活動報告

セミナーレポート「子どものあそびや行動から紐解く、こころのケア ~傷や痛みが深まる前に、わたしたちにできること~」

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去る6月7日、公開セミナー「子どものあそびや行動から紐解く、こころのケア~痛みや傷が深まる前に、わたしたちにできること~」がオンライン開催され、代表の小澤いぶきが講師を務めました。

今年に入って初めての開催となった本セミナーは、「日常のさまざまな場面で子どもたちが発するサイン」を入り口として、子どもたちが不安定な環境の中でこころの傷や痛みを深めてしまう前に、私たち大人ができることについて考えることを目的として行われました。

-公開講座中のスクリーンショット-

-公開講座中のスクリーンショット-

本セミナーは「子どもが孤立する社会的背景」、「子どもが発するサインを紐解く」(ストレス下における「遊び」)、「子どもたちと関わるうえで大切にしたいこと」の3つのパートから構成されています。オンラインでの開催ということもあり、それぞれのパートが終了後、スケッチノートを用いて内容の振り返りを行いながら進行していきました。(スケッチノートは記事の最後に掲載しています、ぜひご覧ください!)

簡単ではありますが、本セミナーの内容を紹介していきたいと思います。

子どもが孤立する社会的背景

日本の子どもを取り巻く環境について、約7人に1人が相対的貧困、虐待相談対応件数は約16万件にのぼるといった報告がなされています(※1)。米国疾病予防センターとカリフォルニア州の民間健康組合の共同研究(ACEs Study: 子ども期の逆境的体験についての研究)によると、こうした子ども期の逆境体験は、身近な人達によってケアされるか否かによって成人後の状態に変化が現れるといいます(※2)。

逆境体験のひとつである虐待。その発生リスクとなり得る要因としては、子どもの人数や発達特性、養育者自身の精神的健康状態や年齢、家庭環境、地域での孤立や職場からのサポートのなさといった家庭の周囲環境、社会環境などが挙げられています(※3)。

現在日本で行われている虐待の防止支援策には、予防段階・早期発見段階共に構造的な課題が見られるといいます。具体的には、”自ら援助を求めに行く”ことのハードルの高さ、情報へのアクセシビリティ、行政や専門機関の逼迫によるきめ細やかな対応の難しさなどがあります。

子どもが発するサインを紐解く

まず、逆境体験の中で育つ子どもについての例として、DVや親同士の喧嘩が絶えない環境、保護者による干渉が過度に強い環境、貧困やネグレクトの環境といった特徴ごとに説明がありました。

そのような環境の下で「自分は意味のない存在だ」 「気持ちを伝えたところで誰も助けてくれない」といったような、自己否定や自分の感情や欲求に気づけない、人に頼れない状態が生じてしまうといいます。

逆境体験を通してこころがケガをすると、子どもは自分を守るために身体や行動、こころのサインを発することがあります。具体的には、不眠、身体のどこかに痛みを感じる、なぜだかわからないけれどいらいらする、そわそわしてじっとしていられない、などです。

また、逆境体験の中で育つ子どもがその中で生き抜いていくために担っている特徴的な役割についても子どもの発するサインのひとつとして併せて紹介されました。

・ヒーロー:いい子でいよう、と頑張る
・スケープゴート:自らがトラブルを起こすことによって、問題から目をそらしてもらおうとする
・ピエロ:わざとおどけて場を和ませようとする
・お世話役:家の中の問題をなんとかしようとして、調整役を担う
・人形:周りの人の思うとおりにしなければいけない、と思う

困難な状況の中で懸命に頑張っていても、周りの目がなくケアがされないと「頑張ったところで意味がない、どうせこれからもこの状態が続いていくんだ」と思うようになる学習性無力感という状態についても解説がありました。一見やる気がないように見える子どもの中には、この学習性無力感を持っている場合があるといいます。

〜ストレス下における「遊び」〜

子どもの発するサインに関連して、負荷がかかった時に見られる子どもの遊びについても触れられました。

遊びは子どもの表現方法のひとつであり、危機を乗り越えていくための対処法でもあります。周りにいる大人は、遊びを通して子どもが表現していることをしっかり受け止めることが大切であるといいます。

遊びの結末があまりにも破壊的・悲劇的であったり、子どもが遊びながら険しい表情をしている場合は、その遊びに関わりつつ違う結末を一緒に考えていくなどの対処について紹介がありました。


子どもたちと関わるうえで大切にしたいこと

子どもたちと関わるにあたり持っておくべき3つの視点についての説明がありました。

<ストレス・コーピング>
子どもの気になる行動はなんらかのストレスに対する本人なりの対処法であるという視点を持つ。そこに価値判断を入れないように心がける。

<トラウマインフォームドケア>
子どもの言動や行動の背景に、こころのケガの影響や、こころのケガを受けた時の恐怖・不安があるかもしれないという前提をもって接する。

  1. 不器用な対処―言動や行動の背景を考える

  2. 困った行動や言動の捉え直し

  3. 子どもの持つ興味関心を次の一手につなげる

<ストレングス>
その子どもが自分なりに担ってきた役割に対して敬意を持ちながら、その子が安全に生きられるようにサポートしていく。

参加者の方々の感想

  • 子どもの(一見)好ましくない行動に対して頭ごなしに怒らず立ち止まって考えることができそう。

  • 学術的なエビデンスのあるお話で概要を話してくださり、ご経験に基づく具体例も教えていただけて、理解が深まった。

  • こどものケアに関することの全体感を知ることができた。さらに興味が湧いて、もっと深く知りたくなった。

内容盛りだくさんの90分間でしたが、本セミナーで扱った内容をより深く、より詳しく学びたいと思われた方は、今期の市民性醸成プログラム “Citizenship for Children” の募集告知が6月16日からスタートしましたので、是非こちらをご覧になってみてください。 

※1:相対的貧困については、厚生労働省「平成28年度 国民生活基礎調査」、虐待相談対応件数については、厚生労働省「平成30年度 児童相談所での児童虐待対応件数等(速報値)」より
※2:Felitti, Anda, Nordenberg, Williamson, Spitz, Edwards, Koss & Marks, 1998
※3:福丸由佳(2012)「家庭におけるハイリスクの親への支援」日本発達心理学会(シリーズ編)武藤隆・長崎勤(編)『発達科学ハンドブック第6巻 発達と支援』新曜社


スケッチノート by 坂本紫織 (PIECESプロボノメンバー)

スケッチノート by 坂本紫織 (PIECESプロボノメンバー)

Citizenship for Children プログラム 水戸地域での成果報告書が完成しました!

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Citizenship for Childrenプログラムの初の地方展開が無事終了し、水戸地域での成果報告書が完成しましたので、ぜひご一読いただけましたら嬉しいです。

報告書ではCforCプログラムの評価、参加者に与えた影響をアンケートとインタビュー調査を通して考察しています。プログラム評価においては、多様性とそこから生まれる対話の中に新たな気づきが溢れていたこと、またその対話の基礎となる関係を構築することができた点にプログラムを評価する声が集まりました。改善点としてはその関係構築をより深く、早い段階で行うことに更なる改善が見込めることが示唆され、これは今後の課題といえます。

そうした学びを通じて、自己意識や市民性の獲得、及びそこから生まれたプロジェクトが具体的な成果として短期的にも見え始めた。専門的な知見がないから関わらない、といった態度ではなく、自身と他者の価値観を丁寧に理解し、様々な人と協力しながら自分なりのやり方で「優しい間」を紡いでいこうとする姿勢がこのプログラムを通じて確かに、小さいながらも生み出されたと言えます。

今年2020年には、さらに複数の地域でのプログラム実施も予定しています。現在オンラインでの開催を想定し、準備を進めているところです。
みなさまからいただいたあたたかいご支援・応援によって実現した育成プログラムの他地域展開。一つ一つの取組を大切にしながら、これからもたくさんの「優しい間」を広げていきたいと思っています。

この、水戸でのプログラムは、2019年4月・5月に実施したA-portでのクラウドファンディングのご支援を元に実施することができました。

この場を借りて再度、ご支援いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
これからもPIECES、そしてCitizenship for Childrenの全国展開に向けて共に歩みを進めていけたら嬉しいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

● Special Thanks ●

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報告書の作成を担当した、PIECESプロボノの大野友です。

CforCプログラムを企画運営した人、参加した人、支えた人それぞれの声が集まり、2019年度プログラムの報告書が完成しました。プログラムの目的、実施内容、参加者の変化と周囲への影響を分析した成果報告がまとめられています。CforCプログラムを通じて、各地に優しい間を届ける種がまかれた様子、またその種から芽が出始めている様子をぜひご覧頂けたらと思います。

最後になりますが、この報告書の作成にご協力いただいた各関係者の皆様に、深く御礼を申しあげます。ありがとうございました。

大野友
慶應義塾大学大学院
システムデザイン・マネジメント研究科博士課程1年

子ども支援の原点を問い直す  ~子どもの声を大切にする実践とは?~ 「Citizenship for Children in 水戸」第6回公開講座 & CforCゼミレポート

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PIECESが茨城県水戸市で行う、子どもと関わる市民育成プログラム「Citizenship for Children in 水戸」。

これまでPIECESは首都圏を中心に市民育成プログラム(旧名:コミュニティユースワーカー育成プログラム)を開催し、1〜4期で計約50名の子どもと関わる市民を育成してきました。

今回は全国展開に向けての第一歩目となる水戸市でのプログラムで、「セカンドリーグ茨城」さんとの協働で実施しています。

首都圏に限られていた活動範囲を全国に拡大し、各地にいるかもしれない「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡げる大人を増やしたい。

そんな想いから全国展開を目指し、まずは1拠点目、茨城県水戸市で12人、6ヶ月間の「Citizenship for Children プログラム(以下CforC)」を実施します。

これまでの5回では、子ども・若者の育ちの理解や困難を有する子どもたちへのまなざしなど、一市民として子どもに関わる上で土台となる価値観や知識について、延べ100名近い方々と一緒に学んできました。(第五回目のレポートはこちらから

今期の後半にあたる10月から12月にかけては、引き続きフィールドの異なる実務家・専門家の講師をお招きして、さらに一歩踏み込んで「市民性を大切にした子ども・若者支援」について考えていきたいと思います。


今期最後となる第6回目の公開講座では、NPO法人ビーンズふくしまの山下仁子さんを福島からお招きしました。子どもたちに関わっていく過程では、誰しも無意識に自分の願いを押し付けてしまったり、短期的な成長や変化を求めてしまったりすることがあるものです。何より、子どもたちとの関わり方には、明確なお作法や正解・不正解があるわけではありません。子どもと育む間は千差万別。日々の自分の実践や他者の経験を通じて学び、振り返り、更新して行くことが大切なのです。今回の講座では、今一度原点に返って「子どもの声を大切にする実践」について山下さんにお話いただきました。

貧困の中で生きる子供たち

2015年の厚生労働省の調査によると、日本の18歳未満の子どもの実に7人に1人が貧困状態の中にあるといいます。日本における貧困は「相対的貧困」という形で現れており、これは食事や住居など生活の基礎となる部分はある程度確保されているが、経済的など様々な要因により、教育・雇用・福祉に滞りが発生してしまっている状態のことだといいます。ただ相対的貧困がもたらす影響は物が買えない、と言った経済的なことだけではありません。例えば保護者がアルコール依存症で子どもに暴力を振るう、金銭管理ができずライフラインが停止されてしまうなど、様々な状況が挙げられます。このような過酷な家庭環境は、子どもたちの困りごとを認識する力や周りに助けを求める力、他者と交流をし学ぶ機会、自分の将来を自らの手で切り拓いて生きることなど、人が生きていく上で不可欠なものを奪ってしまっているのです。

ではどのようにすれば、子どもたちの自己肯定感を醸成できるのでしょうか。

アウトリーチ型支援(直接支援)

貧困の中で生きる子どもたちはその家族の多くは、現状に対する違和感を持つことが難しいため、支援が必要な状態であっても自ら支援を求めてくることはほとんどありません。生きる力が低下している子どもたちが「助けて!」と声をあげることは、ものすごくエネルギーが必要となります。このような実態は外側からは見えません。そのため、山下さんは支援を提供する側が出向いていくアウトリーチ型支援(訪問による直接支援)が有効と言います。

子どもと関わる中で山下さんが一番に大切にしていること。それは子どもの人権擁護、つまりエンパワメントです。エンパワメントとは、子どもの力が引き出せるような関わりをすること、つまり子どもたち自身で自分のことが決められるようになることだと話します。

直接支援の内容は以下の通りです。

  • 家庭背景・環境を考慮し、子ども本人と一緒に支援プログラムを計画立案する。

  • 子どもの変化も鑑みて、3ヶ月に1回はアセスメントを実施し、適切な関わりが行えているか評価する。

  • この段階では、時間をかけて子どもたちとの関係性を構築していく。(一緒に散歩をしたり、好きな漫画を読んだり等関わり方は様々)。子どもとの関係性が構築でき、子ども自身がどうしたいか確認できたら、間接支援(ソーシャルワーク)を開始する。

関係構築は家庭により様々。場合によっては家庭環境の整備にたどり着くまで3年かかると話します。山下さんのお話で最も印象的だったのが、「ケースが動いているように見えなくても、一緒の空間を共有する。子どもたちとの関係性を作っていく上でとても大事な時間」というお言葉です。子どもの声を大切にするということは、子どもが声を出すまでの時間を共有することなのだと学びました。

この後の質疑応答の時間では、山下さんがご自身の活動や市民の役目について更に詳しくお話してくださいました。

山下さんへのQ&A

Q: ご自身の自己肯定感はどう保っているのでしょうか?

「私は過去に医療現場など、人が命を落としていってしまう現場を数々と見てきました。その経験から「生きていればいい」と考えるようになりました。目的があるかどうかではなく、生きていれば良い、この考えに自分の自己肯定感はあるんだと思います。あともう一つ大事にしていることは「相手を嫌いにならない程度に関わる」ことです。全て自分でやろうとするのではなく。

子どもは本能のままに生きています。ある意味で子どもは大人よりも完成体なんじゃないかと思います。もっといろんな経験をして子どもの完成体に向き合いたいです。

Q: 山下さんのような活動を、自分が行えるか自信がありません...。

大切なのは時間と仲間を作っていくことです。あとは自分が必要だと思うことをやり続けること。これは一見簡単なことのようですが、実はとても難しいことです。自分自身、自分がやっていることが正しいか・間違っているかは分かりません。そもそも大人だけで考えていてもわからないことです。それは子どもたちにしかわからないので、悩んだら子どものところに行って話を聞くことが大事なんじゃないかと思います。自分は正しいことをやっているんだと、自信を持って言えるのは、子どもたちが教えてくれたからです。

Q: 子どもと保護者の意見をどうバランス良く聞いていますか?

子どもに聞いても、親が答える場合があります。親が自分の子どもを思う気持ちに間違いはない。例え攻撃的な言葉でも話をよく聞いていくと、意図が鮮明になっていきます。お母さんは本質的に子どもを愛しているのは間違いないので、それを聞き入れることは必要なんじゃないかと思います。

そして大事なことは待つことです。支援活動を行う中で、介入した方がいいのか、これは待った方がいいのか、スタッフと議論をします。例えば子どもに受験勉強をしてもらいたいと理由で、こちらで勝手に環境を整えようと片付けをしてしまうと、片付けの大変さやメンテナンスの大変さを実感しないままになってしまいます。大切なのは、時間をかけてでも家庭環境を整えることの重要性を本人が気付き、行えるようにすることです。なぜなら環境が整備されているところはちゃんと家庭の声を拾っているからです。そしていかに日常会話の中で、子どもたちの声を拾っていけるかということです。

Q: スタッフ間のコミュニケーションはどのように行っていますか?

スタッフの不安がどこなのか、しっかりと聞くようにしています。スタッフ面談も頻繁に行っています。やはり「待つ」ことも活動の大事な部分なので、待っていることはサボっていることでは無いこと、ケースが動かないのは当たり前だということを、常に毎日の振り返りの中で伝えています。

Q: 会議に子どもや親が参加することについて:子どもがしたいことと、周りのしたいことにギャップが生じたことはありますか?

子どもが出席したくなければそれで良いのです。ただ、会議のような意思決定の場に子どもを誘うことはエンパワメント、つまり自己肯定感を高めることにつながります。自己肯定感とはいかに自分の実情を受け止め自分のことを自分で決められるか、ということです。同じく、私たちもその場では、いかに内容が厳しいと思っても、ごまかさず、すべてを正直に伝えていくことを大事にしています。「子どもの声を尊重しよう」とよく言われますが、「尊重」とは具体的にどうすれば良いのでしょうか。私はちゃんと伝えて、ちゃんと支えることだと思います。時間はかかりますが、やるべきことだと信じています。

何より、子ども支援のことであれば、子どもに聞いた方が一番良いです。まずは聞くことが大事だと思います。そこに正解・不正解はありません。大切なのは、子どもが伝えてくれた言葉を頭で捉えるのではなく、気持ちで捉え、気持ちで動くことです。頭で考えて行動しようとすると、答えを探してしまいがちですが、気持ちで受け止めようとすると、自分の気持ちが動くからです。「その言葉にどんな気持ちを馳せているんだろう」「今なぜこのタイミングで言うのだろう」そう捉えることで、自然と自分の第一声が変わるし、それに伴う行動も変わってきます。放った言葉そのものより、そのタイミングで発した理由や真意が見えてくるようになります。気持ちで捉えられれば、それがたとえ正しい答えでなくても、優しい答えになるのではないかと思います。

Q: 市民に求めることはなんですか?

そのままでいて欲しいです。結局、子どもは日常で生活をしていきます。資格を持って子どもに対してこうしなきゃ、と言う人たちで溢れて欲しくないです。ただ元気で生きていてくださいと、普通にしてくださいと思っています。


初めての水戸での開催、2019年7月から始まった6ヶ月間のプログラム。ご参加いただいた皆さま、関心をお寄せいただいた皆さまありがとうございます。

九州大学集中講義「まちづくり実践論」レポート_19.12.26-28

2019.12.26~28日の3日間、九州大学教育学部で集中講義が行われ、代表の小澤いぶきが講師を務めました。「まちづくり実践論」という授業科目で、PIECESが進めてきた「孤立しやすい環境にいる子どもに新しい関係をつくる市民育成事業『Citizenship for Children 』(旧:コミュニティーユースワーカー)」を参考としながら、児童精神科の医療の現場から見えてきたこと、そして、世界の動きも踏まえて、九州、福岡という地域で私たち市民が、子どもたちの生きるまちに何ができるか?を考えるきっかけとして講義を展開していきました。講義は3日間とも公開講座でもあり九州大学の学生だけではなく、福岡県内の学生や社会人の方など様々な立場の方が参加されました。

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◆1日目

 1日目は、濃い3日間を過ごしていくために初めにチームビルディングを行いました。トランプを使用しグループを作り即興物語を作ったり、自己紹介シートを使って受講の目的等をグループで話したりを通して、緊張でいっぱいだった教室もあちこちで笑顔や笑い声が聞こえ和やかな雰囲気になっていきました。和やかな雰囲気になったところで講義を展開していき、「子どもを取り巻く現状と課題」では、小澤の医療現場での子どもとの経験を踏まえながら児童虐待の現状や子どもに及ぼす影響等、「子どもの発達の基礎」では、発達段階や愛着について講義を行いました。①言語化せずに相手に『嫌な気持ち』を伝える体験、②話しているのに全部無視される体験をペアになって実際に実践してもらい、言動の背景にどんな気持ちが潜んでいるのか、愛着を育むには何が大切なのかを考えました。

 講義を踏まえ、映画『少年と自転車』を見てもらい、児童養護施設に入所している主人公や纏わる人たちの言動の背景にはどういった気持ちがあったのかを4~5人のグループを作り考えていきワールドカフェ形式で共有していきました。次に、自分が子ども時代を振り返ってもらい、モヤモヤしたこと、こういうサポートが欲しかったなども共有していき、「30年後子どもも自分も幸せになる未来のまちとは?」を考えもらいました。地域視点では老若男女関係なくいろんな人が関われる場所が欲しい、学校教育視点ではフリースクールを多くの学校に設置したらいいのでは、などなど各グループ時間が足りないぐらい盛り上がっていました。

◆2日目

 2日目は、福岡で活動されているNPO法人まちづくりLABの代表永田充さんをゲストに呼んで、「訪問支援から見えてきた子どもの支援のあり方」をテーマに不登校・ひきこもりの現状や訪問支援について話をしていただきました。「“良い支援”をしようとすると見失うものがある」とフレーズから講義スタートし、序盤から考えさせられる内容です。なぜ訪問支援が必要なのか、支援をするうえ子どもだけはなく家族への支援の大切さなどをご自身の体験を踏まえて話していただきました。不登校になっている自分の身近な人への今までの対応はよかったのかを振り返ったり、今後、不登校の子たちと出会ったときにどう関わっていけばいいのか考えたりするきっかけになりました。

 2限目からは「社会的処方と市民性」「アセスメントとストレングス」「コミュニケーション」の3つをテーマに小澤が講義を展開していきました。子どもに限らず人は疲弊しきるとSOSを出せなくなり、孤立にもなっていく。疲弊や孤立やする前に、原因を取り除くコミュニティの存在が重要になるということで、社会的処方の存在の大切さ。そのためには、「市民性」の関わりも重要なり、市民性とは何か、人と人の「間」とは、何かを実践を踏まえ考えていきました。また、人は自分の価値観等で物事を判断しそうになりますが、判断する前に、子どもの言動にどう思いがあるのか「ああかな、こうかな」と仮説を立てていくことで、子ども理解にも繋がっていくなどを理解してきました。

◆3日目

 3日目は、福岡市こども総合相談センターの藤林武史さんをゲストに呼んで、「子どもと家庭を支えるコミュニティケア」をテーマに児童虐待の現状や福岡市での現状や取り組みなどについてお話をいただきました。法制度は整えられているがニーズに応えることができないサポート体制の現状など、ニュースでは知ることができないことに触れることができていました。児童虐待が起きたとき児童相談所は最後の砦。児童相談所だけが頑張るのではなく、地域コミュニティ、市区町村、里親など様々な立場が連携していくことで、虐待による死亡はゼロになっていく。福岡市のこどもの現状を知るだけでなく、まちづくりを考える上で必要なことを学ぶ機会になっていました。

 「福岡における課題に対しての社会的処方の可能性」では、受講者の方から自分の経験を話していただきました。『家を開放しておやつを提供している』『子ども会に行くことが楽しかったが、今は少子化で少なくなってきている』『子育てに手厚い様子はあっても情報が広まっていない』など福岡で暮らしているからこそ気づくこともあり、また、中心部を離れれば行政と家庭の間に入るNPOなどの団体がない現状などにも触れることができました。

 今までの講義内容を踏まえて、福岡における子どもたちが利用できる地域資源マップを「0~12歳」「13~18歳」「18歳以上」のグループに分かれて作成しました。受講者それぞれが発見した社会的資源を横軸『情緒的or機能的』縦軸『利用ハードルが低いor利用ハードルが高い』に沿って、マッピングしてもらいました。「○○がこの位置なら、○○はこっちじゃない」「○○も資源になるのかな」など各グループ盛り上がりながら作っていきました。また、想像力を発揮するための実践として「クリエイティブケースワークショップ」を行いました。取り扱う事例も受講者の方から気になる子どものケースを出してもらいました。情報がしっかりあるケースもあれば、情報がないに等しいケースもあり、限られた情報の中で、その子が持つストレングスや願いを探っていきました。そのあとは、その子の願いに沿う関わり方は何かを地域資源マップを参考にしつつ考えていきました。学生だからこその視点や福岡ならではの意見も出るなどして、自分たちが住んでいる福岡・九州で何ができるのか考えるきっかけにもなったと思います。

 3日間の講義を通して、「自分を振り返ることができた」「自分がしていることに自信が持て」「有意義な時間でした」など様々な感想を聞くことができました。

 今回の講義を踏まえて、受講者の方それぞれが地域で暮らしていく一人の市民として何ができるのかを考え、実践していかれることで、福岡がどう発展し盛り上がっていくのか楽しみです。

地域での子ども若者支援のこれから〜「Citizenship for Children in 水戸」第4回公開講座&ゼミレポート〜

PIECESが茨城県水戸市で行う、子どもと関わる市民育成プログラム「Citizenship for Children in 水戸」。

これまでPIECESは首都圏を中心に市民育成プログラム(旧名:コミュニティユースワーカー育成プログラム)を開催し、1〜4期で計約50名の子どもと関わる市民を育成してきました。

今回は全国展開に向けての第一歩目となる水戸市でのプログラムで、「セカンドリーグ茨城」さんとの協働で実施しています。

首都圏に限られていた活動範囲を全国に拡大し、各地にいるかもしれない「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡げる大人を増やしたい。

そんな想いから全国展開を目指し、まずは1拠点目、茨城県水戸市で12人、6ヶ月間の「Citizenship for Children プログラム(以下CforC)」を実施します。

これまでの3回では、子ども・若者の育ちの理解や困難を有する子どもたちへのまなざしなど、一市民として子どもに関わる上で土台となる価値観や知識について、延べ100名近い方々と一緒に学んできました。(第三回目のレポートはこちらから

今期の後半にあたる10月から12月にかけては、引き続きフィールドの異なる実務家・専門家の講師をお招きして、さらに一歩踏み込んで「市民性を大切にした子ども・若者支援」について考えていきたいと思います。


今回で第4回目となる今期の公開講座。雨模様も怪しい中、たくさんの方々に集まっていただくことができました。

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午前の公開講座は、東京都文京区にある地域連携ステーション フミコム(文京区社会福祉協議会)の社会福祉士、根本真紀さんが講師を担当。

今回のテーマは「中間支援の立場から見る“非専門職”の可能性」。社会福祉士として活動する一方、ホームレス支援など、半分を専門職、半分以上を一市民として活動している根本さん。彼女が考える、”非専門職”としての地域との関わり方を学びました。

そもそも「社会福祉協議会」とは?

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社会福祉協議会(社協)とは住民主体の理念に基づいて、地域の福祉課題の解決に取り組み、誰もが安心して暮らすことのできる、地域福祉の実現を目指す組織のことです。

根本さんが所属する文京区の社協では二つの特徴があります。まず一つ目は地域福祉コーディネーターの存在。課題を「待つ」のではなく、自ら出向き相談に応じて人を資源に繋げる。二つ目はフミコムの存在。フミコムは、文京区社協が区や地域住民・ボランティア・NPO・企業・大学等と連携して、新たなつながりを創出し、地域の活性化や地域課題の解決を図っていくための協働の拠点です。今までつながっていなかった人同士を繋げ、地域の課題解決や活性化を目標としています。この「課題の発見力」「課題の解決力」の両輪が地域との繋がりを強化すると根本さんは話します。

独自の事業を展開する文京区の社協。その背景には生活課題の複雑性・多様性が関わってきています。現在の社会変化のスピードに対応するには、従来通りのやり方ではもはや解決が難しくなってきているのです。だからこそ一人で課題解決しようとするのではなく、自分とは違う知識・スキル・価値観をもった他者と繋がり、地域課題を一つ一つ解決していく必要があるのだと根本さんは言います。

専門職と非専門職 それぞれの味

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複雑化した地域課題への取り組みは、専門職だけではなく、非専門職の関わりが大いに必要となってきます。ではどのような関わり方があるのでしょうか。

いわゆる弁護士・医師といった専門職の人は、関わりの目的が明確であるため、「支援する」立場として、与えられた枠の中で最適な解決を探そうとします。一方で、非専門職の人は明確な目的に沿ってではなく、一個人として関わりを持つため、早期に課題を発見するこし、また必要に応じて専門職へ繋げることができます。専門職のような強い繋がりではなく、あくまでもつなげて垂らすくらいのゆるい関係性が非専門職の強みだと根本さんは話します。

どちらが良い悪いのではなく、それぞれの関わり方で地域と繋がる。地域の人たちと一緒になって課題や悩みを共有し、一緒になってできることを探る関係を築いていきたいなと感じたひとときでした。

間を描く

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前回の講座を受けて、メンバーの皆さんには宿題として、間を描くために、地域に存在する地域資源(子どもに関わる人や機関、その役割)を記録していただきました。「0〜12才」「13〜18才」の二グループに別れて、それぞれが発見した資源を「情緒的・機能的」「利用ハードルが低い・利用ハードルが高い」の軸でマッピングしてもらいました。

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社会資源をマッピングを通じて、改めて自分の立ち位置を確認したり、「これも資源になるんだ」と新しい関わり方を発見したり、市民として自分が関われる得意なところを見つける良いきっかけになった、と大盛り上がりを見せました。

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社会資源マップ:0-12才

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社会資源マップ:13-18才

最後の時間は、メンバー全員でプロセスレコードのリフレクションを行いました。みんなで意見の共有や問いかけを行うことで、見方が広がり、新しい考え方や気づきが生まれる、とてもワクワクする時間でした。

新しい「気づき」や「発見」がどのようにしてCforCメンバーの実践に活かされるのでしょうか。次回もお楽しみに!

子ども期の生きづらさに心を寄せる。支援者育成プログラム 〜Citizenship for Children in 水戸 第3回公開講座&ゼミレポート〜

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PIECESの行う、子どもと関わる市民育成プログラムの全国展開第1拠点目は茨城県水戸市。「セカンドリーグ茨城」さんとの協働で実施している今回のプログラムは、7月にスタートし、9月には3回目の公開講座とゼミが行われました。

今回の公開講座のテーマは「子ども期の生きづらさに心を寄せる」

関貴教さん(児童養護施設職員/認定NPO法人いばらき子どもの虐待防止ネットワークあい理事)、小野瀬直人さん(IT企業役員)、横須賀繭子さん((み)当事者研究会主宰)の3名をゲストに、CforCメンバーと一般の方に向けた講座を開設しました。

「子どもの生きづらさとは何か」について講師のみなさんの話と対話の中で、思いを巡らせる時間となりました。

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児童養護施設職員として働く関さんは、子どもの生きづらさは「〜すべき、〜するのが普通」という価値観によって引き起こされると言います。

子どもは両親の元で育つべき、お母さんは子育てをしっかりするべき、女の子はスカートを履くべき。

そんな「べき論」の中で、心を押し殺してしまう。

べき論を極力無くした環境を関さんは施設で作ろうと尽力されています。

たくさんのルールが存在する社会の中、関さんの働く児童養護施設にあるルールはたった一つだけ。

「理由なく誰かを傷つけてはいけないよ」ということ。

愛情や安心の育まれる家庭という場所が存在しない子どもたちにとって、施設がその役割を担うこととなります。「理由なく誰かを傷つけない」このルールにさえ従えば、関さんは無理に子どもに宿題をさせることも、嫌いな食べ物を食べさせることもないのだそう。

とことん「なぜ」に寄り添って、子どもたちにとって信頼できる大人である。

日々子どもたちの生きづらさに寄り添う関さんの姿勢から沢山学ぶことがありました。

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「私の親は里親でした。私は里子です。昔私は児童養護施設というところにいたそうです。」


ご自身の幼少期の写真を投影しながら淡々とそう口にした小野瀬さん。

養子として育った小野瀬さんは、多くの子どもたちと生活を共にしてきました。

小野瀬家で養子として育てたのは小野瀬さん一人だけでしたが、常に複数人の子どもをうちで預かっていたそう。そのため、家に帰れば多くの子どもたちがいて、自分の学校の友達も、預かってきた子も、みんなごちゃまぜで遊ぶのが小野瀬さんにとっての日常でした。

「わたしは生きづらいと思ったことはありませんね」

人のためを想って、人のために泣ける。どんな子も「よその子」という認識はするな。

そんな両親の元で育った小野瀬さんは、決して自分の境遇を嘆くことなく、実の両親を恨むことなく、淡々と人生を振り返ってくださいました。

スクリーンに映し出される写真はみんな良い表情で、社会的養護の元にいる子どもたちへ向けられる勝手な「かわいそう」という視点が如何に一方的なものであるか、考えさせられました。

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自身が不登校、精神病など複数の問題の当事者だった横須賀繭子さん。

自殺を考えたり自傷行為をしたりするほどに心を病んだこともあった横須賀さんにとって、回復の足がかりとなったのは、複数のコミュニティでした。

精神の安定しない母親の元で、幼少期から目をかけてくれる大人の存在がなく、引っ越しもしていたから地域との繋がりもなかったそう。

生きづらさとは、「生きづらさに気づいてもらえないこと」だと横須賀さんは言います。

しかし、子どもの生きづらさはとても目に見えにくい。

「子どもにだってプライドがある。助けてもらったことがないから諦めている。そもそも自覚がない。」

そんなことが生きづらさを目に見えにくくしているものだと。

そんな生きづらさから抜け出すために、必要だったのは自身にとって大切な人、そして自分を大切にしてくれる人だったと語ってくださいました。


「良い子って、大人にとって都合の良い子、でしかないんだよ」

その言葉が大変胸に沁みた今回の公開講座でした。

公開講座の後には、CforCメンバーでゼミを行います。

今回は一つの事例を元に、自分だったらどう振る舞うか、背景にどんな願いや価値観があるかをみんなで確認しました。

自身の子どもと関わる際に立ち現れる自分自身の願いや価値観に気づき、自分の感情を置き去りにしないことを大切にしよう。

子どもと関わる際の「ありたい自分像」を確認し、それに対する感情を振り返りました。

負の感情が表出されたシーンも多く見受けられた今回。

その感情を「抱きしめたい?地下室に閉じ込めておきたい?誇りに思っている?」と、素直な感情を大切にしてもらいました。

多くの感情を振り返って、かなりのエネルギーを消費しながら懸命に向き合っている姿が印象的でした。

いよいよ次回は4回目、折り返しの回となります。

このプログラムを通じてどう変化し、どう深めていくのか。

参加者の顔が徐々に変わっているように思えます。

次回もお楽しみに。

アセスメントと「共に居る」を学ぶ〜「Citizenship for Children in 水戸」第2回公開講座&CforCゼミレポート〜

PIECESが茨城県水戸市で行う、子どもと関わる市民育成プログラム「Citizenship for Children in 水戸」。

これまでPIECESは首都圏を中心に市民育成プログラム(旧名:コミュニティユースワーカー育成プログラム)を開催し、1〜4期で計約50名の子どもと関わる市民を育成してきました。

今回は全国展開に向けての第一歩目となる水戸市でのプログラムで、「セカンドリーグ茨城」(http://secondleague.net/?page_id=269)さんとの協働で実施しています。

 

 

首都圏に限られていた活動範囲を全国に拡大し、各地にいるかもしれない「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡げる大人を増やしたい。

そんな想いから全国展開を目指し、まずは1拠点目、茨城県水戸市で12人、6ヶ月間の「Citizenship for Children プログラム(以下CforC)」を実施します。

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前回7月に引き続き、第2回目の公開講座とゼミを8月25日に行いました。

公開講座は、都内でのスクールソーシャルワーカー経験のある社会福祉士で、現在PIECES理事を務める斎典道が講師を担当。

日曜日の午前の開催にもかかわらず、一般の参加者も含めて約30名の方々に集まっていただくことができました。

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今回のテーマは、「子どもへの深い理解を促す『アセスメント』を学ぶ」。

「アセスメント」とは、対象者を支援する方法の根拠となる仮説(〇〇かもしれない)を考えることです。

専門的な概念ではありますが、アセスメントを理解し「ああかな、こうかな」と仮説が多く思い浮かぶようになると、実際に現場で困った子に出会った時、目に見える情報から子どもの背景を見立てることができるようになるのです。


子どもたちは大人の常識とは全く違う考え方・価値観で行動していることが多々あります。

だからこそ、目の前の子どもの行動・言動の意味付けを捉え直すことで、自分自身が持っている価値観や信念に自覚的であることが大切だと語り、公開講座は終了しました。

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午後のゼミでは、PIECESが考える市民性と市民が作る「間」の理論について理解した上で、実際に実践の現場で気になった場面の子どもの様子(行動や言動)を、観察し直してみるワークを行いました。


子どもと初めて「出会」い、「共にいる」段階で信頼関係を築く時、子どもの様子をしっかりと観察し、想像しながら接することはとても重要です。


午前の公開講座での学びを生かし、まずは一人で、子どもの目に見える情報から仮説をたくさん考えていきます。その後、3,4人のグループに分かれ、それぞれの事例について考えたことを共有してもらいました。

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活動中にはわからなかった子どもの様子を後から思い出し、自分の中の捉え方が変わったことを発表するメンバーや、他のメンバーから「その子、もしかしたらこう思ってたかもしれないね」と指摘し合い、その子との関わり方にまで話が発展していく場面もありました。

今回のゼミを通じて学んだことを踏まえたうえで、

市民として、子どもとの関係を「共にいる」から「探求する」という一段階先のステップへと進めるためには、一体どのような考え方が必要なのでしょうか。

それでは皆様、次回もお楽しみに。


育成プログラム「Citizenship for Children in 水戸」キックオフを行いました!〜公開講座&ゼミレポート〜

水戸の参加者の方々

水戸の参加者の方々

PIECESの行う、子どもと関わる市民育成プログラムの全国展開第1拠点目は茨城県水戸市。

先日7月28日に第1回目の公開講座とゼミが行われました。



これまでPIECESは首都圏を中心に市民育成プログラム(旧名:コミュニティユースワーカー育成プログラム)を開催し、1〜4期で計約50名の子どもと関わる市民を育成してきました。

今回は全国展開に向けての第一歩目となる水戸市でのプログラムで、「セカンドリーグ茨城」(http://secondleague.net/?page_id=269)さんとの協働で実施しています。



首都圏に限られていた活動範囲を全国に拡大し、各地にいるかもしれない「孤立した子どもたち」と優しい関係性を紡げる大人を増やしたい。

そんな想いから全国展開を目指し、まずは1拠点目、茨城県水戸市で12人、6ヶ月間の「Citizenship for Children プログラム(以下CforC)」を実施します。


公開講座の様子

公開講座の様子


PIECESの育成プログラムは
①座学
②ゼミ
③実践
の3本柱で構成されています。

座学は子どもの発達や孤立の心理メカニズム、アセスメントの方法論など、子どもと関わる際の知識を講義型で学びます。座学は公開講座として、一般の方々にも参加していただけるように開催しています。

ゼミはCforC参加者12名が日々の実践のリフレクションを核として対話型で学び合います。

日々の実践の現場でのモヤモヤなどを各自が持ち寄り、子どもとの関わりを多角的に見る、相手への想像力を働かせる訓練を行います。

座学やゼミで学んだことを活かしながら、自分にとっても子どもにとっても良い関わりを探求し続ける現場実践もこのプログラムでは欠かせないものです。

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CforC参加者のみでのゼミでは、キックオフを兼ねてチームビルディングのワークを行いました。

今期の参加者は学生から社会人、お子さんを持つママまで、幅広い人たちがいます。仕事として子どもと関わる人もいて、これまでのPIECESの育成プログラムの参加者とはまた違ったバックグラウンドを持ったメンバーが集まりました。


「専門家でも親でも先生でもない市民として自分ができること」をこの6ヶ月を通して考え、探求し続けていってほしいと思います。


12名でお互いに助け合い、学び合うコミュニティとしてCforCが参加者の中に位置づくことで、どんな学びが生まれるのか。子どもにとっても自分にとっても良い関わりを探求し続ける先にどんなことがあるのか、とてもわくわくする時間でした。


皆さんもぜひ、これからのCforC事業がどうなっていくのか、お楽しみに。

子ども期の“生きづらさ”に心を寄せる~第5回PIECES公開講座&CYWゼミレポート~

こんにちは!

コミュニティユースワーカー4期生の新免です。

11月18日に、月に一度の公開講座とゼミが開催されました。
今回の公開講座のテーマは、【子ども期の“生きづらさ”に心を寄せる】
講師は、病児保育など親子問題に関わる事業を展開している、認定NPO法人フローレンス所属の菊川恵さんです。

複雑な家庭環境の中で育ち、様々な葛藤を抱きながら子供時代を生き抜いてきた菊川さん。中学・高校時代を中心に、乳幼児期から大人になるまでにご自身の身に起きたことを振り返っていただきながら、その当時感じていたこと、大人に求めていた関わり、過去を振り返っていま思うこと、についてお話しいただきました。

わたしたちコミュニティユースワーカー(CYW)はもちろんのこと、“生きづらさ”を抱える子どもとの関わり方を模索するあらゆる立場の方々にとって、「支援者」としての自分の在り方を自問自答する機会になったことと思います。

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子供時代の菊川さんが、周りに求めていた関わり、救いとなったもの。
それは、その時々の状況によって、変化していきました。

例えば、大人の発言より行動を見ていた中学時代は、近所の切手屋さんと「ただ一緒に時間を過ごす」ことに、温かくほっとする気持ちを感じていました。

母親が亡くなった後、言葉の出づらさに悩んでいた時期は、帰宅後に聴くラジオが心の支えとなっていました。パーソナリティの話を聴いて笑ったり、お悩み相談をする同世代の話を聴いたり。

この時期は、「自分が人にどう見られているかを過剰に気にしてしまうから、間接的に救われるのがちょうどよかった」「居場所支援があったとしても、元気な時しか行けなかったと思う」という菊川さんの言葉が印象に残りました。

そして高校時代。一時保護施設に身を寄せるなど、一番ハードな出来事が続いた時代でしたが、今回振り返りってみると、「スッキリした気持ち」で当時を思い出すことができたそうです。理由は、「自分自身を見てくれていた」人たちがそばにいたから。

父親の暴力で怪我をして登校した時、いつもと変わらない感じで「気になっとったんよ~」と声をかけてきた担任の先生。

保護施設で、毒舌だけれど、本当に子供たちにとって何が必要なのかを考えているのが伝わってきた職員さん。

転校後の高校で、なんにでも必死に食らいつく姿を見て、「お前おもしろいな」と興味を示し、大学進学を提案してきた担任の先生。多様な価値観を認め合えた同級生たち。

こんな風に、高校時代に、信頼できる他者がいるという実感を重ねられたことで、「信じてもらえてはじめて出せる力」を発揮できるようになり、自分の心の回復を早めることができた、とお話しされていました。

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しかし、その後も、菊川さんの苦しみは続きます。


菊川さんは、20歳当時、慢性的に生きづらさを感じていたそうです。けれど、支援者に助けてもらえるのは、問題が分かりやすく起きているときだけ。大人になって、表面上は「普通の大学生、普通の社会人」として日常を過ごすようになってからは、気軽にアクセスできる支援が見つかりませんでした。


「大人になっても戻ってこられるような支援やつながりがあればよかった」という言葉を聞いて、PIECESでの活動を通じて、子供たちにとって「いつでも戻ってこられる居場所」を少しずつ増やしていきたい、と思いました。


「支援者」として子どもたちに関われる部分は、その子の人生のごく一部に過ぎません。そして、支援者の手を離れた後も、子どもたちの人生はずっと続いていきます。


その子の人生を長い目でみて、本当に必要な関わりは何なのか?

その子に合った支援の形ではなく、「自分にとって理想的な支援の形」に囚われていないか?

自分の持っているフィルターを介して相手を眼差していることに、自覚的であるか?


今日の講演で、菊川さんから投げかけられた問いを心に留めながら、子供たちの人生に「伴走」していきたいと思います。


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午後からは、CYW4期生のみでゼミを行いました。

メディアの取材が入っていたので、少し緊張感もありつつ、各自が現場実践後に書いた「プロセスレコード」を用いながら、二人一組になって「リフレクション」の振り返りを行いました。(「プロセスレコード」について、詳細を知りたい方は第2回ゼミレポートへ)

午前中の講義で学んだことを反芻しながら、「自分自身が抱いている『相手にこうなってほしい』という願いや価値観に縛られたまま子供たちと接していないか?」「目の前の子どもを大事にできているか?」という視点で振り返りをしたのですが、1対1でお互いの「願い・価値観」を深堀りしていく中で、自分自身の認知の癖について、新しい気づきを得ることができました。


更に、今回は、自分が相手に与えている印象や態度を客観的に捉えるために、話し役(子ども)と聞き役(CYW)に分かれて会話をしている様子を動画で撮影する(!)というワークも行いました。

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自分自身の願い・価値観は、必ずしも、言動として表面化して、相手に伝わるとは限りません。このワークを通じて、自分のコミュニケーションの癖がどのようなものなのか、強みと弱みを知ることができました。


本当に、子どもにとって良いことは何なのかを考えるということ。

それを、相手にメッセージとして届けるということ。


とっても難しいことですが、これからも、子ども達、そして自分自身と向き合っていきたいと思います。


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子どもの「強み」捉え直す&子どもとの関わりを振り返る〜第2回CYW講座&ゼミレポート〜

こんにちは!
コミュニティユースワーカー4期の上野、和田です。

早速ですが、皆さんは普段周りの人をどれくらい観察していますか?

コミュニティユースワーカーとして活動する上で、子どもたちを注意深くみてコミュニケーションをとっていく必要があります。
そこで今回は、『子どもの「強み」を捉え直す~関係づくりの難しい子どもへの関わり方』というテーマで講義が行われました。

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前回はマクロの要因から子どもの孤立の構造を学びました。今回は個々の子どもとの接し方というミクロの要因から子どもの孤立を学びました。

講義では、ストレングス視点というレンズを通して観察することの大切さについての話から始まりました。
ストレングス視点とは、その人の長所、力、資源とも表現できるポジティブな資質と未開発の潜在能力を探すことに焦点を当てる概念です。

子どもは自身の意見を述べる「言語化」に加えて、体調などに変化をきたす「身体化」や暴れたりなどの「行動化」といった表現をします。
そういった子どもの表現(サイン)に対して、大人は自分の中にある当たり前の思い込みや、先入観でみてしまうことがあります。そして、その思い込みや先入観を取り外していくために「子どもの行動」、「願い」、「環境」をよく観察して問いを立てることが重要だということが強調されていました。

実際の事例を踏まえたワークでは、不登校の小学生と自傷行為を行う中学生のケースで、その子の様々なサインをストレングス視点というレンズを通して強みを見つけるワークを行いました。
前者では、学校へ行かないという選択ができること、後者では他者を傷つけないなどの意見が出ました。

その子がなぜできないのかというではなく、何ができるのか発想の転換をすることで子どもとのコミュニケーションの幅が広がると感じました。

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そして後半は、コミュニティユースワーカー4期生のみで行うゼミでした。

文京区広報課のテレビ取材が来るというサプライズもあり、最初は少し緊張気味だった空気は徐々にほぐれ、いよいよ本題へ。

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今回は、前半の講義のふり返りに加えて、各自が現場実践後に書いた『プロセスレコード』を見ながらリフレクションを行いました。

『プロセスレコード』とは、主に医療現場で用いられている、自己のコミュニケーションのパターンを客観視するための方法です。

具体的には、実際に現場で起きた子どもとの会話の中で、特に印象に残っている会話を思い出し、その状況や自分の心境を細かく思い出して書き留めていく作業です。

このプロセスレコードを書けるようになると、子どもとの関わり方の、自分の傾向を知ることができるのです。

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実は前回、4期生にはこの「『プロセスレコード』を現場実践後に書く!」という宿題が出ていました。

その宿題をもとにメンターの中島巳歌さんによって、各自が書いたプロセスレコードについてリフレクションを行いました。

コミュニティユースワーカーが実際に体験した会話の中で、気になる点をひとつひとつ丁寧に話していくと、

「私はなんでこのような対応をしたんだろう」

「もしかして、この発言をしたとき私はこのような風に感じていたのかもしれない」

など新たな自分を発見できたり、

「この状況で、このような発言をされたら、私はこのような対応じゃなくて、違う方法を取っちゃうと思う」

と、コミュニティユースワーカーの中でも個性があり、実践の多様性を改めて感じました。

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次回も、実践後に書いたプロセスレコードを元により深いリフレクションをしていきます。
実践には正解がないからこそ、このようなふり返りの時間を大切にしていきたいです。

(上野・和田)
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9月の公開講座は、9月16日(日)10時~12時 に開催します。
9月のテーマは、「専門家ではないからこそできる子どもの支援 ~子どもとのかかわりを創造的に問い直す~」です。
講座の詳細やお申し込みは下記ページをご覧ください!
https://pieces-seminar1809.peatix.com/

 

 

「子どもの発達段階における孤立の構造理解」コミュニティユースワーカー4期_第1回公開講座・ゼミ

こんにちは!

コミュニティユースワーカー4期生の飯島・若林です。先日、「コミュニティユースワーカー育成プログラム」の第1回公開講座・ゼミが行われました。

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6月よりスタートしたコミュニティユースワーカー第4期の育成プログラム

初回となる今回の講師は、PIECESの代表で児童精神科医の小澤いぶきさん。

そして今期からコミュニティユースワーカー育成プログラムの実践・座学・リフレクションのうち、「座学」のパートは公開講座形式で開催されています。そのため、NPOや社協職員の方、地域で子どもに関わる活動をしてる方など、約20名の一般参加の方々と私たちコミュニティユースワーカーとが一緒に学ぶ場となりました。

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今回のテーマは「子どもの発達段階における孤立の構造理解」。

 

子どもが幼児期から青年期にかけて精神面・情緒面でどう発達していくのか、そしてその時期における貧困・虐待などが子どもを孤立させてしまうリスクになることを理論的に学びました。

子ども一人一人を取り巻く環境はそれぞれ異なっても、子どもの言動に表面化されない願いや欲求を想像して関わっていく上でこうした知識はとても大切だと思います。

 

講義には体験型のワークもあり、ペアになり保護者役・5歳児役を演じました。「5歳児役は保護者役に一日のできごとを話し、保護者役は疲れていて話を無視する」というもの。演技といえど子ども役をやってみると「無視されること」は心理的ダメージが大きかったです。無視されることで諦めたり、保護者に見てもらうために声を大きくしたり、わざと怒られるようなことをしたり。人によって様々な言動をしていたのが印象的でした。

 

このワークを通じて、我々大人でも感じるこの虚無感を言語化もままならない発達段階にある子どもたちは多様に変容させていくことを学びました。自分を責めて偽ったり、わざとおどけて見せたり、自分を隠して良い子に振舞ってみたり。

これは極端な例かもしれませんが、共働き世帯や核家族世帯が多くを占める現代において、養育者のみで子どもを育てていくのは精神的・肉体的にも負担が大きくなっていると思います。そんな時、子どもの話を聞いてくれたりサポートしてくれる第三者の存在があれば、子どもが孤立するのを防ぐことができるかもしれない、と改めてコミュニティユースワーカーの必要性を感じた場面でした。

 

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午後のコミュニティユースワーカー4期生のみで行われたゼミでは、講座の振り返りや自分のコミュニケーションの傾向を知るワークを行いました。ワークの内容は、今までに仲良くなって関係が持続している人たちをリストアップし、それぞれの人と仲良くなったきっかけや関係性という観点で細分化していくというもの。グループ・全体でシェアしたところ、自分の成長に応じて人との関係性で求めるものが変わった人、ケンカをきっかけに深い関係を築いたという人など実にさまざま。「自分がどのようなコミュニケーションを好む傾向があるのか」ということを自己分析することができたこのワークは、まずは自分自身をよく知ることで客観視できるようになり、子どもたちと関係性を構築する中でとても重要な気づきとなると感じました。

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また、コミュニティユースワーカーとして今後本格的に実践に移るメンバーは「コミュニケーションをつくる」存在になるために、コミュニティユースワーカー同士の関係性の重要性も改めて認識しました。

育成プログラムの初回を終えて4期生のメンバーは

「今後子どもたちと関わっていく中で立ち止まって考えるための基礎を学べた」
「自分だったらどう思う、という主観的な視点から、第三者という目線に立って子どものことを客観視するする姿勢を学ぶことができた」
「表面的事象に一喜一憂せずに子どもたちと関係性を築いていきたいと思った」

などと学ぶことが多い一日だったと振り返りました。

次回からは自らの実践をリフレクションする段階に入ります。実践・座学・リフレクションの3本柱で行なっているコミュニティユースワーカー育成プログラム。

現場実践を経験したメンバーが、それぞれの体験をどう感じ、どう落とし込んでいくかとても楽しみです。

やってみたい!と思ったとき、一緒に楽しんでくれる大人がいる。プログラミングや電子工作を行う「クリエイティブガレージ」を開催!

現在、毎月第2第4土曜日に豊島区に本社のある養老乃瀧株式会社のオフィスを借りて、イベントを開催しています。
今回、1月20日(土)の回では、ゲーム制作だけでなくその他のものづくりの場も誕生したので、レポートにて紹介していきます。

集まった子ども達の人数は、13人ほど。中高生がメインですが、小学生も参加しています。
コミュニティーユースワーカーや、子どもたちと一緒にゲーム作りや電子工作などが得意な大人を含めると、総勢で25人が集まりました。


クリエイティブガレージは、中高生が「やってみたいこと」や「好きなこと」に取り組む場です。
ここに集まっている大人たちは、ゲーム会社で働いている人、アーティスト、デザイナーなどなど活躍されている分野はさまざま。「子ども達のために何かをしたい!」というよりかは、「自分の好きなことを好きな人たちと一緒にやりたい」といった思いのもとで参加しています。
大人も中高生も関係なく「好きなことをやっている人」同士が集まり、各々好きなことに取り組む、そんな場を作れたらと思っています。また、自分のやりたいことが明確な子ばかりではないので、好きなものが何かを話したり、少しサポートしたりすることももちろんあります。

1人1人の「やってみたい」から始まったいくつかの取り組みを紹介していきます。
今回は、大きく「ゲーム制作」「電子工作」「アート」の3つ切り口でコーナーができています。

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こちらは、「ゲーム製作」コーナー。
今回から某ゲーム会社の社員の方が数名新しく参加してくださっています!実は、クリエイティブガレージができたばかりの頃から参加しているゲーム会社の方が、社内で参加者を募り、相性が良さそうな人を探して連れてきてくれているのです。
家でいつもやっている大好きなゲームをまさか自分が作るなんて!と言っている子や、ゲーム作りにおいて、様々な役割を果たし始める子も出てきています。

最初はキャラクターのデザインを描き、途中からかなりのアイデアマンだということがわかり、ゲームのストーリーなどを考える役をになったり、そして最近では、プログラミングをやってみたい!と言ってこの場でコードを少しずつ書き始めるようになりました。

 

こちらは、「電子工作」のコーナー!
LEDライトを立体的に組み立てて、プログラミングで点滅させています。
楽しそうにやっている男の子を中心に、他の子どもたちも徐々に興味を示しています。

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こちらは今回初登場の「ハンコ作り」のコーナーです。
今回は、美術作家の山根 英治さんにきていただき、紐を使ったハンコ作りをみんなでやりました。

山根さんは、1本1本染色した紐で絵を描くなど、紐を使った作品作りをしている方で、Tokyo Midtown Award 2017のアートコンペで優秀賞を受賞し、ミッドタウンにも作品が展示されていたこともあるそうです。

http://www.tokyo-midtown.com/jp/award/result/2017/art.html

紐を使ってハンコの絵柄を作っていきます。
「私不器用だから、こういうの苦手なんだけど...」と苦戦するコミュニティユースワーカーや、
「俺、これ得意かもしれない。楽しい。」と黙々と進める高校生。
子どもも大人も作業に夢中です。

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鮮やかな朱色に彩られた、個性溢れる手作りハンコが10個ほどできました。
「違うバージョンも作りたい!」とワークショプのリクエストがきたほどです。

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こちらは「特撮動画の撮影」のコーナー!
ダンボールを積み重ねて、街を再現しています。

 

 

ウルトラマンが大好きな彼が監督となり、怪獣が街を破壊する場面を、試行錯誤しながら撮影しています。今回は、ゲーム制作、電子工作、プログラミング、手作りハンコ、特撮の動画制作など、各々が自分の好きなことに取り組んでいました。どのコーナーでも、大人と子どもが笑顔で作業を協力している姿が絶えなかったのが印象的です。

 

 

 

 

 

 

興味があるものをやりたいと思ったとき、一緒に取り組んでくれる大人がいる。
「やりたいことをやりたい!と言える」「やりたかったことが形になっている!」

クリエイティブガレージがそんな場になりつつあるのではないかなと思いました。


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writer

PIECES コミュニティユースワーカー:糸賀 貴優

法学部の3年生。心理学、社会的養護、家族の多様性に関心があり、PIECESでは、コミュニティユースワーカー2期生として活動している。足立区と豊島区を活動拠点としており、小・中学生とは一緒に遊びまわり、高校生にはいじり倒されている。また、ウェブメディアsoarの編集部としても活動している。笑い上戸。

地域の中高生を〝斜め下〟から支える「中高生センター ジャンプ 東池袋」

東池袋にある「中高生センター ジャンプ」は、豊島区内在住・通学者が利用出来る児童館です。
約一年前からPIECESのコミニティユースワーカー(CYW)が関わり、中高生と共に様々な活動をしています。

中高生児童館ジャンプには、中高生の「やりたい」が実現出来るよう様々なものが揃っています。
自分のペースで過ごせる居場所空間はもちろん、
パソコンやボードゲーム、
バスケが出来る屋上、
ギターやドラムなど本格的な楽器が揃うスタジオもあり、バンドを結成した中高生がライブで演奏もしました。
映画作りに挑戦した中学生もいます。

いつもは一日50人以上利用しますが、この日はテスト前という事もあり20人ほどでした。
CYWはこの日、受験を控えている高校生に勉強を教えたり、
お喋りしながら一緒に折り紙を折ったりして和やかな時間を過ごしていました。

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こうした何気ない会話を通して、悩み事ややりたい事などを話してくる中高生もいます。
それらをキャッチしたら、ジャンプの職員と共有するだけでなく、PIECESが持っている資源に繋げ、中高生の可能性の実現を図っています。

CYW1期生の中村さんは、「この一年間で中高生と関係が築けたので、今後は個別の相談にももっと応じれるようにしたい」と、LINE相談の準備も始めています。

館長の篠田さんはジャンプを「中高生を斜め下から支える関係。家庭でも学校でもない身近な地域の居場所として、中高生にお節介をするのが役目です。」と話していました。

児童館と民間団体が連携する事で、中高生の多様なニーズに対応可能な選択肢を広げています。
ジャンプとPIECESの取り組みがモデルケースとして示していけるようにしたい、と篠田館長と中村さんが語っていました。

中高生とジャンプ、
中高生とPIECES、
ジャンプとPIECES、
それぞれの関係の良さが伝わってくるような、温かな空間でした。

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◾︎今回のイベントのように、NPO法人PIECESは、子ども達の興味・関心に寄り添い、共に楽しみを共有しあえる活動をしていきたいと思っています。みなさまのご協力があってこそこのような活動ができていますので、今後とも、どうぞ宜しくお願いいたします。


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広報ボランティア  小澤 麻紀
若者向け就労支援機関の相談員として勤務。コミニティーユースワーカーの活動に興味を持ち、昨年よりPIECES広報ボランティアとして各現場を訪問・取材をしている。趣味は、神宮球場でビールを飲みながら野球観戦をする事。

 

自分の思いを伝えて人を動かすちからワークショップ【自主ゼミ】

こんにちは、春から大学一年生になるCYW3期の森 那智です。

今回は、コミュニティユースワーカーの中で行った自主ゼミについて報告させていだきます。

PIECESに参加したのは、去年、受験期で進路などがわからない中、漠然と「人のためになりたい」と思い、軽い気持ちでボランティア探して見つけたのがきっかけでした。それから、コミュニティ・ユース・ワーカー(CYW)として携わっていて、「人のためになる」ことがどれほど奥深いものかPIECESでの活動を通して実感しています。

そんな僕ですが、先日同じくPIECES・CYWの大畑さん主催の「自分の思いを伝えて人を動かす力」というワークショップに参加しました(こうゆう自主ゼミなどは、先生・生徒関係の授業ではあまりない、お互いから学び合う機会としていつも刺激的です)。

今回の自主ゼミは、大畑さんが参加した内閣府主催の青年リーダー研修会にて受けた、COJ(コミュニティー・オーガナイジング・ジャパン)のワークショップでの体験をもとに開催したそうです。

 

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いきなり「Xをしてください」や「Yをしろ」と言うだけでは、自分の思いは伝わらない、他人。
簡単には動かせない、他人。
何かしら実現するために必要となるその他人の協力やアクションですが、それをどう促すか。

この問に対して、”Public Narrative”というアプローチをとる実践型ワークショップでした。「なぜ私はXを実現しようとしてるのか?」、「なぜあなた(達)はXを実現するべきなのか?」、「なぜ今、Xのために動くべきなのか?」という三つに焦点をあてることで、相手に協力を得たいという思いだけでなく、相手の協力を促すように話、Narrativeを組み立てる。しかし、自己理解、他者(相手に対する)理解、そして自分のプロジェクト・取り組みに対する深い理解がなければ、この三つの問への答えは相手に響かない。

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 話の組み立て方によって、いろんな人を行動に巻き込むことができる大きな可能性とともに、前述の「人のためになる」ことの深さのように、このような基本的なことこそ突き詰めるのが難しいと思いました。

  今回のワークショップのように、PIECESでの活動は毎回考えさせられ、刺激にもなり、とてもやりがいがあります。

森 那智
PIECES CYW3期