サイの日のお便り Vol.30|「分かりやすさ」というモヤモヤ

 
 

こんにちは、PIECES代表の斎(さい)です。
忙しい日々の中で、このお便りを開いてくださりありがとうございます。

8月31日、小学生の長男は今日で夏休みが終わります。2年生になった今年は、毎日学童というわけでもなく、家で過ごす日も多かった夏でしたが、それでもお弁当作りの日々から解放されることに、我が家のお弁当担当としては、ちょっとした達成感と、ほっとした安堵の気持ちで満たされています。

さて、「31日(サイの日)」にのみお届けするこのお便り。今回は、今年度に入って直面している、感謝の裏側にあるちょっとしたモヤモヤについて綴ってみようと思います。

「分かりやすさ」というモヤモヤ 

今年度のPIECESは、多摩市での「まちのま」という取り組みを中心に、ありがたいことに複数の助成金をいただきながら活動を進めています。
今年度採択いただいている助成金は次の5つ。このうち4つが、まちのまプロジェクトに関連するものです。 

  • 日本財団「2026年度 公益・福祉募集」:子どもの権利を地域で守るための、市民参画による拠点運営とコミュニティづくり

  • 地域創造基金さなぶり「グランパ基金・2025年度」:子ども支援団体向けスタッフ研修・交流プログラム

  • 西武信用金庫「2025年度 地域みらい助成金」:10代の子ども・若者の孤立を防ぐための、市民育成を起点としたコミュニティ創出事業

  • CBGMこども財団「2026年度助成事業」:多摩市におけるユースセンター創出と、子どもを包摂する市民の育成事業

  • 内閣府/NTTデータ経営研究所「令和8年度地域における孤独・孤立対策に関するNPO等の取組モデル調査」:多様な市民参画により若者の孤立を防ぐ「まちのま」プロジェクト

こうしてたくさんの応援をいただきながら活動を推進できることは、本当にありがたいことです。その一方で、正直に言うと、ちょっとしたモヤモヤも抱えています。

というのも、これだけ採択いただいている背景の1つには、今回のプロジェクトが持つある種の「分かりやすさ」が少なからず影響していると感じているからです。多摩市という明確なフィールドがあり、目に見える活動拠点があり、主たる受益者が地域の子ども・若者であることも分かりやすい。

これは、PIECESがこれまで活動の柱として取り組んできた「CforC(Citizenship for Children)」と比べてみると、より際立ちます。子どもを支える人や環境そのものに働きかけていくCforCの取り組みを伝えるには、もう一段階、説明の階層や要素を積み重ねる必要があります。

CforCは、法人設立以来10年間休まず続け、約700名の修了生を輩出し、参加者からの満足度(正確にはNPS)も非常に高い取り組みです。それでも、この間採択できた助成金はほんの数件でした。

CforCの取組も、これから本格的に始まるまちのまの取り組みも、どちらも(少なくとも私たちなりには)社会的に意義のある取組だと考えています。ただ、今のところ活動資金を呼び込みやすいのは、「分かりやすさ」で軍配の上がるまちのまの方です(言うまでもなく、助成団体が分かりやすさで判断をしているということではなく、社会課題や活動を伝える/評価する中で、どうしても分かりやすいものに資源が集まりやすい構造があるのではないか、というお話です)。

「活動資金を呼び込めているならいいじゃないか」という声もあるかもしれません。ただ、この経験を通じて感じるのは、いくら社会にとって大切な取組であっても、第三者(多くの場合は資金提供サイド)にとって「分かりにくい」ものは、埋没し、衰退していきかねないということです。

極端に言えば、少しミッションから逸れていたり、そこに暮らす人たちの声に背いていたとしても、より資金的な引力が働く方へと組織が引っ張られてしまう可能性すらあるなと、自戒を込めて感じています。

でも、50年、100年という長い時間軸で見たときに、それで良いはずはありません。NPOの活動をしていると、時々「自分たちの取組を30秒で端的に説明できるようでないとダメだ」というような俗説に出会うことがあります。

社会がそのように動いている以上、一定そこに合わせていく必要性も分かるのですが、それでは表層的な問題解決はできても、真の課題にアプローチすることなど到底できないと考えています。

誤解のないように付け加えると、情報の受け手にとって複雑な事柄を、少しでも手に取ってもらいやすいように工夫する努力自体は、当然大切なことだと思っています。実際PIECESでは2020年に「発信ポリシー」というものを定めていて、その中では、受け手がストレスなく発信を受け取れるような「分かりやすい」発信を心がける一方で、「分かりやすさ」を重視するあまりに、誰かにとって都合の良いように物語の断片を切り取ったり、スティグマを助長するような表現は用いたりしないようにすることを明示しています。

構造が複雑で、時間もかかり、説明の手間もかかる。それでも社会にとって大切な取組が、立ち消えることなく続けられていくためにはどうすればいいのか。

これからもPIECESでの実践を通じて、この問いに向き合い続けていきたいですし、同じような課題意識を持って活動されている方々とは、ぜひ手を取り合っていきたいと思っています。

もし今回の話に何か感じるものがあった方がいらっしゃれば、こうした活動を続けていくための力として、日々の応援や寄付というかたちで支えていただけたら、とてもうれしいです。

10周年記念イベントのご案内 

前回のお便りでもお伝えした、2026年10月4日(日)開催の10周年記念イベントの告知が始まりました。

10年を振り返るコンテンツ、私たちがずっと大切にしてきた「市民性」について改めて考えるセッション、そして次の10年に向けての未来語り。素敵なゲストもお迎えして、盛りだくさんの内容で準備を進めていますので、ぜひ気軽にご参加ください。

▼イベントの詳細・お申込みはこちらから
https://pieces-10th-anniversary.peatix.com/

それでは、また次の31日にお会いしましょう!

2026年8月31日 PIECES 代表理事 斎 典道 

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