【CYWずかん】「コミュニケーションは苦手です」理系大学院生のコミュニティユースワーカー、羽生正和さんの寄り添いとは

子どもを支援することで、ともに成長していく

コミュニティユースワーカー(CYW)を”子どもの支援者”として定義すると、どうも違和感がある。CYW3期生である羽生正和さんはそう述べました。

CYWは子どもと接するプロではありません。自分の過去に何かしらしこりのようなものが残っており、だからこそ強い意志を持って、必死に、子どもの幸せを考える。自分の人生と眼の前の子どもとが地続きになって見え、子どもと接する人がCYWには多いといいます。

そのように考えると、たしかにCYWは”子どもの”支援者”として子どもとの関係にはっきりとした線を引くことのできるような存在ではないように思えます。

悩んだり、躓いたりしながら、たくさん考えて子どもたちと接しようとするCYWの姿は、羽生さんの目にはどのように映っているのでしょうか。

 illustration by Sarah Watanabe

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一つの捉え方として、羽生さんは、CYWとは”子どもと一緒に成長していく存在”であると感じています。

試行錯誤しながら自分なりに子どもと接するCYWの姿を見て、また、自らもCYWとして一人の子どもと関わることで、羽生さんの世界は広がっていきました。

「自分に何ができるのか」
ではなく、
「子どもが何に興味があるか」を考える

「自分は理系だから、文系の人たちに比べてコミュニケーションが苦手だなあ」

そう感じていた羽生さんがPIECESの活動に参加し始めたのは昨年2017年2月のことでした。

当時理系の大学院に通っていた羽生さんは、コミュニケーションについても苦手意識がありPIECESで子どもや様々な人と関わる当初、このように感じることが多かったそうです。

また、学校が忙しく活動にあまり時間が取れないということに加えて、NPOで活動している人やボランティアをしている人が身近におらず、どう活動に携わっていけばよいのかということに頭を抱えていたといいます。

そんなとき、PIECESの、電子工作やプログラミングなどを学べる場である『クリエイティブガレージ』で、電子工作に興味があるハルくん(仮名)と知り合いました。

もともと大学のサークルで電子工作やプログラミングに触れていた羽生さんは、「興味があるならやってみる?」とハルくんに声を掛けました。

“まずは、ハルくんのなかでどんなことをやりたいのか。それを理解するためにテーマを変えて様々なお題を出しました。彼はプログラミングより電子工作をやってみたかったようなので、回路という設計図のような部品作りをして、回路をつなげて「LEDを光らせる」「ロボットを動かす」というようなことをやってみました。”

 illustration by Sarah Watanabe

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羽生さんは、ハルくんが活動を続けていくなかで、作るもののレベルを徐々に上げていく、というやり方で進めることを心がけていたと言います。まだ会って間もないハルくんと、どう距離感を掴んで接していくかということに気をつけていたためです。

ハルくんは、羽生さんと関わる前からクリエイティブガレージの場に来ており、ハルくんと密に関わっていたCYWもいました。そのため、羽生さんはハルくんと関わる際にいかに短い時間で距離感を縮めるかというところに課題を感じていました。

“たとえば同じことをしていてもそれに対して「いいね!」と言うのが良いのか、「頑張ったじゃん!」と言うのが良いのか。褒め方や話し方ひとつで電子工作の印象やモチベーションが変わってしまうし、傷つけてしまうこともある。ハルくんに対してはどう接するのがより良いのか、という意味で距離感を取るのは大切だと思うんです。”

手を変え品を変え、子どもと接する。
CYWの姿から学んだ子どもとの寄り添い方

羽生さんが子どもと関わるうえで距離感を大事にするようになったのは、ともに活動するPIECESのメンバーの姿を見たことがきっかけです。

活動を続けていくうちに、CYWとして活動する人は子どもの支援を最初から“上手に”こなしているのではなくて、子どものことを、考えて考えて、行動している人たちばかりであると、羽生さんは感じました。

”PIECESには、子どもとの接し方を参考にしている人がいます。その方はたとえば、子ども同士でいさかいが起きたときに、頭ごなしに叱るのではなくて興味のありそうな話題を持ちかけて視点をその場からをそらさせてあげたり、相談に乗るときには、「こういう団体知ってるよ」というふうに子どもに応じた話を持ちかけてあげたりしている。そういう接し方を見ていると、それまでの見方が一気に壊されて、眼の前の視界が広がっていくんです。”

自分の論理が相手にとっていつでも正しいとは限らない。

子どもたちがそれぞれどんな思いを抱えており、どのような境遇で生きているのか、といった子どもの行動に隠れているそれぞれの生活を知らないまま自分の論理を押し付けて叱ってしまうことの危うさに、羽生さんは気づきました。

相手の関心を他に誘導するというやり方で子ども同士のいさかいを解決するPIECESメンバーの姿に感銘を受け、「ただ叱るんじゃダメなんだな」と、それまでの自分の子どもへの叱り方を見直すきっかけになったといいます。

こうして、羽生さんはハルくんと接するときにも褒め方に気を付けるようになり、自分のできることや興味を押し付けるのではなくハルくんの興味に寄り添うようになっていったのです。

いつしか羽生さん自身も”子どものことを考えて考えて行動する、”子どもと一緒に成長していく”CYWの一人になったといえるでしょう。

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子どもと大人が紡いでいく関係性のかたち

クリエイティブガレージは月に数回しか開かれないこと、羽生さんが忙しくてなかなか参加できないということを鑑みると、羽生さんとハルくんが関わる機会は決して多いとは言えないでしょう。

しかしハルくんと電子工作を通して関わり続けるためには、距離感を掴みながらハルくんに伴走していくことが大事です。

そこで羽生さんは、クリエイティブガレージ以外でハルくんと話す機会を別に設けることにしました。そこでは、電子工作の話も、互いの共通する趣味であるアニメの話もして、ちょっとしたことで会話が弾むような気の置けない関係を築き上げることができたそうです。

結果として、ハルくんの抱えている悩みなどに直接触れることはできなかったけれど、電子工作で分からなかった箇所などは自分から積極的に聞いてくれるようになってくれて嬉しかった、と羽生さんは述べました。

きっと、ハルくんにとって羽生さんは「電子工作を教えくれる楽しい人」という存在であり、自分の悩みなど気にしなくてもよい羽生さんとの時間は心地よく、救いとなるものだったかもしれません。

 illustration by Sarah Watanabe

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子どもの支援のプロじゃないからこそ、悩みながら、考えながら、試行錯誤で子どもと接する。等身大のCYWとはそんな存在であり、羽生さんとハルくんの関係は、そんなCYWの泥臭くも根の深くしっかりとしたその姿を映し出してくれているのではないでしょうか。


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立教大学ドイツ文学専修4年 渡邊紗羅(Sarah Watanabe)
PIECESで広報としてイラストを描いてチラシなどを作成しているうち、PIECESに関わる人たち一人一人の魅力を文字で伝えたいと思うようになり、『コミュニティユースワーカーずかん』シリーズを企画。映画鑑賞が趣味で、暇さえあれば劇場にお金を溶かしてしまうため常に金欠気味。PIECESでのあだ名は「さらたん」。実は大学のサークルで呼ばれた「さら単細胞」が由来で現状に至る。