1989年11月20日、すべての子どもに人権を保障する初めての国際条約として『子どもの権利条約』が国連総会で採択されました。
この条約が生まれたことにより、世界中で子どもの保護への取り組みが進みました。現在では、子どもの権利のために行動する日として、世界中でさまざまな取り組みがなされています。

「子どもの権利条約」では、子ども(18歳未満)を権利の主体ととらえ、おとなと同じく、一人の人間としての権利を認めています。また、おとなよりも社会的に弱い立場にいる子どもたちには保護などの権利を定めています。

現在日本を含む196の国と地域が批准し、世界で最も広く受け入れられている人権条約です。

子どもの権利条約が日本で批准されてから30年以上が経ちます。2023年4月にはこども基本法が施行され、こども家庭庁も動き出すなど、今日本社会は、子どもの権利条約に掲げられた権利を実現できる社会づくりに向けて、本格的に歩みを進めています。

しかし虐待相談対応件数は年々増加、2024年は小中高校生の自殺者数が過去最多になるなど、子どもたちの尊厳が大切にされているとは言い難い状況があります。
さらに日本における15歳未満の人口の割合は、11.1%(2025年)と少なく、それゆえに周縁化されてしまう可能性が高い現状ともいえます。

どんな背景や特徴を持っているかにかかわらず、子どもは誰でも、権利を取り上げられたり侵害されたりすることなく、安全に安心して生活することのできる存在です。子どもの権利は、何かと引き換えに与えられるものではなく、生きる土台として大切にされるものです。

PIECESの活動は、虐待や貧困、いじめなどの逆境的な環境下に生きる子どもたちと医療や福祉現場で出会う中で、子どもたちの権利や尊厳が大切にされていない現状をなんとかしたいという想いから始まりました。

一人の人である子どもの尊厳が守られる環境をつくるためには、子ども自身だけでなく、まわりにいる大人が権利や人権のまなざしを持ち、行動することが大切です。
私たちPIECESは、子どものそばにいる人たちの姿勢やまなざしが変わり、小さなアクションが生まれること、そして子どもたちの背景に目を向け、寄り添う市民を増やすために、市民性醸成プログラムの展開や啓発活動を行っています。

こども基本法が施行された今、改めて子どもの権利の重要性をとらえなおし、より広く発信していく必要性があると感じています。

そんな想いから、PIECESでは11月を子どもの権利月間とし、子どもの権利を広く普及するための発信を行っています。
私たちと一緒に子どもの権利について考え、知る機会を広げませんか。

子ども時代を自分らしく、健康的に安心して豊かに過ごすための権利が定められた「子どもの権利条約」。2024年にこども家庭庁で実施された調査によると、小学生~中学生までの子どもは「聞いたことがない」と回答した数が最も多く、おとなも約4割が「聞いたことがない」と答えています。1994年に批准され、30年以上が経っていますが、まだまだ認知度が低いことが伺えます。

出典:こども家庭庁「児童の権利に関する条約の認知度等調査及び同条約の普及啓発方法の検討のための調査研究報告書概要版」(2024)を基にPIECES作成

子どもの権利条約

「子どもの権利条約」には、人生の中でとても大切な時期である「子ども」の時期だからこそ大切にされる”4つの原則”があります。条約で定められている権利を考えるときに、常に合わせて考えることが大切です。

命を守られ成長できること
子どもにとって最も良いこと
意見を表明し参加できること
差別のないこと

出典:ユニセフ「子どもと先生の広場 子どもの権利条約」

どんな権利があるの?

子どもの権利条約は54条から成り、大きく以下の4つの権利を守るように定めています。これらの権利は、全ての子どもの生きる土台として等しく大切にされるものであり、おとなにはその権利を保障する責任があります。

出典:ユニセフ「子どもと先生の広場 子どもの権利条約」

子どもの権利条約の精神に則り、子どもの権利が守られる社会の実現を目指した法律が「こども基本法」です。2023年4月より「こども家庭庁」が始動し、「こども基本法」が施行されました。

子どもの権利条約で特に重要とされる4つの原則である「生存発達の権利」、「 差別の禁止」、「子どもの意見の尊重」、「子どもの最善の利益」を基本理念に定めています。

PIECESでは、ファウンダーの小澤いぶきが2022年よりこども家庭庁準備室のアドバイザー(現在はこども家庭庁政策アドバイザー)を務め、こども基本法の公布に向けて、市民社会組織の一つとして当事者と共に提言を進めてきました。

こども基本法では、子どもの権利やこども基本法について、子どもや大人に周知することが明言されています。


「権利」や「人権」と聞くと、「難しそう」「自分には関係ない」と感じる方も少なくないかもしれません。しかし子どもの権利をはじめ、私たちのくらしには、あらゆる場面で「権利」や「人権」が関わっています。さまざまな視点から、子どもとの日常や関わりを「権利」の視点から深めます。

専門家にインタビュー

あそびの専門家として幅広く活動されるしみずみえさん。
子どもにとって遊ぶことの意味や、周りにいるおとなたちにできることは何か、お話を伺いました。

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おとな自身が自分の生き方に誇りを持てることは、子どもたちにとっても大切なことだと思います。目の前の子どもと自分自身がどうありたいかということに素直になり、自分も子どもも大切にされる存在だということに気が付くことが大切ではないでしょうか。
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新生児科医/小児科医として、子どもたちの命を支える今西洋介さん。
医療の切り口から、子どもの権利についてお話を伺いました。

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命を守るためにやれることをやるだけが医療ではないんです。命を守ることと同時に、赤ちゃんや家族の心を守るということも、人権の視点では大切だと思っています。
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*この記事は2022年にインタビューさせていただいたものになります。

 
子どもの権利

子どもの権利を尊重する日常には、どんな子どもとの関わりが生まれているでしょうか。
日々の子どもとの関わりを「#かもしれない」の視点でみつめ、子どもの権利を尊重するとはどういうことか、一緒に考えてみませんか。子どもの権利の観点から、私たちのくらしを紐解きます。

 

※上記画像をクリックすると、大きく表示されます。

イラスト:織戸ゆみこ

 

「こどもがこどもでいられる」とは、おとなから見た「子どもらしさ」ではなく、「その子として存在していられる」ということだとPIECESは考えています。必要なのは「子どもらしい」かではなく、「子どもがひとりの人としていられる」ことなのです。
そのためには子ども自身が、権利主体の一人の人として生きていくことができること、尊厳が守られることが大切です。

「すべての子ども」に権利があると同時に、おとなにも権利があります。子どもの権利が尊重されることは、子どもの周りにいる大人が自分でいられ、その尊厳が守られることにも繋がっていくはずです。私たちは「こどもがこどもでいられる社会」を目指して、以下の活動を行っています。

 
市民性を耕す

市民一人ひとりの行動と社会のしくみは相互に影響し合っています。
子どもを取り巻く社会をつくる一員である私たちが大切にしたい点や、子どもと関わる際に大事なこと、心のケアなどに関する情報発信や広報活動などを行っています。
また市民一人ひとりの行動だけでなく、社会の仕組みを変えていくために、こども家庭庁設立準備室のアドバイザーを務めるなど、政策提言活動にも力を入れています。

啓発活動について

 
市民という他者の存在

子どもの孤立が深まる前に、地域の中で子どもを見守り、子どもに寄り添う市民を増やすためのプログラム「Citizenship for Children(CforC)」を実施しています。ちょっとした困りごとがあった時、気軽に頼って相談できる市民が子どもの周りに存在することを目指しています。

CforCについて↗


2022年9月にスウェーデンを訪れた際、子どもの権利が当たり前に市民の生活に根ざしていることを実感しました。
例えば学校では、どんな遊具があるといいか子どもと先生が話し合い実現されたり、保育園では、日々どんな遊びをするかを決めるプロセスに子どもが参画していたりするのです。
子どもの参画や意見表明といった権利の実践を通して、子どもが自分の権利を知り、自分が社会に影響ある存在であることを体験的に身につけていました。

子どもの権利が当たり前になった背景には、多くの家庭が購入する牛乳パックに体罰禁止を呼びかける広告を載せ、おとなと子どもが法律について知り、話し合うきっかけを広くつくる工夫や、子どもの権利に関する絵本や小冊子の配布、学校での授業など、国を挙げて社会全体へ広く訴えるための啓発キャンペーンがありました。

社会を動かすには時間がかかるかもしれません。しかし社会は私たち市民の行動によって変化し、動いていきます。市民が自分たちのこととして権利について知り、実践することは、長期的に文化に影響します。

子どもは尊厳ある一人の人。尊厳ある一人の権利主体として、子どもたちがこの社会で生きていく環境を子どもとともにつくることは、おとなや社会の大切な役割です。 PIECESはこれからも子どももおとなも尊厳が大切にされる社会を目指していきます。

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PIECESファウンダー/児童精神科医

 

すべての子どもたちが持つ「権利」が守られ、こどもがこどもでいられる社会を育むためには、子どもに関わるすべての人が、子どもたちに起きている現状について知り、関心を寄せ、権利が実現されるように行動することが大切です。 

私たちPIECESは、より多くの人が情報に触れることを目指して、普及・啓発の活動に力を入れています。あなたにあった方法でぜひ、私たちと一緒に活動してください。

 
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