サイの日

サイの日のお便り Vol.23

こんにちは、PIECES代表の斎(さい)です。
忙しい日々の中で、このお便りを開いていただきありがとうございます。

小1になった長男くんが、先日初めての夏休みを終え、と同時に約40日に及ぶ弁当作りの日々(学童通いのため)から解放されました。

「もうこのおかず飽きたよ~」とか「保冷材入れすぎ!ごはん冷たかった~」と文句を言いながらも毎日ほぼ残さず食べ、誇らしそうに空っぽの弁当箱を見せてくれてた日々を思い返すと、あんなに大変だったのに、ちょっとした寂しさすら感じてしまっている今日この頃です。

さて、31日(サイの日)にのみお届けするこのお便り。

今回は、日曜日に発行するには少し重めな「お金」の話から始めたいと思います。

目の前に立ちはだかる、大きな壁

昨年、代表のバトンを受け取ってから約1年が経ちました。代表継承が形になるまでの2年間は、組織の行く末が定まらない状況で、どことなく組織全体にモヤモヤ感が漂っていました。そんな状況でもあったので、この1年は、組織全体に再び豊かなエネルギーが満ち始めているのを日々実感しています。

不確実性の高い中でも共に居続けてくれたメンバーには心からの敬意と感謝を伝えたいですし、PIECESメイトの皆さんをはじめ、日々の活動を応援してくださる方々の存在にも本当に助けられています。

一方で、すべて順調かというと決してそんなことはありません。特に資金集めに関しては、法人設立以来、今が一番苦しい状況といえるかもしれません。こんなことを言って、不安を与えてしまったらどうしようという気持ちもあるのですが、できる限りあるがままを伝えたいというのがこのお便りのコンセプトでもあるので、真正面からお伝えしてみることにします。

法人設立以来と言いましたが、立ち上げ当初は無一文からのスタートだったので、もちろん大変でした。でも当時は右も左も分からなかったので、苦しさなど感じる余裕もなく無我夢中だったように思います。地道に活動を続けていったことで、次第に寄付や助成金などが集まるようになり、少しずつ事業も軌道に乗っていきました。

コロナ禍に入ると、それまで続いていた寄付が一部途絶えてしまいましたが、NPO等への期待の高まりもあり、大口の寄付や助成金を受け取る機会はむしろ増加していきました。PIECESメイトの数がピークを迎えた(約450名)のもこの時期です。

しかし、コロナ禍から脱していった2023年あたりから、徐々にそれまでのようには資金が集まらなくなっていきました。PIECESは、いわゆる「寄付型」のNPOとして運営しています。この頃には設立当時の助成金比率が高めの状況からも脱していたので、収入の約7割が寄付(個人と法人がおよそ半分ずつ)で、残りが助成金や事業収益という状況でした。

この比率自体は、その後も大きく変わっていないのですが、2023年以降は寄付額が伸び悩むようになりました。そして、個人の方々からの寄付に関しては、残念ながらここ2、3年は減少傾向にあります。

もう少し厳密に言うと、退会者が増えているというよりは、新たにPIECESメイトとして寄付で応援してくださる方がなかなか増えなくなってしまいました。それにより、組織全体に広がるエネルギーがあるにもかかわらず、アクセルを踏み切れない。そればかりか、この状況が続くと、いまある事業活動の継続すら難しい状況にあります。

寄付が伸び悩む背景には、認定の失効なども影響しているかもしれませんが、寄付者などの声を聴く限りではその影響は限定的なようです。むしろ、退会時のアンケートに「経済的な理由」という声がやや増えているように、社会・経済的な影響を受けている側面はありそうです。

それでも、コロナ禍以降に寄付者の輪を広げている団体も多くあるので、自分たちの頑張りが足りないと言われればそれまでですが、ここにきて目の前に大きな壁が立ちはだかっているような感覚があります。

「月額500円」の寄付に込めた想い

ちょっと重たい話になってしまいましたが、だからといって悲観モードで立ち往生しているわけではありません。苦しいのは間違いない。だけど、そんな時こそ委縮して消極的な選択をするのではなく、可能性の方に光を当ててできる限り積極的にチャレンジをしていきたいと考えています。

これは資金集めに限ったことではなく、事業面でも組織面でも、このような局面が訪れたことをエネルギーに変えていきたい。100年単位で見たときに、この時があったからこその今だよね、と言えるような機会にしていきたいと考えています。

その1つのチャレンジとして、小さなことではありますが、7月にスタートしたPIECESメイトの募集キャンペーンから、月額の寄付を500円から選択できるようにしました。これは、かねてから大事にしている「少しずつ、みんなで」の世界観をより体現したいという想いから実現に至りました。

少額の寄付の話をすると時々「たった千円くらいの寄付で申し訳ない」と言われることがあります。私も、自分が寄付する側になると同じような気持ちがないわけではありません。ただ、寄付を受け取る側からすると、その「たった」の感覚はこれっぽちもありません。おそらくこれはPIECES以外の団体でも同様の感覚だと思います。

確かに、1,000円の寄付だけでできることはほとんどありません。ですが、1,000円の寄付が100人、1,000人と増えていくことでたくさんのチャレンジができるようになります。実際に、この10年間歩みを止めずに活動し、チャレンジを続けてこれたのは、間違いなく継続的に頂く寄付の積み重ねがあったからこそです。

記憶に新しいところでは、昨年劇的なフィナーレで幕を閉じたクラウドファンディングのチャレンジでも、500人もの方々からの応援によって達成することができました。また、それだけの寄付者が応援してくれている、ということが活動するメンバーにとって大きな心の支えになっていることは間違いありません。

コロナ禍以降、学生さんから「自分に何かできることはないか」というような問い合わせも増えています。より多様な立場の方にPIECESの活動を共に進める仲間になっていただきたい。

応援の輪に加わっていただきたい。「少しずつ、みんなで」この局面を乗り越えていきたいと思っています。

心からのご協力のお願い

PIECESは現在、日々の活動を継続的な寄付で支えてくださるPIECESメイトを新たに100人募集しています。

昨今の排外的な考えが広がる中で、一市民である私たち一人ひとりが、自分自身の存在や小さな願いを大切にすること、そして他者にひらかれたまなざしを向けることの重要性を痛感しています。

PIECESによる社会の土壌を耕す営みには、100年単位の時間がかかると考えています。小さな積み重ねの影響は目に見えることばかりではありません。それでも、「少しずつ、みんなで」を大切にこれからもチャレンジを続けていきます。

PIECESメイトの輪を広げ、社会に温かなまなざしを広げていくために、ご自身の寄付はもちろん、SNSでのシェアやお近くの方への呼びかけなどを通じて、皆さんの力を貸していただけたら嬉しいです!

▼PIECESメイト募集キャンペーンサイト
https://www.pieces.tokyo/campaign-donation2022-2

 
 

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
また次の31日にお会いしましょう!

2025年8月31日 PIECES 代表理事 斎 典道 

サイの日のお便り Vol.22

こんにちは、PIECES代表の斎(さい)です。

忙しい日々の中で、このお便りを開いていただきありがとうございます。

31日(サイの日)にのみお届けするこのお便り。

今回は、先月末に開催した「Unnamed CARE Forum」を終えて、いま心に残っているある感覚について言葉にしてみようと思います。

後半には、PIECESから夏の終わりを彩るイベントをお知らせもあるので、是非最後まで読んでいただけたら嬉しいです!

「ともにいる」は面倒だけど、心地いい

前回のお便りでもご案内しましたが、6月23日~29日の1週間、「Unnamed CARE Forum - “名前のつかないケア”を巡る7日間-」という企画を開催しました。1週間で延べ434名が参加してくださり、“名前のつかないケア”について、イベント内外で様々な発話や対話が繰り広げられる機会となりました。

その対話の様子やフォーラムのハイライトなどについては、近日中に素敵なレポートが完成予定ですので、また出来上がり次第お知らせします!

今日は、フォーラム当日の感想というよりは、当日を迎えるまでの企画や準備プロセスを通じて立ち現われてきた感覚について言葉にしてみます。

今回のフォーラムは、PIECES単独ではなく、「ひびラボ」という共創的なフィールドに集う複数のNPOや非営利組織と協力して開催しました。現在10の団体・機関が参画しており、「ひとりの人としての関わり」や「名前のつかないケア」を大事にするという意味では、共通の願いや価値観を持っているといえます。

一方で、活動する領域や地域をはじめ、法人としての理念やバックグラウンドなどは様々。当然、普段はそれぞれの団体・機関としての活動を行っているので、今回の企画や準備なども、それぞれの事業活動の合間を縫って進めてきました。

フォーラムの企画がスタートしたのは、昨年の年末頃だったので、準備期間はおよそ6か月。率直に言って、なかなか大変でした(笑)。

それぞれが合間を縫っての活動なので、どうしても得られる情報量に差が生まれたり。関わり方も濃淡あるので、その中でちょっとした後ろめたさや申し訳なさみたいなものも生まれたり。物事の決め方などもそれぞれの団体ごとの当たり前があるので、それらを重ね合わせるまでに時間がかかったり。お互いの存在を尊重するからこそ生じる気の遣い合いのようなものもあったりして、その度に立ち止まって進め方を見直したり・・・。

同じ組織の中であれば、言葉を交わさなくてもなんとなく通じてしまうことも、一つずつ確認したり、ひと手間加えたりしながら前に進めていく。それら一つひとつを振り返れば、時間的にも精神的にもそれなりのエネルギーを要するプロセスだったように思います。

じゃあもう同じようなことをやりたくないか、あるいは、次回はそれらの手間のかかるプロセスは省いてPIECESだけでやりたいか、と問われたら、答えは明確に「No」です。

手間ひまかかるプロセスだったのは間違いありません。語弊を恐れずに言えば、丁寧に声を聴き、声を届け、対話を重ねていくプロセスは、その瞬間だけを切り取れば面倒なことだったかもしれません。

でも、6か月間の準備プロセスを経て、フォーラムの開催を実現して、いま残っているのは、自分(たち)とは異なる当たり前や特徴をもった人たちと「ともに」過ごしたことで、自分やPIECESという存在に新たな色が加わったような、存在そのものが少し拡張したような感覚です。なんだか言葉にするとこぼれ落ちる感じがありますが、そんな感覚。

具体的な場面もいくつか思い出されますが、たとえば、フォーラム最終日の対面イベントをどんな場にしようかと話していた時のこと。会場にはおとなだけじゃなく、こどもたちも安心して一緒に過ごせたらいいよねという話をしていました。なんとなくその流れで話が進みかけたとき、あるメンバーが「ただ安心できるってだけじゃなく、こどももおとなもしっかり楽しめるようにしたい」と発してくれました。

自分やPIECESの当たり前の感覚だと「安心」で留まっていたところに、「楽しい」という異なる当たり前が加わった瞬間でした。そこから「安心できるし、楽しめる」環境をどうやって作るか、という話ができたことで具体的なイメージが広がっていきました。

その結果、当日来てくれた皆さんには目撃していただいた通り、会場には真剣に話をしたり聴いたりする人に交じって、あちこちに本気で楽しみ、本気でくつろぐ人たちの姿がありました。

これ以外にも、フォーラムの名称を決める中で、その決定プロセスへの戸惑いを発してくれた方がいたことで、それぞれの願いや大事にすることを改めて考える機会が生まれるなど、一人ひとりの存在が影響し合い、応答し合うことの豊かさを何度も感じる機会になりました。

いろんなことが便利で効率的になり、無駄や手間が削がれていく中、「ともにいる」もまた面倒なことだと敬遠されていってるような気もします。短期的には非合理なように思えることも、少し時間軸を伸ばすとまた違った側面が表れてくる、そんなふうにも言い換えることができるかもしれません。「ともにいる」の意味や価値を改めていろんな人たちと考えたくなる、そんな半年間のプロセスでした。


【ご案内】夏の終わりに、素敵なゲストを迎えてのイベントを開催します!

PIECESでは8月31日まで、PIECESメイト募集キャンペーンを実施しています。

今回のテーマは「社会の土壌をともに耕す」

一見わかりづらい表現かもしれませんが、PIECESは目の前の課題だけを解決するのではなく、その土壌となる社会を、みんなの手で豊かに耕していきたいという想いを込めています。

そんなテーマを真ん中に据えて、「地域での協働」「場の持つ力」「組織の在り方」という3つの切り口から、素敵なゲストを招いて全3夜でお届けするオンラインイベントを開催します!

妊産婦支援から広がるまちづくりの物語、人が集う場所から生まれる新しい風景、"分かりづらさ"と共存しながら成長する組織の可能性までー。

各分野で多様な実践や試行錯誤を重ねるゲストをお迎えし、参加者の皆さんとともに対話を重ねる機会ですので、是非お気軽にご参加ください!

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

また次の31日にお会いしましょう!

サイの日のお便り Vol.21

こんにちは、PIECES代表の斎(さい)です。

忙しい日々の中で、このお便りを開いていただきありがとうございます。

昨日の東京はとても肌寒い1日でした。そんな中、雨上がりの公園で半袖で野球の自主練に興じる近所の小学生。そのたくましすぎる姿に思わず声を掛けたら、不審がられるどころか、なぜかキャッチボールを一緒にする流れに。金曜日のおじさんの疲れた心と冷えた身体は、その子のある種の市民性によって、ぽかぽかに温められてしまった出来事でした。

さて、31日(サイの日)にのみお届けするこのお便り。

今日は、繁忙期によりだいぶ疲れ気味ということもあり、普段の長ったらしい文章は諦め、6月に開催するフォーラムの告知をさせていただきます。

Unnamed CARE Forum - “名前のつかないケア”を巡る7日間-

今回開催するUnnamed CARE Forumは、CforCコンソーシアム改め「ひびラボ」の主催です。2022年ごろから、このお便りでも時々CforCコンソーシアムのことについてはお伝えしてきましたが、この4月から「ひびラボ」と名称を改めました。そして、今回のフォーラムはそのひびラボとしての最初の大きな取組です。

(ちなみに、ひびラボについては、先日こちらのnoteにこれまでの歩みや名称の由来、そして最近の活動の様子などについてまとめているので、こちらも是非ご覧いただけたら嬉しいです。)

フォーラム企画がスタートしたのは、昨年の年末頃。参画団体の中から実行委員会的にメンバーが集い、それぞれ事業の合間を縫いながらほぼ毎週のように誰かしらオンライン上に集まって、本当にゼロから企画を進めてきました。

フォーラム自体はまだ何も始まってませんが、こうやって団体の枠を超えて一緒に企画を進めてきたプロセス自体が、何気にとても尊いことではないかと感じています。当然簡単なことばかりではなく、既にいろんな学びや反省も生じているので、このあたりのプロセスの詳細については、またフォーラムが終わったら忘備録的にまとめてみる予定です。

見どころを紹介する予定が、ついつい横道にそれてしまいました…

気を取り直して…見どころをご紹介!

今回のフォーラムの最大の見どころは?と問われても、正直「全部です」としか答えようがない。それくらい、初日のオープニングイベントから、最終日に東京・日本橋で開催するフィナーレイベントまで、全部に参加していただきたいと心から思っています。

ひびラボの参画団体がそれぞれに主催する、Day2~Day5 までのイベントは、それぞれの団体のカラーが前面に出ているので、是非タイトルを見てピンときた会に、ひょいと気軽に参加していただくのが良さそうです。

PIECESが主催するのは、6月24日(火)のDay2です。「鎧を脱ぐこと、私であること -肩書や立場を超えたケアな関係-」というテーマで、兵庫県立大学の竹端寛さんと、私斎とで対談を行う予定です

対人支援や教育の現場、家庭や職場、まちの中…ケアに関わる様々な場面で、気づかないうちにまとっているかもしれない肩書や立場、社会規範といった「鎧」。その鎧を脱ぐことの大切さと難しさ、鎧を脱ぐうえで何がカギとなるのかについて、ちゃんと深く、でもできるだけ軽やかに探究していきたいと思っています。

おそらくPIECESメイトやPIECESの周りにいる方の中には、竹端さんのファンという方も多いはず…PIECES主催のイベントに竹端さんをお呼びするのは初めてなので、是非竹端さんをご存知の方も、そうでない方も、この機会にご参加いただけたら嬉しいです!

そして、なんといっても最終日のフィナーレイベント。これはもう、言わずもがなで来れる方には是非皆さん来ていただきたい。

新著『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』でも話題の犬山紙子さん、そして以前のお便りでもご紹介した子どものこころの専門医の山口有紗さんという、今回のテーマにぴったりなお二人をゲストに迎えてのトークセッション。

そして、その展示タイトル「ランニングシャツと怪獣展―モノ・ヒト・時間との対話―」が、いったいこれは何だとちょっとしたざわつきを生んでいる(?)体験型の展示スペースなどもご用意しています。

その他にも、ひびラボ参画団体の紹介&交流ブースや、子どもも大人も安心して過ごせるプレイエリア、カフェ・休憩スペースなども設置予定です。

約半年に及んだ準備期間における対話のプロセス、そしてフォーラムDay1からDay5までの対話と探究の集大成とも言える機会になるかと思うので、是非ひびラボの世界観や「名前のつかないケア」を感じ、味わいに来てください!

Unnamed CARE Forum、絶賛申込受付中ですので、是非奮ってご参加ください!

▼お申込みはこちらから。

https://unnamedcareforum2025.peatix.com/

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

またフォーラムで、そして次の31日にお会いしましょう!