イベントレポート|子連れ100人ヒロバ

2023年6月1日~4日に渋谷で開催された「子連れ100人ヒロバ」にて、子どもの権利に触れるプログラムを実施しました。ご来場いただいたみなさま、ありがとうございました!

子どもの権利シールを集めよう

大人と子どもがたのしく「子どもの権利」を知るためのプログラム「子どもの権利シールを集めよう!」を実施しました。

子どもの権利ってなんだろう。
一人の人間として大切にされるってどういうことだろう。
自分たちにはどんな権利があるんだろう。

シールを集めながら、大人と子どもがともに権利を知り、学び、深めるきっかけとなっていたら嬉しいです。
当日は子どもの権利について書かれたポスターも展示し、子どもだけでなく、近辺で勤めるオフィスワーカーの方々も足を止めてみてくれました。

子どもの権利条約の中から、特に伝えたい10個の権利をポスターにしました。

子どもの権利が書かれたシールを集めて見せてくれました!

トークイベント「子どもと大人が共にある豊かな社会を作るには?」

株式会社spectrum※ 共同代表の岡田拓也さんと、PIECES代表小澤いぶきが「子どもと大人が共にある豊かな社会を作るには?」をテーマに対談を行いました。

「ギフト」という市民性

小澤:spectrumが運営する、子どもにぴったりのおもちゃと絵本を贈ることができる、子ども向けギフトのECサイト「soeru(ソエル)」の取り組みは、子育ての過程で「支援」ではなく、「ギフト」を媒体としているのが素敵だなと感じます。「ギフトを贈る」ということも市民性のひとつ。存在を肯定してくれるという意味ではウェルビーイングにもつながると思います。

岡田さん:自分に対して贈ってくれたんだという感覚ですよね。PIECESさんでは「市民性」をどのように捉えているのでしょうか。

小澤:国家に紐づくものではなく、一人の人として、社会に存在して、社会に影響を及ぼしている人なんだというまなざしをもって、社会に関わる。その営みをPIECESでは「市民性」といっています。


子どもの権利について考える

岡田さん:こども基本法の施行などで、今子どもの権利について話題になっていると思います。

小澤:子どもの権利条約は、1989年に国連で採択されました。日本でも1994年に批准されましたが、子どもの権利に関する国家レベルでの取り組みは進んでこなかったのではないかと思います。そんな中、2023年の4月にこども基本法が施行され、その中では子どもの権利条約の4原則(差別の禁止、子どもの最善の利益、生命、生存及び発達に対する権利、子どもの意見の尊重)について言及されています。

岡田さん:日本では「権利はある」ということを保障することと、「権利を守ろう」という制度設計があまりないように思います

小澤:権利という言葉自体をどう捉えているかが人によって様々だからというのもあるのかもしれません。権利は、それぞれの権利が大事にされている状態が共存するはずですが、誰かの権利を守ると自分の権利が侵害されてしまうという漠としたイメージを持つことがもしかしたらあるのかも知れません。

岡田さん:権利へのイメージが正しく認識されていないように思います。権利に大小があるようなイメージがありますよね。

小澤:権利と権力が混同されているのかもしれません。

岡田さん:国全体の権利や利益の方が個人より有利だという発想や、ある人の権利を重視すると、ある人の権利が蔑ろにされると思われてしまうことが多いのかもしれません。


子どもとの関わりについて

小澤:子どもと関わるとき、子どもの様々な表現を丁寧に受け取り、その言葉や行動の背景にも目を向けることが大事だと思っています。そしてそれと同時に、自分の言葉や行動にも、背景があることを発見していけるといいと思います。

岡田さん:「自分の中にどのような思いがあるのか」「どう言うバイアスがあるのか」というものは、見逃されがちですが重要ですよね。

私は、子どもと家族を当事者で閉じないことが大切だと思います。当事者だけだと、自分の受けてきた教育などの影響で、子どもが望まないものしかない環境になってしまうこともあります。さまざまなつながりがあれば、1人の子どもが肯定される機会も増えますよね。

小澤:バスの中でちょっと声をかけるとか微笑みを向けるとか、そういった行動も市民性ですよね。「そこにその人がいることが歓迎されている」「私はここにいて大丈夫感」ということにつながる大事な関わりです。

岡田さん:そういう存在はなんて名付けるんだろうと思った時に「共事者」という概念に出会いました。当事者こそがその問題を掲げていいというまなざしはあるけど、それだけではいつまでもメジャーな問題にならない。そういった時に、当事者ではない連帯の仕方を示す「共事者」と言うあり方がある。当事者ではなくても、立ち位置はたくさんあります。


こどもがこどもでいられる社会とは

岡田さん:誰でも、マジョリティ性とマイノリティ性を持っているんだと思います。そういった中で、だれかを制御するのではなく、マジョリティもマイノリティもあなたはあなたでいいんだよと言える社会が良いですよね。こどもがこどもでいられる社会は、誰もが自分らしくいられる社会なのだと思います。

小澤:子どもは声をたくさん発してくれています。でもそれが時に社会に届きづらい。そして、子どもは一歩間違えたら、大人が無自覚に制御してしまう可能性もある存在です。そういった勾配に対して自覚的になって、関わり方を捉え直す必要があると思っています。


ふたりからのメッセージ

岡田さん:子どもの存在を肯定することは、大人の存在も肯定することに繋がります。子どもが近くにいたら笑いかけてみるとか。それが共事者になる入口になると思っています。

小澤:自分のものさしや自分の時間で子どもをみつめるのではなく、子どものまなざしの先に何があるのかをみつめることを大切にしたいです。

トークイベントに参加して

今回は、NPOと企業、それぞれ違った立場子どもをみつめるお二人の対談でした。対談の中では、現代の子どものを取り巻く環境について、多くの問題点が浮かび上がってきましたが、その一つひとつに対して、広い視野から分析されているのが印象的でした。

「誰かの権利を保障することは、誰かの権利がなくなることではない」「当事者だけではなく、共事者という関わり方もある」「大人も子どもも自分らしくいることを肯定される社会」など、この対談の中で出てきたことが、もっと多くの人たちに認知され、理解され、そして実現に向けて一人一人が努力していけるような社会になることを願っています。

この記事を最後まで読んでくれた方も、少しずつ、子どもや社会全体のことを考えて行動してもらえたら嬉しいです。

株式会社spectrum
「みらいをまんなかに、いまをつくる」というミッションのもと、子どもたちが生きていくこれからの社会のあり方を構想し、社会課題に対して小さな変化を連続的に生み出します。


執筆:広報ファンドレイズ インターン 坂本朱弥音