サイの日のお便り Vol.31|2040年の景色と、まちのまの半年

こんにちは、PIECES代表の斎(さい)です。
忙しい日々の中で、このお便りを開いてくださりありがとうございます。

「31日(サイの日)」にのみお届けするこのお便りですが、今回で記念すべき“31号”となりました。
時々届く「先月のサイの日、良かったよ」の声に励まされながら、これからもひっそりとお届けし続けていきたいと思います。

さて、今回は、先日10月4日に開催したPIECESの10周年イベントで描いた「2040年の景色」と、そこへ向かう最初の一歩である「まちのま」の半年についてお伝えします。

10周年記念イベント、ありがとうございました! 

10月4日、PIECESの10周年記念イベントを開催しました。会場にお越しくださった皆さん、準備や当日の運営を一緒に担ってくれたメンバーやメイトの皆さん、そして言葉や思い出を寄せてくださった皆さん、本当にありがとうございました。

当日、会場には、10周年に寄せて皆さんから贈られたメッセージが飾られていたのですが、一枚ずつ読みながら、この10年は本当にたくさんの人の手でつくられてきたんだなと、じんわり温かい気持ちになりました。

当日の様子は、こちらのレポートで丁寧にまとめてくれているので、ぜひご覧ください。

▼PIECES10周年記念イベントレポート
https://www.pieces.tokyo/blog/2026/10/22

今回のお便りでは、レポートでは触れきれなかった話を1つお届けしたいと思います。イベントに合わせてつくった「ビジョンマップ」についてです。

2040年のビジョンマップに込めたこと

PIECESは「一人ひとりが生き生きしく、ともに在れる社会」というビジョンを掲げています。ただ、このビジョンはとてつもなく大きくて、遠い。100年続くNPOを目指しているので、当然と言えば当然ですが、正直日々の活動とどうつながっているのか、自分たちでも時々見失いそうになります…

そこで今回、その途中に「2040年」という一つの地点を置いてみることにしました。

2040年、自分も他者も、一人の人として、その願いや存在を尊重することが、子どもが育つあらゆる場所の新しい当たり前になっている。そして、そこへ向かう道のりを、いまのPIECESの事業から一本ずつ線を引くように描いたのが、このビジョンマップです。

策定プロセスでは、「当たり前」という言葉を使うのは安易ではないかといった意見も飛び交いました。ただ、やはり市民性は、特別な誰かが特別なことをして生まれるものではなく、一人ひとりの日常の中にあるものだと考えています。PIECESという一組織を超えて、子どもの日常の周りに根付かせていく。そんな状態を、15年かけて目指したいという意思を込めています。

とはいえ、これは「この通りに進みます」という厳密な設計図ではありません。いまの私たちが見えている範囲で描いた、仮置きの地図です。

みんなの「2040年」で、地図が少し書き換わった

その仮置きの地図を、さっそく更新することになったのですが、そのインスピレーションを与えてくれたのがイベント第3部の「未来語りのワーク」でした。

このワークでは、参加者の皆さんに「2040年の自分」になりきってもらい、PIECESの25周年イベントに来ているという設定で、未来から今を振り返ってもらいました。「イベントの最後にこの壮大なワークはしんどい!」という叱咤激励の(?!)声もいただきつつ、出てきた声はとても豊かなものばかりでした。

一つひとつの声をここではとても紹介しきれませんが、当日の対話記録やワークシートを読み返す中で、ビジョンマップ上の「生まれる変化」として、次の3つを加えてみようと考えるに至りました。

1つ目は、子ども自身が「参加する人」になっていること。
子どもが意見を言えることに加え、決めることや評価するプロセスに関わっている未来を描いた声がたくさんありました。「子どものために」ではなく「子どもとともに」と言ってきた私たちのマップが、主語が少し大人に偏り過ぎていたことに気づかされました。

2つ目は、学校や病院、行政、企業といった組織の中にも、市民性が届いていること。
「行政のあの人がキーパーソンになって動いてくれたことが転機だった」という未来の語りや、職場での勉強会や、勤め先とPIECESの協働を描いてくれた方もいました。

3つ目は、まちのまで生まれた知恵が、多摩の外でも生かされていること。
同じ取組を各地に広げるというのではなく、知恵やノウハウが分かち合われ、それぞれの地域で形を変えて生きていく。そんな広がり方を期待してくれての声でした。

これらを踏まえてビジョンマップを書き換え、完成したのがこちら!と言いたいところですが、今日はまだ間に合わず・・・。また完成したらお披露目させていただきます。

上記以外にも、本当にたくさんの大切な声をいただくことができました。マップには入れられなかったものも含め、大切な「2040年からの声」として、今後の活動に生かしていきたいと思います。

そして、この地図のいちばん下、2026年の地点の真ん中に置かれているのが「まちのまプロジェクト」です。15年先の景色に向けた最初の一歩である「まちのま」を始めて、この半年で見えてきたことについても、ここから少し書いてみたいと思います。

まちのまの半年で見えてきたこと

まちのまプロジェクトが始動して、半年が経ちました。拠点の準備と並行して、試行的な場を開いたり、全国各地や市内のさまざまな方を訪ね歩いたりする中で、いくつもの気づきがありました。今日はその中から、いくつか心に残っていることを綴ってみます。

1. 声を聴き、分かち合い、還す

先日、市内の児童館の館長さんと話していたときのこと。「中高生世代の声を、大人がなかなか聴けてないし、共有もできていないな」という話になりました。

もちろん、一人ひとりの子どもの声に丁寧に耳を傾けている大人は、まちの中にたくさんいます。でも、その声によってまちの施策や取組に何か変化が生まれているかというと、そうとは言えない。声を聴くこと自体がまずとても大事だけど、それぞれが受け止め、そこで止まってしまっているように感じるという話でした。

以前のお便りの中でも触れた、岩手のユースセンター「ミライト」が、若者の声をまちに還す役割を担っていること、千葉のユースセンター「PRISM」が、参加のはしごを大事にしている、という話とも通ずるものがあるように思います。

まずは、拠点やまちの中で、特に10代の子たちの声を丁寧に聴いていくこと。同時に、日常からすくい上げた声を子どもたち自身やまちの大人とも共有し、日々の行動や活動、まちの施策へと反映していく。子どもたちから聴いた声を、そんな風に少しずつまちの中に還していくプロセスを大事にしていきたいです。

2. 小さく、多様な場があること

8月からは、試行的な場づくりにも取り組んできたのですが、その中でありがたい出来事もありました。拠点の近くで別の場を開いている方が、中高生を何度か連れて遊びに来てくれたり、同じ商店街の商店主さんたちが、関わりのある子どもたちに、私たちの場を知らせてくれたりしたのです。

まだまだ多摩の中では、何の経験も実績もない私たちのことを少し受け入れてもらえたような気がして、そのことが最初は単純に嬉しかった。と同時に、そんな出来事が重なる中で、子どもにとって選択肢があることの大切さを感じるようにもなりました。

特に、既存の行政の施設は、どうしてもさまざまなニーズを一つの場所で受け止めようとするアプローチになります。効率よく、広く多くの人に届けていく。それ自体はとても自然なことです。一方で、NPOや市民だからこそできることを考えると、一人の声を大切にした「小さく、多様な場」がまちのあちこちにあるほうが、合っているはずです。

その日の気分や、その時の人間関係、時間の移ろいによって、複数の行き先やつながりを自分で選ぶことができる。まちのまも、そうした選択肢の一つになれたらと思っています。

3. 一人で過ごす子のこと

試行的な場づくりでは、一人で過ごす子にも出会います。自分から誰かに関わるわけでもなく、かといって退屈そうにしているわけでもない。

私は常々「子どもの孤立は防いでいきたい。でも、子どもが孤独でいられる時間は大切だ」と言っています。でも、いざそういう子を目の前にすると、その子が一人でいたくてそうしているのかどうか、正直なところよく分かりません。声をかけてみようか、そっと一緒に居るだけでいいのか。何がお互いにとって居心地の良いあり方なのか、いつも探り探りです。

「まちのま」の「間」には、居場所となる空間、余裕のある時間、信頼できる仲間といった、いろんな意味が込められています。子どもが子どもでいられる時間を、その子がその子でいられる空間を、子どもたちと一緒にどうつくっていくのか。答えはまだ出ていませんが、この問いを手放さずに、場をつくり続けていきたいと思っています。

11月、まちのまの拠点がプレオープンします

11月から、いよいよまちのまの拠点がプレオープンする予定です。まだいろいろと手続きやら準備やらが残っているのですが、日程が決まり次第お知らせします。

来年2月の本オープンを目指して、プレオープン期間中は、子どもたちとのワークショップや、まちの方にも参加いただけるイベントなども重ねていきます。どんな場にしていきたいか、どんなふうに使っていきたいか。完成した場所を一方的に差し出すのではなく、子どもたちやまちの人たちと一緒に考えながら、場を育てていく時間にしたいと思っています。

あわせて、プレオープンに合わせてクラウドファンディングを開始します。本オープンに向けて拠点の環境を整えるための費用として、約400万円を目標にする予定です。

まちのまは多摩で始めるプロジェクトですが、場づくりと人づくりを両輪で進め、市民性と専門性が共存するまちをつくっていく、PIECESにとって新しいチャレンジでもあります。ここから生まれる気づきや知恵は、できる限り言葉にし、目に見える形にして、多摩の外にいる皆さんとも分かち合っていきたいと考えています。ビジョンマップに加える「まちのまの知恵が、多摩の外でも生かされている」という未来に向けて、まずはその第一歩を踏み出していきます。

実現には、本当にたくさんの方の力が必要です。詳細については、またメルマガやSNSでお知らせしますので、ぜひ応援していただけたらうれしいです。

それでは、また次の31日にお会いしましょう!

2026年10月31日 PIECES 代表理事 斎 典道 

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サイの日のお便り Vol.30|「分かりやすさ」というモヤモヤ