ここ数年の社会情勢の変化で、私がなんとなく思っていた当たり前は、当たり前じゃないのかもしれないと思うようになりました。「子どもはどう考えているのか」「自分には何ができるのか」たくさん考えて問い続けながらPIECESの活動に参加しています。
こんな時だからこそ、色々な背景を持つ人々と触れ合い、多様な価値観に目を向けることが、子どもたちのためにも、社会のためにも、そして自分のためにも必要なのではないかと思っています。

最後となりますが、活動説明会に参加していただいた方々、誠にありがとうございました。

執筆:広報ファンドレイジング インターン 大久保勇吾