CforCレポート

よかれと思って、がすれ違うとき---田北雅裕さんを囲む会|CforCレポート

子どもと自分にとっての心地よいあり方をともに学び、実践するプログラムCitizenship for Children2025

「支援者」ではなく「ひとりの人」として子どもに関わりたいと思うからこそ生まれる、迷いや葛藤。Citizenship for Children(CforC)は、そんな願いや気持ちを持つ人たちが集い、子どもと自分にとっての心地よいあり方をともに学び、実践するプログラムです。

【講座】では、月ごとに異なる講師による「講義動画」を配信。その上で講師とzoom上で質疑・対話ができる「講師を囲む会」を実施しています。

講義動画概要

■講師:田北雅裕さん

 九州大学大学院芸術工学研究院 准教授/社会福祉士

■講座タイトル

 まちの風景から眺める、子どもの暮らしと市民性

■主なトピック

 ・Part.1 まちの風景から眺める

 ・Part.2 風景と市民性

 ・Part.3 子どもにとっての相応しいデザイン

講師を囲む会の様子

講義動画を視聴した参加者同士で感想を共有した後、田北さんとの対話が始まりました。今回の対話で繰り返し語られたのは、「よかれと思って」という行為の複雑さと、人と人との関係を見つめ直す視点でした。

「よかれと思って」が生むもの

参加者から最初に出された問いは、
「よかれと思っての行動が、別の人を傷つけてしまうこともあるのではないか」というものでした。

田北さんは、子どもを取り巻く現場でも同じことが起きていると語ります。

「子どもを傷つけているのは、大人が“よかれと思って”やっていることだったりするんですよね。」

だからこそ大切なのは、行為の結果と、その背景にある思いを分けて考えることだといいます。

人の行動の背景には、誰かを思う気持ちや場をよくしようとする姿勢があります。
その姿勢まで否定してしまうと、関係は簡単に壊れてしまいます。

まずはその背景にある思いを尊重したうえで、何が起きているのかを見ていく。
その視点が、対立ではなく対話を生み出す入り口になるのかもしれません。

人を変えるのではなく「間」をデザインする

もう一つ印象的だったのが、田北さんが語った「人と人との間のデザイン」という考え方です。

関係がうまくいかないとき、私たちはつい相手を変えようとしてしまいます。
しかし田北さんは、人を直接変えようとするのではなく、人と人の間にある仕組みや環境に目を向けることが大切だと話しました。

例えば、

・仕組みをつくる

・道具やツールを用意する

・学びの場をつくる

そうした媒介があることで、人同士が直接ぶつかり合うのではなく、新しい関係が生まれることがあります。

問題を「誰かの性格」や「個人の努力」に還元するのではなく、関係そのものをどうデザインするか
その視点が、対話の中で何度も示されました。

問題を「直す」から「一緒に研究する」へ

対話の中では、「当事者研究」という実践も紹介されました。

当事者研究とは、北海道浦河町の「べてるの家」で生まれた取り組みで、当事者が自分の困りごとを「治すべき問題」として扱うのではなく、みんなで研究するテーマとして捉える方法です。

そうすると、それまで「自分の欠点」として抱えていた出来事が、みんなで向き合える問いへと変わっていきます。

問題を抱える人と、それを直す人。
そんな関係ではなく、共に考える関係が生まれる。

問いの立て方が変わると、人との関係のあり方も変わっていきます。

見方が変わると、風景が変わる

講義動画で紹介された「島の断面図」の話題も、対話の中で改めて取り上げられました。

海に浮かぶ島は、上から見ると離れているように見えます。
しかし横から見ると、海の底ではつながっています。

田北さんは、この図について次のように説明しました。

「実際には最初からつながっているんです。見方を変えたことで、それに気づいただけなんですよね。」

つまり、関係を新しく作るというよりも、すでにあるつながりに気づくこと

その視点が、街の風景や人との関係の見え方を変えていくのかもしれません。

終わりに|風景は変えられる

今回の対話の中で繰り返し語られていたのは、「問題をどう扱うか」という視点でした。

困りごとを「直すべき問題」として扱うのか。
それとも、「一緒に研究する問い」として扱うのか。

その違いは、人との関係のつくり方を大きく変えていきます。

子どもと出会うとき。
誰かの困りごとに触れるとき。

私たちは、その出来事をどんな問いとして受け取るのか。

見方が変わると、関係のあり方が変わる。
そして、私たちが見ている風景もまた、変わっていくのかもしれません。

CforC2024 全コース終了しました!|CforC2024レポート

子どもと自分にとっての心地よいあり方をともに学び、実践するプログラム

Citizenship for Children2024

「支援者」ではなく「ひとりの人」として子どもに関わりたいと思うからこそ生まれる、迷いや葛藤。Citizenship for Children(CforC)は、そんな願いや気持ちを持つ人たちが集い、子どもと自分にとっての心地よいあり方をともに学び、実践するプログラムです。

今年度のCforC2024は26名(基礎コース2名、探求コース11名、動画コース13名)にご参加いただき、2024年3月末をもって無事全コースが終了しました。

1月と2月の探求コースプログラムを報告します。

講師を囲む会(1/15)

「まちの風景から眺める、子どもの暮らしと市民性」
講師:田北雅裕さん(九州大学大学院 人間環境学研究院 専任講師/社会福祉士)

Part.1 まちの風景から眺める

Part.2 風景と市民性

Part.3 子どもにとっての相応しいデザイン

田北さんのお話には、実際の子どもとのやり取りやエピソードはでてきません。それなのに、「子どもが地域で育つこと、信頼できる大人が周りに増えることって、こういうことだよね」と、市民性への理解がぐっと進む内容です。

人と人がお互いの尊厳を大切にしながら関わりを深めていくために必要な要素を、デザインや風景といった切り口で解説された講義動画は、一見難しいと感じる方もいらっしゃいます。ですが、質疑応答を経て、また田北さんのユーモア溢れるお人柄に触れて、最後には参加者のみなさんも納得の表情を浮かべていました。

第5回ゼミ(1/18)

田北さんとの「講師を囲む会」を受けて、ゼミでは「まちの資源を洗い出すワーク」を行いました。muralというツールを使って参加者それぞれが子どもの頃に身近に「居場所」だと感じていた資源(場所・もの・人など)を出しあい、それらが持つ要素(力や機能)に着目して対話を進めました。

また、ワークやこれまでの学びを通して、どのように市民性を発揮していきたいか、具体的なイメージをペアワークで聴きあい、次回の最終回に向けて、学びの総仕上げを行いました。

ゼミのふりかえりでは、「今まで人ばかり見ていたけど、まわりの環境や風景を見るようになった」など、自分の視点に変化があったという感想が寄せられました。

修了生を囲む会(2/12)

「囲む会」最終回は、講師ではなく過去のCforC修了生6人を囲んで行いました。今年度の参加者が、この先どのような自分なりの市民性発揮を行うかを考える上でのモデルとして、質問をしたり、その後の交流につながるきっかけづくりとして実施しました。

第6回ゼミ(2/15)

CforC2024の最終回は、これから子どもとの関わりや場づくりをしていく上で大切な「セーフガーディング」についてのインプットや、半年間のふりかえり、修了証の授与を行いました。

CforCプログラムへの参加前後にどのような変化があったのかを、それぞれがふりかえり、これからの自分がどう在りたいのかをじっくり考える場面もありました。

半年間の学びを経た参加者の声

半年間の学びを経て、参加者のみなさんから寄せられた感想の一部を、下にまとめています。

  • 自分では物事に対してフラットに見ている方だと思っていたが、自分の価値観を押し付けてしまっていることも多々あり、それを自覚できた。

  • 一見、ネガティブに思える自分の反応、感情的な言動にも、私の願いが根本にあることに気付き、自分をいとおしく感じるようになった。

  • 無意識に目の前のことに対して、自分がどうにかしなければというような背負う気持ちが心のどこかにあった気がするが、それが和らいだように思う。私も資源の一つと、いい意味で力が抜けた。

  • 資源性のワークで、自分にできること、他者にできることがそれぞれ異なり、そこまで背負わなくても自分にできることをやれば良いのだと感じることができたことが大きい。

  • プログラム構成がしっかりと丁寧に組まれていて、長時間にもかかわらず最後まで充実した時間を過ごすことができた。

  • 子どものために特別に何かをしなくてはいけないという訳ではなく、何気ない日常での在り方を大事にしようと思うようになった。

CforC探求コースでは、このレポートには書ききれなかった「リフレクション」という、自分と他者(子ども)との関りを振り返るワークも毎月行っていました。このワークがこれまで気づかなかった自分自身の願いや価値観に向き合わせてくれたと、1on1(スタッフと参加者との面談)で話してくれる人もいました。

プログラムの最後は笑顔で記念撮影!半年間ともに学びあった仲間と、お互いに労いあいながら新たなスタートを切った2024修了生のみなさん。プログラムは終了しましたが、これからも繋がりあい、一緒に市民性を広げていく仲間であることに変わりはありません。今後ともよろしくお願いいたします!

CforCプログラムは2025年度も開催予定です。今年度のプログラム開始にあたり、現在スタッフ一同準備を進めています。関心を寄せてくださった方は、ぜひ、お知らせをチェックしてみてくださいね。お待ちしています。

執筆:泉森奈央(CforC運営担当スタッフ)