ただ、この場が好きだから。「自分にとって楽しみなこと」として活動するコミュニティユースワーカー3期生 寺田優也さん

人間と話すのは1日20分、
ボランティアも未経験!?


初めまして!杉山綺梨と申します。
私は「子ども食堂」の活動やその広がりに興味があり、ちょうど子ども食堂に興味を持ち始めた時期にPIECESを知りました。

PIECESの「子どもの孤立」を解消しようという理念に惹かれ、CYWずかんのインターン生という形で携わっています。どうぞよろしくお願いします!

今回ご紹介するのは、フリーランスで活躍する社会人のコミュニティユースワーカー(CYW)3期生の寺田優也さんです。

寺田さんに現在のお仕事について伺うと、このようにお話しししてくださいました。

“仕事はパソコンと会話の日々ですね。会社の人と話すことが、1日で20分に満たないことも…。自分の隣の席の人とたまに話すことはあるけど、話さない時は本当に話さないです。黙々と作業して、あとは少しチャットでやり取りするくらいかな。”

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お仕事では主にアプリケーション開発を行っており、パソコンに向かう仕事が大半を占めるとのこと。
平日はこのように仕事をしているため、コミュニティユースワーカーCYWの活動に参加するのは日曜日がほとんどです。

また、寺田さんは学生時代にボランティア経験がなく、PIECESにCYWとして参加するまでは、子どもと密接に関わる機会もありませんでした。そんな彼はどうしてコミュニティユースワーカーとしての活動を続けるのでしょうか。

「聞く」ことと「話す」こと。
心とからだの両輪を支える『ジャンプ』


PIECESは、放課後に中高生が集まる児童館のような、ジャンプという場所で活動しています。
ジャンプで活動するCYWの多くは、子どもと話したり、一緒に遊んだりしています。

寺田さんもまた、ジャンプで活動するCYWの1人です。

元々好きだったボードゲームを使って子どもと遊ぶことが多く、ゲームをしていく中で自然とコミュニケーションが取ることができました。

ジャンプでは、ジャンプに参加していたある子を助けたいという思いから、昨年の夏休みに「若者食堂」を開催しました。

その子は普段から給食以外はご飯をあまり食べることができない環境にありました。
一昨年の夏は、給食のない夏休み期間中に10kgも痩せてしまったそうです。

夏休みには1日1食しか食べられない。そんな子どもを救いたい、という思いからつくられたのが「若者食堂」です。PIECESと協力してクラウドファンディングを行い、お昼ご飯を無料で提供していました。

この「若者食堂」に寺田さんはジャンプと同じく、週1回日曜日に参加していました。夜ご飯を提供する日もあったそうです。この取り組みにより、夏休み中に体重が10kg減ってしまうというような事態を避けることができました。

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給食がない長期休みの間に、子どもの体重が大幅に減少してしまう事態を避けることができたのはとても大きな成果です。

しかし、「若者食堂」の効果はそれだけでしょうか。

長期休みということは普段学校で会える友達や先生に会う機会は減ってしまう。「若者食堂」に子どもたちが参加することで子どもが1人でいる時間を減らすことができます。

そして、誰かとご飯を「一緒に」食べることができるのです。

「若者食堂」は身体的な面だけではなく精神的な面でも子どもたちを支える取り組みだったのではないでしょうか。

ジャンプでも若者食堂でも、寺田さんは子どもに対して積極的に話しに行くタイプでは無いようです。
一人でいる子に話しかけたり、遊びに誘ってそこからぽつぽつと会話をしていったり。

寺田さんは、子どもに「話しにいく」のではなく、子どもの話を「聞きにいく」という姿勢をとっていました。

子どもは、学校での出来事や流行っているアニメの話などを寺田さんにします。
自分の話をして返答を期待する子もいるでしょう。「言葉のキャッチボール」をすることも大切です。

人と会話をすることで自身の成長やコミュニケーション能力にもつながります。
「言葉のキャッチボール」ではお互いの話を、お互いに「聞く」ことが大切です。

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当たり前のことのように思えますが、普段仕事や家庭のことで忙しい大人はちゃんと子どもの話を最後まで聞いてくれるでしょうか。

もしかしたら子どもたちは家庭で、学校で、自分の話を「最後までしっかり聞いてもらう」機会を失いつつあるのかもしれません。

否定することもなく、ただ「うんうん」と自分の話を聞いてくれる。だから、自分の興味があることを思う存分話すことができる。そんな存在が子どもにとって大切だと私は思います。

「できた!」という経験を。
『養老乃瀧』で子どもの可能性を拡げるお手伝い


子どもに勉強やそれ以外の学びの機会を提供する「養老乃瀧」という場があります。

「養老乃瀧」では、寺田さんは自身の仕事で培ったプログラミングの技術を生かして、子どもにプログラミングを教えています。

初心者にプログラミングを教えることはあまり難しいことではないそう。
中にはメキメキと上達する子もいて、一通り遊べる程度にまでゲームを作れてしまうそうです...!

子どもにプログラミングを教えることに対してこんなことをお話ししてくださいました。

“子どもの可能性を広げる選択肢の1つとしてプログラミングの経験が生きればいいな”

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現在はシステムエンジニアなどの需要も高まっていて、プログラミングを仕事にできる可能性もあります。また寺田さんはプログラミングを子どもたちに教えることに対してこんな風に語ってくださいました。

“やる気になっている子どもたちの手伝いをすることは、自分としてもすごく楽しみになっています。”

子どもが自発的に何かを学び、それが彼らの将来につながるかもしれない。とても素敵な活動なのではないでしょうか。

「子どものため」だけでなく
「自分のため」にもつながる、CYWの活動。


寺田さんがCYWとしての活動を続ける理由を伺ってみました。

“(活動を続ける理由の)1つには雰囲気があると思います。周りの人が頑張って色々なことをやっていこうという雰囲気。あとはやっぱり子どもとの距離が縮まると嬉しいですね。”

頑張っている周りの人をみて、自分も何か手伝えることはないかな。みんなが頑張っているから自分も頑張ろう。そんな風に思わせてくれる仲間がPIECESにはいるのでしょう。

“(CYWは)皆さん素敵なグループの集まりです。皆さん、優しい方が多いなと感じます。人の話に耳を傾ける方が多いのも特徴の1つだと思います。”

CYWについて、こんなふうにも語ってくださいました。

CYWに限らず、PIECESには子どもの話に耳を傾ける優しい方が多いとも話していました。子どもに対して真摯に向き合う姿は、子どもだけでなく、大人の心までも動かすのかもしれません。

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そして「子どもと普通に話ができた」ときは距離が縮まったことを感じて嬉しくなるそうです。

最初は大人に話しかけに行くのが難しいと感じる子もいるでしょう。初対面だと緊張してぶっきらぼうになってしまう子もいるかもしれません。そんな子どもたちと触れ合うにつれて、だんだん話せるようになっていくことが嬉しく感じるようです。

また、こんなことも語ってくださいました。

“PIECESに最初入ったころは、子どもとの関わり方や子どもの考えていることを知りたいと思い活動していました。そういう面での理解やスキル的なものは磨いていきたいと思っていました。でもやっぱり、何かのコミュニティに属しているっていうのは自分にとって大きなことだなと思います。”

元々関西の大学に通っていて、就職に伴い上京した寺田さん。

知り合いが少ない環境のうえ、仕事的にも1人で作業を行うことが多い性質上、定期的に色々な人と関われる機会は貴重だそうです。

コミュニケーションが上手な人たちが集まり、その人たちの話を聞いたり、仕事の話をする場は「自分にとっても良いコミュニティ」と語っていました。また、「自分にとって楽しみなこと」であるとも語っていました。

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CYWの活動は「子どものため」に行っています。しかし、それが同時に活動する「CYW自身のため」にもなっている。

活動を1つの「支援」として捉えることなく、自分も「楽しんで」行う、寺田さん。

きっと、自分も活動を「楽しんで」いるからこそ、続けられるのではないでしょうか。

一人一人、それぞれに輝くことができるはず。
十人十色の活動スタイル


ボランティアなどの活動は、自分から熱意を持って、ある程度決まった頻度で参加しなければならない。そんなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。

今回のインタビューには、自分のペースで、子どものことを考えながらも、自分も楽しんで活動に参加する寺田さんの姿がありました。義務感に縛られていない、のびのびとした雰囲気が感じられます。

CYWの活動は事前に研修があり、気軽に行えるボランティアとは異なる少し特殊な形態です。
そしてCYW1人1人によってその活動スタイルは異なっています。

CYWの魅力は、寺田さんのように、一人一人自分のスタイルで続けられることにあるのではないでしょうか。


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writer

杉山綺梨(すぎやまあやり)

お茶の水女子大学 生活科学部 人間生活学科 生活社会科学講座4年

子ども食堂の活動や役割に興味を持ちはじめた時にPIECESを知り、インターン生としてラターを始める。アルバイト先でソフトクリームを巻き続けてはや1年が経とうとするが、未だに片手で綺麗に巻くことができず、まだまだ修行中。