1989年11月20日、すべての子どもに人権を保障する初めての国際条約として『子どもの権利条約』が国連総会で採択されました。
この条約が生まれたことにより、世界中で子どもの保護への取り組みが進みました。現在では、子どもの権利のために行動する日として、世界中でさまざまな取り組みがなされています。

「子どもの権利条約」では、子ども(18歳未満)を権利の主体ととらえ、おとなと同じく、一人の人間としての権利を認めています。また、おとなよりも社会的に弱い立場にいる子どもたちは保護などの権利を定めています。

子どもの権利条約が日本で批准されてから29年。2023年4月にはすべての子どもを対象にし、子どもの権利条約にのっとった法律「こども基本法」ができました。

しかし虐待相談対応件数は年々増加し、2022年の小中高校生の自殺者数は過去最多になるなど、子どもたちの尊厳が大切にされているとは言い難い状況があります。
さらに日本における15歳未満の人口の割合は、11.6%(2022年)と世界で最も少なく、それゆえに周縁化されてしまう可能性が高い現状ともいえます。

どんな背景や特徴を持っているかにかかわらず、子どもは誰でも、権利を取り上げられたり侵害されたりすることなく、安全に安心して生活することのできる存在です。そして、子どもの権利は、何かの目的や能力獲得に有益であるから必要なのではなく、生きる土台として大切にされるものです。

一人の人である子どもの尊厳が守られる環境をつくるためには、子ども自身だけでなく、まわりにいる大人が権利を知り、その権利が実現されるように行動することが大切だとPIECESは考えています。 

こども基本法が施行された今、改めて子どもの権利の重要性をとらえなおし、より広く発信していく必要性があると感じています。

そんな想いから、PIECESでは11月を子どもの権利月間とし、子どもの権利を広く普及するための取り組みを行います。
私たちと一緒に子どもの権利について考え、知る機会を広げませんか。

子どもが生存と発達を保障され、不当な取り扱いから保護され、自分らしく生きる基本的人権を実現するためにできた「子どもの権利条約」。
日本では1994年に批准されました。しかし2021年に実施された調査によると、子どもの約3割、おとなの約4割が「子どもの権利条約」について「聞いたことがない」と答えています。

出典:公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン「3万人のアンケートから見る 子どもの権利に関する意識」を基にPIECES作成

子どもの権利条約

「子どもの権利条約」には、4つの原則があります。条約で定められている権利を考えるときに、常に合わせて考えることが大切です。

命を守られ成長できること
子どもにとって最も良いこと
意見を表明し参加できること
差別のないこと

出典:ユニセフ「子どもと先生の広場 子どもの権利条約」

どんな権利があるの?

子どもの権利条約は54条から成り、大きく以下の4つの権利を守るように定めています。

出典:ユニセフ「子どもと先生の広場 子どもの権利条約」

2023年4月に施行された「こども基本法」。2023年3月に全国の10〜18歳の男女を対象に実施された「こども1万人意識調査」によると、子どもの約6割が「こども基本法」について「聞いたことがない」と答えています。

出典:日本財団「こども1万人調査」報告書を基にPIECES作成

出典:日本財団「こども1万人調査」報告書を基にPIECES作成

子どもの権利条約の精神に則り、子どもの権利が守られる社会の実現を目指した法律です。2023年4月より「こども家庭庁」が始動し、「こども基本法」が施行されました。

子どもの権利条約で特に重要とされる4つの原則である「生存発達の権利」、「 差別の禁止」、「子どもの意見の尊重」、「子どもの最善の利益」を基本理念に定めています。

PIECESでは、代表の小澤いぶきが2022年よりこども家庭庁準備室のアドバイザー(現在はこども家庭庁政策アドバイザー)を務め、こども基本法の公布に向けて、市民社会組織の一つとして当事者と共に提言を進めてきました。

こども基本法では、子どもの権利やこども基本法について、子どもや大人に周知することが明言されています。


「権利」や「人権」と聞くと、「難しそう」「自分には関係ない」と感じる方も少なくないかもしれません。しかし子どもの権利をはじめ、私たちのくらしには、あらゆる場面で「権利」や「人権」が関わっています。
さまざまな分野で活躍する専門家の視点から、子どもの権利について深めます。

専門家にインタビュー

あそびの専門家として幅広く活動されるしみずみえさん。
子どもにとって遊ぶことの意味や、周りにいるおとなたちにできることは何か、お話を伺いました。

 
 
 

新生児科医/小児科医として、子どもたちの命を支える今西洋介さん。
医療の切り口から、子どもの権利についてお話を伺いました。

 
 
 
子どもの権利

子どもの権利を尊重する日常には、どんな子どもとの関わりが生まれているでしょうか。子どもとの関わりを「#かもしれない」の視点で見つめ、子どもの権利を尊重するとはどういうことか、一緒に考えてみませんか。

PIECES代表理事で児童精神科医の小澤いぶきの解説と共に、子どもの権利と私たちのくらしを紐解きます。

 
小澤いぶき
 
 

※上記画像をクリックすると、大きく表示されます。

イラスト:織戸ゆみこ

 

「こどもがこどもでいられる」とは、おとなから見た「子どもらしさ」ではなく、「その子として存在していられる」ということだと考えています。必要なのは「子どもらしい」かではなく、「子どもがひとりの人としていられる」ことなのです。
そのためには子ども自身が、権利主体の一人の人として生きていくことができること、尊厳が守られることが大切です。

子どもの権利が尊重されることは、子どもの周りにいる大人が自分でいられ、その尊厳が守られることにも繋がっていくはずです。私たちは「こどもがこどもでいられる社会」を目指して、以下の活動を行っています。

 
市民性を耕す

市民一人ひとりの行動と社会のしくみは相互に影響し合っています。
子どもを取り巻く社会をつくる一員である私たちが大切にしたい点や、子どもと関わる際に大事なこと、心のケアなどに関する情報発信や広報活動などを行っています。
また市民一人ひとりの行動だけでなく、社会の仕組みを変えていくために、こども家庭庁設立準備室のアドバイザーを務めるなど、政策提言活動にも力を入れています。

啓発活動について

 
市民という他者の存在

子どもの孤立が深まる前に、地域の中で子どもを見守り、子どもに寄り添う市民を増やすためのプログラム「Citizenship for Children(CforC)」を実施しています。ちょっとした困りごとがあった時、気軽に頼って相談できる市民が子どもの周りに存在することを目指しています。

CforCについて↗


2022年9月にスウェーデンを訪れた際、子どもの権利が当たり前に市民の生活に根ざしていることを実感しました。
例えば学校では、どんな遊具があるといいか子どもと先生が話し合い実現されたり、保育園では、日々どんな遊びをするかを決めるプロセスに子どもが参画していたりするのです。
子どもの参画や意見表明といった権利の実践を通して、子どもが自分の権利を知り、自分が社会に影響ある存在であることを体験的に身につけていました。

子どもの権利が当たり前になった背景には、多くの家庭が購入する牛乳パックに体罰禁止を呼びかける広告を載せ、おとなと子どもが法律について知り、話し合うきっかけを広くつくる工夫や、子どもの権利に関する絵本や小冊子の配布、学校での授業など、国を挙げて社会全体へ広く訴えるための啓発キャンペーンがありました。

社会を動かすには時間がかかるかもしれません。しかし社会は私たち市民の行動によって変化し、動いていきます。市民が自分たちのこととして権利について知り、実践することは、長期的に文化に影響します。

子どもは尊厳ある一人の人。尊厳ある一人の権利主体として、子どもたちがこの社会で生きていく環境を子どもとともにつくることは、おとなや社会の大切な役割です。 PIECESはこれからも子どももおとなも尊厳が大切にされる社会を目指していきます。

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PIECES代表理事/児童精神科医

 

すべての子どもたちが持つ「権利」が守られ、こどもがこどもでいられる社会を育むためには、子どもに関わるすべての人が、子どもたちに起きている現状について知り、関心を寄せ、権利が実現されるように行動することが大切です。 

私たちPIECESは、より多くの人が情報に触れることを目指して、普及・啓発の活動に力を入れています。
あなたにあった方法でぜひ、私たちと一緒に活動してください。

 

PIECESへの寄付金は、税制上の優遇措置(寄付金控除)を受けることができます。

公式SNSでも発信中!シェアを通じて、「子どもの権利」を知り、考える機会を一緒に広げてください。

「子どもの声」や「子どもに関わる日々のニュース」などから、子どもの権利と私たちの暮らしについて深めるリレートークを開催します。

ゲストの方々とともに、子どもたちの権利や声が大切にされるとはどういうことか、子どもの権利や人権というまなざしを持つことが、私たちの生活にどのように影響するのか考えます。私たちと一緒に、暮らしのすぐそばにある「子どもの権利」について、考えてみませんか。

【1回目】
日時 : 11月21日(火) 20:00-21:00
ゲスト : 佐藤暁子さん
場所 : Youtube Live配信
https://youtube.com/live/rreibjPSOo8?feature=share

【2回目】
日時 : 12月5日(火) 20:00-21:00
ゲスト : 犬山紙子さん

場所 : Youtube Live配信
https://youtube.com/live/mUGkDphUmwE?feature=share


本との出会いで「子どもの権利」を考える

「子どもの権利」をテーマに、こどもをまんなかに思うギフトストア「soeru」とコラボレーションした取り組み「and books issues」がはじまりました。
「and books issues」は、購入するとテーマに沿って0歳〜大人までを対象に選書された15冊程度の本の中から自分のほしい本を3冊選ぶ事ができ、合計3冊が手元に届く、新しい本との出会をつくる企画です。

かつて子どもだったあなた、子どもの保護者になったあなた、これからなるかもしれないあなた、そしてこの社会で子どもと共存しているあなたに届けたい20冊の本を選びました。

自分や子どもたちが学びやすい、興味があると思う3冊と出会い、ぜひ一緒に子どもの権利について考えてみませんか。